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障害者ケアガイドライン

平成14年3月31日
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部

目次

はじめに
1 障害者ケアガイドラインの趣旨
2 障害者ケアマネジメントの必要性
3 障害者ケアマネジメントとは
(1)障害者の地域生活を支援する
(2)ケアマネジメントを希望する者の意向を尊重する
(3)利用者の幅広いニーズを把握する
(4)様々な地域の社会資源をニーズに適切に結びつける
(5)総合的かつ継続的なサービスの供給を確保する
(6)社会資源の改善及び開発を推進する
4 障害者ケアマネジメントの基本理念
(1)ノーマライゼーションの実現に向けた支援
(2)自立と社会参加の支援
(3)主体性、自己決定の尊重・支援
(4)地域における生活の個別支援
(5)エンパワメントの視点による支援
5 障害者ケアマネジメントの原則
(1)利用者の人権への配慮
(2)総合的なニーズ把握とニーズに合致した社会資源の検討
(3)ケアの目標設定と計画的実施
(4)福祉・保健・医療・教育・就労等の総合的なサービスの実現
(5)プライバシーの尊重
6 相談窓口
7 障害者ケアマネジメントの過程
(1)ケアマネジメントの希望の確認
(2)アセスメント
(3)ケア計画の作成
(4)ケア計画の実施
(5)モニタリング
(6)ケアマネジメントの終了
8 障害者ケアマネジメントの実施体制
(1)障害者ケアマネジメントの実施主体等
(2)障害者ケアマネジメント従事者の役割
(3)障害者ケアマネジメント従事者に求められる資質
(4)障害者ケアマネジメント従事者の資質の確保
(5)都道府県及び市町村の役割
(6)関係諸機関との連携
9 各種様式



はじめに
 ケアマネジメントは、生活ニーズに基づいたケア計画にそって、さまざまなサービスを一体的・総合的に提供する支援方法である。この支援方法は、障害者が地域生活するうえで必要不可欠なものである。そのため、障害者ケアマネジメント体制整備検討委員会(座長:白澤政和大阪市立大学大学院教授)を設置し、障害者の意向に基づきケアマネジメントが円滑に実施できるように「障害者ケアガイドライン」を検討してきた。
 障害者に対する福祉サービスは平成15年度より支援費制度のもとで実施されることになるが、その際にケアマネジメントの方法が一層重要となってくる。その理由は、この制度のもとでは、障害者は自らサービスを選択することとなり、多くの場合、障害者の自己選択や自己決定を支援し、質の高い地域生活が得られるような援助が求められる。このためには、障害者の権利を擁護する立場からケアマネジメントがきわめて有効な手法であり、時宣を得たガイドラインになったと考えている。
 そのため、本ガイドラインでは、障害者ケアマネジメントが必要となってきた背景を明らかにし、障害者に対するケアマネジメントの基本的な考え方やその過程の特徴を示している。この中で、「障害者主体」のケアマネジメントをいかに実施するかに焦点を当て、障害者に必要な地域の社会資源の改善・開発もケアマネジメントの重要な機能として位置付けている。
 さらに、ケアマネジメントが円滑に実施されるためには、2つの要件が求められる。第1は、ケアマネジメントを実施可能とする地域の仕組み作りが必要である。第2は、ケアマネジメントを実施するケアマネジメント従事者の養成が重要となる。そのため、本ガイドラインでは障害者ケアマネジメントの実施体制を提示して、これら2つの課題への具体的な今後の対応方法についても示すこととした。
 本ガイドラインを活用して、障害者に対するケアマネジメントの仕組みがそれぞれの地域で定着し、地域で生活する障害者を支援するケアマネジメント従事者が質量ともに充実することを期待したい。ひいては、支援費制度下において、利用者による福祉サービスの自己選択のもとで、障害者の地域生活が、質の高いものとなることを願っている。

1 障害者ケアガイドラインの趣旨
 この障害者ケアガイドラインは、市町村等が障害者の保健・福祉等のサービスを提供していく上で、ケアマネジメントの援助方法を用いるときの理念、原則、実施体制等を明らかにし、これにより、ケアマネジメントを希望する人たちに、複合的なニーズを満たすためのサービスを的確に提供していくためのものである。
福祉サービス利用にあたっては、利用者の主体性・選択制が尊重されることが不可欠であり、障害者が障害種別に関わりなく、身近な相談窓口で福祉サービス等について情報を入手したり、相談できる体制が必要となってくる。この障害者ケアガイドラインは、総合的で調整のとれたサービスを一体的に提供するために、だれもが身近な相談窓口を利用できるようにとりまとめたものである。また、福祉サービスに関する新しい制度である支援費制度においては、相談支援体制の整備が強く求められており、ケアマネジメントの援助方法を用いた相談支援の確立が有効であり、かつ必要である。障害者ケアマネジメントを実施する場合、障害特性等を考慮することが必要であり、本ガイドラインを基本とした上で、従来示されている障害種別の身体障害者、知的障害者、精神障害者のケアガイドラインも活用して、効果的な障害者ケアマネジメントを実施することが望まれる。

2 障害者ケアマネジメントの必要性
 障害者が地域で支援を受けようとする際に、地域ではサービスが広く散在しているため、サービスを利用しにくい状況にある。したがって、障害者が地域で生活することを支援するためには、生活ニーズに基づいたケア計画にそって、複数のサービスを一体的・総合的に提供する必要がある。
 障害者は、地域で自分らしく主体的に生活することを望んでおり、単に福祉サービスを提供するだけでなく、障害者のエンパワメントを高める視点から福祉・保健・医療・教育・就労等のさまざまなサービスを提供する必要がある。
障害者ケアマネジメントは、このような観点からケア計画を作成してサービスを提供する方法であり、さまざまな生活上の課題がある中で、自ら希望する生活を模索していく障害者の地域生活を支援するためには、障害者ケアマネジメントの援助方法は不可欠である。
 障害者がさまざまなサービスを受けようとするとき、障害者の生活ニーズに合ったサービスが求められている。障害者の生活ニーズと合っていないサービスが提供された場合には、サービス提供者と調整し、適切なサービスが提供されるよう働きかける必要がある。その際に、障害者自身がサービス提供者と調整するのが難しかったり、自分自身の意思を伝えられなかったりすることによって、障害者の抱えている課題が解決されないこともある。障害者ケアマネジメントは、障害者の権利擁護の観点に立って、生活ニーズと社会資源を適切に結びつける機能をもっている。障害者の自己決定・自己選択を尊重するためにも、障害者ケアマネジメントの援助方法を導入する必要がある。

3 障害者ケアマネジメントとは
 障害者ケアマネジメントを簡潔に表現すると、「障害者の地域における生活支援するために、ケアマネジメントを希望する者の意向を踏まえて、福祉・保健・医療・教育・就労などの幅広いニーズと、様々な地域の社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけて調整を図るとともに、総合的かつ継続的なサービスの供給を確保し、さらには社会資源の改善及び開発を推進する援助方法である。」といえる。障害者ケアマネジメントは、以下の点を考慮しながら実施される。

(1)障害者の地域生活を支援する
 地域で生活している、あるいは生活しようとする障害者に対して、本人の意向に基づく地域生活を実現するために、総合的に支援する必要がある。そのために、ケア計画を作成し実施する障害者ケアマネジメントが必要である。

(2)ケアマネジメントを希望する者の意向を尊重する
 ケアマネジメントの対象はケアマネジメントを希望する者(利用者)であり、地域生活を総合的に支援するためには、利用者の意向(要望)に基づいてケア計画が作成されなければならない。既存のサービスから出発するのではなく、利用者が望んでいる生活を明らかにし、その達成を支援するものである。

(3)利用者の幅広いニーズを把握する
 地域で生活しようとすれば、福祉・保健・医療・教育・就労等各々のライフステージに応じた課題を含む、多様な生活ニーズが発生する。障害者ケアマネジメントは、これらの多様なニーズを満たすことによって、障害者の自己実現や主体的な生き方を支援するため、幅広いニーズを利用者とともに明らかにする。

(4)様々な地域の社会資源をニーズに適切に結びつける
 障害者の生活ニーズに対応した社会資源は地域に広く散在しており、地域の社会資源を把握し、これらの社会資源を適切に結びつけることによって、障害者の地域生活を支援することが可能となる。社会資源とは、障害者の自己実現や主体的な生き方を支えるために利用可能なあらゆるものを意味する。

(5)総合的かつ継続的なサービスの供給を確保する
 障害者の地域生活を支援するためには、総合的かつ継続的なサービス提供を行う必要がある。したがって、ケアマネジメント従事者(障害者ケアマネジメントの全過程に携わり、その中心的な役割を担う者)は提供されるサービスをモニタリングし、障害者の生活ニーズに合致したサービス提供を図る。ケアマネジメント従事者は、利用者の権利擁護の観点から、サービス提供者と利用者の間に立つ存在であり、サービス提供者とケアマネジメント従事者が同一の組織に所属している場合、ケアマネジメント従事者の公正・中立を確保し、サービス提供者に利益を誘導することがないよう心がけなければならない。

(6)社会資源の改善及び開発を推進する
 障害者の生活ニーズに合致したサービスを提供するために、既存の社会資源を利用しやすくしたり、利用者のエンパワメントにつながるように改善し、また、利用者のニーズに合うサービスがない場合には新たな社会資源を行政・民間の協力を得て開発し、地域におけるネットワーク作りに貢献する必要がある。

障害者ケアマネジメントの基本理念

(1)ノーマライゼーションの実現に向けた支援
 ノーマライゼーションの実現に向けて、障害のある人もない人も、だれもが住み慣れた地域社会で普通の生活を営み、活動できる社会を構築することを目指す。そのために障害者の地域生活支援をとおして、地域住民が積極的に障害者を支える仕組みをつくることも重要である。

(2)自立と社会参加の支援
 障害者の自立は、一人ひとりが責任ある個人として主体的に生きることを意味し、障害者ケアマネジメントは、自立した生活を目指し、社会経済活動への積極的な参画を支援する。

(3)主体性、自己決定の尊重・支援
 障害者のニーズに対応したサービス提供は、一人ひとりの考え方、生活様式に関する好み等を尊重しながら、リハビリテーションの理念からも、本人が自分の能力を最大限発揮できるように支援することが必要である。サービス提供のすべての過程において、利用者の積極的な関わりを求め、利用者と情報を共有し、利用者(必要に応じて家族又は利用者が信頼する人)が望むものを選択し、利用者(必要に応じて家族又は利用者が信頼する人)の自己決定に基づき実施することが重要である。

(4)地域における生活の個別支援
 障害者ケアマネジメントは、一人ひとりの利用者の生活を知り、抱えている課題や困難を理解し、利用者の生活を取り巻く家族や各種の社会資源、地域社会との関わりの中で個別支援をする。そのため、障害者に身近な市町村が中心となって、各種行政サービスや社会経済活動への参加の機会を提供し、地域社会において質の高い生活が継続できるように支援する。

(5)エンパワメントの視点による支援
 障害者ケアマネジメントは、利用者が自己の課題を解決するにあたり、自分が主体者であることを自覚し、自分自身に自信がもてるように、利用者の力を高めていくエンパワメントの視点で支援していくことが必要である。

5 障害者ケアマネジメントの原則

(1)利用者の人権への配慮
 障害者は、ケアマネジメントについて十分な説明を受け、同意のもとにケアマネジメントを利用できるとともに、ケアマネジメント従事者、支援方法や手段等について選択することができる。選択にあたっては適切な情報が提供されるとともに、必要に応じて福祉サービス利用援助事業や成年後見制度を活用することができる。また、受けているサービスについて、苦情解決の窓口や運営適正化委員会を利用することができる。このような観点から、ケアマネジメント従事者はすべての過程において、利用者の権利が侵害されることのないよう最大限の努力をしなければならない。

(2)総合的なニーズ把握とニーズに合致した社会資源の検討
 地域生活を支援するためには、利用者の身体的・精神的側面のみならず、日常生活面や文化活動・余暇活動などの社会生活面を含めて総合的にニーズを把握し、ニーズを充足する方法やニーズに合致した社会資源の検討(アセスメント)を行う。
 そのためには、障害者ケアマネジメント従事者は、利用者と十分なコミュニケーションを図り、信頼関係を樹立する専門的援助技術が必要である。また、アセスメントは、利用者の生活全体を理解することが目的であり、その際、従来のできる・できないという問題点の把握だけではなく、取り巻く環境やその人のもっている強さに焦点を当ててアセスメントをしていくことが重要である。
 また、日常生活面でのニーズを的確に把握するためには、相談窓口における相談だけでは十分でない場合があり、家庭訪問等を通して、実際の生活の場でニーズを把握することが必要である。ただし、家庭訪問については事前にその必要性を説明し、利用者(必要に応じて家族又は利用者が信頼する人)の了解を得た上で実施することが重要である。

(3)ケアの目標設定と計画的実施
 相談を受けて利用者の総合的なニーズを把握し、その結果に基づき、利用者や必要な各種専門職と話し合いのうえ、期限を定めて具体的なケアの目標を設定し、具体的なケア計画を作成し、計画的にサービスを提供する。提供したサービスが障害者の生活状況の安定・改善につながっているかどうかを定期的に点検し、必要に応じてケア計画を見直し、サービスの内容を変更する。

(4)福祉・保健・医療・教育・就労等の総合的なサービスの実現
 これまで、「福祉」は福祉事務所等、「保健」は保健所又は市町村保健センター、「医療」は病院又は診療所、「教育」は学校等、「就労」は公共職業安定所と、サービス提供機関が異なるために、サービスを利用しにくい状況にあった。また、それぞれの機関におけるサービスの提供も単体で実施されることが多かった。障害者が地域で生活するためには福祉・保健・医療・教育・就労等のサービスが総合的に提供されなければならない。
 そのためには、各機関で提供しているサービスを十分に把握する必要があるが、利用者のニーズに応じたサービスが常に地域に存在するとは限らない。したがって、不足するサービスに関しては、サービスの対象領域を超えたサービス利用のための調整を図ったり、新たなサービスの確保や社会資源の積極的な開発に努める。

(5)プライバシーの尊重
 複合的な生活ニーズに対応して総合的にサービスを提供するためには、各種専門職等のチームアプローチが必要であるが、その場合には、各種情報の共有化が前提条件となる。この点について、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)に十分に説明し、了解を得ておくことが必要である。障害者の地域生活を支援するためには、専門職のほか、障害者相談員、民生委員、ボランティア等の支援を活用することもあり、その際、利用者及びその家族のプライバシー保護が特に重要である。
 同時に、支援活動で知り得た情報は、他に漏らしてはならないことを十分に徹底する必要がある。

6 相談窓口
 相談窓口は、障害者ケアマネジメント従事者が常駐し、福祉・保健・医療・教育・就労等に関わる相談を総合的に行い、社会福祉施設の入所の紹介等、そこで解決できるニーズに対してはそこで解決する。相談窓口だけでは解決できない複合的なニーズを満たすためには、チームアプローチが必要とされ、障害者ケアマネジメントの導入が図られる。
 相談窓口においては、利用者がケアマネジメントを希望しているのか確認するとともに、ケアマネジメント従事者を選択できるようにする。
 相談窓口は、障害種別毎に相談事業を実施している場合、障害種別毎に対応することもやむを得ないが、障害種別にこだわらず、身体障害者(児)、知的障害者(児)、精神障害者等に幅広く対応する。
 相談窓口が十分に活用されるためには、利用者が相談窓口を選択できたり、日頃から相談窓口におけるサービス内容の広報を行い、相談の場所や時間帯等利用者の利便性を考慮するとともに、関連機関との密接な連絡体制を整備強化し、各機関からの紹介や依頼を受けた場合には、利用者(必要に応じて家族又は本人が信頼する人)の了解を得て訪問するなど、柔軟で積極的な対応が必要である。

7 障害者ケアマネジメントの過程
 障害者ケアマネジメントはいくつもの過程を経て行われる。障害者ケアマネジメントの大きな意義は、これらの過程を順序立てて進むことにある。障害者ケアマネジメントの導入にあたっては、地域の社会資源やケアマネジメント等に関して情報を提供し、障害者の主体性や自己決定を尊重することが重要である。障害者ケアマネジメント過程を図式化すると図の通りである。

図 障害者ケアマネジメント過程の概略図(省略)

(1)ケアマネジメントの希望の確認
 複数のサービスを総合的かつ継続的に提供する必要があると判断された段階で、ケアマネジメントを希望するか否かを確認する。その際、利用者に障害者ケアマネジメントはどのような支援を行うのか十分に説明しなければならない。また、ケアマネジメントをいつでも中断できることを理解してもらう必要がある。同時に、ケアマネジメントの導入を判断するために、緊急性の有無、抱えている課題が単一か複数か、抱えている課題が明確になっているか、情報提供によって自分でケア計画を作成できるか等の観点を考慮する。
 さらに、コミュニケーションに制限をもつ障害者にとっては、相談場面で自分の意志を伝えられない場合があり、コミュニケーションの保障が重要となる。聴覚障害者本人の希望により手話通訳者(士)を配置する必要もある。また、家族や本人の信頼できる人を同席させることも考慮する。
 ここでは、利用者の概要と主訴をしっかり把握するとともに、一次アセスメントに入るために、家庭訪問の目的を整理する。

(2)アセスメント
 ケアマネジメントの希望の有無を確認した後、生活ニーズを把握するとともにニーズを充足する方法や社会資源の検討を行うアセスメントを実施する。アセスメントでは、ケア計画を作成するために、利用者の生活の状況や置かれている環境の状況を理解し、要望や主訴から具体的な生活ニーズを探すことが重要である。アセスメントは、障害者ケアマネジメント従事者による一次アセスメント、専門家による二次アセスメント、障害者ケアマネジメント従事者による社会資源のアセスメントから成る。
 一次アセスメントは、障害者ケアマネジメント従事者が行い、家庭訪問の目的を理解してもらい、そこで何を明らかにするかを整理しておく。必要に応じて、専門家といっしょに家庭訪問することも考慮する。一次アセスメントでは、利用者の一日の生活の流れと地域や住まい等の生活環境を把握するとともに、利用者の要望を引き出す。さらに、利用者や家族が望んでいる暮らしを明らかにする。
 二次アセスメントは、専門家によるアセスメントで、障害者ケアマネジメント従事者の依頼によって実施する。障害者ケアマネジメント従事者は、利用者の了解を得て、相談受付票や一次アセスメント票の情報を共有し、課題解決に有効な専門家を選ぶ。二次アセスメントに関わった専門家は、その結果をまとめて報告書を作成し、障害者ケアマネジメント従事者に提出するとともに、ケア会議で報告する。必ずしも二次アセスメントを必要としない利用者もいるのですべての障害者に対して、二次アセスメントをしなければならないと考える必要はない。
 障害者ケアマネジメント従事者は、相談受付票、一次アセスメント票、二次アセスメント票でわかったことを生活ニーズに整理する。
 利用者の生活ニーズの整理が終わったら、それらのニーズを解決すると思われる社会資源を検討する。障害者ケアマネジメント従事者は、地域の社会資源について、障害別、生活ニーズ別のリストを作成する。社会資源の検討は、利用者のニーズに合った社会資源かどうか、その社会資源は利用できる可能性はあるか、利用は容易か等の観点から行う。もし、利用者に合った社会資源ではないと判断したら、その改善の可能性まで把握する。
 相談受付票、一次アセスメント票、二次アセスメント票、社会資源の検討の結果を踏まえて、次のケア計画作成の段階に入る。

(3) ケア計画の作成
 ケア計画案の作成は、障害者ケアマネジメント従事者が、利用者とももに、おおまかなケア計画の作成から始める。その際、援助する生活ニーズについてそれぞれ目標を立て、優先順位をつけてみる。さらに、社会資源のアセスメントを踏まえ、具体的な援助方法をリストアップする。(「ケア計画(検討)表」「週間ケア計画表」参照)
 これらに基づき、ケア計画を利用者と話し合いのうえ作成する。作成されたケア計画は最終的に利用者(必要に応じて家族又は利用者が信頼する人)の同意を得る。この場合、ケアマネジメント従事者は、利用者(必要に応じて家族又は利用者が信頼する人)と協働する人(医療関係者、福祉サービス関係者、教育関係者等)から構成されるケア計画作成会議を開催し、利用者の同意を得て情報を共有しケア計画を作成する。その際、現実的なケア計画を作成するためには、公的サービスとの調整を図る必要があること等から、市町村担当職員も当該会議に参加することが求められる。
 ケア計画作成会議において決定した計画内容については再度利用者の同意を得る。障害者ケマネジメント従事者は、ケア会議における会議録をまとめて、利用者や会議参加者に配布する。この会議録は、モニタリングや再アセスメントを行うときに、貴重な資料として活用する。

(4) ケア計画の実施
 ケア会議において決定された計画を実施する前に、サービス調整をする必要がある。このサービス調整では、利用者のニーズを理解したうえで、エンパワメントの視点によるサービスが提供されるように働きかける。障害者ケアマネジメント従事者は、サービス提供者に、ケア計画に基づく個別援助計画の作成を求める。サービス提供者が、利用者の家庭を訪問したいと望んでいれば、利用者との相談のうえ、家庭訪問をして詳細な個別援助計画の作成にあたれるよう考慮する。このような過程を経ると、適切なサービス提供が図れることになる。サービス調整の段階で、ケア計画の修正が生じた場合、障害者ケアマネジメント従事者は、利用者や関係者にその旨を連絡し、了解をとる。

(5) モニタリング
 モニタリングは、障害者ケアマネジメント従事者が、ケア計画に基づいてサービスが計画どおり実施されているかどうかを確認する。確認の内容は、新たなニーズが生じていないか、計画どおりのスケジュールでサービスが提供されているか、サービスの内容が質的に低下していないか、利用者が満足してサービスを受けているか等の観点から実施する。このモニタリングにおいて、障害者ケアマネジメント従事者の調整の不備や、サービス提供者が利用者のニーズを誤解する等、ケアマネジメントを進めるうえで微調整しなければならないことを発見することになる。
 モニタリングにおいて、利用者から新たなニーズが出てきた際は、再度ニーズ把握を行い、ケア計画を修正する必要があるときは、再アセスメントとなる。再アセスメントを行うとき、ケア計画を決定したケア会議の会議録を見直し、検討を加えたニーズかどうか、また、ケア会議において見落としたニーズかを調べておく。再アセスメントは、障害者ケアマネジメント過程のニーズ把握に戻ることになる。

(6) ケアマネジメントの終了
 利用者がケアマネジメントを希望しなくなったとき、新たなケア計画が必要ないと判断されたとき、ケアマネジメントは終了する。病院・社会福祉施設等に入院あるいは入所した場合、ケアマネジメントはいったん終了する。しかし、退院・退所後を考慮してケアを継続できる体制を準備しておく必要がある。
 また、障害者ケアマネジメントにおいては、社会資源の改善や開発も、重要な要素である。したがって、障害者ケアマネジメントは、個別事例を通して地域の社会資源の開発や地域ネットワークの構築を図っていく過程でもある。

8 障害者ケアマネジメントの実施体制

(1)障害者ケアマネジメントの実施主体等
 障害者ケアマネジメントは、障害者の地域生活を支援する観点から、あらゆる相談支援において用いられるべき援助方法であり、全国どこにおいても障害者が安心して障害者ケアマネジメントを活用した相談支援を受けられることが重要である。
 そこで、障害者ケアマネジメントを全国的に普及させるために、特に以下のような実施主体等において障害者ケアマネジメントを実施または活用する。
 障害者ケアマネジメントの実施主体は第一義的には市町村であり、市町村が自ら実施するか、あるいは都道府県及び市町村が委託している市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業及び精神障害者地域生活支援センターにおける相談支援において、障害者ケアマネジメントを実施する。
 また、障害者ケアマネジメントは、都道府県が設置する福祉事務所、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、保健所及び精神保健福祉センター等における相談業務においても、障害者ケアマネジメントを活用すべきである。

(2)障害者ケアマネジメント従事者の役割
 障害者ケアマネジメント従事者は、ケアマネジメントの全過程に携わり、中心的な役割を担う。障害者ケアマネジメント従事者と利用者との関係は対等な関係であり、ある利用者はケア計画作成だけを希望したり、サービス調整だけを希望することもあるので、利用者への支援にあたっては、個々の利用者の希望に合わせた支援が求められる。また、利用者が自らサービス調整やケア計画作成ができるよう支援することも重要である。さらに、障害者ケアマネジメントは、総合的かつ継続的なサービスの提供を確保するため、利用者のニーズに応じて、様々なフォーマル、あるいはインフォーマルな支援者によるチームワークの取れた支援ネットワークによって進められる。同じ体験をした者が相談・支援にあたることが効果的であるとの視点に立って、身体障害者相談員等の障害者相談員がサービスやケアマネジメントに関する情報を提供したり、支援ネットワークに参加し、支援・助言することも有効である。
 したがって、障害者ケアマネジメント従事者は多くの関係諸機関と連携しながら、利用者の自己決定を尊重しつつ、責任をもって次の役割を担う。

  • 相談窓口の運営
  • アセスメントの実施
  • 必要に応じて専門的なアセスメントの依頼
  • ケア会議の運営・開催
  • ケア目標の設定とケア計画の作成
  • 公的サービスに関する市町村との連絡・調整
  • サービス提供機関との連絡・調整
  • モニタリング及び再アセスメント
  • ケアマネジメントの評価
  • ケアマネジメント終了の判断
  • 社会資源の改善及び開発
  • 支援ネットワークの形成

(3)障害者ケアマネジメント従事者に求められる資質
 障害者ケアマネジメントの全過程に携わる障害者ケアマネジメント従事者には、社会福祉援助技術などの各種援助技術を機能的に統合したソーシャルワークの実践に努める必要があることから、次のような資質が求められる。

(1) 信頼関係を形成する力
 障害者ケアマネジメントにおいて、障害者ケアマネジメント従事者に信頼関係を形成する力が求められる。障害者ケアマネジメント従事者は、相談を受けてから次の段階に進めないとか、訪問を拒否される等障害者からパートナーとして認められない事態にならないように、特に初期の段階から信頼関係を形成することが求められる。そのため、障害者ケアマネジメント従事者は利用者の立場に立つことが必要である。また、障害者ケアマネジメント従事者は、多くの人々とチームワークを組むことになるので、利用者のプライバシーの保護、人権の尊重に配慮する必要がある。

(2) 専門的面接技術
 障害者ケアマネジメント従事者は、相談をとおして、利用者の生活全体を理解する。したがって、利用者を一人の生活者として理解し、相互の十分な意思疎通を図ることによって、利用者のニーズをともに明らかにしていく。これらの過程において、障害者ケアマネジメント従事者は、利用者の感情表現を敏感に受けとめ、利用者の価値観を受容し、従事者自身の感情を覚知しながら、利用者の自己決定を促すような専門的面接技術の力を伸ばすことが大切である。

(3) ニーズを探し出すアセスメント力
 障害者ケアマネジメント従事者は、利用者とともにニーズを探し出すアセスメント力を求められる。情報収集の過程を経て、ニーズを明確にしていく観点を理解することが大切である。さらに、ニーズの背景となっている要因を分析する。この際、利用者のできないことに着目するだけでなく、利用者のプラスの力を引き出すことにも着目してニーズを探す視点が必要である。

(4) サービスの知識や体験的理解力
 障害者ケアマネジメント従事者は、利用者と社会資源の間に立って、複数のサービスを適切に結びつけ調整を図り総合的かつ継続的なサービスの提供を確保する。そのためには、地域にある様々な公的サービスやインフォーマル・サポートが、どこにあり、どのようなサービス内容で、どのように利用するかを知る必要がある。さらに、障害者ケアマネジメント従事者は、利用者がこれらの社会資源を利用しやすくするために、体験的に理解する力が求められる。

(5) 社会資源の改善及び開発に取り組む姿勢
 障害者ケアマネジメント従事者は、利用者のニーズに合致したサービスを提供するため、サービス提供者や行政の窓口等に社会資源の改善等を働きかけることが求められる。また、利用者のニーズを充足するための社会資源が不足している場合においても、利用者の立場に立って、社会資源の開発のためにサービス提供者や行政等に提言し、協力して取り組む。

(6) 支援ネットワークの形成力
 障害者ケアマネジメント従事者は、利用者の地域生活を個別的に支援する。障害者ケアマネジメントで個別性をとおして、利用者のニーズを充足させるサービスを総合的・一体的に提供する。これらのサービス提供は、公的サービスやインフォーマル・サポート等を組み合わせた、様々な支援者のチームワークによって実施される。したがって、利用者のための支援ネットワークを形成し、利用者が満足を得られるように調整される。障害者ケアマネジメント従事者は、サービス提供者に情報を提供したり、学習の場を提供することによって、支援ネットワークを作り、障害者ケアマネジメントを効果的に進める。

(7) チームアプローチを展開する力
 障害者ケアマネジメントの各過程においては、多くの関係者とチームを組むが、チームワークの原則はチームを組む一人ひとりが対等な関係のもとに、必要に応じてケア会議を開催するなどにより、チーム内の合意形成や役割調整等が的確に確保されていることが必要である。

(4)障害者ケアマネジメント従事者の資質の確保
 障害者ケアマネジメント従事者は、障害者の地域生活を支援する者として、上記のような資質を求められることから、障害分野に関する相談等の業務について相当程度の実務経験を有するか、または社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、作業療法士、理学療法士、保健師、看護師等の一定水準以上の専門的知識や技能を有する者について、都道府県及び指定都市(以下「都道府県等」という)が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成研修を受講することによって、資質の向上に努めるべきである。
 そのため、都道府県等が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成研修は、国が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成指導者研修に準じた内容とし、障害者を講師や助言者とするなど障害者の視点を組み入れることとする。

(5)都道府県及び市町村の役割

(1) 都道府県等の役割
 都道府県等は、国が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成指導者研修に障害者ケアマネジメントの実施について熱意をもち継続的に関われる者を推薦するとともに、国が実施する研修の修了者を中心として障害者ケアマネジメント従事者養成研修を開催する。障害者ケアマネジメント従事者養成指導者研修の受講者を推薦するに当たっては、身体障害者更生相談所・知的障害者更生相談所・精神保健福祉センター・保健所等の職員及び障害者分野に関する相談等の業務に相当程度の実務経験を有する障害者を優先的に推薦することが望ましい。
 都道府県は、身体障害者更生相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、保健所等を通じて、市町村等の障害者ケアマネジメントに対して指導・助言を行い、障害者ケアマネジメントの普及に努める。
 また、都道府県等は、障害者ケアマネジメントの充実を図る観点から、障害者ケアマネジメント従事者の継続研修を実施することが望ましい。
 都道府県等は、医療機関、保健所、職業安定所、地域障害者職業センター、養護・盲・聾学校等の関係諸機関との連携を図るために原則として障害保健福祉圏域等毎に連絡調整会議を主宰し、障害者ケアマネジメントが円滑かつ効果的に実施できるよう努める。
 平成8年度より実施されている障害者プランによって、介護等のサービスの量的・質的整備が図られているところであるが、都道府県等は、障害保健福祉圏域等を考慮し、サービスの質的・量的整備を一層推進する必要があり、各障害保健福祉圏域等が同水準として機能するような指導性が求められる。
 また、障害者ケアマネジメントが実施されることにより、潜在的なニーズが顕在化すること等により、都道府県はそれをもとに市町村と連携して地域福祉計画、都道府県障害者計画等に反映させ、障害者の地域生活の支援に積極的に取り組むよう努める。また、都道府県は、市町村障害者計画の策定においても積極的に支援する。
 都道府県等は、地域で生活する、あるいは生活しようとする障害者に対して障害者ケアマネジメントを実施する機関や福祉サービス等の情報提供を図る。

(2) 市町村の役割
 市町村は、障害者ケアマネジメントの第一義的な実施主体であり、自ら障害者ケアマネジメントを実施するか、あるいは委託している市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業、精神障害者地域生活支援センターにおける相談支援を通して、障害者ケアマネジメントを実施する。
 市町村は、都道府県等が実施する障害者ケアマネジメント従事者養成研修に障害者ケアマネジメントの実施について熱意をもち継続的に関われる者を派遣し、計画的に障害者ケアマネジメント従事者を確保するとともに資質の向上に努めなければならない。
 市町村は、障害者の地域生活を支援するため、障害者ケアマネジメントを通じて明らかになった社会資源の実情を考慮し、適宜、市町村障害者計画に反映させ、公的サービスの充実を図るよう努めるとともに、障害者ケアマネジメント従事者と連携し、地域のインフォーマル・サポートに対する支援を行う。

(6)関係諸機関との連携
 利用者が必要とするサービスは多種多様であり、また、そのサービス提供機関は福祉、保健、医療、教育、就労等さまざまであることから、障害者ケアマネジメント従事者は、それらの諸機関と緊密に連携する必要がある。障害者施設及び病院等から地域生活へ移行しようとする障害者のために、障害者施設及び病院等との緊密な連携が重要である。したがって、ケアマネジメントを有効に機能させるためには、都道府県等が主宰する連絡調整会議を活用して、利用者のための支援ネットワーク作りに努めることが大切であり、そのために各関係諸機関の専門職、ボランティア、障害者団体等によるチームワークが必要である。

9 各種様式
 障害者ケアマネジメントの過程において使用する各種様式については、相談受付票、一次アセスメント票、二次アセスメント票、ケア計画(検討)表、週間ケア計画表が必要になる。これらの各種様式は、障害種別のケアガイドラインの中に示されているが様式1・2・3は以下の項目が最低限網羅されている必要がある。なお、様式4・5については、以下の様式を参考とする。

<様式1〜5> 省略





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