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「研究所情報」第37号 2006年4月30日

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第12回全国部落史研究交流会の長崎市開催が決まる!
期日:8月4日(金)5日(土) 場所:長崎大学環境科学部

 4月15日、大阪人権センターで全国部落史研究交流会事務局会議が行われ、表記集会の長崎開催が決まりました。昨年は四国徳島で行われ、九州では福岡、佐賀に続いて3度目の開催となります。交流会は、4日に分科会T(前近代)と分科会U(近現代)が、5日には全体会で鈴木則子氏(奈良女子大学)の「近世の癩者」をテーマに講演が行われます。
 分科会Tでは「近世被差別民と宗教」をテーマに、「真宗と被差別民」(山本尚友)・「近世初期皮屋集団のキリスト教受容について」(阿南重幸)の報告、分科会Uでは「1920年代融和運動の諸相」がテーマで「初期水平社が見た改善・融和運動」(守安敏司)・「全国融和連盟と中央融和事業協会の成立」(本郷浩二)の報告がそれぞれ予定されています。(いずれも報告テーマは仮題)
 また、二日目の午後には、フィールドワーク(Bコース)「原爆と部落とキリシタン」も行われます。
 今日、全国各地でどのようなる部落史の研究が行われているのか、また研究の中身に触れることが出来る絶好のチャンスです。ぜひ、ご参加頂きますようお願い申し上げます。
 詳細は、開催要項ができ次第みなさんのお手元にお届け致します。

 コラム
 4月17日から18日にかけて、鹿児島県鹿野市にある国立療養所星塚敬愛園を訪問することができました。真宗大谷派長崎教区の取材旅行に同行させて頂いたのです。4月6日に、同派主催で、長崎ご出身の風見治さんをお招きした学習会に参加させて頂いたのですが、6月には、長崎県の主催で、風見さんの「絵画展」が県立美術館で開催されることをお聞きし、その期間に何らかの企画ができないかと、今回の同行を許して頂きました。風見さんには快くお引き受け頂きました。さらに、私どもは沖縄ご出身のTさんにお話を伺うことができました。障害は、施設での重労働が原因であること、入所者の大半が施設設立の昭和10年から昭和30年くらい迄に入所したこと、従って現在高齢化が進行していること等、これまで抱いていた多くの疑問に答を得ることができました。大谷派鹿児島・長崎教区のみなさんにたいへんお世話になりました。 (あ)

●06年度総会報告
 4月22日(土)13時30分から長崎県人権教育啓発センター(交通産業ビル、大黒町)において、長崎人権研究所第3回総会が開催された。理事長挨拶の後、長崎県人権同和対策課の浜田雅昭課長からご挨拶をいただき、早速議事に入った。事業報告では、「もやい」50号・51号の刊行、セミナー「企業と人権」の長崎・諫早両会場での開催、「人権に関する県民意識調査」の受託・報告書の作成、さらには、フィールドワーク事業で昨年度は31件の依頼があったこと、研修会講師派遣も21件に登ったこと等が報告された。事業報告、収支決算が承認可決の後、理事全員の再任が理事長より報告され、向こう2ヶ年にわたって、現役員体制で事業を行うことが確認された。
 06年度事業計画では、例年通り機関誌の刊行、その他各種事業計画が提案され、特に本年は、8月4〜5日にかけて全国部落史研究交流会が長崎市で開催されることを請け、交流会の成功に向け、準備が進められていることが報告された。ただし、予算が前年の80%しか見込めないことから、賛助会費の増額(2000円→3000円)をお願いすること、さらには人件費の削減を含む大幅な緊縮予算にならざるを得ない状況が提案された。事業計画、収支予算案の承認の後、5月に行われる「西海路と井上光晴企画展を尋ねる旅」、6月に県立美術館で予定される「風見治絵画展」への取り組み等が報告された。

05年度「人権に関する県民意識調査」を読む
 総会終了後、15時からは意識調査に関する学習会が行われた。藤澤氏は、統計学の歴史にも触れ、今回の調査の特徴として、回収率の高さを「意識の高い人たち」だとし、しかも、高年齢層が多かったことをまず指摘され、人権問題全般について、部落問題に関する調査結果の概要を話された。特に「同和問題」では、前回・前前回調査に比べて、結婚や付き合いにおいて、否定的な反応が増えていること、また、半数近い人が部落差別の存在を認め、なお「部落差別をなくすことができる」と答えた人は、30数%しかなかった事を如何に捉えるのか、今後の課題とされた。

NAGASAKI じんけん 歴史散歩

 研究所では、今年度からフィールドワークの「長崎の部落史を歩く(Aコース)」・「原爆と部落とキリシタン(Bコース)」について、参加規定を設けました。

参加費用:10名まで10,000円 それ以上は1人1,000円
(但し、ご相談に応じます。)
配付資料:・リーフレット「NAGASAKIじんけん歴史散歩」 ・ワークシート
(詳しくは、研究所ホームページをご覧下さい。)

◆ カネミライスオイル事件について一言
NPO法人長崎人権研究所理事長 藤澤 秀雄

 37年以上も昔の話になるが、近所のバス停で「勤め帰りの方がバスから降りようとして死亡する」という奇妙な出来事があった。それから間もなく、残された家族は勤め先の配慮で職員寮に住み込んで生計を立てるために引っ越し、私も転居したので、詳しいことは分からないままであったが、カネミライスオイル被害者を守る会の一員として、私がカネミ油症の認定問題に係わるようになって、その一家がカネミ倉庫から米糠油を購入していた事を知り、福岡市に住んでいた家族を訪ね、事の真相(突然死の原因)を初めて聞かされた。
 その方は近所でも評判の酒好きで、勤めからの帰りには必ず酒を飲んで帰って居た。その日も一杯飲んで帰宅の途についたのであるが、実は酒を断つための薬を飲んでいたそうで、しかも頭痛薬も服用していたという事であった。
 油症患者の症状は様々で、中には毎日鉢巻きをして頭痛と闘いながら暮らしている人も居るが、その方は頭痛の原因が何か分からないまま頭痛を和らげるための薬を飲んだり、酒の所為(せい)かも知れないと断酒の薬を服用していたけれども、頭痛は止まず、酒に救いを求めていたのかも知れない。油症患者の中には交通事故で亡くなった方が何人も居て、私が訪問した中にも交通事故に遭われて「頭が痛いのは、交通事故の所為なのか油症が原因なのか、よく分からない」と笑って話をされる方も居た。
 油症患者に接した事のある方には常識であるが、患者の中には鉢巻きを手放さない人も居れば、通勤途上でトイレに何度も駆け込まなければならない人も居る。顔の症状も、黒ずんだ人も居れば、赤ら顔の人も居る。中には顔は白くて患者と名乗らない限りは「油症」とは気付き難い人も居る。
 私が訪ねた中には、応対した親子が二人揃って顔が赤く、ニキビ面をしていながらも、「私共は油症でありません」と、油症である事を強く否定する家庭も存在したけれども、私が訪問した未認定の被害者すべてに共通していた事は、一つは、全ての家庭が米穀販売店から「カネミライスオイル」を購入していた事と、もう一つは、全ての人々が何等かの症状を抱え、その症状について、初対面の私に向かって長々と何時間も語りかけることであった。
 食用油が原因で発生した事故であるから、家族全員が油症である事に何の不思議も無いけれども、中には「テンプラを作ったけれども、夫が全く食べなかったので、自分が責任をとって全部食べました」と、自分一人が被害者であるがために我慢している事情を赤く腫れ上がった顔をして話す主婦も居た。
 また「売ってない」と、販売の事実を否定する米穀店が居て、油を売った事を隠し通そうとする店に対する怒りを私にぶっつける主婦も居た。カネミ倉庫は長崎県内にも販売の拠点を持ち、米穀販売店を通じて「米ぬか油は健康によい」と宣伝して売っていたそうで、我が家が取引していた店から購入していた家庭も2軒あった。個々の米穀販売店から購入していた数は多くなくても、県下全体では可成りの数に上るであろう。また、下宿や食堂などで購入して料理している場合を考えれば、知らずに毒物を口にして被害者となった数は届け出た数を遙かに上回るものと考えて然るべきである。
 最近、カネミ油症の事が新聞でも頻繁に取り上げられ、国会でも対策が審議されるようであるが、その対策を審議するに当たっては、もう一度原点に立ち戻り、より多くの被害者が救済されるよう調査や審議をお願いしたい。

西海路と井上光晴企画展を尋ねる旅
−遠藤周作と井上光晴の文学−

【コース】
 浦上駅(9:10)→枯松神社(9:45)→遠藤周作文学館(10:30〜11:10)→崎戸町(12:00)昼食→井上光晴文学室(13:00)→学習会(13:30)→崎戸炭坑跡ミニF・W(15:00)→終了(16:00)→浦上駅到着(18:30)
(時間に余裕があれば、出津文化村にも立ち寄ります。)

【日 時】 5月13日(土)
JR浦上駅集合

【主 催】 同実行委員会
      長崎市人教・西海西彼人教・解放同盟長崎支部・人長崎人権研究所

 【参加費】 2,000円
   (バス代・食事代等)

【定 員】 30名

学習会/崎戸ミニフィールドワークも行われます。

 故 遠藤周作の小説『沈黙』の舞台となった西海路。崎戸町で少年期を過ごし、差別を告発する作品を数多く残した故 井上光晴。“ながさきさるく博”のコースにはない、キリシタン迫害や、朝鮮人・中国人の強制労働、原爆や部落問題を考える旅を企画しました。
 下記のような計画で実施しますので、みなさんふるってご参加ください

連絡先:095−847−8690〔人権研究所〕

 最近の受入図書(●は寄贈)
○『ながさき 原爆の記録』(長崎市,ピース・ウイング長崎,04.7)
○『地図中心 被爆60年増刊号』(日本地図センター,05.8)
○『長崎県の歴史散歩』(長崎県高等学校教育研究会地歴公民部会歴史分科会,山川出版社,05.6)
○『季・時どき』(風見治,海鳥社,02.6)
○『部落問題論への招待』(寺木・野口,解放出版社,06.4)
●『自覚と誇り』(『大阪の部落史』普及版プロジェクト,解放出版社,06.3)
○『クイズウルトラ人権100問』(辛淑玉,解放出版社,05.12)
●『長崎市第三次総合計画』(長崎市,06.3)
●『人権に関する県民意識調査』(長崎県,06.3)

(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放研究』第168・169号(部落解放・人権研究所)
●『ひょうご部落解放』第119号(ひょうご部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第562号〜564号(解放出版社)
○『人権と部落問題』第740号・741号(部落問題研究所)
○『解放教育』第459号(解放教育研究会)
○『ヒューマンライツ』第215〜217号(部落解放人権研究所)
○『こぺる』NO156・157(こぺる刊行会)
○『ウィンズ』第46号(福岡県人権・同和教育研究協議会)
●『解放研究とっとり』第8号(鳥取県部落解放研究所)
●『部落解放史ふくおか』第120・121号(福岡県人権研究所)
●『しこく部落史』第8号(四国部落史研究協議会)
●『部落問題研究』第174号(部落問題研究所)
●『部落解放研究くまもと』第51号(熊本県部落解放研究会)
●『部落解放研究』第12号(広島部落解放研究所)
●『人権問題研究所紀要』第20号(近畿大学人権問題研究所)
●『関西学院大学人権研究』第10号(関西学院大学人権教育研究室)
●『ながさき自治研』第44号(長崎県地方自治研究センター)




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