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人権教育のための国連十年(国連総会決議)

第49回本会議1994年12月23日
A/RES/49/184


国連総会は、「国連憲章」と「世界人権宣言」にこめられた基本的で普遍的な原則に導かれ「世界人権宣言」第26条が、「教育は人間の人格の完成並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を指向する」と定めていることを再確認する。

「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約)第13条や、「子どもの権利に関する条約」第28条など、「国連憲章」や「世界人権宣言」と同様の目的を定めた国際人権文書の諸条約を想起し、理論的次元とその実際への適用の両方にわたる人権に関する知識が教育政策のなかで優先的位置をしめるものとして確立されるべきだと勧告している国連人権委員会の1993年3月9日の決議1993/56を考慮する。

1994年3月4日の国連人権委員会決議1994/51を考慮する。この決議において人権委員会は、国連高等弁務官に対して国連人権教育の十年のための行動計画を諸目標の中に組み入れることを促すとともに、国連事務総長に対して経済社会理事会を経て第49回会期国連総会に国連人権教育のための行動計画を提出するよう求めていた。

人権教育はたんなる情報提供にとどまるものではない。人権教育とは、あらゆる発達段階の人々、あらゆる社会層の人々が、他の人々の尊厳について学びまたその尊厳をあらゆる社会で確立するための方法と手段について学ぶための生涯にわたる総合的な過程であることを国連総会は確信している。

また、あらゆる年齢の女性及び男性の尊厳と両立しうる発展の概念に人権教育が寄与すべきことをも確信するものである。そのなかには、子ども・先住民族・マイノリティ・障害者など社会を構成する多様な人々への配慮が含まれなければならない。

人権教育を促進するべく、世界中のすべての地域において、教育関係者やNGO(非政府組織)、およびユネスコやILOやユニセフなどの国際機関によってなされた努力を考慮に入れる。

女性・男性・子ども一人ひとりが自らの人間的可能性を実現するために、市民的・文化的・経済的・政治的・社会的なすべての権利を認識しなければならないと確信する。

人権教育は、ジェンダーによる差別を除去し、女性の権利の擁護・促進を通じて平等な機会を保障するための重要な手立てとなると信じる。

ユネスコが1993年3月8日から11日にモントリオールで開催した人権と民主主義のための教育に関する国際会議で採択された「人権と民主主義のための教育に関する世界行動計画」が、「人権と民主主義のための教育それ自身が人権であり、人権・民主主義・社会正義が実現される前提として不可欠のものである」と述べていることを考慮し、人権の領域における国連の教育・広報プログラムを適切にコーディネイトすることは、国連人権高等弁務官の責任であることを想起し、国連人権高等弁務官報告の第94段落において、調和のとれたコミュニティ間関係、相互の寛容と理解、ひいては平和を実現するために不可欠のものであると宣言されていることを注記し、エルサルバドルにおける国連監視団やカンボジアにおける国連暫定機構を含む国連の平和社会建設作戦での人権教育の経験を自覚し、ウィーン世界人権会議において1993年6月25日に採択されたウィーン宣言と行動計画、とりわけその第2章第78〜82段落を心にとどめ、

1 1993年12月20日の国連総会決議48/127に込められた要請にしたがって提出された人権教育に関する事務総長報告をよく理解して注記する。

2 1995年1月1日から始まる十年間を「国連人権教育の十年」と宣言する。

3 事務総長報告に組み込まれた「国連人権教育の十年行動計画、1995〜2005」を歓迎し、諸政府から行動計画に対する意見や行動計画を補足する見解が寄せられることを期待するものである。

4 諸政府から表明された意見を考慮に入れ、第3項で示された目的を達成するために、事務総長に対して計画を提案することを求める。

5 あらゆる政府に対して、行動計画の遂行に貢献するとともに、非識字克服のための諸活動をさらに高め、人格の完成並びに人権及び基本的自由の尊重を教育が指向するよう努めることを呼びかける。

6 政府・非政府の教育関係機関に対して、行動計画において勧告されているように、とりわけ各国人権教育計画を準備しそれを遂行することによって、人権教育プログラムの確立と実施に向け努力を傾注するよう強く求める。

7 国連人権高等弁務官に対して、行動計画の遂行をコーディネイトすることを要請する。

8 人権センター事務局および人権委員会に対して、加盟国や人権条約評価機関など適切な諸機関、あるいは有能なNGOと協力し、人権高等弁務官が行動計画をコーディネィトする手助けをするよう要請する。

9 事務総長に対して、人権教育のための任意基金創設を検討するよう要請する。この基金は、NGOによる人権教育活動への支援に関する特別条項を含み、事務局の人権センターによって執行されるべきである。

10 諸専門機関や国連の諸プログラムに対して、それぞれの得意な領域で行動計画の達成に貢献するよう求める。

11 国際共同体の構成員すべて、人権や教育に関心を寄せる政府間組織やNGOがこの決議に注目するよう、この決議を広く公表することを事務総長に要請する。

12 国際的・地域的(regional)・国内的NGO、とりわけ女性・労働・開発・環境、あるいはその他の社会正義を求める団体・人権擁護団体・教育関係者団体・宗教団体・マスディアなどに対して、人権という観点から定型的(formal)・非定型的(non‐formal)教育への関わりを強めると同時に人権センターと協力して「国連人権教育の十年」を遂行することを求める。

13 現在活動している人権評価諸機関に対して、国連加盟国が人権教育推進にかかる国際的義務をどの程度はたしているかにとくに注目するよう要請する。

14 第50会期においてこの問題を「人権問題」という課題のもとに検討することを決定する。


コメント

1994年12月23日に「国連人権教育の十年」を宣言した国連総会での決議である。これに遡ること一年前にも、国連総会では人権教育の十年に関わる決議が採択されている。それを比べるとき、この決議は、@「国連人権教育十年」の期間を1995〜2005年と明確化していること、A女性の視点をより明確に打ち出していること、B具体的な行動計画の確立と遂行を諸機関・諸政府・諸団体に求めていること、などの特徴をもっている。(訳・コメント 森 実〓大阪教育大学)



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