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「研究所情報」第27号 2003年10月31日

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セミナー<企業と人権>前期日程(9/4)・後期日程(10/16)が終了しました。
 長崎県・長崎市主催、研究所が企画・運営をしましたセミナー「企業と人権」の全日程が終了しました。長崎県では、このような企画は初めてのことでどのくらいの企業に参加していただけるか、不安を持ってのスタートでしたが、呼びかけに長崎市内から40数社のご参加をいただくことができました。大変ありがとうございました。
 このセミナー開催の経緯は、二年前長崎県が行った人権意識調査において、「企業に勤める人」が、他に比べて人権問題に、若干無関心であるという結果が出ました。また、数年前、県内に本社を置くある企業が、他県で部落差別に係わる事件を起こしました。部落所在調査を行ったのです。これらの事から、企業に対する人権啓発の必要性が叫ばれました。さらに、昨今人権の観点から企業経営を見直していこうとする機運が全国的に高まっており、企業の社会的貢献という言葉が使われるようになりました。
 セミナーでは、まず学び@として、大阪同和・人権問題企業連絡会の理事長をされている田中昭紘氏(カネボウ株式会社)に、「企業が何故人権問題に取り組むのか」という発題をして頂きました。カネボウでは88年、黒人差別につながる表現を用いたガムを販売し、抗議を受け回収したこと、その後大阪同和問題企業連絡会に加入し一貫した同和・人権問題への取り組みを、わかりやすく、力強くお話しされました。
 学びAでは、「『私』のない私」というビデオを使ったワークショップが行われ、日常の何気ない会話の中に潜む人権侵害の事例を考えることができました。
 学びBでは、中田慶子氏(DV防止ながさき)には、「女性の人権を考えるーセクハラやDVなどの視点から」というテーマで、なぜセクハラが起きるのか、人権概念の拡大の中でこれまで疑問に思わなかったものが人権侵害と認識されるようになった、女性の人権侵害の特徴として被害者が責められる事、DV(ドメスティックバイオレンス)を容認する社会的要因があることなど、お話ししていただきました。
 後期日程の学びCでは、弁護士の福ア博孝氏より、「企業の社会的責任と消費者の権利」のテーマでお話しいただきました。福ア氏は、コーポレイト・ガバナンス(会社は誰のものか)という考え方を、アメリカ型、ヨーロッパ型にわけ、前者は株主のもの、後者は「消費者や従業員、国家、地球環境などにバランスよく付加価値を配分する経営」とし、日本はヨーロッパ型に変化させる必要を訴えました。また、「消費者関連専門家会議2000年宣言」(コンプライアンス宣言)を紹介され、企業の憲法にと呼びかけました。宣言の前文には、「企業を取り巻く環境は、今、大きく変化しています。この激動の時代にあって、消費者の声に耳を傾けずして企業の生き残れる道はありません。」とあります(コンプライアンス:遵守)。
 学びDでは、NTTビジネスアソシエ大分から人権啓発担当の諸冨幹夫氏にお出でいただき、職場研修の事例報告を行っていただました。NTT大分、また大分県人権啓発商工連絡会(県)・大分市人権・同和教育推進連絡協議会(市)の人権・同和問題への取り組みの現状が報告され、取り組む意義として、@有能な人材の確保A職場の人間関係B顧客との人間関係C商品の開発やサービスの向上D企業の社会的責任E企業イメージの向上などをあげました。

 学びEでは、県人権教の石村榮一氏をコーディネーターに、グループ構成で前期日程・後期日程を通した感想をお互い述べ合い、終了しました。今後の取り組みに期待したいと思います。

<参加者の声>
*実際にあった事例を話されたのでわかりやすかった。企業は事業展開を行う時は、人権がいかに大事かということ、企業は色々な人権問題に対応していかなければならないと教えられた。企業はナンバーワンでなく、オンリーワンでよい。まさにその通りである。
*DV・セクハラについては、加害者にすべての責任があると思う。社内についても罰則を強化すること、全社員へのDV・セクハラについての学習が必要かと考えます。
*自分には人権侵害など無縁だと思っていたが、じょろの話等を聞くと、どきっとしました。相手の立場に立って考え行動することが、人間としての基本だと改めて感じました。

長崎県が人権啓発センター設置へ(9/20・長崎新聞)
 長崎県は、05年4月、人権啓発センターを出島港湾ビル内に設立することになりました。今年5月「人権啓発 センターの新設」を謳った、県人権教育推進懇話会の意見書を受けたもので、新聞紙上では、@県民に対する人権問題の啓発・広報活動、A相談や情報の提供・人権問題の調査研究活動、B企業団体職員や社会教育関係者・行政職員を対象にした教育研修を行うとあります。
 先の意見書では、「人権教育のための国連10年」長崎県行動計画の見直しが審議され、重要課題として、女性・子ども・高齢者・障害者・外国人・同和問題・HIV感染者・犯罪被害者等の人権課題の解決に向けてさまざまな提言が行われています。センター設立によってその役割が期待されます。

コラム
 「しない決意とさせない勇気 気持ちだけでは無くせぬ差別 気づいたその時実行へ」
 今日、一ヶ月ぶりにフィールドワークが行われた。大阪同和・人権企業連絡会第4グループの研修である。総勢11名。いただいた広報誌(ホットライン21)の裏面に書かれていた言葉である。同企連は、差別を「現地に学ぶ」ために例年各地を訪れ研修を行っている。11月にかけて、更に3グループが訪れることになっている。秋晴れの半日、崇福寺から、26聖人殉教地を経て、浦上へ、部落移転の跡をたどり、キリシタンや原爆の長崎史に思いをはせる。そこには、人権の確立・平和希求という長崎の願いがある。夜は、新地中華街、そこにも長崎の歴史と味があった。(あ)

もやい(ながさき部落解放研究)第46号を発刊 2003.10.31

特集<部落問題と人権を考える>講座・2003
● 金  泰泳    アイデンティティ・ポリティクスを超えて
               −在日韓国・朝鮮人の現状と今後
● 西尾 紀臣    人権啓発センターと私

● 池田 芳信    ホームページを活用するために
● 阿南 重幸    貿易都市長崎と「かわた」集団
● 中村 久子    史料紹介(その2)
               「皮類寄」(県立長崎図書館・永見文書) 

 頒価 700円




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