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深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針
平成10年労働省告示第21号

 深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針を次のように定め、平成11年4月1日から適用することとしたので、告示する。


1 趣旨
 この指針は、女性労働者の職業生活の充実を図るために、深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関し、事業主が講ずべき措置について定めたものである。

2 深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備
 事業主は、その雇用する女性労働者を深夜業に従事させる場合には、その女性労働者の就業環境等の整備に関し、特に次の点について適切な措置を講ずるべきである。
(1) 通勤及び業務の遂行の際における安全の確保
 事業主は、送迎バスの運行、公共交通機関の運行時間に配慮した勤務時間の設定、従業員駐車場の防犯灯の整備、防犯ベルの貸与等を行うことにより、深夜業に従事する女性労働者の通勤の際における安全を確保するよう努めるものとすること。
 また、事業主は、防犯上の観点から、深夜業に従事する女性労働者が一人で作業をすることを避けるよう努めるものとすること。
(2) 子の養育又は家族の介護等の事情に関する配慮
 事業主は、その雇用する女性労働者を新たに深夜業に従事させようとする場合には、子の養育又は家族の介護、健康等に関する事情を聴くこと等について配慮を行うよう努めるものとすること。
 なお、事業主は、子の養育又は家族の介護を行う一定範囲の労働者が請求した場合には、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)の定めるところにより、深夜業をさせてはならないこと。
(3) 仮眠室、休養室等の整備
 事業主は、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づく労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)の定めるところにより、男性用と女性用に区別して、適当な睡眠又は仮眠の場所を設けること。
 なお、事業主は、同法に基づく同令の定めるところにより、男性用と女性用に区別して便所及び休養室等を設けること。
(4) 健康診断等
 事業主は、同法に基づく同令の定めるところにより、深夜業を含む業務に常時従事させようとする労働者を雇い入れる際、又は当該業務への配置替えを行う際及び6月以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を行うこと。
 また、事業主は、健康診断の結果、当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された場合には、同法の定めるところにより、医師の意見を勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、深夜以外の時間帯における就業への転換、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずること。
 なお、事業主は、労働基準法(昭和22年法律第49号)の定めるところにより、妊産婦が請求した場合には、深夜業をさせてはならないこと。


資料:深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針について

平成10年6月11日
女発第170号
(各都道府県女性少年室長あて労働省女性局長通達)

 労働基準法(昭和二二年法律第四九号)の女性労働者に対する時間外及び休日労働並びに深夜業の規制については、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成九年法律第九二号。以下「整備法」という。)第四条の施行により、平成一一年四月一日から、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律(昭和四七年法律第一一三号)等の改正と併せて、廃止されることとなっている。
 これに伴い、これまで深夜業が禁止されていた事業、業務等において新たに女性労働者が深夜業に従事することが可能になるが、今般、深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関し、事業主が講ずべき措置について、深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針(平成一〇年労働省告示第二一号。以下「指針」という。)(別紙参照)が定められ、本年三月一三日に告示されたところであり、平成一一年四月一日から適用されることとなっている。
 これの趣旨、内容及び取扱いについては、下記のとおりであるので、事業主に対する指針の周知・啓発に遺漏なきを期されたい。



第一 指針の内容等

一 趣旨
 今回の法改正は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る観点から行うものであり、女性労働者に関する深夜業の規制の解消後においては、新たに深夜業に従事することとなる女性労働者が円滑に深夜業に従事することができるようにすることが重要であることから、この指針においては、女性労働者を深夜業に従事させようとする事業主が図るべき就業環境等の整備に関し、特に留意すべき事項について明らかにしたものであること。
 「就業環境等」の「就業環境」とは、労働者が業務に就いている際の環境だけでなく、通勤の際における環境をも含めたものであり、「等」とは、指針二の(二)に定める事項をいうものであること。
 「事業主」とは、その経営の主体をいい、個人企業にあってはその企業主が、会社その他の法人組織の場合にはその法人そのものが事業主であること。

二 指針の内容
(一) 通勤及び業務の遂行の際における安全の確保(指針二の(一)関係)
 指針二の(一)は、深夜時間帯については、通勤及び業務の遂行の際における防犯面での安全が確保されるよう配慮することが必要であることを明らかにしたものであること。
 「通勤」とは、労働省が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路及び方法により往復することをいうものであること。
 「業務の遂行」とは、労働者が実際にその業務に就いている状態をいうものであること。
 「送迎バスの運行、公共交通機関の運行時間に配慮した勤務時間の設定、従業員駐車場の防犯灯の整備、防犯ベルの貸与」は例示であり、労働者の通勤方法、公共交通機関の運行状況、労働者の要望等を踏まえ、各事業場の状況に応じ適切な措置を講ずるように努めるものとすること。
 「防犯ベルの貸与等」の「等」とは、例えば通勤に係るタクシー代を補助することが考えられるものであること。
 また、「防犯上の観点から、深夜業に従事する女性労働者が一人で作業をすることを避けるよう努める」は、防犯上の観点からの配慮として、周囲に労働者がいない状態で女性労働者が一人で作業をすること及び男性労働者の中で女性労働者が一人で作業をすることをできる限り避ける必要があることを明らかにしたものであり、一人で作業せざるを得ない業務に女性を配置できないという趣旨ではないこと。
 なお、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和六一年労働省令第二号)第一七条において、事業主は、女性労働者の職業生活の充実を図るため、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるものとする旨規定されており、指針二の(一)は、この規定の内容を具体化したものであること。この規定の解釈については、平成一〇年六月一一日付け女発第一六八号によられたいこと。
(二) 子の養育又は家族の介護等の事情に関する配慮(指針二の(二)の関係)
 指針二の(二)は、現在、深夜以外の時間帯の勤務に従事している女性労働者を深夜業に従事させようとする場合には、その労働条件の変更となることから、その女性労働者の育児や介護に係る家族的責任の状況、本人の健康状況等について事情を聴き、その事情を考慮するなどの配慮を行うように努めることを明らかにしたものであること。
 「その雇用する女性労働者を新たに深夜業に従事させようとする」とは、既に深夜以外の時間帯の勤務に従事している女性労働者を深夜業に従事させようとすることの意であること。
 「健康等」の「等」には、例えば労働者の家事負担の状況や学業との両立に関する状況が考えられるものであること。
 「事情を聴くこと等」の「等」には、例えば聴取した事情を尊重することが考えられるものであること。
 また、子の養育又は家族の介護を行う一定範囲の男女労働者に関しては、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成三年法律第七六号。以下「育児・介護休業法」という。)第一六条の二及び第一六条の三において、深夜業の制限の制度が規定されており、指針二の(二)のなお書きは、この旨を明らかにしたものであること。なお、育児・介護休業法第一六条の二及び第一六条の三の規定の解釈については、平成一〇年六月一一日付け女発第一七一号によられたいこと。
(三) 仮眠室、休養室等の整備(指針二の(三)関係)
 指針二の(三)は、労働安全衛生法(昭和四七年法律第五七号)の定めるところにより、仮眠室、休養室等を設けなければならない義務があることを明らかにしたものであること。
 仮眠室については、労働安全衛生法第二三条に基づく労働安全衛生規則(昭和四七年労働省令第三二号)第六一六条第一項の定めるところにより、夜間に労働者に睡眠を与える必要のあるとき、又は労働者が就業の途中に仮眠することのできる機会があるときは、適当な睡眠又は仮眠の場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない義務があること。
 便所については、労働安全衛生法第二三条に基づく労働安全衛生規則第六二八条第一項第一号の定めるところにより、男性用と女性用に区別して設けなければならない義務があること。
 休養室等については、労働安全衛生法第二三条に基づく労働安全衛生規則第六一八条の定めるところにより、常時五〇人以上又は常時女性三〇人以上の労働者を使用するときは労働者がが床することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない義務があること。
(四) 健康診断等(指針二の(四)関係)
 指針二の(四)は、労働安全衛生法の定めるところにより、健康診断を実施しなければならない義務があること等を明らかにしたものであること。
常時使用する労働者を雇い入れるときは、労働安全衛生法第六六条第一項に基づく労働安全衛生規則第四三条の定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない義務があること。
深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、労働安全衛生法第六六条第一項に基づく労働安全衛生規則第四五条第一項の定めるところにより、深夜業への配置替えを行う際及び六月以内ごとに一回、定期に、医師による健康診断を行わなければならない義務があること。
また、健康診断の結果、当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された場合には、労働安全衛生法第六六条の三第一項の定めるところにより、適切な措置を講じなければならない義務があること。
さらに、指針二の(四)のなお書きは、労働基準法第六六条第三項の定めるところにより、妊産婦が請求した場合は深夜業をさせてはならないこととされていることを明らかにしたものであること。
三 留意事項
 指針中、育児・介護休業法、労働安全衛生法及び労働基準法の規定に基づく措置については、深夜という時間帯に特有のもの又は男女別に講ずることとされているものに着目し確認的に明らかにしたものであり、これまでの取扱いを変えたり、事業主に対して新たな義務を課したものではないことに留意すること。

第二 周知活動
 本省女性局においては、本指針の内容を含んだリーフレット及びパンフレットを作成し、都道府県女性少年室に送付しているので、整備法等の説明会等においてこれを活用するとともに、必要に応じ、都道府県労働基準局等関係機関に協力要請を行う等により、本指針の効果的な周知に努めること。




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