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児童の商業的性的搾取に反対する世界会議「宣言」
1996年8月29日


1. 我々は、「児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」のためにストックホルムに集い、122カ国の政府を代表し、非政府組織、「アジア観光における児童買春根絶国際キャンペーン」(ECPAT)、UNICEF及び他の国連関係機関、その他の世界中の他の関係機関及び関係者とともに、ここに、児童の商業的性的搾取に反対する地球規模のパートナーシップを公約する。

課題(チャレンジ)
2. 毎日、世界中でより多くの児童が新たに性的搾取及び性的虐待を受けている。かかる現象を終わらせるために、地方、地域、国家、及び国際レベルで、一致団結した行動が必要である。
3. 全ての児童は、あらゆる形態の性的搾取及び性的虐待からの完全な保護を受ける資格がある。これは普遍的な意味を持つ国際法文書「児童の権利条約」(187ヶ国加盟(注:当時))によって再確認されている。国家は、児童を性的搾取及び性的虐待から保護し、犠牲となった児童の身体的・精神的回復及び社会的再統合を促進することを要求されている。
4. 「児童の権利条約」によれば、児童に関する全ての行動において、児童にとり最も望ましい利益が第一に考慮されなければならず、又、児童の権利が、いかなる種類の差別も伴うことなく享受されなければならない。児童に影響を及ぼす全ての問題において、児童の観点が、その年齢及び成熟度に応じ、しかるべく重視されるべきである。
5. 児童の商業的性的搾取は児童の権利の根本的な侵害である。これには、大人による性的虐待及び児童あるいは第三者に対する現金又は現物による報酬を伴うものである。児童は性的及び商業的対象として取り扱われる。児童の商業的性的搾取は、児童に対する強制及び暴力の一形態であり、強制労働及び一種の現代的奴隷制に当たる。
6. 貧困は、たとえそれがかかる搾取をもたらしうる環境の誘因となるとしても、児童の商業的性的搾取の正当化に利用されるべきではない。誘因となる一連の複雑な他の要素には、経済的不均衡、不公平な社会・経済的構造、正常に機能しない家庭、教育の欠如、増大する消費主義、都市・地方間の人口移動、性差別、男性の無責任な性的行動、有害な伝統的慣習、武力紛争、児童売買が含まれる。これら全ての要素は、商業的性的搾取のために彼らを手に入れようとする人々に対する、女児及び男児の弱い立場を助長する。
7. 犯罪者及び犯罪組織が弱い児童を入手し、商業的性的搾取に導き、またかかる搾取を行うことに関わっている。これらの犯罪者・組織は、児童との不法な性的快楽を求める、主に男性の顧客によって創出された性市場における需要に応じている。贈収賄、共謀、法の欠如及び/あるいは不適切な法、法の曖昧な施行、児童への有害な影響に対する法施行関係者の感性の乏しさは、全て直接的・間接的に児童の商業的性的搾取をもたらす更に深刻な要素である。児童の商業的性的搾取は、個人による行為、あるいは小規模(例:家族、知人)または大規模(例:犯罪組織)に組織された行為を含む。
8. 社会の全てのレベルにおいて広範囲にわたる個人及び集団が、搾取の実行に寄与している。これには、仲介者、家族、ビジネス部門、サービスの提供者、顧客、コミュニティの指導者、政府職員が含まれ、彼ら全員が、無関心あるいは児童が被っている有害な結果に対する無知、または児童を経済的商品として見る態度及び価値観を持つことを通じて搾取に寄与する可能性がある。
9. 児童の商業的性的搾取は、低年齢での妊娠、母親の死亡、負傷、発育の遅れ、身体障害、エイズを含む性感染症の恐れ等、児童の身体的、心理的、精神的、道徳的及び社会的発達にとって、深刻な、生涯にわたる、生命を脅かしさえする結果をもたらしうる。幼年期を楽しみ、生産的な、報いられる、威厳のある人生を送ることに対する児童の権利は、非常に脅かされている。
10. 児童の商業的性的搾取に対抗するための法、政策、計画は存在するが、かかる法、政策、計画の精神及び文言に効力を与えるため、より強力な政治的意志、より効果的な政策の履行、及び適切な資源の配分が必要である。
11. 児童の商業的性的搾取と闘う主要な責務は国家と家庭にかかっている。市民社会もまた、児童を商業的性的搾取から防止・保護するために担うべき重要な役割がある。かかる搾取に対抗するため、政府、国際機関及び社会の全ての部門の間で強力なパートナーシップを築かなければならない。

公約(コミットメント)
12. 本件世界会議は、「児童の権利条約」に留意しつつ、児童の権利へのコミットメントを繰り返し述べ、全ての政府に対し、国内・国際機関及び市民社会との協力のもと、以下の行動を取ることを要請する。
* 児童の商業的性的搾取に反対する行動に高い優先度を与え、この目的のために適切な資源を配分する。
* 児童が性的に取り引きされるのを防ぎ、児童を商業的性的搾取から保護する際の家庭の役割を強化するため、国家及び社会の全ての部門間のより強い協力を促進する。
* 児童の商業的性的搾取及び他の形態の児童の性的搾取を犯罪とし、自国民であれ外国人であれ、これに関わった全ての犯人を有罪とするも、その際かかる行為の犠牲となった児童を処罰しないことを確保する。
* 児童の商業的性的搾取をなくすため、適切な範囲で、法、政策、計画及び慣習を見直し、改正する。
* 児童を商業的性的搾取から保護するため、法、政策、計画を施行し、法施行当局間の連絡及び協力を強化する。
* 児童の商業的性的搾取に反対する関連の地域・国内・地方組織によって支持された法、政策及び計画の採用、履行及び普及を促進する。
* 児童の商業的性的搾取を防止し、犠牲となった児童を保護及び支援し、彼らの回復及び社会への再統合を容易にするためのジェンダーに配慮した総合的な予定及び計画を開発し、実施する。
* 両親及びその他の法的に児童に対し責任を有する者が、児童を商業的性的搾取から保護するため、その権利を実現し、義務及び責任を果たすことが可能となることを確保するため、教育、社会的動員、開発活動を通じて、その環境を創出する。
* 児童の商業的性的搾取の根絶のために各国を支援するため、政治的及び他のパートナー、政府間機関及びNGOを含む国内・国際社会を動員する。
* 児童の商業的性的搾取の防止及び根絶における、児童を含む民衆参加の役割を強化する。
13. 本件世界会議は、児童の権利の保護、特に「児童の権利条約」及び他の関連文書の履行を支援するため、また、世界中の児童の商業的性的搾取を終わらせるため、この「宣言」及び「行動のための課題」を採択する。



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