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「研究所情報」第46号 2008年8月31日

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結婚相談所で戸籍謄本が
本年6月ー「独身証明書」に変更

 本年6月19日「毎日新聞」は、山口県宇部市の結婚相談所で、登録者に戸籍謄本の提出を求め、本籍地や宗教を書かせていたことが判明、登録者が自由に閲覧できるカードには、障害の有無・既往歴などが記載されていたことを報道した。また翌20日には、自治体が運営する結婚相談所で国の通達に違反している事例が相次いで見つかっていることを指摘し、本県では佐世保市の結婚相談所で戸籍謄本の提出が求められていたことがわかった。佐世保市は、記者の指摘を受け戸籍謄本の提出を市の発行する独身証明書に変更した。
 これらの報道を受け解放同盟長崎県連は、佐世保市に対して、@通産省(現在ー経産省)が2000年5月「結婚情報サービス・結婚相談業者」に対して、入会申込者が独身であることを証明するものとして「戸籍謄本」ではなく「独身証明書」を一般行政証明書として活用することを求め、都道府県を通じて市区町村にも協力を要請していることについての見解と、Aすでに提出されている戸籍謄本の返却を求めた。
 佐世保市は、この申し入れに対し、文章で回答し@について、通産省の要請は受理しているが、民間事業を対象とするものと解釈し市立結婚相談所には該当しないものと判断した、市職員の人権に関する認識が不足していた。
 Aは、現住所を確認できた方には郵送などにより返却する。との回答を寄せた。
解放同盟県連は、人権啓発課が属する市民生活部が所管する結婚相談所であるにも関わらず、戸籍謄本の提出が新聞記者の指摘まで変更されなかった点に対し、多くの市民にこの問題を投げかけ人権啓発につながるよう求めている。(「解放新聞長崎版より)

 コラム
 この数年夏が終わると、なんだかほっとする。
 長崎にいると、夏は8月9日を中心に廻る。今年は被爆63周年、旧浦上町出身者でつくる長崎郷土親興会は今年もまた原爆犠牲者の追悼法要を行った。
 しかし、長崎以外ではそうはいかない。夏は他にも多くの行事が立て込んでいる。二面三面には、少しくわしく今年の夏を紹介した。
 フィールドワークには、県内外からたくさんの人たちが訪れた。200人は下らない。
 研修会も多く企画された。九同教夏期講座には県内、九州各地から3000人の人たちが参集した。
 この人たちに、長崎からのメッセージを伝えなければならない。私どもにできることは、ここ数年の成果としての「長崎の部落史」を編纂すること、フィールドワーク用のテキストブックも必要だ。
来夏に向けて、いま準備できることがある。すると、今頃、もっとほっとしている。(あ)

◆今夏の主な活動 (6月〜8月)
◇フィールドワーク
 今年の夏も例年のように、たいへん暑かったにもかかわらず多くの参加者があった。
6月5日(木)午後、Bコース(原爆・部落とキリシタン)を歩いた大阪同和・人権問題企業連絡会第11グループは、イトキン・宇部興産・カネヨウ・近畿大学・新光証券・住友電気工業・JFE継手・損害保険ジャパン・長吉総合病院・阪神高速道路・三菱マテリアルの11社で構成されている。大阪同企連は、大阪府下の企業を主体に145社が加盟しており、数年前から毎年いずれかのグループが長崎を訪れフィールドワーク研修を行っている。
 6月12日(木)は、真宗大谷派富山教区教務所から10数名が訪れBコースを歩いた。富山は浦上四番崩れで浦上キリシタンが流配(流罪)されたところ、当地で亡くなった「キク」を哀れんで地蔵が建てられているという。ある寺には、遺品が大切に保存されていることを知った。繋がりを大切にしたい。
 7月15日(火)は、東京人権啓発企業連絡会の第6グループ(JFEスチール、住友信託銀行、蛇の目ミシン、みずほインベスターズ証券、エヌ・ティ・ドコモ、佐藤工業、帝国ホテル)と第4グループがAコースを、また同人企連の別のグループはBコースを歩いた。
8月1日(金)は、飯塚市人権・同和教育研究会(14名)が「人権と平和を考えるふぃーるどわーく」と銘打って、8月9日(土)は徳島県の「吉野友の会」(高校生外12名)、8月10日(日)は、京都福知山市から「長崎平和学習の旅」で高校生4名外がそれぞれBコースを歩いた。
8月20日(水)は九州地区人権・同和教育夏期講座の分科会で県内外から、A・Bコースそれぞれ約60名がフィールドワークに参加した。
指導員の皆さん、そして参加者の皆さんたいへんお疲れ様でした。
 大阪、富山、東京、福岡、徳島、京都など日本各地にこのフィールドワークが広がっている。九同教夏期講座では、県内はもとより九州各地から応募者が殺到した。定員をオーバーし、参加できなかった方もたくさんいる。そんな期待に応えるためにも、研修内容を充実したものにしていきたい。長崎であるから、キーワードは「貿易」とキリスト教との係わりだ。出島・唐人屋敷をめぐるコースを考えてみても良いのではないかという話もある。
今夏のフィールドワーク指導員 阿南重幸・荒木寿美・傳均・宮崎懐良・山下信哉

●今後の日程
9月14日(日)
 フィールドワーク西海路:碓井小学校
9月18日(木)
 長崎人権学:長崎市教育委員会
9月30日(火)
 フィールドワークB:早良区人尊協
 企業と人権(佐世保)
10月1日(水)
 企業と人権(長崎)
10月2・3日(木・金)
 フィールドワーク:浄土真宗本願寺派
10月9日(木)
 フィールドワークB:長崎市教育委員会
11月1・2日(土・日)
 フィールドワーク:糸島地協女性部
11月8日(土)
 フィールドワークB:人権セミナー筑後
11月12・13日(水・木)
 企業と人権(島原)
11月13日(木)
 フィールドワークB:大分市教育委員会

◇研修会

 例年のことだが、今夏も多くの研修会がもたれた。
 7月23日(水)は長崎市人権教育研究会の夏期研修会、約80名の参加者があり、水平社結成にいたる過程を「解放令」以降の被差別部落の変遷を示す資料とビデオで学習した(「水平社は如何にして生まれたか?」−阿南重幸)。
 24日(木)は今年度第2回部落解放学習会、石村榮一が自身の「同和教育」への取り組みを話した。
 8月1日(金)2日(土)の両日、第14回全国部落史研究集会が横浜市でおこなわれた。分科会Tは前近代史「部落史おける奥羽南部・北関東」、分科会Uでは「前後の部落解放運動と同和行政」をテーマにそれぞれ2本の報告があった。翌日は、「被差別民史における鎌倉」と題して、東日本部落解放研究所の鳥山洋氏の全体講演があり、午後からは六浦フィールドワークがおこなわれた。
 8月23日(土)から24日(日)にかけて宮崎県小林市で行われた第27回九州地区部落解放史研究集会の初日、「被差別民の生業」をテーマに阿南重幸が「非人の生業」と題する報告を行った。参加者は100名ほど。福岡からは、竹森健二郎が「福岡県におけるかわたの農業従事」と題して、佐賀からは中村久子が「佐賀藩における非人のくらし」をテーマに、宮崎からは黒木健二が「近世被差別民の生業について」等報告があった。竹森報告では「入り百姓」として慶長期に1村26ヶ所だった「かわた」村が幕末期には133ヶ村に増加したこと、「入り百姓」である「かわた」は「役」には従事しなかったことも明らかにされた。これに対して、「非人」は、そもそも彼らは「囚われ人」であり、生業と云えるのか疑問が残された。ただ長崎で市中の清掃に従事した事は注目された。
 8月26日(火)は、壱岐市人権教育研究協議会の夏期研修会、「部落史学習の視点ー貧困・被差別史観の克服のために」(「人権・同和教育をすすめるために」第41集長崎県教育委員会編)をテーマに阿南の問題提起の後、同協議会会長の米倉徹先生が「江戸時代の身分制」の模擬授業を行った。
 翌27日は、「平成20年度人権・同和教育指導者養成セミナー」があり、ここでも「水平社は如何に生まれたか?」をテーマに学習が行われた。

◇お知らせ
 全国部落史研究会が発足しました。
 横浜市で開催された第14回全国部落史研究交流会終了後、懸案であった全国部落史研究会が結成されました。これは、これまで各地研究所等との共催で交流会の企画・運営等がおこなわれていましたが、運営主体をはっきりさせ同時に個々人の結集を図ろうとするものです。この会の発足を通して、交流会がますます発展することを期待したいと思います。(詳細は、後日)

セミナー企業と人権−人権啓発推進指導者養成講座−

◎佐世保会場(アルカスSASEBO)
9月30日〈火〉
 講師:小林繁、石村榮一

◎長崎会場(セントヒル長崎)
10月1日(水)
 講師:小林繁、石村榮一
11月13日(木)
 講師:奥田均、馬場周一郎

◎島原会場(島原文化会館)
11月12日〈水〉
 講師:奥田均、石村榮一

テーマ
小林 繁(大阪市企業人権推進協議会)
 「企業活動の色々な場面に『人権の視点』がある」
石村榮一(長崎人権研究所)
 ビデオフォーラム「パワー・ハラスメントと人権」
奥田均(近畿大学)
 「結婚差別問題を考える」
馬場周一郎(元西日本新聞記者)
 「人権は企業の窓〜私の取材体験を通して」

 なお各会場で、長崎県人権教育研究協議 会から、「県内における就職差別撤廃の取り 組み」が報告されます。
 時間は、いずれも13時30分〜16時40分

主催:長崎県・長崎県人権啓発推進企業連絡会・長崎市・佐世保市・島原市
後援:長崎県労働局・長崎県商工会議所連合会
お問い合わせ: 長崎県県民生活部人権・同和対策課 рO95(826)2585
 最近の受入図書(●は寄贈)
○『差別からみる日本の歴史』(ひろたまさき,解放出版社,08.6)
●『アジア・太平洋戦争と全国水平社』(朝治武,解放出版社,08.8)

(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放研究』第182号(社 部落解放・人権研究所)
●『ひょうご部落解放』第129号(社 ひょうご部落解放・人権研究所)
●『研究紀要』第14号(社 ひょうご部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第600号〜603号(解放出版社)
○『ヒューマンライツ』第243号〜245号(社 部落解放・人権研究所)
○『こぺる』NO184号〜186号(こぺる刊行会)
●『リベラシオン』第130号(社 福岡県人権研究所)
●『佐賀部落解放研究所紀要』第25号(佐賀部落解放研究所)
●『明日を拓く』第72号(東日本部落解放研究所)
●『人権問題研究』第8号(大阪市立大学人権問題研究会)
●『GLOBE』第54号(財 世界人権問題研究センター)
●『RILIANS』第18号(社反差別国際連帯解放研究所しが)
●『大和国添上郡西辻村関係史料』(奈良県立同和問題関係史料センター)
●『研究紀要』第14号(奈良県立同和問題関係史料センター)
●『研究紀要』第13号(財 世界人権問題研究センター)
●『世界人権問題研究センター年報』(財 世界人権問題研究センター)
●『東京大学史料編纂所報』第42号(東京大学史料編纂所)
●『東京大学史料編纂所研究紀要』第18号(東京大学史料編纂所)




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