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「意識調査」結果を詳細に読む−2002年「人権に関する県民意識調査」から−
池田 芳信
1 はじめに
長崎県における人権・同和問題に関する調査としては、1993(平成5)年に国(総務庁)が行った「同和地区実態把握等調査(人権と同和問題に関する意識調査)」がある。この調査は、同和問題に対する県民の意識を把握し、今後の同和行政を推進していく上での基礎資料を得ることを目的に実施された。
しかし、地域改善対策協議会の意見具申(1996(平成8)年5月)にも述べられているように、今後の人権啓発については、これまでの同和問題にかかる啓発の成果と手法への評価を踏まえて、全ての人の基本的人権を尊重していくための人権教育・人権啓発として発展的に再構築して行くことが求められている。
このために、今回の調査は、人権問題に対する県民の意識について現状を把握し,今後の人権行政を推進していく上での基礎資料を得るための調査として実施された。ただし、前回の調査との比較も考慮し、なお、同和問題に関する啓発も重要なことから、従前の設問も取り上げている。
調査結果の詳細については、長崎県によって公表された「人権に関する県民意識調査−平成13年度意識調査報告書−」がある。「報告書」では、各質問毎に調査結果を、行政区域別、性・年齢別、職業・性別に表を作成し、適宜図示し解説を付すとともに、行政区域・性・年齢・職業別に集計した回答結果を表示し、基礎資料として提供している。また、調査結果の特徴をまとめ、人権問題の現状や課題について考えるための資料として活用するために、「ダイジェスト版」(長崎県のホームページにも掲載)が作成されている。
また、長崎県部落史研究所が発行した「部落問題と人権のいま−考え・学習する視点−」には、藤澤秀雄氏が調査結果を要約した「2001年度『人権に関する県民意識調査』を読む」が掲載されている。是非、一読いただきたい。
本稿は、「報告書」作成に関わった立場の者として、調査結果の幾つかの点について、より詳細に分析し、検討を加えたものである。
2 今回調査と前回調査との比較
以降、項目名だけ掲載しています。全文は、「もやい第45号」をご覧ください。
3 「その他」及び「意見・要望」から
(1) 「その他」の記述から
(2) 「国や県、市町村に対する意見や要望」から
4 人権情報を提供する媒体との接触
(1) 媒体との接触の有無
(2) 媒体への接触別の傾向
5 おわりに
部落問題の解決を巡る、これからの人権教育及び行政の方向
阿南 重幸
1.はじめに
昨年通常国会で継続審議となった「人権擁護法案」の行方はどうか。当時の新聞紙上で見る限り問題とされている点は、@メディア規制、A人権委員会のあり方、の二つである。ここでは多くは触れないが、理解を助けるために簡単にその内容を整理しておく。メディア規制とは、プライバシーの侵害行為や過剰取材といわれるものを想定したもので、法案第42条4項に示される、「放送機関、新聞社等の取材をする際の人権侵害」の例示内容が、取材行為を大幅に後退させ、引いては報道の自由を脅かす恐れがあると懸念されるためである(1)。また、人権委員会の独立性を巡って、設置される所轄が法務大臣にある点も問題とされている。これは法案第2章5条に示されるもので、所轄事務・組織等が謳ってある。法務省は有名無実化している現行の人権擁護委員制度をそっくり、新たに設けられる人権委員会に移行させたいとの思惑であろうが、そうであればなおさら機能を果たしていない現行制度を根本的に改めない限り、新たな委員会がその目的を遂げるとは到底思えない。さらに国家(公務員)の個人に対する人権侵害が多発する現状では、官に甘く民に厳しい人権委員会というそしりは免れない。これに関して国連は、93年国内人権機関に関するパリ原則を採択し、「人権機関が政府・議会から干渉されないよう一定の独立性を保つべきだ」と各国に呼びかけている。
さて、その外にも問題点が多く指摘される「人権擁護法案」であるが、これらの議論には、何故このような法律案が提出されたのかに論究しているものはほとんど見受けられないのは残念なことである。人権擁護法案とは、一言で言えば差別規制法である。その中身については、次のように整理されている(2)。
@差別的取扱い 公務員・事業者の人種等を理由として行うもの
A差別的言動等 特定のものに対して人種等を理由として行うもの
Bセクシュアルハラスメント 特定のものに対して職務上の地位を理由として行う性的言動
C差別助長行為 不特定多数に対して人種等の属性を公然と摘示する行為や、差別する意志を公然と表示する行為
ここでいう「人種等」とは、人種・民族・信条・性別・社会的身分・門地・障害・疾病・性的指向を指し、また、社会的身分とは出生により決定される社会的な地位をいう(法案第2条)。
これらの取り扱いや行為が法案では差別や虐待に当たると規定され、その救済についての措置が掲げられているが、これらの点について触れられる議論はほとんど見受けられない。せいぜいマスコミの自主規制が促されている程度である。それでは、これらの差別規制法は必要ないのであろうか。
実は、この人権擁護法案は、後に述べる「人権教育及び人権啓発の促進に関する法律」(以下「人権教育・啓発促進法」)と並んで、部落解放同盟が中心となって繰り広げられた部落解放基本法制定運動や他の人権諸団体から要望されてきた、差別規制に係わる法整備が具現化したものである。その成果が結実し、いざ政府で用意された法案が上記の問題を抱えたことは非常に残念なことである。(3)
以下、「特措法」が終焉した今日その歩みを簡単に振り返り、これからの人権教育・行政の方向性について検討することにしたい。
(1)法案では、犯罪被害者等の報道において私生活や名誉・生活の平穏を害する行為、また、取材対象者へのつきまとい・待ち伏せ・見張り、電話・ファクシミリ等での送信などの行為を人権侵害としている。
(2)参照:金子匡良「差別禁止規定と救済手続きに関する問題点」(解放出版社『人権擁護法案・抜本修正への提案』)
(3)今日、これら差別規制法の必要性を訴えてきた部落解放同盟やその他の団体も、法案の抜本的修正を要求している。
2.「特措法」の終焉と「人権教育啓発推進法」時代
以降、項目名だけ掲載しています。全文は、「もやい第45号」をご覧ください。
○「同和対策事業特別措置法」の成果と残したもの
□長崎県では
〇「同対法」の改正から今日
○「人権教育啓発推進法時代」の教育・行政・解放運動
□長崎県では
3.部落差別はなくなりつつあるのか?
○「人権に関する県民意識調査」から問題を探る
○部落問題に係わる意識
4.おわりに
参考資料:「人権に関する県民意識調査」集計結果
「人権に関する県民意識調査−平成13年度意識調査報告書−」をもとに作成しています。
意識調査の概要等と問1〜問31の単純集計の結果をPDFファイルでご覧になれます。
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また,同じ集計結果を「スライドショー(MS Power Pointで作成)」でご覧になれます。
ただし、ブラウザがMS Internet Explorer 4.0,Netscape Navigator 4.0,または,それ以降で表示できます。
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