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「研究所情報」第30号 2004年07月31日

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 部落問題と人権を考える講座・2004
「努力したってムナシイー」(鍋島祥郎・大阪市立大学)
 <講座・2004>が7月7日、諫早・長崎両会場で行われた。講師の鍋島氏は、「三重県高校生学力生活実態調査」の分析を基に、現在の「学力」問題の一つに教育の階層的不平等があることを指摘、「とりわけ生活に困難を抱える家庭や、被差別の立場にある子どもの学力不振は、貧乏や差別を繰り返し子どもに受け継がせてしまう」循環にあることを述べた。
 平等であると信じて疑わない学校が、実は「不平等の根源」であるとは思いたくはないが、先の調査によれば、父が大卒の場合子どもは50%が大学に進学し、中卒の場合は17%である(高卒34%)。つまり学歴世襲のメカニズムが働いているのである。お金がないと進学できない、いわれてみれば当たり前のことであるが、それでは「蓄え」たのかというと、前者の半数以上が蓄え、後者では30%である。しかも、「蓄えない」にしても、前者が34%の進学であるのに対し、後者はわずか3%という結果が出ている。子ども部屋にテレビがあると、進学率が下がる、こんなデータには驚かされた。こういう学力不平等の実態をいかに克服していくのか。これがメインテーマである。
 家庭の課題として、進学資金の準備、よけいなモノやカネを与えない、未来を語る子育て等。地域・学校の課題では、市民社会と学校が分離している状態から学社融合へと、また「効果のある学校」では「学校のちから」が加わるとの印象的な提起があった。ディズニー7つの法則とは?(詳しくは、『もやい48号』10月発行)
参考文献:『効果のある学校 学力不平等を乗り越える教育』、『見えざる階層的不平等』(解放出版社)

 コラム

 先日、サント・ドミンゴ教会跡資料館(長崎市勝山町)で 「浦上四番崩れと被差別部落」と称する座談会が行われた。出席者は、前長崎市長の本島等氏、部落史の研究や日本の戦争責任問題で多くの著作を持つ上杉聡氏、カトリック部落問題委員会の谷大二氏、そして当研究所の阿南重幸。この教会は、一六〇九年設立された教会で一四年に破壊されるまでわずか五年の命であったが、皮屋町(江戸時代長崎の部落)に礼拝所を建てたとされるドミニコ会宣教師ナバレテはこの教会を活動の拠点にしたに違いない。「四番崩れ事件」ではキリシタンと部落の深刻な対立を生み出したが、迫害時代は同じくキリシタンであった。この地で、座談会が行われた意味はことのほか大きい。(ァ)

□ 人権にかかわる歴史遺産探訪

 京都には、『京都人権歴史紀行』なる本がある。編者は世界人権問題研究センターで、人文書院から1998年に出版された。グラビアの扉を四条大橋の畔に建つ「阿国」が飾り、京都府全域に遺される「人権文化」の足跡を56ヶ所いずれも写真入りで紹介している。
 筆者は昨年、そのうちの一部鴨川流域を歩いた。明治のはじめ、被差別部落の人々によって造られた柳原銀行、現在は記念資料館として「崇仁教育」で有名な伊藤茂光の実践に関するものなど多くの資料が展示されている。鴨川を渡る四条通りには先の阿国像、川辺には画板を手にする人、ジョギング、投げ網や釣をする人たちが見えた。バスで銀閣寺にもよった。ともかく、この一冊の本があったことで筆者の鴨川散歩は抜群の効果を持った。
 ここでは、『京都人権歴史紀行』なる本の宣伝をすることを目的にしているのではない。長崎県でもこの様な、人権にかかわる歴史散歩ができないだろうかと思うからである。歴史的遺産を顧みれば、長崎市はもとより県内全域にそれこそ無数の遺跡が残っている。江戸時代のキリシタン迫害に関わるもの、戦争期の中国人や朝鮮人強制連行のそれ、からゆきさん、被差別部落、そしてもっともっと、原爆、ざっと思いつくだけでも、いずれも日本の歴史に深く関わるものが多くある。この際、「人権」というフィルターを通して、この様な歴史的遺産を一冊の本に収められないものだろうか。
 現場に接する事が大切にされようとしている。長崎市内のフィールドワークが今年も盛んである。この8月だけでも、3件約150人の人たちが県内外から申し込んでいる。これにテキストが加われば、長崎の歴史を踏みしめようとする人たちが、もっと増えてくるだろうと思うのである。(−あ)

殉教者顕彰碑(大村)
口之津歴史民俗資料館
(「からゆきさん」や与論島の資料もある)
 「長崎県部落史研究所」から「長崎人権研究所」へ

 去る6月6日、「長崎県部落史研究所」の総会を開催し、同研究所を発展的に解消し、「長崎人権研究所」と名称を変更すること、長崎県部落史研究所の全ての財産を長崎人権研究所へ譲渡することの承認を得ました。引き続いて、「特定非営利活動法人長崎人権研究所」の設立総会を開催し、定款、事業計画・収支予算、役員選任等について審議を行いました。理事長に藤澤秀雄氏(長崎県部落史研究所所長)、副理事長に石村榮一氏(長崎県人権教育研究協議会会長)外6名の理事及び2名の監事が選出されました。現在、長崎県に対して特定非営利活動法人の認証申請中です。
長崎人権研究所は、新研究所への移行に伴い、改めて会員及び賛助会員の募集をしています。新研究所の運営に関わって財政・人員・場所等克服しなければならない課題も多く残されていますが、今後とも皆様のこれまで以上のご支援、ご協力をお願いいたします。

お知らせ

 第23回九州地区部落解放史研究集会
と き:2004年8月23日(月)13:00〜 24日(火)12:00
ところ:熊本県総合福祉センター5階研修ホール(熊本市南千反畑町3−7)
■目的
(1)部落解放史研究と同和教育の結合を目指し、部落史・部落問題学習の確かで豊かな内容を創造する。
(2)九州各県の研究活動の交流と連帯に学び、今後のよりよき展望をさぐる。
@各県の部落解放史研究の成果に学び、今後のよりよき展望をさぐる。
A史・資料および情報の交換体制を図る。
B共同研究の開催および共同研究の方向性を追求する。
C交流・親睦を図る。
■日程
8月23日(月)
12:30〜受付
13:00〜開会行事
13:20〜17:00 報告@A、討議
18:00〜各県交流
8月24日(火)
9:00〜報告B
10:30〜12:00 全体討論、まとめ
■報告内容
@「農民運動と水平社」〜熊本における検 証〜内田敬介(熊本)
A「高松結婚差別裁判糾弾闘争」〜松本 治一郎史料を通して〜安蘇龍生(福岡)
B「宗家史料にみる対馬の被差別部落」 山下信哉(長崎)
■会費
参加費(含 資料代)1,000円
宿泊費12,000円
(宿泊7,000円、懇親会5,000円)
 丸小ホテル(熊本市上通り11−10  Tel096−353−1241)
 (参加ご希望の方は、当研究所まで)

 セミナー【企業と人権】
平成16年度企業内人権啓発推進指導者養成講座
 昨年度長崎市において、開催されましたセミナー「企業と人権」が、今年度は佐世保市でも行われます。

(佐世保会場)「スピカ」(佐世保市)
 前期日程 
○ 期日:9月7日(火)午後1時30分〜
 @田中昭紘(大阪同和・人権問題企業連絡会)
 A中田慶子(NPO法人「DV防止ながさき」)
 後期日程
○ 期日:10月14日(木)午後1時30分〜
 B福崎博孝(福崎博孝法律事務所)
 Cワークショップ「『私』のない私」     

(長崎会場)長崎東映ホテル
 前期日程
○ 期日:9月8日(水)午後1時30分〜
 @竹内 良(東京人権啓発企業連絡会・JFEスチール<株>人権啓発室)
 A中島秀司(地域生活支援グループ「みんなのちから」代表
 後期日程
○ 期日:10月13日(水)午後1時30分〜
 B田代哲也(福岡銀行前人権啓発室長)
 Cディスカッション コーディネーター(石村榮一・長崎県人権教育研究協議会) 
   テーマ:「企業内研修をどう進めているか」

主催:長崎県・佐世保市・長崎市
後援:長崎労働局・長崎県商工会議所連合会

 8月から10月にかけて(日程)

8月1日 全国部落史研究集会(和歌山)
  4日 全同教 F・W(長崎市)
     人権教育啓発指導者専門講座(大村)
  18日 人権・同和教育研修会(大村市)
  19日 長崎市小・中学校初任者研修会(長崎市)
  23日 九州地区部落解放史研究集会(熊本)
  27日 長崎県人権教育研究大会F・W
9月7日 企業と人権(佐世保)
  8日 企業と人権(長崎)
10月13日 企業と人権(長崎)
  14日 企業と人権(佐世保)
  22日 啓発指導者養成セミナー(アルカディア) F・W(長崎市)
  25日 糸島地区社会同和教育担当者会F・W(長崎市)
(外)調整中

 最近の受入図書(●は寄贈)
●『人権のまちづくりをめざして』(尾島町教育委員会、04.4)
●『ドキュメント対話型啓発』(反差別国際連帯解放研究所しが、04.3)
●『水俣学研究序説』(原田正純・花田昌宣、藤原書店、04.3)
●『長崎居留地外国人名簿V』(長崎県立長崎図書館、04.3)
●『つくる』(長崎市教育委員会・長崎市人権教育研究会、04.3)
○『にんげん ひと きぼう(中学生)』(にんげん編集委員会、明治図書、04.1)
○『にんげん ひと つながり(小)5・6)』(にんげん編集委員会、明治図書、04.1)
○『浦上天主堂 写真集』(カトリック浦上教会、聖母の騎士社、01.6)
○『野中広務 差別と権力』(魚住昭、講談社、04.6)
○『日本キリシタン教会史』(J・D・ガルシア、井手勝美訳、雄松堂書店、77.3)
○『日本キリシタン教会史補遺』(J・D・ガルシア、井手勝美訳、雄松堂書店、80.2)
○『キリシタン遺物の研究』(竹村覚、開文社、81.5)
○『ぼくたちのしごと』(たなかよしひこ・文、長谷川儀史、解放出版社、04.3)
○『シーボルトと町絵師慶賀』(兼重護、長崎新聞新書、03.3)
○『部落の歴史 前近代』(寺木伸明、解放出版社、02.9)
○『部落の歴史 近代』(秋定嘉和、解放出版社、04.4)
○『要法記・諸事心得』(東彼杵町歴史民俗資料館、97.3)
○『郷村記(千綿村)』(東彼杵町教育委員会、79.10)
○『郷村記(江串村)』(東彼杵町教育委員会、78.12)
○『郷村記(彼杵村)』(東彼杵町教育委員会、81.1)
●『大和国高市郡洞村関係史料』(奈良県立同和問題関係史料センター、04.3)

(定期刊行物)−(一部)

●『キリシタン文化』(キリシタン文化研究会、04.5)
●『解放研究しが』第14号(反差別国際連帯解放研究所しが、04.5)
●『部落解放史ふくおか』第114号(福岡県人権研究所)
●『佐賀部落解放研究所紀要』No21(佐賀部落解放研究所、04.3)
●『研究紀要』第9号(世界人権問題研究センター、04.3)



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