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男女共同参画社会に向けての県民意識調査
長崎県は、「長崎県男女共同参画計画」策定後の県民の意識や考え方についての現状を把握し、今後の男女共同参画施策を展開するため、2001(平成13)年6月に「男女共同参画社会に向けての県民意識調査」を実施し、同年9月にその報告書を公表した。
ここでは、男女共同参画社会の実現への一助とするため、同報告書の「U 調査のあらまし」及び「W 男女共同参画社会に向けて」を掲載するとともに、PDFファイルで
県民意識調査結果「PDFファイル」
を提供します。
なお、PDFファイルを閲覧するには、Adobe Acrobat Readerが必要です。
目次
T 調査の概要
U 調査のあらまし
1.男女平等について
2.結婚・離婚について
3.子どもの育て方について
4.家庭生活について
5.職業について
6.社会活動について
7.女性の人権について
8.男女共同参画社会づくりのための施策について
V 調査結果の分析
第1章 男女平等
第2章 結婚・離婚
第3章 子どもの育て方
第4章 家庭生活
第5章 職業
第6章 社会活動
第7章 女性の人権
第8章 男女共同参画社会づくりのための施策
W 男女共同参画社会に向けて
「男女共同参画社会に向けての県民意識調査」における調査結果の考察
男女平等:あらゆる場面において男性優位
結婚・離婚:若い世代を中心に変化する結婚観
子どもの育て方:個性を重視
家庭生活:家事は女性、意思決定は男性
職業:昇進・昇格や賃金面で男女格差
社会活動:高い環境・社会福祉への関心
女性の人権:暴力から社会的弱者を守る体制づくりが必要
男女共同参画社会づくりのための施策:県施策の認知度を高める工夫が必要
X 参考資料
集計結果
使用した調査票
U 調査のあらまし
1.男女平等について
(1)男女の地位:「平等である」の割合低い
社会生活における6つの分野(家庭生活、職場、学校教育の場、政治の場、法律や制度の上、社会通念・慣習)において、男女の地位が平等になっているかどうか尋ねたところ、「平等である」と答えた人の割合は以下のようになった。「家庭生活」22.1%(男性28.0%、女性16.8%)、「職場」20.9%(男性25.2%、女性17.0%)、「学校教育の場」58.1%(男性65.9%、女性51.2%)、「政治の場」19.8%(男性26.2%、女性13.8%)、「法律や制度の上」34.0%(男性46.7%、女性22.6%)、「社会通念・慣習等」8.4%(男性11.1%、女性5.9%)。
(2)男女の平等感:7割以上が「男性の方が優遇されている」
社会全体としては、男女平等になっているかどうかについて尋ねたところ、「男性の方が非常に優遇されている」8.4%(男性4.8%、女性11.6%)、「どちらかと言えば男性の方が優遇されている」68.2%(男性67.9%、女性68.8%)、「平等である」11.1%(男性15.6%、女性7.0%)、「どちらかと言えば女性の方が優遇されている」4.5%(男性5.6%、女性3.3%)、「女性の方が非常に優遇されている」0.3%(男性0.4%、女性0.2%)となった。
(3)男性が優遇されている要因:「社会通念や慣習が男性優位に働いている」が7割
問2において男性のほうが優遇されていると答えた人を対象に、男性が優遇されている要因を尋ねた。最も多かったのは、「社会通念や慣習やしきたりなどの中には、男性優位に働いているものが多い」の69.3%(男性69.8%、女性68.9%)、次に「日本の社会は仕事優先、企業中心の考え方が強く、それを支えているのが男性だという意識が強い」が60.5%(男性、女性ともに60.5%)、以下、「育児、介護などを男女が共に担うための体制やサービスが充実していない」、「女性の能力を発揮できる環境や機会が十分ではない」、「男女平等を進めていこうという男性の意識がうすい」などが続いた。
(4)「男は仕事、女は家庭」という考え方:39%が「同感しない」
「男は仕事、女は家庭」という考え方について尋ねたところ、「同感する」13.0%(男性17.7%、女性8.6%)、「同感しない」38.9%(男性33.0%、女性44.4%)、「どちらとも言えない」44.9%(男性46.2%、女性43.8%)、「わからない」1.3%(男性1.1%、女性1.5%)となった。
(5)女性が職業を持つこと:4割以上が「職業を持つべき」
一般的に女性が職業をもつことについてどのように考えるかについて尋ねたところ、「女性も職業をもった方がよい」が全体の44.3%(男性40.8%、女性45.8%)となり、以下、「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」27.9%、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」7.3%、「子どもができるまでは職業をもつ方がよい」4.8%、「結婚するまでは、職業をもつ方がよい」3.5%と続き、「女性は職業をもたない方がよい」は最も少ない1.5%(男性1.8%、女性1.1%)となった。
2.結婚・離婚について
(1)「結婚」の考え方:結婚観に男女差
結婚についての考え方を尋ねたところ、「ぜひ結婚する方がよい」27.9%、「できるだけ結婚する方がよい」42.8%、「結婚する必要はない」2.0%、「どちらでもよい」25.6%となった。性別にみると、「ぜひ結婚する方がよい」は男性の39.3%に対し、女性は17.4%と男性の2分の1以下となり、「どちらでもよい」は男性の18.1%に対し、女性は32.4%と、男女間で結婚に対する考え方に違いが見られる。
(2)結婚後の「姓」:「夫婦別姓支持」はわずか1割
結婚後の「姓」に対する考え方について尋ねたところ、「結婚後は「夫の姓」を名乗る方がよい」42.7%(男性48.6%、女性37.2%)、「結婚後は「妻の姓」を名乗る方がよい」0.2%(男性0.2%、女性0.3%)、「結婚後は夫婦とも同じ姓であれば、夫・妻どちらの姓を名乗ってもよい」38.4%(男性34.4%、女性42.1%)、「結婚しても、夫・妻とも「今までの姓」を変える必要はない」9.7%(男性8.9%、女性10.5%)となった。
(3)「離婚」の考え方:約8割が離婚に対して肯定的
「離婚」に対する考え方について尋ねたところ、「愛情がなければ離婚してもよい」8.1%(男性8.1%、女性8.3%)、「事情によっては離婚してもしかたがない」69.1%(男性63.9%、女性74.0%)、「子どもがいれば離婚すべきではない」14.8%(男性18.2%、女性11.5%)、「どんなことがあっても離婚すべきでない」6.6%(男性8.0%、女性5.2%)となった。
3.子どもの育て方について
(1)家庭における子どもの育て方:男性の方が性で区別する傾向あり
家庭における子どもの育て方についての考えを尋ねたところ、「女の子は“女の子らしく”、男の子は“男の子らしく”育てる方がよい」25.5%(だんせい32.9%、じょせい18.8%)、「女の子、男の子と性による区別はせずに、個性に応じた育て方をする方がよい」67.8%(男性61.3%、女性73.3%)となり、男性の方が子育てに性による区別をする傾向が残っている。
(2)子どもに受けさせたい教育:男の子、女の子ともに「大学・大学院」が1位
女の子と男の子に受けさせたい教育程度について尋ねたところ、女の子は「大学・大学院」44.9%、「短期大学・高等専門学校」21.0%、「専門・専修学校」11.5%、「高等学校」10.6%などとなった。男の子は、「大学・大学院」65.2%、「専門・専修学校」9.6%、「短期大学・高等専門学校」8.0%、「高等学校」5.6%などとなった。いずれも「大学・大学院」が1位となったものの、女の子は男の子よりも20.3ポイント下回っている。
(3)子どもの生き方:女の子−周りとの調和、男の子−経済的自立
女の子では「人間性豊かな生活をする」36.9%、「家族や周りの人たちと円満に暮らす」36.1%、「本人の個性や才能を生かした生活をする」32.3%、「本人の意思に任せる」28.2%が上位にきている。男の子は「経済的に自立した生活をする」44.2%、「本人の個性や才能を生かした生活をする」34.2%、「人間性豊かな生活をする」28.2%などが上位にきており、周りの人との調和を期待される女の子と、経済的な自立を期待される男の子という考えがみられる。
(4)男女平等推進のために学校で行うべきもの:男女の区別ない生活・進路指導
男女平等を推進していくために学校で行うとよいと思うものについては、「生徒指導や進路指導において、男女の区別なく能力を生かせるように配慮する」が60.2%で1位となったほか、「学校生活での児童・生徒の役割分担を男女同じにする」40.4%、「男女平等の意識を育てる教育をする」40.2%が続いている。
4.家庭生活について
(1)家庭内の役割分担:依然として重い女性の家事負担
家庭生活における9つの分野(食料品等の買い物、料理、食後の片づけ、掃除・洗濯等、乳幼児の世話・育児、子どものしつけ・勉強、PTAへの参加、町内行事等への参加、高齢者の世話・介護)について、家庭内での役割分担について尋ねたところ、9分野のうち6分野(買い物、料理、食後の片づけ、掃除・洗濯、育児、PTA参加)で「主に妻」が過半数となり、家庭における女性の家事負担は依然として重いことがわかる。残りの3分野については、「子どものしつけ・勉強」は「夫婦共同で」が45.8%で1位、「町内行事への参加」は「夫婦共同で」が34.9%で1位だったが、「主に夫」が26.5%と、9分野で最も割合が高かった。
(2)家庭での意思決定:夫婦共同が大部分を占めるも、全体的な実権は夫に
子どもの教育方針や小遣いの額、将来の生活設計、家族旅行の行き先など、家庭生活において意思決定が必用となる時、誰の意見が最も尊重されるかについて尋ねた。夫の意見が最も尊重されるのが、「家庭における全体的な実権」41.0%と「家庭にとっての重大問題の最終判断」39.1%であった。その他の4分野においてはいずれも「夫婦共同で」が大部分を占めた。妻が1位の分野はなく、「夫と妻の小遣いの額を決める」19.1%、「家族旅行の行き先や費用を決める」19.4%において比較的大きな割合を占めるにとどまっている。
(3)高齢者・障害者介護の家庭内分担:「男女共同で」が77%
高齢化社会が進む中で、高齢者介護への関心も高まっているが、高齢者・障害者の介護をする場合の、家庭内での分担について尋ねた。1位は「男女が共同して分担する方がよい」76.7%(男性70.4%、女性78.2%)となっている。これまで、介護は主に女性が中心となって担当してきたこともあってか、「主として女性が受け持つ方がよい」11.6%の性別の内訳は、男性が16.2%であるのに対し、女性が7.3%と男女間で考え方の開きが見られる。
5.職業について
(1)勤務先での女性の扱い:「不当な扱いを受けていると思う」全体の15%
職業をもっている人を対象に、勤務先において女性が不当な扱いを受けているかどうかについて尋ねたところ、「思う」15.0%、「思わない」75.7%となった。「思う」については、前回調査と変わらず、「思わない」は5.0ポイント下がっている。性別にみると、男性は1.6ポイント上がっているのに対し、女性で「思う」と答えた人が前回調査に比べて2.1ポイント下がっている。
(2)勤務先での女性の不当な扱いの具体例:昇進・昇格、給与に格差
女性が不当な扱いを受けていると「思う」と答えた人に、具体的にその理由を尋ねたところ、最も多かったのが「男女の昇進・昇格に格差がある」41.4%であり、以下、「男女の賃金に格差がある」38.4%、「女性の能力を正当に評価しない」33.5%、「女性には補助的な仕事しかさせない」24.0%などとなっている。「女性の能力を正当に評価しない」において、女性39.2%、男性26.9%と女性が男性を12.3ポイント上回り、逆に「女性を幹部社員に登用しない」では、男性が20.2%、女性9.8%と男性が女性を10.4ポイント上回るなど、男女間で、見解に差がある分野もいくつか存在する。
(3)女性が職業を続ける上での障害:労働時間の長さ、育児・介護施設の不足など
職業をもっている女性を対象に、職業を続けていく上で障害を感じる点について尋ねたところ、1位は「労働時間が長い」11.4%、以下「育児や介護のための施設が十分でない」10.7%、「賃金に男女格差がある」9.8%、「転勤がある」9.6%、「短期契約等の不安定な雇用形態がある」9.0%と続いている。
(4)職業を持っていない理由:「適当な仕事がみつからない」13.7%
職業をもっていない女性にその理由を尋ねたところ、「適当な仕事がみつからない」13.7%が1位となり、以下は「自分の健康に自信がない」12.6%、「働く必要がない」8.7%、「子育てがおろそかになる」7.4%などとなっている。1位と2位については、それぞれ前回調査とほぼ同じ割合となっているが、「働く必要がない」と「子育てがおろそかになる」はそれぞれ前回調査を6.7ポイント、8.9ポイント下回っている。特に「働く必要がない」が下がっている背景には、ここ数年の不景気の影響があるものと考えられる。
(5)今後の就業の意思:全体の32%が就業の意思あり
職業をもっていない女性を対象に、今後、職業を持ちたいかどうかについて尋ねた。「いま職業を探している」11.5%、「そのうち職業を持つつもり」20.5%、「職業を持つつもりはない」47.1%となっている。
(6)希望する職業:4割が常時雇用を希望
今後職業を持ちたいかどうかという質問で「いま探している」「職業を持つつもり」と答えた人を対象に、希望する職業を尋ねたところ、「常時雇用されている人」40.8%、「臨時に雇用されている人」29.9%、「家庭内での内職」8.8%などとなっている。
(7)女性の職場進出に必要な条件整備:再雇用制度、育児・介護サービスの拡充
女性の職場進出を進めるために必要となる条件整備について尋ねた。「結婚・出産・介護などの都合でいったん退職した女性のための再雇用制度を普及・促進する」が46.0%(男性50.3%、女性42.3%)で1位となり、以下は「育児や介護のため施設やサービスの拡充」45.4%(男性50.7%、女性41.0%)、「育児休業制度、介護休業制度を普及、促進」28.1%(男性31.6%、女性25.2%)、「男性の家事・育児・介護等への参加を促すための啓発をする」25.8%(男性21.6%、女性29.6%)などとなっている。男性は女性が働きやすくなるための環境整備が必要と考えているのに対して、女性は環境整備よりも男性が家事や育児に参加することが必要と考えている点が興味深い。
6.社会活動について
(1)地域社会における活動への参加状況:46%が町内会・青年団・婦人会等へ参加
地域社会における様々な活動への参加状況について尋ねた。「現在参加している」の割合が高いものとして、町内会・自治会・青年団・婦人会・老人クラブ等45.6%、趣味・スポーツ・教養・学習・文化などのサークル活動35.0%、PTA活動・子ども育成会活動24.4%などとなっている。現在の参加率は低いが「今後参加したい」の割合が前回調査より上昇している分野として、「社会福祉分野での活動」41.0%、「環境問題に関する活動」41.5%、「国際交流・国際化等に関する活動」30.2%があげられ、国内的に社会福祉、環境問題に対する関心が高まっていることが反映されている。しかし、女性問題への関心は低く、「現在参加している」2.8%、「今後参加したい」22.0%と、いずれも他の活動に比べて低い水準にとどまっている。
(2)何らかの活動に参加している理由:「地域に役立つ」、「自分が成長する」ため参加
地域社会の活動に参加している人を対象に、参加理由を尋ねたところ、「人や世の中、地域に役立つから」が30.2%で1位、以下「自分を成長させたいから」29.3%、「役目が順番制だから」28.4%、「友達ができるから」23.0%の割合が高い。性別にみると、「人や世の中、地域に役立つから」は男性40.9%、女性20.8%となっているのに対して、「自分を成長させたいから」では男性22.2%、女性35.9%となっており、地域活動に参加する理由は男女によって若干の違いがみられる。
(3)何も参加していない理由:4割が職業のために参加できず
地域活動に参加していない人にその理由を尋ねたところ、「職業を持っているから」40.1%、「そのような活動に関心がないから」18.4%、「適当な講座やサークルがないから」17.8%、「活動するような施設が近所にないから」15.1%などが上位にきている。「家事・育児・介護で忙しいから」は男性4.0%に対して女性が17.3%と高く、家事や育児が女性の地域活動への参加の障害となっている一面もあるようだ。
7.女性の人権について
(1)女性の人権が尊重されていないと感じる時:『女性にはできない』という偏見が1位
女性の人権が尊重されていないと感じることについて尋ねた。1位は「『女性にはできない』といった偏見」46.5%(男性45.2%、女性47.8%)、以下、「家庭内での夫から妻への暴力」36.4%(男性34.0%、女性38.7%)、「職場におけるセクシュアル・ハラスメント」30.1%(男性28.2%、女性32.1%)、「痴漢行為」27.5%(男性25.0%、女性30.1%)、「売春・買春」25.7%(男性23.2%、女性28.0%)などの割合が高くなっている。
(2)メディアにおける性・暴力表現:半数が「性的表現を望まない人への配慮不足」
テレビ、新聞、雑誌といったメディアにおける性・暴力表現についての考えを尋ねたところ、「性的表現を望まない人や子どもの目に触れないような配慮が足りない」49.1%、「社会全体に性に関する道徳観・倫理観が損なわれている」47.9%の割合が特に高くなっている。
(3)夫婦間での暴力:11項目の行為はいずれも「暴力にあたる」
夫婦間での行為について、それが暴力だと思うかについて尋ねた。「大声でどなる」「交友関係や電話を細かく監視する」「刃物などを突きつけて、おどす」「なぐるふりをして、おどす」など11項目の行為について、「どんな場合でも暴力にあたる」あるいは「暴力にあたる場合とそうでない場合がある」と思う人が大部分を占めた。
(4)夫婦間での暴力の有無:「大声でどなられる」「無視される」の割合高い
9項目の暴力行為について、自分の夫や妻から受けたことがあるかについて尋ねた。いずれの行為についても無回答が2割以上となっており、実態の把握まではいかないかもしれないが、いずれの行為においても、割合こそ少ないが、「何度もあった」あるいは「1、2度あった」と答えている人がいる。また、「大声でどなられる」と「何を言っても無視される」については、「何度もあった」あるいは「1、2度あった」と答えた人の割合が他に比べて高かった。
(5)受けた暴力に関する相談:4割以上がどこにも相談せず
暴力を受けたことがあると答えた人を対象に、受けた行為についての相談の有無について尋ねた。「どこ(だれ)にも相談しなかった」が41.2%と高く、夫婦間の暴力の実態が明らかになっていないことがわかる。次いで「家族に相談した」23.7%、「友人・知人に相談した」23.7%となっており、4位の「医師に相談した」3.6%以下の数字は非常に低い。
(6)相談しなかった理由:被害者ががまんする傾向が強い
どこ(だれ)にも相談しなかったと答えた人に、その理由を尋ねたところ、1位「自分にも悪いところがあると思ったから」41.3%、2位「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」40.0%、3位「相談するほどのことではないと思ったから」38.8%という結果となった。また、「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」も23.8%にのぼり、被害者ががまんするという傾向が非常に強い。その他、「相談してもむだだと思ったから」22.5%、「担当者の言動により不快な思いをすると思ったから」3.8%といった意見もあり、相談先の対応によって、被害者の心情も大きく左右されることがわかる。
(7)異性につきまとわれた経験の有無:10人に1人がつきまとわれた経験あり
これまで、ある特定の異性にしつこくつきまとわれた経験があるかどうかについて尋ねたが、「ある」と答えた人は全体の9.6%(男性4.8%、女性14.0%)であった。
(8)痴漢被害の有無:女性の4割が被害
女性を対象に、交通機関の中や路上などで痴漢の被害に遭ったことがあるかどうかについて尋ねた。「1回あった」と答えた人が女性全体の18.5%、「2回以上あった」が同じく20.8%となり、およそ4割の女性が痴漢の被害に遭っていることがわかった。
(9)性的な行為の強要:全体の6%が被害
これまでに、異性からおどされたり、いやがっているのに性的な行為を強要されたことがあるかどうかについて尋ねた。「1回あった」と答えた人が女性全体の4.3%、「2回以上あった」が同じく1.8%、「まったくない」は87.2%という結果であった。
(10)性的な行為の強要に関する相談:被害者の半数以上がどこにも相談せず
性的な行為を強要されたことが「ある」と答えた人を対象に、その行為について誰かに打ち明けたり、相談したかどうかを尋ねたところ、「どこ(だれ)にも相談しなかった」が53.5%にのぼり、被害者の半数以上が誰にも相談していないという状況が明らかになった。その他は「友人・知人に相談した」26.7%、「家族に相談した」10.5%となっているが、「警察に連絡・相談した」8.1%、その他公的な機関、民間の機関、医師などに相談したと答えた人はゼロと、公的あるいは民間の機関に相談するケースは少ないことがわかった。
(11)相談しなかった理由:「恥ずかしくて言えなかった」「相談してもむだ」
性的な行為を強要されたことについて「どこ(だれ)にも相談しなかった」と答えた人を対象に、相談しなかった理由を尋ねた。「恥ずかしくてだれにも言えなかったから」が52.2%と半数以上を占めたほか、「相談してもむだだと思ったから」30.4%、「被害をうけたことを思い出したくなかったから」30.4%、「自分さえがまんすれば、なんとか今のままでやっていけると思ったから」28.3%などとなっている。
(12)性的な行為を強要された場合の行動:3割が「警察に連絡・相談」
性的な行為を強要されたことが「まったくない」と答えている人を対象に、万が一、自分がそうした行為をされた場合に、どうするかについて尋ねた。「警察に連絡・相談する」35.2%、「家族に相談する」34.3%、「友人・知人に相談する」21.5%など、誰かに相談しようと考える人が多く、「どこ(だれ)にも相談しない」はわずか2.5%にとどまり、実際に被害に遭った人とは全く逆の結果になった。
(13)相談しない理由:「恥ずかしくて言えない」「思い出したくない」
上の質問で「どこ(だれ)にも相談しない」と答えた人を対象に、相談しない理由を尋ねたところ、「恥ずかしくてだれにも言えないから」57.1%、「そのことについて思い出したくもないから」46.4%、「相談してもむだだと思うから」35.7%、「担当者の言動により不快な思いをすると思うから」28.6%、「自分さえがまんすれば、なんとか今のままでやっていけると思うから」28.6%という結果になった。
(14)セクシュアル・ハラスメント:12%が被害を受けている
職場や学校などでセクシュアル・ハラスメントを受けたことがあるかどうかについて尋ねたところ、「ある」12.1%(男性2.6%、女性20.6%)、「ない」77.5%(男性88.3%、女性67.9%)となった。
(15)受けたセクシュアル・ハラスメント:「容姿、服装、身体に関しての会話」が4割
セクシュアル・ハラスメントを受けたことがあると答えた人を対象に、その内容を尋ねた。「容姿や服装、身体について、ことさら強調した会話をされた」41.5%、「髪や身体に触れられたり、すり寄られたりした」38.8%、「性的な会話をされたり、からかわれたりした」37.1%が全体の4割近くにのぼった。性別で異なる項目として、女性では上位3項目に加えて、「酒の席や社員旅行で接待やサービスを無理強いされた」(男性3.3%、女性22.7%)、「抱きつかれたり、キスされたりした」(男性3.3%、女性16.7%)、「飲食や食事にしつこく誘われたり、交際を強要された」(男性3.3%、女性12.5%)、「いやらしい目つきで体をじろじろ見られた」(男性0.0%、女性11.7%)などがあげられる。逆に男性では「私生活について、性的な噂を流された」(男性13.3%、女性4.5%)があげられる。
(16)女性への暴力をなくすための方策:被害女性を支える体制を求める声多い
女性に対する暴力をなくすための方策について尋ねたところ、「法律・制度の制定・見直し」44.0%(男性45.0%、女性43.2%)、「犯罪の取り締まり強化」40.6%(男性43.0%、女性38.6%)という意見も多かったが、「被害女性が安心して相談できる場所の確保」が57.0%(男性54.0%、女性60.1%)で1位となったほか、「捜査や裁判での女性担当者の増員」39.1%(男性37.2%、女性41.0%)や「被害女性のための相談所や保護施設の整備」38.2%(男性36.5%、女性40.0%)も上位にきており、被害女性を支える体制を求める声が多い。
8.男女共同参画社会づくりのための施策について
(1)男女共同参画に関する事柄の認知度:全体的に低い県施策の認知度
男女共同参画に関する言葉や事柄の認知度を尋ねた。「男女共同参画社会基本法」、「男女供養同参画基本計画」は、「聞いたことはあるが内容は知らない」は4割から5割近いが、「内容まで知っている」は1割に満たない。「ストーカー規制法」や「児童買春・児童ポルノ禁止法」は、「内容まで知っている」あるいは「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が8割を越えているのに対して、「ジェンダー」については、「内容まで知っている」、「聞いたことはあるが内容は知らない」を合わせても3割を下回るなど、認識度に差がある。そして、長崎県の「男女共同参画計画」、「男女共同参画啓発用ラジオ番組」、「男女共同参画だより」は、「内容まで知っている」がそれぞれ5.8%、2.4%、6.0%と認知度が低く、県民に広く知ってもらうための方策を考える必要がある。
(2)政治・行政における女性の参画が少ない理由:1位は「男性優位の組織運営」
政治や行政において、施策の計画や方針決定の過程に女性の参画が少ない理由について尋ねたところ、「男性優位の組織運営」51.1%(男性52.7%、女性50.0%)、「女性の参画を積極的に進めようと意識している人が少ない」39.6%(男性40.2%、女性39.4%)、「女性側の積極性が十分でない」37.7%(男性37.3%、女性38.0%)などが上位にきている。
(3)県の男女共同参画社会実現のための施策:1位は「仕事と家庭生活の両立支援」
長崎県が男女共同参画社会の実現に向けて力を入れるべきことについて尋ねた。「子育て支援、介護の充実、就業環境の整備などの仕事と家庭生活の両立支援」43.2%(男性38.4%、女性47.8%)、以下、「社会教育、生涯教育の場での男女共同参画に向けた学習や講座の充実」28.2%(男性32.1%、女性25.1%)、「学校教育における男女平等教育の充実」25.4%(男性29.4%、女性22.0%)、「女性の就業機会の確保、女性の職業能力開発の機会の充実」25.1%(男性24.3%、女性26.0%)、「男女共同参画の推進についての啓発活動の充実」18.1%(男性21.9%、女性14.7%)と続いている。女性は、仕事と家庭生活の両立に向けた環境整備を求めている一方で、男性は男女共同参画に向けた講座や啓発活動の充実などを求める傾向にある。
W 男女共同参画社会に向けて
「男女共同参画社会に向けての県民意識調査」における調査結果の考察
少子高齢化の進展、ライフスタイルの多様化、価値観の変化など、社会情勢はめまぐるしく変化している。そうしたなか、男女がお互いの人権を尊重しつつ、性別に関わりなく、それぞれの個性と能力を十分に発揮することのできる男女共同参画社会の実現は、国だけでなく、県や各市町村にとって急務となっている。平成11年に国が「男女共同参画社会基本法」を施行した後、平成12年には長崎県が平成2年策定の「2001ながさき女性プラン」を見直し、「長崎県男女共同参画計画」を策定した。今回の「男女共同参画社会に向けての県民意識調査」は、長崎県における男女共同参画の現状把握が第一の目的となっている。ここでは、各項目の調査結果に基づき考察する。
男女平等:あらゆる場面において男性優位
社会生活における男女平等に関しては、社会のあらゆる場面において、「男性が優遇されている」との意見が大部分を占めている。「社会通念・慣習等」、「家庭生活」、「政治の場」、「職場」において、その割合が高く、不平等感が強い。「男性が優遇されている」要因として、男性優位に働いている社会通念や慣習が多いこと、仕事優先の社会を男性が支えているという意識が強いことなどが考えられる。
「男は仕事、女は家庭」という性別による役割分担の是非に関しては、「どちらとも言えない」が最も多く、次いで「同感しない」、「同感する」の順となっている。前回調査と比較すると「同感しない」の割合が2ケタ上昇と、性別による役割分担に対して否定的な人が増えた。特に若い世代ほどその割合が高く、ライフスタイルの変化、価値観の多様化などにより、性別による役割分担が自分達の生活とかけ離れていると感じる人が増えている。
女性が職業をもつことについては、「女性も職業をもった方がよい」が4割以上を占めた。上の世代ほど職業をもたない、あるいは結婚するまでは職業をもつことを支持する一方で、若い世代では職業をもつことを支持しており、女性の職業観は変化しつつある。
結婚・離婚:若い世代を中心に変化する結婚観
先に、ライフスタイルの変化や価値観の多様化による、性別役割分担意識や職業観の変化について触れたが、結婚や離婚に対する考え方も、大きく変わりつつある。「結婚=幸せ」という図式は崩れ、結婚が必ずしも幸せをもたらすものではないという認識が、男性にも女性にも定着しつつある。結婚に関しては「できるだけ結婚する方がよい」が「ぜひ結婚する方がよい」を大きく上回った。しかし「結婚する必要はない」という否定派は2.0%と非常に少数であり、以前のように「20代前半までに結婚しなければ」という考え方に流されることなく、自分に合ったパートナーを選べればよいという姿勢が感じられる。結婚に対する考え方が大きく変わりつつあることで、未婚化・晩婚化が進み、それが少子化をもたらすとの懸念もある。現実に結婚観が変化している以上は、その変化に対応して、女性と男性が仕事と家庭を両立できる環境を整備する努力が必要になってくるのであろう。
結婚に対する考え方と同時に、近年、よく議論に上がってくるのが結婚後の姓である。長崎県では、「結婚後は「夫の姓」を名乗る方がよい」が4割以上を占め、夫婦別姓を支持するのはわずか9.7%と1割にも満たなかった。一方、内閣府が平成13年に実施した「選択的夫婦別姓制度」導入の是非を問う世論調査では、制度に賛成する人が42.1%、反対する人が29.9%となった。この世論調査は、制度の是非を問うもので、質問の意味が若干異なるが、長崎県民は、夫婦別姓については全国に比べると否定的な意見を持っている人が多いと言えるかもしれない。
離婚については、「事情によっては離婚してもしかたがない」が前回調査より9.9ポイント上昇の69.1%となり、離婚を容認する人の割合は増加しており、性別では女性のほうが男性よりも離婚を肯定する割合が高くなっている。一方、「子どもがいれば離婚すべきではない」では、女性より男性のほうが割合が高くなっている。夫婦が離婚した場合、女性が子どもを育てるケースが多く、経済的自立を図るのが難しいといわれる。以前は「離婚したいが経済的に自立できないので」と離婚をあきらめる女性が多かったが、現在は離婚と子どもの存在は切り離して考える傾向が強まっている。
子どもの育て方:個性を重視
家庭における子どもの育て方は、子どもが大人になって社会に出た時の生き方、考え方に大きな影響を与えることになる。家庭における子どもの育て方に関しては性による区別はせずに、「個性に応じた育て方をする方がよい」が7割近くを占め、多くの人が子どもの個性を重視したいと考えている。
子どもを育てる上で、受けさせたい教育程度に関しては、女の子、男の子ともに、大学・大学院が最も高い割合を占めたが、女の子は男の子を2割程度下回っている。「女の子はそれほど高い教育を受ける必要がない」といった考え方が、根底に残っているのかもしれない。しかし、実際、長崎県内の高校卒業者の進学率の推移をみると、昭和45年の女子19.3%、男子22.8%から、平成12年には女子39.9%、男子36.1%となり、女子20.6ポイント、男子13.3ポイントそれぞれ上昇した。また、進学率は女子が男子を上回っており、県民の意識とは若干異なる結果となっている。
子どもの将来に関しては、女の子は「人間性豊かな生活をする」、男の子は「経済的に自立した生活をする」、の割合が最も高くなっている。その他割合の高い項目として、女の子では「家族や周りの人たちと円満に暮らす」、「本人の個性や才能を生かした生活をする」、男の子では「本人の個性や才能を生かした生活をする」があげられる。女の子には人間性や周りとの和、男の子には経済的な自立が求められている。
子どもを育てる上では、家庭における教育だけでなく、学校教育も大きな影響力を持っている。男女共同参画社会を築いていくために小・中・高等学校で実施するとよいと思われるものとして、「生活指導や進路指導において、男女の区別なく能力を生かせるよう配慮する」が6割を占めた。
家庭生活:家事は女性、意思決定は男性
家庭生活における男女の平等意識では「男性が優遇されている」が65.3%を占めた。
家庭生活における役割分担については、買い物や料理、食後の片づけ、掃除・洗濯等の家事項目で「主に妻」が7割以上となっており、依然として妻の家事負担は重い。「男は仕事、女は家庭」という性別役割分担意識について「同感しない」が4割近くを占めたものの、実際、家庭生活における役割の多くは女性が担っており、状況は大きく変わっていない。しかし年代別に見ると、若い世代で一部項目において「主に夫」の割合が高まっており、今後、若い世代を中心に男性の家事参加が期待される。
家庭における意思決定については、「夫婦共同で」が占める割合が高いものの、「家庭における全体的な実権」においては夫が妻を3割上回っており、重要な意思決定場面では、夫のほうが実権を持っている状態である。
高齢化が進み、家庭における介護への関心は非常に高まっている。これまでは、家庭における高齢者あるいは障害者の介護は、ほとんどの場合、女性が担ってきたが、今後は男性の積極的な関わりが求められる。家庭内での介護の分担に関しては、男女が共同して分担するが76.7%と、世論の関心が高まっていることもあり、積極的に関わろうとする意見が多数である。こうした意見をくみとって、自治体などを中心に、家庭における介護に関する講座などを開催すると、より効果的であろう。
職業:昇進・昇格や賃金面で男女格差
女性が働くことは、もはや珍しいことではなくなり、様々な分野において重要な役割を果たしているが、問1において「職場」は「男性の方が優遇されている」という意見が多数を占めるように、職場は女性にとって必ずしも快適な場所とはかぎらない。勤務先で女性が不当な扱いを受けているかどうかについては、そう「思う」が15.0%を占めている。具体的には、昇進・昇格における男女差があること、女性の能力の正当な評価がなされていないこと、女性には補助的な仕事しかさせないことなどがあげられる。また、男性の中には「女性を幹部社員に登用しない」をあげる人が多いことが注目される。現在の企業組織は男性優位であり、そうした状況を変えるためには、男性の意識改革が不可欠である。女性を幹部社員に登用しないことを疑問に思う男性の意見も、働く女性を取り巻く環境を変える原動力の一つとなりうる。女性が働くうえで感じる障害については、労働時間の長さ、転勤、育児や介護施設の不足、短期契約に代表される不安定な雇用形態などをあげる人が多い。労働時間の長さについては、結婚して働いている女性の多くが、出勤前あるいは帰宅後に家事・育児・介護等に時間を割き、肉体的にも負担になっている状況が考えられる。転勤にはもともと「女性が男性の転勤についていく」という考え方が定着し、女性にとって転勤はなじみがないもの、また結婚している女性にとっては、配偶者の意見によっても仕事を辞める、単身赴任する等の選択を迫られる事項である。しかし、今後、女性の社会進出が進み、組織内で女性の占める割合が高まるほど、転勤の機会が増えることが予想され、「女性にとっての転勤」はより議論の必要な分野となるであろう。
一方、現在職業を持たない理由については、前回調査で1位、2位だった「働く必要がない」、「子育てがおろそかになる」の割合が低下し、「適当な仕事が見つからない」、「健康に自信がない」が上位にきている。20歳代〜40歳代で職業を探す意思のある人の割合が高く、常時雇用を希望する人が多い。しかし、現時点において、結婚・出産を機に退職し、その後、常時雇用で再就職するのは難しいと言われ、こうした状況を変えるためには、再雇用制度の普及が望まれる。また、女性が働く上で、結婚や出産を「障害」と感じないためにも、育児・介護施設、サービスの拡充や、育児・休業制度の普及、男性の家事・育児・介護等への参加が求められよう。
社会活動:高い環境・社会福祉への関心
地域社会における様々な活動は、地域の人々との交流を深め、いろいろな考え方に触れることができるだけでなく、活動を通して自分の住んでいる地域をより身近に感じることができるようになる絶好の機会である。最近では、若い世代におけるそうした地域活動離れが問題となっている一方で、テーマによっては関心の高い地域活動もある。
「現在参加している」の割合が高いのは、町内会・青年団・婦人会といった地区の活動や、趣味・スポーツ等のサークル活動、そしてPTA活動である。町内会、あるいはPTA活動というのは、町内や学級において当番制で回ってくるケースが多いと考えられる。「今後参加したい」ものについては、世論における関心の高まりを反映してか、環境問題や社会福祉分野の割合が高くなっている。一方、「今後も参加しない」については、消費者問題、女性問題の割合が高くなっている。男女共同参画社会を目指すにあたって、女性問題への関心が低ければ、男女共同参画社会実現への道のりは非常に険しいものとなる。関心のない人を振り向けることは非常に難しいが、例えば現在関心の高い環境や社会福祉をメインテーマに据え、それに女性問題や男女共生に関する事項をうまく取り入れた講座やイベントを開催するなど、「女性問題」を前面に押し出さずに女性問題について考えられる場を設けるといった工夫も必要ではないか。
社会活動に「今後も参加しない」と答えた人は、項目によっては5割近くにのぼっている。「今後も参加しない」理由として、職業、無関心、適当な講座がないといった意見があるが、女性で比較的多いのが家事・育児・介護で忙しいからという意見である。家庭生活において、家事・育児・介護等の負担が大きいため、社会活動に参加できないということは、地域活動に積極的に参加したいと考えている女性の意見が地域社会には実際には届いていないということを意味する。男女共同参画社会では、様々な場面において、より積極的な女性の参画が求められており、そうした状況を実現するためにも、家庭における家族の協力が不可欠であろう。もちろん、家族だけでなく、地域社会の人々がそうした意思を持つ女性たちをサポートすることも必要である。
女性の人権:暴力から社会的弱者を守る体制づくりが必要
女性の人権が尊重されていないと感じることについては、「女性にはできない」といった偏見、家庭内での夫から妻への暴力、職場におけるセクシュアル・ハラスメント、痴漢行為などが多くあげられている。また、メディアにおける性・暴力表現については、望まない人の目に触れないような配慮が足りない、あるいは道徳観・倫理観が損なわれているといった意見が多い。
ここ数年、家庭内での暴力(ドメスティック・バイオレンス)への関心が高まっているが、アンケートにおいては、大部分の項目が「どんな場合でも暴力だと思う」という認識となっている。夫婦間で実際に暴力があったかどうかについても、割合は小さいものの全項目において「あった」の答えがあった。しかし、程度のひどい暴行を受けたにも関わらず、4割以上がそのことをどこ(だれ)にも相談していない。自分にも悪いところがあった、自分さえ黙っていればこのままやっていける、恥ずかしくて相談できなかったなどが相談しなかった理由としてあがっており、暴行を受けた本人ががまんして1人で抱え込む傾向が強いことが明らかになった。
性的な行為を強要されたことが「ある」と答えた人は女性全体の6.1%となっているが、その半数以上がそのことを「どこ(だれ)にも相談しなかった」と答えている。性に関わる問題は、プライベートな部分を多く含んだ事項であるため、相談する範囲が家族や友人・知人と狭く、犯罪そのものが明るみに出ることも少なく、結局、被害者だけが苦しむ構造になっている。早急に求められることとしては、まず、被害者が安心して相談できる機関や、保護施設の整備など、被害者の女性を支援する体制を整えることがあげられる。
家庭内での暴力というのは、家庭内の不和、あるいは家庭におけるもめ事として受け止められ、警察が介入したり、あるいはマスメディアを通じて報道されることはそれほど多くなかった。また、セクシュアル・ハラスメントや痴漢行為についても、「被害者の人権やプライバシーに配慮する」といった理由により、大々的に報道されることはなかった。いずれのケースにおいても、被害者の女性は、だれにも相談できず黙っているケースがほとんどであったと思われる。しかし、近年、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンスといった概念がアメリカなどから入り、そうした行為が「犯罪」であると広く認識されるようになってきた。しかし、被害者の女性にとって、社会にはまだ駆け込める場所が少なく、暴力や性犯罪の被害をだれにも相談できずに苦しんでいる人は相当数にのぼるとみられる。
最近では、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンス、性犯罪、幼児虐待に関する報道をテレビや新聞で目にすることが増えたが、こうした犯罪の被害者は、女性や子ども、高齢者、身障者といった社会的弱者である。女性に限らず、社会的弱者を守るための体制づくりこそ、男女共同参画社会の構築にむけて必要なことと言えよう。
男女共同参画社会づくりのための施策:県施策の認知度を高める工夫が必要
2000年の男女共同参画社会基本法公布・施行以前から、男女共同参画社会にむけた法律や計画の制定、メディアを利用した広報活動などが実施されてきた。しかし、その認知度はそれほど高くないというのが現状である。「内容まで知っている」、「聞いたことはあるが内容は知らない」の割合を「認知度」とすると、認知度が高かったのが「ストーカー規制法」、「児童買春・児童ポルノ禁止法」で80%を越え、「男女共同参画社会基本法」、「男女共同参画基本計画」も50%と、国の施策はある程度の認知度を示している。しかし、県の「男女共同参画計画」が39.6%、「県男女共同参画啓発用ラジオ番組」が17.5%、「男女共同参画だより」が26.3%と県主体の施策は概して認知度が低い。
政治や行政において、施策の企画や方針決定の過程に女性の参画が少ないというのは、これまでも問題とされてきたが、その理由として男性優位の組織運営や、女性の参画に積極的な人が少ないことなどがあがっている。これは、政治や行政だけでなく、企業組織においても女性の幹部社員が少ないなどの指摘もあり、こうした組織における女性の積極的な登用は、公的機関、民間企業に関係なく進められるべきであろう。
男女共同参画社会を目指すにあたって、県民が長崎県に求める施策は、仕事と家庭の両立支援、男女共同参画にむけた講座の充実、学校教育における男女平等教育の充実といった項目の割合が高い。性別にみると、女性は子育て・介護支援といった仕事と家庭生活の両立の上で必要な環境整備を求める声が高く、男性は男女共同参画にむけた講座や、啓発活動の充実といった意識改革に積極的である。男女共同参画社会は、男女の区別なく、お互いが快適に暮らしていくことを意味しているが、その実現を目指してまず必要となるのは、男女共同参画についての理解を深めることであろう。現実には女性と男性では望む施策が若干異なるものの、個々人の意見に耳を傾け、同時に自らも男女共同参画について考えることができるようなイベントや講座は、女性にとっても男性にとっても有益と言えよう。
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