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「研究所情報」第33号 2005年04月30日

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人権教育啓発センターが開所

 4月14日、JR長崎駅前の交通産業ビル4階で、「長崎県人権教育啓発センター」の開所式が行われた。式には、金子原二郎長崎県知事を始め、センター整備検討懇話会の座長を務めた中島一成長崎純心大学教授など約70名が出席、当研究所の藤澤秀雄理事長もテープカットを行った。
 センターは、人権教育・啓発活動の長崎県における拠点施設として機能するよう、相談室、交流・展示フロアー、ライブラリー、パソコン等が設置され、当研究所からも、約700冊の蔵書を寄託した。
 また、県民を対象にした人権問題の広報・啓発活動、行政職員・社会教育関係者・企業・団体への教育研修活動、相談窓口、人権情報の提供・発信の推進、人権団体・NPO等の交流連携活動の推進がその役割として期待されている。
 また、祝日以外は、土・日も開館されるなど、利用者への便宜も図られている。 フロアーには椅子・テーブルも置かれ、少人数であれば会議にも使用できる。センターでは、学びの場として、広く活用を呼びかけている。駅前という絶好の立地条件の中、県民が広く活用するためには、県内の人権団体等へ呼びかけ、センターの運営に参加してもらうことが望まれる。また、会議等にも積極的に活用してもらうことによって、交流・連携活動の幅が広がるのではないか。
 土・日にも、相談や見学する人が訪れているようだ。

 コラム
 研究所で発行する機関誌「もやい」が一新された。A4版で写真をふんだんに散りばめた読みやすい体裁に仕上がった。誌面の割付は、プロと言っていいY氏、一つ一つの原稿がより活きる形にして頂いた。問題は、表紙にあった。B氏にお願い、いくつかの図案を戴いたが、裏表紙がすでに固まっており、一度は採用に傾いたものの、今ひとつ躊躇された。結局落ち着くところに落ち着いたというべきか。〆切間際の一時間ほどで作った図案になった。B氏の努力を結局ふいにしてしまった。やっぱり雑誌作りは難しい。編集するものは、これまでのスタンスをどこかで守ろうとする意志が働いてしまう。外部の感覚を取り入れようとする思いと、これがせめぎ合うのである。
 ともかく、編集委員諸氏、そして原稿をお寄せ頂いた皆様に感謝申し上げます。今後も、このスタンスでますます良い雑誌作りに励んでいきます。(あ)
□歩学(人権に係わる歴史遺跡探訪)ー(西彼半島編)

西彼杵半島一円は、遠藤周作が小説『沈黙』で舞台とした外海を始め、数多くの史跡が知られている。昨年10月開室した@「井上光晴文学室」は、崎戸町歴史民俗資料館の一階にある。公園の頂には、A文学碑が建立されており、「のろしはあがらず のろしはいまだあがらず」という光晴の詩が刻まれている。
 本年1月6日この文学室を訪れた際、小説『地の群れ』を紹介したコーナーに被爆者に対する当時の差別意識を象徴させるものとして、江戸時代の部落に対する蔑称を使った表現がそのまま掲示されていた。現在は、解説のキャプションをつけ、その言葉の意味が説明されている(詳しくは『もやい』49号を参照)。部落差別や被爆者に対する差別、小説の世界に入るならば、朝鮮人差別、炭鉱労働等々、さまざまな観点からこの文学室は学ぶもの多しと言えよう。さらに、この島は1967年閉山されるまで炭鉱の島として、戦前は中国人・朝鮮人が抗夫として強制連行された地でもある。
 西海町には、天正遣欧少年使節の一員である中浦ジュリアンのB記念碑がある。ジュリアンは、1582年、領主大村氏の使節として2年の歳月をかけローマに派遣され法王と謁見、90年帰国後イエズス会に入会、キリスト教禁制下で1633年長崎の西坂で殉教している。館内には、ジュリアンの手紙も展示されている。
 C大瀬戸町歴史民俗資料館には、「家船」が展示される。大正時代初めまで、舟を住家とした人々がいた。彼らは、「えんぶ」といわれ生活習慣の違いから差別の対象であった。「由緒書き」も残されている。近代社会の始め頃までは、山の民(サンカ)海の民など、さまざまな集団がいたことを思い偲べる。
外海地方は、江戸時代「隠れキリシタン」としてキリスト教の信仰が受け継がれた舞台の一つである。1879年から30年余り、教育・福祉・医療に尽くしたフランス人司祭のD「ド・ロ神父記念館」、また「出津教会」、「黒崎教会」等がある。国道沿いには、レストランで「ドロ様素麺」を食べることができる。
 少し長崎よりに、E「枯松神社」というキリシタンを祀る神社がある。日本に三つあると云われ、そのうちの一つである。
 F「遠藤周作文学館」は、風光明媚な地に恵まれている。館内には、周作の生涯と足跡が常設展示され、『沈黙』の生原稿も展示されている。小説とこの地を重ねて見ることができる。
最後に紹介したいのは、三重の樫山である。G曹洞宗天福寺は、隠れキリシタンの寺として有名。「三度樫山に参れば、一度ローマの聖堂に参ったことになる」と信じられたそうである。(次回は、「島原半島編」を紹介します。)

【information −インフォメーション】

(九州)
● 第25回部落解放全九州研究集会 (於)別府市ビーコンプラザ
主催:部落解放同盟九州地方協議会
  5月29日(日)
     30日(月)
     31日(火)
“よき日の為に”を陶冶し、人権の高揚をはかりましょう!!
記念講演:「今こそ、人権と平和を!」組坂繁之(部落解放同盟中央本部)
分科会
1 部落解放・人権政策確立の現状と課題
2 狭山再審闘争の現状と課題
3 反差別市民運動と共同闘争
4 部落史研究の現状と課題
5 宗教界の現状と課題
6 企業啓発の現状と課題
7 市民啓発と隣保館活動
8 基礎講座

(長崎県)
● 第31回長崎県人権教育研究大会 (於)諫早文化会館 諫早市社会福祉会館
8月3日(水)
1 全体会
8月4日(木)
2 記念講演
3 分科会第1〜5 特別部会(ワークショップ・フィールドワーク)
4 展示と交流 じんけんの集い他
共催:地元実行委員会・長崎県人権教育研究協議会・長崎県教育委員会

 (全国)
● 第11回全国部落史研究交流会 (於)徳島市・阿波観光ホテル
8月6日(土)
分科会 1前近代 2近現代
アトラクション 阿波木偶「箱廻し」
8月7日(日)
全体講演 「喜田貞吉と部落問題」吉田栄治郎
(奈良県立同和問題関係史料センター長)
フィールドワーク
共催:全国部落史研究交流会・四国部落史研究協議会
第24回九州地区部落解放史研究集会
長崎・島原で開催

− テーマ「身分と身形−衣服統制を中心にして」 −

 毎年,九州各県で行われています九州地区部落解放史研究集会が,今夏島原市で開催されます。テーマは「身分と身形」で,江戸時代被差別身分の人々には衣服統制を始めさまざまな「身形」が定められました。しかし,「差別と貧困」史観での理解では,これを差別との一言で説明されることが多いようです。
 今回は,九州各藩でどのような「身形」に関わる政策が行われたのか検証する試みです。長崎でも,島原・対馬で身形に関わる典型的な衣服統制が行われています。その意味は一体どのようなことなのでしょうか。こうした研究は他にあまり例がなく,期待される集会です。
 なお,県人権教育研究協議会並びに島南人教との共催を検討中です。夏の研修計画の一つに加えて頂ければ幸いです。

期日:8月22(月)〜23日(火)
場所:島原市内
資料代:1,000円

主催:九州地区部落解放史研究協議会
   NPO法人長崎人権研究所.他
   連絡先:095-847-8690

 最近の受入図書(●は寄贈)
○『対馬新考』(嶋村初吉晴,梓書院,04.12)
○『足で見た筑豊 朝鮮人炭鉱労働の記録』(金光烈,明石書店,04.2)
○『ロレンソ了斎』(結城了悟,長崎文献社,05.4)
●『あなたもできる 企業の人権研修ハンドブック』(解放出版社,05.3)
○『人権・同和教育基本資料』(東京書籍,04.10)
●『人権学習プログラムと博物館』(小島伸豊,解放出版社,05.4)
○『これでわかった!部落の歴史』(上杉 聰,解放出版社,04.12)
○『2004年度版 全国のあいつぐ差別事件』(部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会,04. 11)
●『講座・人権ゆかりの地をたずねて』(財 世界人権問題研究センター,04.3)

(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放史ふくおか』第117号(福岡県人権研究所,05.3)
○『部落解放研究』第162号.163号(部落解放・人権研究所)
●『明日を拓く』第59.60号(東日本部落解放研究所)
●『ひょうご部落解放』第116号(ひょうご部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第546号〜548号(解放出版社)
○『人権と部落問題』第727号(部落問題研究所)
○『解放教育』第447.448号(解放教育研究会)
○『ヒューマンライツ』第203〜205号(部落解放人権研究所)
○『こぺる』第144.145(こぺる刊行会)
○『ウィンズ』第42号(福岡県人権・同和教育研究協議会)
○『部落問題研究』第171号(社 部落問題研究所)
●『部落解放研究くまもと』第49号(熊本県部落解放研究会)
●『紀要』創刊号(社 和歌山人権研究所,05.32)
●『研究紀要』第11号(社 ひょうご部落解放・人権研究所, 04.12)
●『関西大学 人権問題研究室紀要』第50号(関西大学人権問題研究室,05.3)
●『関西学院大学人権研究』第9号(関西学院大学人権教育研究室)
●『人権問題研究資料』第19号(近畿大学人権問題研究所,05.3)



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