■ 人権研究所(仮称)への移行を検討! 藤澤 秀雄
昨年から研究所情報を発行し始めてから早一年、幸いにして好評を博し、更にまた5月に開設したホームページも多くの方々が関心を寄せられ、これまでに五千六百件の閲覧を頂いて居ります。これからも引き続き研究所情報の発行と、ホームページの充実を重ねて行きたい所存です。
さて、全国的には、「地対財特法」の失効及び「人権教育・啓発推進法」の制定を受けて、既に多くの教育・研究機関が‘人権’をキーワードとした“研究・教育・啓発機関”へと移行しており、当研究所においても、これまでの部落史研究を中心とした活動から、部落問題に限らない、様々な人権問題についての研究・啓発活動が実行できる機関への転換を模索しています。幸い長崎県においては、「人権教育のための国連10年」に基づく‘長崎県行動計画’に沿って「人権・同和行政」が新しく展開されており、これに貢献できるものをと論議を重ねています。
ここ数年、私どもは「部落問題と人権を考える」講座の開催、「企業と人権」講座の受託、行政・教育・宗教その他様々な研修会への講師の派遣、県内外から依頼されるフィールドワーク研修の受け入れ、更にまた人権意識の調査や部落の実態調査に関する調査資料の解析など、従来の事業と併せて幅広い活動を展開して来ました。ちなみに本年度の12月までの研修受け入れは、講演形式が17件でフィールドワークーが19件、そして合わせて36件のうち23件は県外でした。
こうした状況を踏まえて、これまで以上に大学及び他の研究機関との連携を深め、部落史のみならず、より広く様々な人権問題に関して、@図書の収集を始めとする諸々の情報収集、並びに情報の発信、A出版物の刊行、B人権啓発に関する意識調査や講座開設など、県や市町村が計画する人権啓発にかかわる事業への協力などをも視野に入れて、「部落問題を始め様々な人権問題の研究並びに啓発を推進する」ことを目的とする事業体造りが、目下のところ最も堅実に移行できる組織替えではないかと考えています。
次年度を新組織への移行期間と位置づけ、更なる飛躍を目指して新しい展開が行われますよう、皆様方の協力がいただけることを強く念願致します。
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■ コラム
昨年末大晦日、大分に行ってきた。沖浦和光氏が宮田登と対談した著書『ケガレ』に掲載されている、とある被差別部落の墓石をこの目で確かめたかったからだ。隠れキリシタン墓だと紹介された墓石が、二三基あるのだという。筆者は最近、江戸時代の部落とキリシタンとの繋がりを確認する作業を続けている。長崎の部落で、キリシタン迫害に抵抗し、迫害を受けたとする宣教師の書簡が発見されているからである。キリシタン研究で著名な姉崎正治が『切支丹宗門の迫害と潜伏』で述べられている、部落への組織的布教はなかった、との見解に疑問も感じ始めた。果たして、大野には、安永年間の過去帳に「類族」の記載があった。近々再訪しようと考えている。(あ)
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■ ホームページがますます充実(蔵書目録を作成中)
当研究所は、長崎を舞台とする貿易史やキリシタン関係史、県内各地の郷土史、さらに部落(史)問題や同和教育、人権問題に関する多くの図書・資料を収集しています。また、運動団体、教育機関、行政関係機関などが発行する資料や調査報告書、大学や関係する研究機関などの月刊誌・季刊誌等の逐次刊行物なども数多く所蔵しています。
しかしながら、これまで、これらの蔵書が公開されることなく、余り生かされてきませんでした。しかしながら、最近少数ですが、大学生や、研究者が研究所を訪れ蔵書の利用が行われるようになりました。
そこで、今回、この数千冊に及ぶ部落問題・人権に関する図書・資料の目録カードを作成し、多くの方のご利用いただけるよう作業を進めています。また、研究所のホームページにも掲載することにしました。
現在、「長崎県関係」の図書目録を作成、H・Pに掲載していますが、今後、他の図書・資料も掲載する予定です。
なお、書名・著者名など、トップページの「サイト内検索」で検索することができます。どうぞご覧下さい。
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■ 史料解読会からのお知らせ
研究所では月一回、第四土曜日に史料解読会を行っています。今年度は、ほぼ毎月開催することができました。史料は、その時々収集されたもので、今年は対馬藩の朝鮮貿易に関する史料を読んでいます。専門家がいませんので、完全には読めていませんが、一年も続けると結構字枠が埋まっていきます。時には、研究報告も行われます。昨年は、江戸時代、大村藩における「キリスト教と被差別民」というテーマで橋口和孝氏よりお話をいただきました。「もやい」47号に掲載予定です。少人数ですので、時には話題が飛んだりすることもあります。皆さんも、お出でになりませんか。
期 日:毎月第4土曜日PM1:30〜4:30
場 所:銭座集会所 (ホームページで、日程を紹介しています。)
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■ 最近の受入図書(●は寄贈)
●『松本治一郎』(福岡人権研究所,西日本新聞社,03.11)
○『「同和利権の真相」の深層』(宮崎学ほか,解放出版社,04.1)
●『史料センター十年の歩み展』(奈良県立同和問題関係史料センター,03.12)
●『浅科村の歴史』F(浅科村教育委員会,03.12)
●『帰ってきた旅の群像』(山田光雄)
(定期刊行物)
○『解放教育』第432号〜433号((財)解放教育研究所,明治図書)
●『明日を拓く』第51号〜53号(東日本部落解放研究所)
●『部落解放』525号〜529号(解放出版社)
○『ヒューマンライツ』No.188〜190号(部落解放・人権研究所)
●『部落解放研究』第155号(部落解放・人権研究所)
○『こぺる』No.128〜130(こぺる刊行会,阿吽社)
●『ひょうご部落解放』第111号(ひょうご部落解放・人権研究所,03.12)
●『部落解放史ふくおか』第111号・112号(福岡県人権研究所)
○『人権と部落問題』No709〜712(部落問題研究所)
●『水と村の歴史』第18号(信州農村開発史研究所,03.3)
●『部落解放研究くまもと』第46号(熊本県部落解放研究会,03.10)
●『ウインズ・風』第36号(福岡県人権・同和研究協議会)
●『グローブ』第35号・36号((財)世界人権問題研究センター)
●『人権問題研究室紀要』第47号(関西大学人権問題研究室,03.9)
●『KG人権ブックレット』第7号(関西学院大学人権教育研究室)
(このコーナーは受入図書の一部です。)
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