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「研究所情報」第38号 2006年7月10日

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さあ、思い切り夏が始まる!
フィールドワーク・研修会・そして全国部落史研

 すでにご案内の通り、今夏第12回全国部落史研究交流会が8月4・5日両日、長崎大学(長崎市文教町)で開催される。6月22日には、行政・教育関係団体の皆様にお集まり頂き、受入のための会議が行われた。当日の運営・会場設営、参加者の募集、地元企画のフィールドワーク等、ご協力により役割など分担することができた。全国からの参加申し込みも関東・関西・中四国各地からぼちぼちではあるがFaxが届いている。とりあえず宿泊等期限が7月10日となっているが、できるだけお早めにお願いしたい。長崎の夏は観光だけではあるまいが、兎角ホテルが満杯になることが多い。これは九州内の方も同様である。また、宿泊等要しない県内参加者もできるだけ、事前の参加申し込みをお願いしたい。会場設営・資料数の準備のために、できるだけ把握しておきたいからである。なにせ、数十枚になる、レジュメ・資料が5種類(全体講演を含め)用意されるのである(当日では間に合わない)。なにとぞよろしくお願いします。
 また、8月19日(土)〜20日(日)には25回目の九州地区部落解放史研究集会が大分市で開催される(同封資料)。今回は、近世部落の「経済」に焦点を当てた報告が各地から予定されている。こちらにもぜひご参加頂くようお願いしたい。長崎報告は、「皮輸入と部落」がテーマである。
 この合間をぬって、FW・研修会もずらり並んでいる。7月22日(土)午前中、FWの研修がもたれる。ご参加下さい。
 今日は、数時間ではあるが、梅雨の合間の陽ざしが差し込んだ。

 コラム
 7月になったばかりの日曜日早朝、田中さん(「もやい」に「文学の舞台を訪ねて」を連載中)と私は、対馬空港に降り立った。前夜長崎は強風と雨の荒れ模様、不安を抱えてのの旅立ちである。対馬人権教の勝見さんが出迎えてくれた。早速空港内の喫茶店で打ち合わせ、当日は対馬の北部を車で廻ることになった。空港のある美津島町から豊玉町へ、点在する史跡の案内板には、ハングルと英語、そして日本語が並列されている。海神神社・藻小屋、上県町の「異国の見える丘」まで、約4時間。帰路は仁田、佐賀に立ち寄り、厳原へ。歴史民俗資料館では、江戸時代、猪退治に尽力した陶山訥庵の特別展が行われていた。翌日は南部廻り、歴代の対馬藩主が眠る万松院、椎根の石屋根、小茂田の元寇の役古戦場まで足を伸ばし、阿連を経て雛知へ。両日とも、驚くほど好日に恵まれた(翌日も大雨だった)。歴史と自然が交錯する地・対馬、田中さんの報告に期待したい。(あ)

■ 風見治さんを囲む会 ■
 6月23日(金)18時から長崎県美術館において、鹿児島県鹿屋市にあるハンセン病療養所星塚敬愛園にお住まいの、風見治さんをお招きした「囲む会」が行われた。風見さんは長崎市ご出身、故郷を離れて50数年の歳月が流れている。時折帰省しているが、今回は、長崎県が同美術館で開催した「ハンセン病療養所長崎県出身入所者の作品展」にご自身の絵画を出展され、同時に来展者との交流を深めようと、帰崎された。美術館一階のギャラリーには、6月20日から25日までの一週間、菊池恵楓園・星塚敬愛園・長島愛生園入所者の5名の絵画・小説・詩歌や啓発パネル、敬愛園の歴史年表などが展示された。
 「囲む会」は、真宗大谷派長崎教区のみなさん、そして私ども人権研究所が中心となり、約40名の出席があった。「囲む会」は、藤原かんばさんによる「ふるさと」等のフルート演奏ではじまった。風見さんは、戦争末期小学校5年生の時に発病し、戦後自宅療養していたが病状が重くなり、やむなく熊本の菊池恵楓園に入所した事、治療を受け、症状はすぐに回復したが、まだ20歳前後「如何に生きていくのか」を模索する中、文学にその活路を見出し、敬愛園に移った事等、体験を語られた。
 また、ハンセン病「問題」には、恐怖感、美醜(嫌悪感)という人間の本能が作用しており、行政的に解決できる事とできない事がある。「差別がまったくない社会」をイメージできるのかという云えば、「差」は歴然としており、社会的排除が生まれる。「なぜ自分が生きるのか」を文学によって追求したい。人間には可能性がある、「指が5本なければ不自由だ」とは思いこみであり、本来備わっている「内部の力」によってその可能性を広げていく、とご自身の思いを語られた。また、今一番の関心事を「老いていくことの深刻さ」であるとも。(詳細は「もやい52号」)
 25日(日)作品展の最終日、風見さんを大音寺そばの「幣振坂」にご案内した。風見さんが小学校時代の通学路である。境内にある井戸は当時、手くみでのどを潤したこと、両脇の塀が当時は押しつぶされるほど高かったこと、墓所が学校帰りの遊び場だったこと等、懐かしそうに語られた。風見さんは、原爆を見ている。風頭から何日も燃える町を見ていた。米軍が来るので、小浜に疎開したことなど、私は即座にその時の様子をエッセーに書いてほしいとお願いした。また、江戸時代初頭、キリスト教の宣教師たちが建設した「聖ラザロ病院跡」(筑後町)にもご案内した。部落とハンセン病の関わりにも、言及された。江戸時代、部落は「ハンセン病者」の監督権を持っていたとの記述が、『邦訳日葡辞書』にはある。(あなん)

◎「部落史」教材指導案を創ろう

 今年度の一つの取り組みに、部落史の教材造りがあります。6月からすでに二回延べ4日間に渡って、検討会が行われています。メンバーは、壱岐人教の米倉、五島人教の平山、諫早人教の松尾、長崎人教の浦田、県人教の傳、研究所の阿南です(いずれも敬称略)。この数年間、学校現場でみられる「賤称語発言」を如何に克服していくのか、そして子どもたちあるいは、過去接した若者たちが、部落史学習を通して得た部落史・部落問題への「否定的なイメージ」を、歴史学習を通して正面から突破するための指導案とは如何なるものなのか。議論が交わされています。長崎は、日本の歴史にしめる史実が数多くみられます。一地方の歴史としてではなく、日本史に位置づけられる教材の開発が可能であることは云うまでもありません。
 江戸時代、出島や唐人屋敷、対馬を窓口とした外国との貿易・交流、キリシタン弾圧、これらはいずれも部落史に大きな関わりを持っています。これまでの議論で、@長崎の町づくりと部落、Aある藩で行われた身分規制の有り様、B「解放令」がもたらしたもの、C水平社運動とは何か、という四つのテーマで小学校・中学校ともに教材にすることになりました。次回は、指導案が持ち寄られる予定です。@は以前「嫌がられた」と表現された部落の仕事を「生活史」として光が当てられます。Aは幕府や藩が何ゆえ、差別規制を行ったのかその理由に焦点が当てられます。Bは解放令がなぜ出されたのか、その影響を社会の受け止め方その下での部落の変容に、Cでは大正デモクラシーと称される他の運動との関連や、どうして水平社運動なのかと言った必然性が導き出されることになります。次回は8月、あと数度の検討会を経て教材資料集は完成です。

4月からの主な行事日程

4月17〜18日 鹿児島星塚敬愛園訪問
   22日 研究所第3回総会(啓発センター)
       学習会「05県民意識調査を読む」藤澤秀雄
5月13日   西海路と井上光晴企画展を尋ねる旅
5月25日   運営委員会  史料解読会
5月28〜30日 第25回部落解放全九州研究集会(宮崎)
6月3日   部落解放・人権研究所歴史部会(大阪)
6月9〜10日 教材資料作成委員会(事務局)
6月15〜16日 大阪同和・人権企業連絡会F・W 
6月19日   真宗大谷派筑前西組F・W
6月21日   第12回全国部落史研究交流会説明会
6月22〜23日 三菱人権啓発企業連絡会F・W
6月23日   風見治さんを囲む会(長崎県美術館)
6月30〜1日 教材資料作成委員会(事務局)
7月2〜3日 対馬取材

(これからの予定)
7月8〜9日 佐賀県連女性部研修(島原)
7月24日   唐津地区人権・同和教育研究会F・W
7月26日   人権教育啓発指導者専門講座(佐世保)
7月27日   部落解放学習会
8月4〜5日 第12回全国部落史研究交流会(長崎大学)
8月10日   福知山市教育委員会F・W
8月17日   長崎市教委新任研F・W
8月18日   久留米市研修F・W 
8月19〜20日 第25回九州地区部落解放史研究集会(大分)
8月23日   長崎市教委初任研(長崎市民会館)
8月30日   全同教課題別研F・W
9月2日   碓井解放子ども会指導者研修会F・W

 最近の受入図書(●は寄贈)
○『地方切支丹の発掘』(海老沢有道,柏書房,76.4)
○『切支丹宗門の迫害と潜伏』(姉崎正治,養徳社,s24.6)
○『はじめての部落問題』(角岡伸彦,文藝春秋,05.11)
○『続人物でつづる被差別民の歴史』(中尾・黒川,解放出版社,06.4)
○『よくわかる宮崎の部落史』(宮崎県人権・同和教育研究協議会部落史専門委員会,05.11)
●『大阪の部落史第2巻』(大阪の部落史委員会,部落解放・人権研究所,06.1)
●『新編真実に生きた人々 薩摩の隠れ念仏』(真宗大谷派鹿児島別院,06.4)
●『真実が問いかけるもの』(部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会)

(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放研究』第170号(部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第565号〜567号(解放出版社)
○『人権と部落問題』第742号〜746号(部落問題研究所)
○『解放教育』第460号〜463号(解放教育研究会)
○『ヒューマンライツ』第218・219号(部落解放人権研究所)
○『こぺる』NO158〜160号(こぺる刊行会)
●『人権とは何か』(ブックレット菜の花11,福岡県人権研究所)
●『ひょうご部落解放』第120号(ひょうご部落解放・人権研究所)
●『研究紀要』第12号(ひょうご部落解放・人権研究所)
●『部落問題研究』第175号(部落問題研究所)
●『関西大学人権問題研究室紀要』第52号(関西大学人権問題研究室)
●『解放研究』第19号(東日本部落解放研究所)
●『岡山部落解放研究所紀要』第14号(岡山部落解放研究所)
●『東京大学史料編纂所研究紀要』第16号(東京大学史料編纂所)
●『講座・人権ゆかりの地をたずねて』(世界人権問題研究センター)
●『GLOBE』45号(世界人権問題研究センター)
●『研究所紀要』第12号(奈良県立同和問題関係史料センター)
●『初期奈良県水平社関係史料』(奈良県立同和問題関係史料センター)

第12回全国部落史研究交流会のご案内

【日 時】 8月4(金)〜5日(土)
【場 所】 長崎大学文教キャンパス  
【主 催】 全国部落史研究交流会
【後 援】 長崎県・同教育委員会・長崎市・同教育委員会 
【参加費】 4,000円(報告書代含む)

☆プログラム
1日目 【分科会】PM1:00〜5:45
前近代「近世被差別民と宗教」
@「真宗と被差別民」山本尚友
A「近世初期皮屋集団のキリスト教受容について」阿南重幸

近・現代「1920年代融和運動の諸相」
@「初期水平社がみた改善・融和運動」守安敏司
A「全国融和連盟と中央融和事業協会の成立」本郷浩二

2日目 【全体会】AM9:00〜11:30
講演「近世の『らい者』」鈴木則子(奈良女子大学)

○特別企画
フィールドワーク 13:30〜16:00「原爆と部落とキリシタン」
参加費:1,000円

連絡先:095−847−8690〔人権研究所〕



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