HOME > 人権に関する資料 > 宣言・条約・法律
アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(アイヌ文化振興法)
公布・平成9年5月14日 法律第52号
(目的)
第1条 この法律は、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌの伝統及びアイヌ文化(以下「アイヌの伝統等」という)が置かれている状況にかんがみ、アイヌ文化の振興ならびに、アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及および啓発(以下「アイヌ文化の振興等」という)を図るための施策を推進することにより、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「アイヌ文化」とは、アイヌ語並びにアイヌにおいて継承されてきた音楽、舞踊、工芸その他の文化的所産およびこれらから発展した文化的所産をいう。
(国および地方公共団体の責務)
第3条 国は、アイヌ文化を継承する者の育成、アイヌの伝統等に関する広報活動の充実、アイヌ文化の振興等に資する調査研究の推進その他アイヌ文化の振興等を図るための施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 地方公共団体は、当該区域の社会的条件に応じ、アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に努めなければならない。
(施策における配慮)
第4条 国および地方公共団体は、アイヌ文化の振興等を図るための施策を実施するに当たっては、アイヌの人々の自発的意思及び民族としての誇りを尊重するよう配慮するものとする。
(基本方針)
第5条 内閣総理大臣は、アイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本方針(以下「基本方針」という)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次の事項について定めるものとする。
一 アイヌ文化の振興等に関する基本的な事項
ニ アイヌ文化の振興を図るための施策に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する事項
四 アイヌ文化の振興等に資する調査研究に関する事項
五 アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 内閣総理大臣は、基本方針を定め、またはこれを変更しようとするときは、あらかじめ、北海道開発庁長官及び文部大臣その他関係行政機関の長に協議するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県の意見を聴かなければならない。
4 内閣総理大臣は、基本方針を定め、またはこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、次条第一項に規定する関係都道府県に送付しなければならない。
(基本計画)
第6条 その区域内の社会的条件に照らしてアイヌ文化の振興等を図るための施策を総合的に実施することが相当であると認められる政令で定める都道府県(以下「関係都道府県」という)は、基本方針に即して、関係都道府県におけるアイヌ文化の振興等を図るための施策に関する基本計画(以下「基本計画」という)を定めるものとする。
2 基本計画においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 アイヌ文化の振興に関する基本的な方針
ニ アイヌ文化の振興を図るための施策の実施内容に関する事項
三 アイヌの伝統等に関する住民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策の実施内容に関する事項
四 その他アイヌ文化の振興等を図るための施策の実施に際し配慮すべき重要事項
3 関係都道府県は、基本計画を定め、または変更したときは、遅滞なく、これを北海道開発庁長官及び文部大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
4 北海道開発庁長官及び文部大臣は、基本計画の作成及び円滑な実施の促進のため、関係都道府県に対し必要な助言、勧告及び情報の提供を行うよう努めなければならない。
(指定等)
第7条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、アイヌ文化の振興等を目的として設立された民法(明治29年法律第89号)第34条の規定による法人であって、次条に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、全国を通じて一に限り、同上に規定する業務を行う者として指定することができる。
2 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者(以下「指定法人」)の名称、住所及び事務所の所在地を公示しなければならない。
3 指定法人は、その名称、住所または事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を北海道開発庁長官及び文部大臣に届け出さなければならない。
4 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前項の規定による届け出があったときは、当該届け出に係る事項を公示しなければならない。
(業務)
第8条 指定法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 アイヌ文化を継承する者の育成その他のアイヌ文化の振興に関する業務を行うこと。
ニ アイヌの伝統等に関する広報活動その他の普及啓発を行うこと。
三 アイヌ分kなの振興等に資する調査研究を行うこと。
四 アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する普及啓発またはアイヌ文化の振興等に資する調査研究を行うものに対して、助言、助成その他の援助を行うこと。
五 前各号に掲げるもののほか、アイヌ文化の振興等を図るために必要な業務を行うこと。
(事業計画等)
第9条 指定法人は、毎事業年度、総理府令・文部省令で定めるところにより、事業計画書及び収支予算書を作成し、北海道開発庁長官及び文部大臣に提出しなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の事業計画書は基本的方針の内容に即して定めなければならない。
3 指定法人は、総理府令・文部省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、事業報告書及び収支決算所を作成し、北海道開発庁長官及び文部大臣に提出しなければならない。
(報告の徴収及び立ち入り検査)
第10条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、この法律の施行に必要な限度において、指定法人に対し、その業務に関し報告をさせ、またはその職員に、指定法人の事務所に立ち入り、業務の状況もしくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、もしくは関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立ち入り検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立ち入り検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
(改善命令)
第11条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、指定法人の第八条に規定する業務の運営に関し改善が必要であると認めるときは、指定法人に対し、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
第12条 北海道開発庁長官及び文部大臣は、指定法人が前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
2 北海道開発庁長官及び文部大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
(罰則)
第13条 第10条第1項の規定による報告はせず、もしくは虚偽の報告をし、または同項の規定による検査を拒み、妨げ、もしくは忌避し、もしくは同項の規定による質問に対して陳述せず、もしくは虚偽の陳述をした者は、20万以下の罰金に処する。
2 法人の代表者または代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対し同項の刑を科する。
付則
(施行期日)
第1条 この法律は、交付の日から起算して3月を超えない範囲内において政令に定める日から施行する。
(北海道旧土人保護法の廃止)
第2条 次に掲げる法律は、廃止する。
一 北海道旧土人保護法(明治32年法律第27号)
ニ 旭川市旧土人保護地処分法(昭和9年法律第9号)
(北海道旧土人保護法の廃止に伴う経過措置)
第3条 北海道知事は、この法律の施行の際現に前条の規定による廃止前の北海道旧土人保護法(次項において「旧保護法」という)第10条第1項の規定により管理する北海道旧土人共有財産(以下「共有財産」という)が、次項から第4項までの規定の定めるところにより共有者に返還され、または第5項の規定により指定法人もしくは北海道に帰属するまでの間、これを管理するものとする。
2 北海道知事は、共有財産を共有者に返還するため、旧保護法第10条第3項の規定により指定された共有財産ごとに、厚生省で定める事項を官報で公告しなければならない。
3 共有財産の共有者は、前項の規定による公告の日から起算して、1年以内に、北海道知事に対し、厚生省令で定めるところにより、当該共有財産の返還を請求することができる。
4 北海道知事は、前項に規定する期間の満了後でなければ、共有財産をその共有者に対し、返還してはならない。ただし、当該期間の満了前であっても、当該共有財産の共有者のすべてが同項の規定による請求をした場合には、この限りではない。
HOME > 人権に関する資料 > 宣言・条約・法律
|