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事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針

平成10年労働省告示第20号



 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第21条第2項の規定に基づき、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針を次のように定め、平成11年4月1日から適用することとしたので、同条第3項において準用する同法第4条第5項の規定に基づき、告示する。

1 はじめに

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るためには、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されること(以下「職場におけるセクシュアルハラスメント」という。)がないようにすることが必要である。しかしながら、現状では、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容についての事業主や労働者の理解が十分ではなく、また、その防止のための措置を講じている事業主が少ない状況にある。また、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る状況等が多様であることから、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントが生じないよう雇用管理上配慮をするに当たっては、その状況等に応じて最も適切な措置を講ずることが重要である。この指針は、こうしたことを踏まえ、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を示すとともに、事業主が雇用管理上配慮すべき事項を定めるものである。

2 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容

(1)職場におけるセクシュアルハラスメントには、職場において行われる性的な言動に対する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により女性労働者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。

(2)「職場」とは、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる。例えば、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅等であっても、当該労働者が業務を遂行する場所であればこれに該当する。

(3)「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。

(4)「対価型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる女性労働者の意に反する性的な言動に対する女性労働者の対応により、当該女性労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。

@ 事務所内において事業主が女性労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該女性労働者を解雇すること。
A 出張中の車中において上司が女性労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、当該女性労働者について不利益な配置転換をすること。
B 営業所内において事業主が日頃から女性労働者に係る.性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該女性労働者を降格すること。

(5)「環境型セクシュアルハラスメント」とは、職場において行われる女性労働者の意に反する性的な言動により女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。

@ 事務所内において事業主が女性労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該女性労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。
A 同僚が取引先において女性労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該女性労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。
B 女性労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該女性労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと。

3 雇用管理上配慮すべき事項職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するため、事業主は、雇用管理上次の事項について配慮をしなければならない。

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化し、労働者に対してその方針の周知・啓発をすることについて配慮をしなければならない。

(事業主の方針の明確化及びその周知・啓発について配慮をしていると認められる例)
@ 社内報、パンフレット等広報又は啓発のための資料等に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布すること。
A 服務上の規律を定めた文書に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を記載し、配布又は掲示すること。
B 就業規則に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を規定すること。
C 労働者に対して職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を実施すること。なお、周知・啓発をするに当たっては、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について労働者の理解を深めることが重要である。

(2)相談・苦情への対応事業主は、相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしなければならない。また、事業主は、相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしなければならない。

(相談・苦情への対応のための窓口を明確にすることについて配慮をしていると認められる例)
@ 相談・苦情に対応する担当者をあらかじめ定めておくこと。
A 苦情処理制度を設けること。

(相談・苦情に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応することについて配慮をしていると認められる例)
@ 相談・苦情を受けた場合、人事部門との連携等により円滑な対応を図ること。
A 相談・苦情を受けた場合、あらかじめ作成したマニュアルに基づき対応すること。なお、事業主は、職場におけるセクシュアルハラろメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、相談・苦情に対応することが必要である。

(3)職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合において、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしなければならない。また、事業主は、その事案に適正に対処することについて配慮をしなければならない。

(事実関係を迅速かつ正確に確認することについて配慮をしていると認められる例)
@ 相談・苦情に対応する担当者が事実関係の確認を行うこと。
A 人事部門が直接事実関係の確認を行うこと。
B 相談・苦情に対応する担当者と連携を図りつつ、専門の委員会が事実関係の確認を行うこと。

(事案に適正に対処することについて配慮をしていると認められる例)
@ 事案の内容や状況に応じ、配置転換等の雇用管理上の措置を講ずること。?就業規則に基づく措置を講ずること。

4 その他

(1)事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る女性労働者等の情報が当該女性労働者等のプライバシーに属するものであることから、その保護に特に留意するとともに、その旨を女性労働者等に対して周知する必要がある。

(2)事業主は、職場におけるセクシュアルハラスメントに関して、女性労働者が相談をし、又は苦情を申し出たこと等を理由として、当該女性労働者が不利益な取扱いを受けないよう特に留意するとともに、その旨を女性労働者に対して周知する必要がある。




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