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「研究所情報」第40号 2007年02月13日

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豊かな人権教育の実践を交流!
長崎県人権教育研究協議会等、共催で

 2月9日(金)、鹿町町文化会館で「第10回部落問題学習・第6回人権総合学習実践交流会」が100名の参加者のもとに開催された。全体会で交流会の基調提案が行なわれた後、3分科会に別れそれぞれ3ないし4本の授業実践報告が行なわれた。部落問題学習と人権総合学習がテーマで、今年は特に教科書記述を補完する部落史の授業に関する意欲的な授業実践が多かった。
 このうち第3分科会では、壱岐初山中の米倉さん、五島福江小の平山さん、佐世保愛宕中の白濱さんの報告があり、米倉さんは「近代部落史をどう教えたか」をテーマに、解放令と水平社を題材に、前者では、江戸時代と近代社会の「差別の違い」を、後者では、「される側の問題」から「する側の問題」へと変わったこと。平山さんは、長崎の町づくりをテーマに、どのようにして町ができていくのか、「差別された人々」が住む町が、履物を作る職人が住み、また、彼らがキリスト教徒であり、迫害に抵抗した姿から何を学ぶのか等。白濱さんは、校内で起こった賤称語発言をきっかけに、全校で取り組んだ人権総合学習で、教員18名のみんながそれぞれテーマを設定し人権セミナーを開いたこと。25分ほどのセミナーを子どもたちが4コマ選び、受講させたという。生徒も教師も生き生きした姿があったとした。当日参加された、同校の先生は、講演を聴くだけでは駄目で、自分が「する」ことの意義を強調された。
 人権に根ざした差別をなくす「ため」の授業づくり、学校づくり、まちづくりにつながる実践が交流できた。

 コラム
 中央研修会(二面参照)の第5分科会は、大村市内で人権に係わるフィールドワークが行われた。コースは、大村市役所から出発し、長崎空港の入り口にある「天正遣欧少年使節の像」、「放虎原殉教地」を経て、大村小学校前の「石井筆子の像」「針尾山トンネル工場跡」最後が「鈴田牢跡」である。放虎原では幕末、「屠児」と呼ばれ差別された人々の集落が焼き討ちにあったことが文献に残されている。殉教地には、「郡崩れ」で犠牲となった411名の殉教者を悼む「顕彰碑」がある。最近相次いで映画化された石井筆子の像では、障害児教育の歴史を振り返ることができる。針尾の「トンネル工場跡」は戦争の被害と加害の両側面を語っている。鈴田牢では権力者の残忍性が描かれる。大村は、否、大村のみならず、地域に歴史があるならば、必ずこのようなフィールドワークが可能であろう。要は、目線である。地域史を発掘する意味がある。(あ)

■ 牧口一二さん(合名会社 おばけ箱代表)が講演 ■
「障害者観のイメージチェンジ」

 1月31日(水)、2月1日(木)両日、大村市にあるシーハット大村において、長崎県・同教育委員会、大村市教育委員会、大村東彼地区人権教育研究協議会が主催する、長崎県人権教育中央研修会並びに大村市人権教育研究大会が開催されました。記念講演では、牧口一二さんが、「障害者のイメージチェンジ」と題してお話しされました。
 牧口さんは、一歳の時にポリオを煩い、両足が不自由になったとのこと。それを普通だと思っていたという。障害をもち、病院から出て、けろっとする人と、引きづる人など人によってそれぞれ違う受け止めがある。しかし、三年くらいで「障害」を受容する。それが人間の生きる力なんだと。大雑把に生きようという。けったいな人ほど世の中を動かしている、人間との出会いをチャンスとしてつかんでゆくことが、豊かさにつながる。障害は環境によって「重い」か「軽い」が決定される。今の時代は、飛行機でも、列車でも全部手伝ってくれる。以前はそうではなかった。と言うことだ。
 一九三七年生まれ。六九歳。九歳で小学校に入学、右足がまったく動かないため、母が負ぶって連れていってくれた。二年生の一学期に松葉杖を使うようになった。それまでは、はいずり回っていたので、目の高さが30〜40センチ変わっただけなのに、景色がまったく違った。それは驚きであり、人生に影響を与えた。今でも、ニュースの第一報は信じない。客観性がほしい。
 「障害」は極々自然なこと。障害をもった人は4lいる。25人に一人の割合である。一人の障害者に25人が係れば、どうにでもなるし豊かな生活が送れる。人間は常に動いている生き物なんだと言うことを、障害者が示している。
 人生遠回りせなと。学校を出た後、54社の就職試験を受けた。全部落ちた。最後の会社で、それは障害があるからだと教えられた。ズドーンと落ちた。ショックで家に閉じこもった。  2年間そうしたが、学校時代の友だちから連絡があり、会社を共同経営することになった。借金することで「順送りの恩返し」を知った。「おふくろ」は世界一だ。自立とは、「他人の力を借りること」だと。良い出会いがいっぱいあって、今日の自分がある。
 ちがうこと ばんざい
    (略)
 世の中には
 いろんな人がいて
 いろんな考えがあるってことを
 それぞれ特ちょうをもった生き方があるってことを
 ひとつ ひとつ知っていきながら
 人間は大きくなっていくんだ
 そして深くなっていくんだ
 みんな ちがうから すばらしいんだ

【予定時間を20分オーバーした牧口さんの、語りの印象深かったところを記してみました。】

「団体賛助会員」へのご入会のお願い
 拝啓 皆様方には当研究所の活動につきましてご助力戴いていますことに感謝申し上げます。
 さて、当研究所では、これまで長崎県及び市町からの研究委託費を主な財源として、雑誌「もやい」の発行、県内部落史の研究、人権啓発に関わる意識調査等を軸にこれまで運営してきました。機関誌「もやい」(年2回発行)はすでに52号を数え、「論集 長崎の部落史」「・・・を50分で学習する」など数種の書籍も発行しています。他に、県内外の関係諸団体や行政からの依頼により研修会への講師派遣を数多く行っています(昨年度約50回)。
 2004年9月には、非営利活動法人(NPO)としての認証を受け、各種事業による自主財源の確保に努めながら、多岐に渡る活動に取り組んでいます。
 しかしながら、業務の拡大に伴う出費の増大、また市町村合併による行政委託費の削減等、 財政的に極めて厳しい局面を迎えています。
 つきましては、貴団体におかれましても厳しい財政状況で運営されていることと存じますが、なにとぞご理解の上、別紙にて団体賛助へのご入会を賜りますようお願い申し上げます。
 なお、ご入会に際しましては、一口ごとに「もやい」「研究所情報」それぞれを3部お送り致します。また、催し物等のご案内もさせて戴きます。                 敬具
  団体賛助:年会費 10,000円(一口)
095(847)8690 Fax 095(847)8696 e-mail anan@sings.jp
郵便振り込みは【01750-7-76909 長崎人権研究所】です。

これからの主な取組

2月8日(木) 伊万里市部落差別撤廃・人権擁護審議会委員 Aコース(FW)
3月2日(金) 北波多地区人権・同和教育推進協議会 Aコース(FW)

◆ 短 信

▼ 「情報38号」でご紹介した風見治さんから、「姶良野」という星塚敬愛園入所者自治会機関誌が届いた。風見さんは、昨年3回帰崎され、その時の様子を「帰るところ」というタイトルで振りかえっておられる。「半世紀も超える療養所での生活は、故郷での私の存在を空白にしてしまっている。私の心はそのことに渇くのである」「渇いた心を少しずつ癒してくれるのが、ここに書いた人々であり、その他の故郷の人との関係である」と。風見さんは、「差別」というものを考えるネットワークを作りたいと洩らしておられた。何時、どのようにすれば、この思いに答えられるのか、私は何をすればよいのか、考えているこのごろである。
▼ 「新厚い壁」製作上映運動が行われている。中山節夫監督は「ハンセン病患者であることを理由に法の前の平等を踏みにじられ、驚くほど杜撰な裁判で極刑の判決を受け、死刑執行された50年以上も前の事件を通して、それを許した当時の社会の意識が今日どのように変わったのか、そして何が変わらないのかを描きたい」と」語っています(「製作に寄せて」より)。研究所としても、この製作・上映運動に取り組んでいきたい。ご協力頂ける方は、制作・上映協力券を預かっていますので、ご連絡下さい。お送り致します。
▼ 昨夏、長崎で行われた全国部落史研究交流会の報告集が、3月福岡県人権研究所から発行されます。参加者の皆さんには、一部ずつ送られてきます。なお、購入ご希望の方は、ご連絡下さい。

 最近の受入図書(●は寄贈)
○『島原の乱 キリシタン信仰と武装蜂起』(神田千里,中公新書,05.10)
○『長崎雑学紀行』(後藤惠之輔,長崎文献社,0 6.12)
●『非暴力による平和への道』(日本カトリック司教協議会,カトリック中央協議会,05.8)
○『江戸時代の身分願望』(深谷克己,吉川弘文館,06.11)
○『旅する長崎学4』(長崎文献社,06.10)
●『アイイウルラ』(木村和彦,プレスプラン,01.6)
○『江戸の繁盛しぐさ』(越川禮子,日本経済新聞社,06.8)
○『部落史に学ぶ2』(外川正明,解放出版社,06.12)
●『長崎地区労六十年史』(長崎地区労働組合会議,06.12)
●『キリシタンの記憶』(木越邦子,桂書房,06.10)

(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放研究』第170〜174号(社 部落解放・人権研究所)
●『ひょうご部落解放』第122・123号(社 ひょうご部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第573号〜577号(解放出版社)
●『解放教育』第468〜470号(解放教育研究会)
○『ヒューマンライツ』第224〜226号(社 部落解放・人権研究所)
○『こぺる』NO164〜167号(こぺる刊行会)
○『ウィンズ』第48・49号(福岡県人権・同和教育研究協議会)
●『リベラシオン』第123・124号(社 福岡県人権研究所)
●『部落問題研究』第177号(社 部落問題研究所)
●『部落解放研究くまもと』第52号(熊本県部落解放研究会)
●『明日を拓く』第66号(東日本部落解放研究所)
●『人権問題研究所紀要』第53号(関西大学人権問題研究室)
●『GLOBE』第47・48号(財 世界人権問題研究センター)
●『東京大学史料編纂所報』第41号(東京大学史料編纂所)
●『滋賀の部落』396〜401号(財 滋賀県同和問題研究所)
●『信州農村開発史研究所報』第96・97号(信州農村開発史研究所)

らい予防法廃止10周年記念・ハンセン病国賠訴訟5周年記念映画
「新 あつい壁」

−あらすじ−
フリーのルポライター卓也は、取材で知り合ったホームレスの男から、50年前に熊本で起きた殺人事件の話を聞かされた。「犯人に、俺は、申し訳のねえことをしちまって・・・その男は無実かもしれねえ」、それはハンセン病患者が犯人とされた事件だった。そこにはハンセン病患者であるがゆえに今でも続いている差別と偏見に満ちた社会に状況と、それにのっとった取り調べや裁判の事実があった。卓也は軽い気持ちを捨てて真剣に取材をはじめた・・・
(制作・上映実行委員会チラシより)

あなたもこの映画づくりにぜひご参加下さい。

製作協力券 1,000円

◆お問い合わせ◆
長崎県映画センター п@095(824)2974

〔研究所でもチケットを取り扱っています。〕



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