部落問題の今
08年度第5回部落解放学習会
3月10日(火)本年度第5回学習会が、銭座第2集会室で行われた。講師は、近畿大学人権問題研究所の熊本理抄さん。
部落問題があるいは、運動やそこに生活する人たちが、何を発信してきたか。正も負も含めて諸々の問題関心から詳細な検討が行われた。熊本さんは今、部落に住む女性のライフヒストリーを聞く作業を続けている。そこでは、@「労働」「仕事」「働く」。A個人が抱える問題を社会問題として提起してきた。B貧困や被差別にある豊かさ。C既存の価値観・概念の問い直し。等が語られたという。@では、働くことを通して生活の糧が得られ、自分が認められ、社会とつながり、「自分が社会に何らかの役に立っていることが自覚された。
Aでは、既存の社会福祉や社会保障、保育・教育に関わる諸制度の改善をせまってきた。Bでは、共同体が共有してきた「生活知」に学んだ。Cでは、労働の公・私領域が問い直された。
さらに、部落解放運動の中にある、今をみすえる「可能性」、未来をつくり出す「希望」の観点から、司法・行政・立法・文化・産業・教育等16の総括点が示された。21世紀の部落問題を如何なる枠組みで整理するのか、緒についたばかりである。
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■ コラム △今年になって、長崎市内の学校で行われた校内研修に二度招かれた。正月早々淵中学校、2月は愛宕小学校である。いずれも馴染みの学校で、淵中学校は私どもの研究所から眺める場所にある。ところがである。両校とも辿り着くまでに車中、冷や汗をかいた。学校のすぐ下まで来ているのに、階段に遮られて車が校内に入れないのである。何人か付近のひとに道を聞き、なんとか時間に間に合った。長崎とはかくあり、なんとも恐れ入った。
△いずれも、テーマは「長崎の被差別部落」、先頃刊行された『ナガサキから平和学する』(法律文化社)に執筆したものの概説である。なお、このテーマは1月の「駅前じんけん講座」でも扱ったので、都合3度目となる。キーワードは、貿易(流通)、キリスト教であり、原爆である。都合100人の人たちに話を聞いていただいた。
△長崎の部落史を描くことで、何が伝わったのか気になるところである。(あ)
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「対馬宗家文書」の解読を試みて
「史料解読会」は、今から10年程前に活動を開始した。現在も月1回のペースで開催しているが、当時は学校が四週六休の時代であり、第四土曜日の午後、開催していた。最初2年間程は、「藩政期の県内各藩の部落史」のおさらい学習や人権教育に関する学習をしていた。途中、古文書をテキストとする学習会もあったが、本会の名にふさわしい学習会になったのが、2001年4月、第23回の解読会である。「対馬藩の史料を読んでみよう」をテーマとして、報告者に佐賀部落解放研究所の中村久子さんを招いて開いた。その後、今年3月の第90回の解読会まで、対馬藩以外の史料を扱った2回を除いて、対馬藩の史料を牛歩のペースで読み解いてきた。
くずし字に手こずり、文字が読めても意味がくみ取れない困難な作業だったが、文字を巧みに読み解いていく橋口和孝さんのリーダーシップと節目節目に特別参加していただいた中村久子さんの丁寧なフォローにより、今回何とか「宗家文庫 記録類V 朝鮮関係 C6」の「読了」までたどり着けた。今後は、対馬歴史民俗資料館で最終校正をおこない、翻刻する予定になっている。
この史料は、対馬藩の朝鮮交易の記録で、時代は嘉永4年(1851)から安政3年(1856)8月までであり、約300頁にわたっている。史料には、倭館の役人など外交・交易に関係する役人名が記され、朝鮮海峡を往復する貿易船で運ばれた商品名や取り扱い数、価格・経費等が細かく記載されている。取り扱い商品のなかには朝鮮から輸入する牛皮も登場し、日本国内の牛皮流通の解明に役立たないかと、その数量に注目している。
記述内容の詳細な分析にはまだ至っていないが、同史料の各所から藩財政の窮迫がひしひしと伝わってくる。また、「琉球江も異船渡来何角不穏之事情も有之」との一文に欧米列強の圧力による幕藩体制の動揺も読み取れ、興味尽きない史料である。(史料解読会世話人 山下 信哉)
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12月〜2月の主な活動報告
6日 九州地区部落解放史研究協議会事務局
13日 ながさき人権フェスティバル(F・W)
20日 全国部落史研究会運営委員会・研究会
23日 史料解読会
1月
7日 島原半島地区人教「解放学習会」
8日 長崎市立淵中学校研修会
20日 フィールドワーク西彼半島(北波多地区人権・同和教育推進協)
21日 フィールドワークB(筑後地区人権・同和対策推進協)
24日 第三回理事会・ 駅前じんけん講座
31日 フィールドワーク B(古賀市社会「同和」教育推進協)
2月
21日 フィールドワークA(久留米市部落史研究会)
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「もやい」57・58合併号の紹介
前号で予告していましたが、「もやい」57・58号は合併号として、一冊の単行本で発行されます。その概要を紹介します。
第一章 貿易都市長崎の成立と「かわた」集団
第二章 対外貿易と長崎・大坂ー「かわた」の役割に関連して
第三章 豊後・豊前・筑前・肥後と大坂渡辺村商人
第四章 対馬の部落と朝鮮貿易
第五章 近世初頭かわた(長吏)集団のキリスト教受容
第六章 キリシタンと部落
第七章 「犯科帳」にみる非人集団
タイトルを含め内容も未だ未確定ですが、ほぼ2000年以降研究成果として報告されたものです。
4月中には、皆様へお届けできるよう準備を進めています。なお、個人購入及び団体購入の皆様には、2009年度2冊分の代金となります。もとより、会員の皆様は会費の含まれます。
なお、「もやい」59号は、機関誌を含む長崎の部落史研究の総目録として発刊の予定です。
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全国部落史研究会が発足しました。
昨年8月2日、横浜市で行われた第14回全国部落史研究交流会の終了後、懸案であった全国部落史研究会の発足が確認された。また、12月に行われた運営委員会において、代表(秋定嘉和)事務局長(寺木伸明)、運営委員(16名)会計監査(2名)、及び会則等が確認された。これにより、今後の研究交流会は、全国部落史研究会と開催地の研究会(所)の共催で行われることとなった。
なお、研究会は「会員相互の便宜をはかるとともに、部落史及びこれに関連する歴史の研究の発展に資することを目的」とし、@研究大会報告書、その他の刊行物の編集・発行、A研究大会、研究会、講演会その他フィールドワーク、B文化財保護、史料保存等の推進、各種の調査、Cその他必要な事業、を行うとした。また、経費は会費・事業収入・寄付金その他の収入で賄い、会費(個人-1000円)は09年度からとした。
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雨宮処凛(あまみやかりん) 講演会
格差×貧困×戦争
「生きづらさ」をフッとばせ!
対談:高木佳世子(北九州第一法律事務所 弁護士)
2009.4/11(土) 13:30開場:14:00開演
長崎市平和会館:長崎市平野町 (原爆資料館隣)
●入場料● 一般1000円、高校生以下500円
主催 雨宮処凛講演会実行委員会
連絡先 長崎県平和運動センター(長崎市桜町9−6)
рO95(823)7281 E-mail kenn21_2007@mail.goo.ne.jp
[雨宮処凛]
1975年北海道生まれ。
生活も職も心も不安定さに晒される人びと(プレカ リアート)問題に取り組み、運動中。著書に『生き させろ!難民化する若者たち』ほか多数。
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■ 最近の受入図書(●は寄贈)
○『愛のひと ド・ロ神父の生涯』(西岡由香,長崎文献社,09.1)
●『子どもの貧困』(浅井春夫他編,明石書店,08.4)
●『ナガサキから平和学する!』(法律文化社,09.1)
○『カムイ伝講義』(田中優子,小学館,08.12)
●『「部落問題の今」をめぐる若手研究者の国際ワークショップとシンポジュウム』(社 部落解放・人権研究所,08.11)
(定期刊行物)−(一部)
●『部落解放研究』第184号(社 部落解放・人権研究所)
○『ヒューマンライツ』第250〜252号(社 部落解放・人権研究所)
●『部落解放』第607号〜611号(解放出版社)
○『こぺる』NO190〜192号(こぺる刊行会)
●『リベラシオン』第132号(社 福岡県人権研究所)
●『解放研究 とっとり』第11号(財 鳥取県部落解放研究所)
●『部落解放研究』第15号(広島部落解放研究所)
●『GLOBE』第56号(財 世界人権問題研究センター)
●『関西大学人権問題研究室紀要』56号(関西大学人権問題研究室)
●『KG人権ブックレット』12号(関西学院大学人権教育研究室)
●『ひょうご部落解放』第131号(社 ひょうご部落解放・人権研究所)
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