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雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について
平成10年6月11日
女発第168号
各都道府県女性少年室長あて労働省女性局長通達
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律(平成九年法律第九二号)」については、平成九年六月一八日付け労働省発婦第一六号により、労働事務次官より貴職あて通達され、また、同法の平成一一年四月一日施行に関して、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係省令の整備に関する省令(平成一〇年労働省令第七号)」(別紙一参照)、「募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に対処するための指針(平成一〇年労働省告示第一九号。以下第二において「指針」という。)」(別紙二参照)及び「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上配慮すべき事項についての指針(平成一〇年労働省告示第二〇号。以下第三において「指針」という。)」(別紙三参照)はいずれも本年三月一三日に公布又は告示されたところであるが、同法第二条の規定により改正された「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四七年法律第一一三号。以下「法」という。)」、同令第一条の規定により改正された「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和六一年労働省令第二号。以下「則」という。)」及び両指針については、平成一一年四月一日より施行又は適用されることとなっている。
これらの趣旨、内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。
第一 総則(法第一章)
法第一章は、法の目的、基本的理念、男女雇用機会均等対策基本方針等、法第二章及び第三章に規定する具体的措置に共通する基本的考え方を明らかにしたものであること。
一 目的(法第一条)
(一) 法第一条は、法の目的が、第一に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図ること、第二に女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康を図る等の措置を推進することにあることを明らかにしたものであること。
(二) 「法の下の平等を保障する日本国憲法の理念」とは、国民の国に対する権利として「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定した日本国憲法第一四条の考え方を言い、同規定自体は私人間に直接適用されるものではないものの、その理念は一般的な平等原則として法の基礎となる考え方であること。
(三) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図る」には、企業の制度や方針における女性労働者に対する差別を禁止することにより、制度上の均等を確保することのみならず、法第二章第三節に定める援助により実質的な均等の実現を図ることも含まれるものであること。
(四) 「妊娠中及び出産後の健康の確保を図る」措置とは、具体的には、保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保(法第二二条)及び当該保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするための措置(法第二三条)をいうものであること。
(五) 「健康の確保を図る等」の「等」は、職場における性的な言動に起因する問題に関す
る雇用管理上の配慮(法第二一条)を指すものであること。
二 基本的理念(法第二条)
(一) 法第二条第一項は、法の基本的理念が、女性労働者が性別により差別されることなく、かつ、母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにすることにあることを明らかにしたものであること。
(二) 「女性労働者」とは、雇用されて働く女性をいい、求職者である女性を含むものであること。
(三) 法第二条第二項は、事業主並びに国及び地方公共団体に対して、(一)の基本的理念に従って、女性労働者の職業生活の充実が図られるように努めなければならないことを明らかにしたものであること。
本項に関する事業主の具体的義務の内容としては、法第二章及び第三章に規定されているが、事業主は、それ以外の事項についても(一)の基本的理念に従い、女性労働者の職業生活の充実のために努力することが求められるものであること。
三 啓発活動(法第三条)
(一) 法第三条は、国及び地方公共団体は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等についての関心と理解を広く国民の間に深めるとともに、特に雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うべきことを明らかにしたものであること。
(二) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等」の「等」は、法第三章に規定する女性労働者の就業に関して配慮すべき措置を指すものであること。
(三) 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を妨げている諸要因」とは、主として、社会に根ざす固定的な男女の役割分担意識及びこの意識を背景にした職場環境や風土をいうものであり、「必要な啓発活動」は事業主、男女労働者その他広く国民を対象とするものであること。
四 男女雇用機会均等対策基本方針(法第四条)
(一) 法第四条は、労働大臣が雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針を定めることとし、これに定める事項、定めるに当たっての考慮事項、定める手続等について規定したものであること。
(二) 第三項中の「就業の実態等」の「等」には、例えば企業の雇用管理の実態、女性の就業に対する社会一般の意識が含まれるものであること。
(三) 第四項中の「政令で定める審議会」とは、女性少年問題審議会が予定されており、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律第六条第四項等の審議会を定める政令(昭和五九年政令第二一四号)」は、平成一一年四月一日までに改正の予定であること。
第二 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保(法第二章)
本章は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図るために、女性労働者に対
する差別の禁止を規定するとともに、女性労働者と事業主との間に紛争が生じた場合には、その迅速・円満な解決を図るため機会均等調停委員会による調停等を規定し、併せて雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として事業主が講ずる措置に対する国の援助を規定したものであること。
一 総論
(一) 法第二章は、雇用の分野において女性が男性と均等な取扱いを受けていないという現状を是正するという観点から、女性労働者に対する差別を禁止する等により、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を図ることを目的としたものであること。
(二) 「事業主」とは、その経営の主体をいい、個人企業にあってはその企業主が、会社その他の法人組織の場合にはその法人そのものが事業主であること。また、事業主以外の従業者が自らの裁量で行った行為についても、事業主から委任された権限の範囲内で行ったものであれば事業主のために行った行為と考えられるので、事業主はその行為につき法に基づく責任を有するものであること。
(三) 法第五条から第八条までの規定の趣旨は、女性労働者が雇用の分野で男性と均等な機会を得、その意欲と能力に応じて均等な待遇を受けられるようにすること、すなわち、企業の制度や方針において女性労働者が女性であることを理由として差別を受けることをなくしていくことにあること。
(四) 法第五条の「女性に対して男性と均等な機会を与え」るとは、女性に対して男性と等しい機会を与えることをいい、女性一般に対する社会通念や平均的な就業実態等を理由に男女異なる取扱いをすることはこれに該当しないものであること。
なお、合理的な理由があれば男女異なる取扱いをすることも認められるものであり、指針五の適用除外はこれに当たる場合であること。
(五) 法第六条から第八条までにおける「女性であることを理由として」とは、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において、女性労働者が一般的又は平均的に、高度な能力を有する者が少ないこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないこと等を理由とすることの意であり、個々の女性労働者の意欲、能力等を理由とすることはこれに該当しないものであること。
なお、「女性であることを理由として」には、女性が妊娠又は出産したことを理由とする場合は含まれないものであるが、それらを理由として女性を不利益に取り扱うことは好ましくないことは当然であること。また、退職及び解雇については、女性労働者の妊娠・出産退職制及び女性労働者の妊娠・出産を理由とする解雇は法第八条第二項及び第三項により禁止されているものであること。
(六) 法第六条から第八条までにおける「差別的取扱い」とは、合理的な理由なく、社会通念上許容される限度を超えて、一方に対し他方と異なる取扱いをすることをいうものであること。
(七) 「女性労働者に対する差別」には、女性を排除したり、女性を不利に取り扱うことのみならず、女性のみを対象とした措置や女性を有利に取り扱う措置についても、女性の職域の固定化や男女の仕事を分離することにつながり、女性に対する差別的効果を有するという見地から、原則として含まれるものであること。法第九条は、その例外として、男女の均等な機会及び待遇を実質的に確保することを目的として女性労働者に関して行う特別措置、すなわち、過去の女性労働者に対する取扱いなどが原因で雇用の場において男性労働者との間に事実上の格差が生じている状況を改善することを目的として行う女性のみを対象とした措置や女性を有利に取り扱う措置については、法に違反しない旨を明らかにしたものであること。
(八) 法第一〇条は、法第五条及び第六条に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。
(九) 第三節は、事業主が、男女労働者の間に事実上生じている格差の解消を目指して、女性労働者の雇用状況の分析、当該分析に基づく計画の作成等総合的な雇用管理の改善の取組を積極的かつ自主的に行おうとする場合に、国が相談その他の援助を行うことができる旨の規定を設け、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の促進を図ったものであること。
二 募集及び採用(法第五条)
(一) 雇用の入口である募集及び採用は、労働者の職業生活を決定づける重要な段階であることから、事業主は、労働者の募集及び採用について、女性に対して男性と均等な機会を与えなければならないこととしたものであること。
(二) 「募集」には、職業安定法(昭和二二年法律第一四一号)第五条に規定する募集のほかに、公共職業安定所又は労働大臣の許可を得て若しくは届出をして職業紹介事業を行う者(高等学校、大学等)への求人の申込みが含まれるものであること。
なお、労働者派遣を行う事業主が派遣労働者になろうとする者に対し、いわゆる登録を呼びかける行為は、「募集」に該当するものであること。
(三) 「採用」には、労働契約の締結のほか、応募の受付、採用のための選考等募集を除く労働契約の締結に至る一連の手続も含まれるものであること。
なお、労働者派遣を行う事業主がする、いわゆる登録の呼びかけに応じた者を労働契約の締結に至るまでの過程で登録させる行為は、「採用」に該当するものであること。
三 配置、昇進及び教育訓練(法第六条)
(一) 配置及び昇進は労働者の待遇にとって重要なものであり、また、教育訓練は配置及び昇進に当たっての基本的な条件となる業務遂行能力を付与するものであって配置及び昇進と密接な関係を有するものであるから、事業主は、労働者の配置、昇進及び教育訓練について、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならないこととしたものであること。
(二) 「配置」とは、労働者を一定の職務に就けること又は就いている状態をいい、従事すべき職務の内容及び就業の場所を主要な要素とするものであること。
なお、個々の業務の遂行を命ずる業務命令は「配置」には含まれないものであること。
(三) 「配置」には、採用に引き続いて行う場合と配置転換によりある職務へと変える場合のいずれも含まれるものであること。
また、いわゆる出向及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和六〇年法律第八八号)第二条第一号に規定する労働者派遣も含まれるものであること。
したがって、派遣元事業主が派遣先からの男性又は女性と指定をした労働者派遣の要請に応じることは、法第六条違反となるものであり、派遣先のかかる要請は、本条の趣旨に照らして好ましくないものであること。
(四) 「昇進」とは、企業内での労働者の位置付けにおいて下位職階から上位職階への移動を行うことをいうが、課長、係長等の職制上の地位の上方移動を伴わないいわゆる「昇格」も含まれるものであること。ただし、いわゆる定期昇給やベース・アップは含まれないこと。
(五) 「教育訓練」とは、事業主が、その雇用する労働者に対して、その労働者の業務の遂行の過程外(いわゆるオフ・ザ・ジョブ・トレーニング)において又は当該業務の遂行の過程内(いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニング)において、現在及び将来の業務の遂行に必要な能力を付与するために行うものをいい、業務の遂行に関連する知識、技術、技能を付与するもののみならず、社会人としての心構えや一般教養等の付与を目的とする教育訓練も含まれるものであること。
また、「教育訓練」には、事業主が自ら行うもののほか、外部の教育訓練機関等に委託して実施するものも含まれるものであること。
なお、業務の遂行の過程内において行う教育訓練については、明確な訓練目標が立てられ、担当する者が定められている等計画性を有するものが該当するものであり、単に見よう見まねの訓練や個々の業務指示は含まれないものであること。
四 福利厚生(法第七条)
(一) 福利厚生の措置は賃金や労働時間とともに労働条件の重要な部分を占めるものであることから、住宅資金の貸付け等供与の条件が明確でかつ経済的価値の高いものについて、事業主は、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならないこととしたものであること。
(二) 事業主が行う種々の給付や利益の供与のうち「賃金」と認められるものについては、そもそも本条の「福利厚生の措置」には当たらないものであること。すなわち、扶養手当、家族手当、配偶者手当等はもとより、適格退職年金、自社年金等のいわゆる企業年金や中小企業退職金共済制度による退職金も、支給条件が明確にされていれば賃金と解されるので、いずれも本条にいう福利厚生の措置には当たらないものであること。
福利厚生の措置を共済会等事業主とは別の主体が行う場合であっても、事業主による資金の負担の割合、運営の方法等の実態を考慮し、実質的には事業主が行うものとみることができる場合には本条の対象となるものであること。
「住宅資金」には、住宅の建設又は購入のための資金のほか、住宅の用に供する宅地又はこれに係る借地権の取得のための資金、住宅の改良のための資金を含むものであること。
供与の対象を「世帯主」、「主たる家計の維持者」等とすることは、「女性であること」を理由とするものには当たらないが、「世帯主」、「主たる家計の維持者」等の決定に当たって女性について男性に比して不利な条件を課した場合は、「女性であること」を理由とする差別的取扱いに該当するものであること。
(三) 則第一条第一号の「労働者の福祉の増進のため」とは、広い概念であり、本号は、転
勤、物資購入、子弟の入学、冠婚葬祭、災害、傷病等労働者の生活全般にわたって経済的
支出を伴う事象に対し行われる資金の貸付け一般を含むものもであること。
(四) 則第一条第二号における「定期的に」とは、給付の行われる時期及びその間隔があらかじめ定められていることをいうものであること。
「金銭」には、通貨のほか、金券、施設利用券等これに準ずるものも含むものとして同様に取り扱うこととし、また、「給付」には、直接支給する場合のほか労働者に代わって保険会社等に支払う場合等も含まれるものであること。
本号には、具体的には、私的保険制度の補助、奨学金の支給、自己啓発セミナーの受講料の補助等が含まれるものであること。
労働災害が発生した場合に労働者災害補償保険法(昭和二二年法律第五〇号)に基づく保険給付に上積みして給付を行ういわゆる企業内上積補償制度は、損失補償的性格のものであることから、本号には含まれないものであること。
(五) 則第一条第三号の「資産形成」には、預貯金の預入、金銭の信託、有価証券の購入その他貯蓄をすること及び持家・土地の取得又は家屋の改良等が含まれるものであること。
本号には、具体的には、勤労者財産形成促進法(昭和四六年法律第九二号)に基づく勤労者財産形成貯蓄に対する奨励金の支給、住宅ローンの利子補給、社内預金に対する利子、持株援助制度における奨励金の支給等が含まれるものであること。
なお、本号は、一時金であるか定期金であるかを問わないものであること。
(六) 則第一条第四号の「住宅」は、居住の用に供する家屋又は家屋の一部をいうものであ
ること。
独身者に対する住宅の貸与が男性のみに限られるものとされている場合には差別解消のための措置が必要であり、具体的には、男子寮や世帯用住宅に女性独身者を入居させるようにすること、女子寮の建設又は住宅の借上げにより、女性独身者にも住宅を貸与することができるようにすること等が考えられるものであること。独身者に対する住宅の貸与が女性のみに限られている場合についても同様であること。
住宅手当の支給は、則第一条第四号の住宅の貸与の措置には当たらないものであり、住宅の貸与の代替措置として認められるものではないこと。
住宅の貸与に関し、女性について男性と異なる年齢、勤続年数等の入居条件を設定することは、「女性であること」を理由とした差別的取扱いに該当するものであること。
労働基準法上の「事業附属寄宿舎」は、本来事業運営の必要性から設置されているものであるが、寝室が個室になっていること、入居費が低廉であること等の状況にあり、福利厚生施設の性格を有するものであれば、本号に該当するものであること。
五 定年、退職及び解雇(法第八条)
(一) 定年、退職及び解雇は、事業主と労働者との雇用関係を終了させるものであり、男女の差別的取扱いを禁止する必要性があることから、事業主は、労働者の定年及び解雇について、労働者が女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをしてはならないこととするとともに、事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならず、また、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、又は労働基準法の規定による産前産後の休業をしたことを理由として解雇してはならないこととしたものであること。
(二) 「定年」とは、労働者が一定年齢に達したことを雇用関係の終了事由とする制度をいうものであり、定年についての差別的取扱いとは、差別的な定年制度をとっていること又は当該制度に基づき労働者を退職させることをいうものであること。
なお、厚生年金の支給開始年齢に差があることを理由として男性の定年年齢より低い年齢を女性の定年年齢として定めることは、第一項の「女性であることを理由とした差別的取扱い」に該当するものであること。
(三) 「解雇」とは、労働契約を将来に向かって解約する事業主の一方的な意思表示をいい、労使の合意による退職は含まないものであること。
形式的には勧奨退職であっても、事業主の有形無形の圧力により、労働者がやむを得ず応ずることとなり、労働者の真意に基づくものでないと認められる場合は、「解雇」に含まれるものであること。
また、形式的には雇用期間を定めた契約であっても、それが反覆更新され、実質においては期間の定めのない雇用契約と認められる場合には、その期間の満了を理由として雇い止めをすることは「解雇」に当たるものであること。
(四) 「出産」とは、妊娠四箇月以上(一箇月は二八日として計算する。したがって、四箇月以上というのは八五日以上のことである。)の分娩をいい、生産のみならず死産をも含むものであること。
「予定する定め」とは、女性労働者が婚姻、妊娠又は出産した場合には退職する旨をあらかじめ労働協約、就業規則又は労働契約に定めることをいうものであること。なお、労働契約の締結に際し労働者がいわゆる念書を提出する場合も含まれるものであること。
(五) 女性が結婚退職する場合に退職金の取扱いを優遇するいわゆる結婚退職上積制度は直接本条に抵触するものではないが、本条の趣旨に照らし好ましくないものであること(あらかじめ支給条件が明確な退職金は賃金に当たり、上記のような制度は労働基準法第四条の問題となるものであること。)。
(六) 第三項は、産前産後の休業をしたことを理由として時期を問わず解雇してはならないことを定めたものであり、労働基準法第一九条とは、目的、時期、罰則の有無を異にしているが、重なり合う部分については両規定が適用されるものであること。
六 女性労働者に係る措置に関する特例(法第九条)
(一) 女性には特有の感性・特性があるなどの先入観や固定的な男女の役割分担意識に基づき、女性のみを募集・採用や配置の対象とすることなどは、かえって、女性の職域を限定したり、女性と男性の仕事を分離してしまうという弊害をもたらすものである。
法第九条は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置は法違反とならないことを定めたものであり、逆に、上記のような見地から、それ以外の女性労働者に係る措置は違法となることを明らかにしたものであること。
(二) 法第九条における「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることをいうものであること。この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものであることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断することが適当であり、指針四の柱書きはその旨を明らかにしたものであること。
(三) 「女性労働者に関して行う措置」とは、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置をいうものであること。
(四) 「妨げるものではない」とは、法に違反することとはならない旨を明らかにしたものであり、事業主に対して支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関する措置を講ずることを義務づけるものではないこと。
(五) 法第九条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、指針四の「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものであること。
七 指針(法第一〇条)
(一) 指針は、法により女性労働者に対する差別が禁止されることとなった募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練の各分野について、禁止される措置として具体的に明らかにする必要があると認められるものについて定めたものであり、指針に明記されていない措置についても、女性に対して男性と均等な機会を与えず、又は女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをすることは法第五条及び第六条にたちかえって違法となるものであること。
事業主は、法及び指針に違反する措置を講じた場合には直ちに是正を求められるものであること。
(二) 指針二から四までにおける「雇用管理区分」とは、職種、資格、雇用形態、就業形態等の区分その他の労働者についての区分であって、その区分により制度的に異なる雇用管理を行うことを予定して設定しているものをいうものであること。
「その他の労働者についての区分」としては、例えば勤務地の違いによる区分が考えられるものであること。
雇用管理区分が同一か否かについては、当該区分に属する労働者の就業する職務内容、処遇等について、同一区分に属さない労働者との間に、客観的・合理的な違いが存在しているか否かにより判断されるものであること。その判断に当たっては、単に形式のみならず、企業の雇用管理の実態に即して行う必要があること。
具体的には、例えば同一企業内の労働者全体について、営業や事務など様々な職務を経験させたり同一の基準で処遇するなど特に取扱いを区別することなく配置・昇進させているような場合には、企業全体で一つの雇用管理区分と判断することとなるものであること。
一方、企業によっては複数の基準により区分(例えば、大卒事務系、大卒理工系、高卒事務系、高卒生産系といった区分)が設けられている場合があるが、それぞれの区分について客観的・合理的に職務内容、処遇等が異なっているならば、それぞれの区分が個別の雇用管理区分として位置づけられることとなるものであること。
(三) 指針二イの「女性であることを理由として」の意義については、本通達第二の一(五)を参照のこと。
「排除」とは機会を与えないことをいうものであること。指針三(一)イ及びロ、三(二)イ及びロ並びに三(三)イ及びロにおいても同様であること。
「(排除していると認められる例)」はあくまでも例示であり、限定列挙ではないこと。他の事項における例も同様であること。
例((五))の男性を表す「職種の名称」とは、例えば、ウェイター、営業マン、カメラマン、ベルボーイ、潜水夫等「マン」、「ボーイ」、「夫」等男性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであること。
なお、「士」、「師」、「人」の語が職種の名称の一部に含まれているものは原則として含まれないが、例えば看護士のように、男性に限る国家資格の名称となっているものは含まれるものであること。
「女性を排除しないことが明らかである場合」とは、例えば「カメラマン(男女)募集」とする等男性を表す職種の名称に括弧書きで「男女」と付け加える方法や、「ウェイター・ウェイトレス募集」のように男性を表す職種の名称と女性を表す職種の名称を並立させる方法が考えられること。
例((六))の「男性歓迎」、「男性向きの職種」等の「等」には、「男性優先」、「男の仕事」、「主として男性」等が含まれるものであること。
指針二イ((七))及び((八))は、募集の際には女性を排除していないにもかかわらず、応募の受付、採用試験の実施、採用選考等、採用の過程で女性を排除する例をいうものであること。
(四) 指針二ロは、指針二イが一定の雇用管理区分について女性に対して機会を与えていないことを対象としているのに対し、男女を対象とする雇用管理区分の採用予定者数のうち一部について女性又は男性に機会を与えないことを対象としていること。
「人数を設定する」とは、男性に比べ女性を募集又は採用する人数が少ない場合のみならず、例えば男女一〇〇人を募集又は採用する場合に、男性三〇人女性七〇人とすることもこれに当たること。
また、募集の際に女性についての採用する人数の限度は設けられていない場合であっても、男性の選考を先に行い、その後で女性を選考する等採用の段階で限度を設けた場合は指針二ロに当たるものであり、例(三)はその例示であること。
(五) 指針二ハの「その他の条件」とは、募集し、又は採用しようとする労働者の属性についての条件であり、例えば「子の有無」、「容姿端麗」、「語学堪能」等が含まれるものであること。採用後の労働条件はこれに含まれないものであること。
「異なる条件を付すこと」とは、女性について男性よりも不利又は有利な条件を設定することをいうものであること。指針三(一)ハ、三(二)ハ及び三(三)ハにおいても同様であること。
例((四))の「大学等の入学時の年齢が一定の年齢以下であること」とは、いわゆる浪人をしていないこと等、「大学等に在学した年数が一定の年数以下であること」とは、いわゆる留年をしていないこと等をいうものであること。
(六) 指針二ニの「募集又は採用に係る情報」とは、求人の内容の説明のほか、労働者を募集又は採用する目的で提供される会社の概要等に関する資料等が含まれること。
なお、指針二ニは、女性が資料の送付や説明会への出席を希望した場合に、事業主がその希望のすべてに対応することを求める趣旨ではなく、先着順に、又は一定の専攻分野を対象として資料を送付する等一定の基準により一定の範囲の者を対象として資料送付又説明会の開催を行うことは本指針の対象に含まれないこと。
例((一))及び例((二))について、内容が異なる複数の資料を提供する場合には、それぞれの資料について、資料を送付する対象を男性のみとしないこと等が求められるものであること。例((三))について、複数の説明会を開催するときは、個々の説明会についてその対象を男性のみとしないことが求められるものであって、男女別の会社説明会の開催は例((三))に該当するものであること。
(七) 指針二ホの「採用試験」には、筆記試験のほか面接試験も含まれること。また「採用試験等」の「等」には採用選考が含まれるものであり、例((五))はその例示であること。
(八) 指針二への例((五))の女性を表す「職種の名称」とは、例えば、ウェイトレス、セールスレディ、看護婦、保母等「レディ」、「ガール」、「婦」、「母」等女性を表す語が職種の名称の一部に含まれているものがこれに当たるものであること。
「女性のみとしないことが明らかである場合」とは、例えば「看護婦・看護士募集」のように女性を表す職種の名称と男性を表す職種の名称を並立させる方法が考えられること。
例((六))の「女性歓迎」、「女性向きの職種」等の「等」には、「女性優先」、「女の仕事」、「貴女を歓迎」等が含まれるものであること。
(九) 指針三(一)イの「一定の職務」とは、特定の部門や特定の地域の職務に限られるものではなく、労働者を配置しようとする職務一般をいうものであること。これは、指針三(一)において同様であること。
例((一))の「営業の職務」は例示であり、職務の種類の如何を問わず、その対象から女性労働者を排除することは、本項の対象となること。他の例も同様であること。
(一〇) 指針三(一)ロの「婚姻したこと、一定の年齢に達したこと、子を有していること等」の「等」には、例えば扶養すべき親があること、離婚したこと等が考えられること。
指針三(一)ト及びリ、三(二)ロ及びト並びに三(三)ロ及びヘについても同様であること。
(一一) 指針三(一)ハの「その他の条件」とは、客観的に明らかな事実を条件とするものをいい、研修の実績、一定の職務に従事した経験等がこれに含まれること。
(一二) 指針三(一)ホは、例えば営業部員に配置する場合に配置する際の基準を満たす労働者が数名いる場合に、性に着目して選考することが当たるものであること。指針三(二)ホにおいても同様であること。
(一三) 指針三(一)チ及びリの「配置転換」とは、労働者を配置替えすることをいい、一定の職務に配置したままの状態は含まれないこと。
「不利益な配置転換」とは、客観的に精神的・経済的負担を伴うと考えられる配置転換をいうものであること。
(一四) 指針三(二)ハの「その他の条件」とは、客観的に明らかな事実を条件とするものをいい、在職年数、在籍年数、年齢等がこれに含まれるものであること。
(一五) 指針三(三)ロの例の「将来従事する可能性のある職務に必要な知識を身につけるための教育訓練」とは、例えば管理職に就くために必要とされる能力、知識を付与する教育訓練が考えられるものであること。
(一六) 指針三(三)ハの[その他の条件」とは、客観的に明らかな事実を条件とするものをいい、勤続年数、上司の推薦、労働者の希望の有無等がこれに含まれるものであること。
(一七) 指針三(三)ホの例((二))の「接遇訓練」とは、接客等のために必要な基本的な作法、マナー等を身につけるための教育訓練をいうものであること。
(一八) 指針四は募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練に関して法第九条により違法でないとされる措置を具体的に明らかにしたものであること。
指針四の柱書きの趣旨については、六(二)のとおりであること。
また、「相当程度少ない」とは、我が国における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、四割を下回っていることをいうものであること。四割を下回っているか否かについては、募集・採用は雇用管理区分ごとに、配置は一の雇用管理区分における職務ごとに、昇進は一の雇用管理区分における役職ごとに、教育訓練は一の雇用管理区分における職務又は役職ごとに、判断するものであること。
(一九) 指針四(一)の「その他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること」とは、具体的には、例示されている「募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること」、[採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用すること」のほか、募集又は採用の対象を女性のみとすること、募集又は採用に当たって男性と比較して女性に有利な条件を付すこと等男性と比較して女性に有利な取扱いをすること一般が含まれるものであること。指針四(二)及び(三)においても同様であること。
(二〇) 指針四(四)「職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練」とは、現在従事している業務の遂行のために必要な能力を付与する教育訓練ではなく、将来就く可能性のある職務又は役職に必要な能力を付与する教育訓練であり、例えば女性管理職が少ない場合において、管理職に就くために必要とされる能力を付与する教育訓練をいうものであること。
また、指針四(四)の「その他の男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること」には、例えば女性労働者に対する教育訓練の期間を男性労働者よりも長くすること等が含まれること。
(二一)
イ 指針五の適用除外は、男女異なる取扱いをすることに合理的な理由があると認められるものについて、明らかにしたものであること。
ロ 指針五(一)(一)には、俳優、歌手、モデル等が含まれるものであること。
(二)には守衛、警備員であればすべて該当するというものではなく、単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的とする職業でないものは含まれないものであること、また、一般的に単なる集金人等は含まれないが、専ら高額の現金を現金輸送車等により輸送する業務に従事する職業は含まれるものであること。
(三)の「宗教上(中略)必要性があると認められる職業」とは、例えば一定の宗派における神父、巫女等が考えられること。また、「風紀上(中略)必要性があると認められる職業」とは、例えば女子更衣室の係員が考えられること。
(一)、(二)及び(三)はいずれも拡大解釈されるべきではなく、単に社会通念上男性又は女性のいずれか一方の性が就くべきであると考えられている職業は含まれないものであること。
ハ 指針五(二)の「通常の業務を遂行するために」には、日常の業務遂行の外、将来確実な人事異動等に対応する場合は含まれるが、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。
「均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合」とは、男女の均等な取扱いが困難であることが、真に労働基準法の規定を遵守するためであることを要するものであり、企業が就業規則、労働協約等において女性労働者について労働基準法を上回る労働条件を設定したことによりこれを遵守するために男女の均等な取扱いをすることが困難である場合は含まれないものであること。
ニ 指針五(三)の「風俗、風習等の相違により女性が能力を発揮し難い海外での勤務」とは、海外のうち治安、女性の就業に対する考え方の相違等の事情により女性が就業してもその能力の発揮が期待できない地域での勤務をいい、海外勤務すべてがこれに該当するものではないこと。
「特別の事情」には、例えば勤務地が通勤不可能な山間僻地にあり、事業主が提供する宿泊施設以外に宿泊することができず、かつ、その施設を男女共に利用することができない場合など、極めて特別な事情をいい、拡大して解釈されるべきではなく、例示にある海外勤務と同様な事情にあることを理由とした国内での勤務は含まれないものであること。
また、これらの場合も、ハと同様、突発的な事故の発生等予期せざる事態、不確実な将来の人事異動の可能性等に備える場合等は含まれないものであること。
八 苦情の自主的解決(法第一一条)
(一) 企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、配置、昇進及び教育訓練、福利厚生並びに定年、退職及び解雇について法の規定により女性労働者に対する差別が禁止された事項に関し、女性労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理をゆだねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。
(二) 本条は、苦情処理機関に苦情の処理をゆだねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。
(三) 「苦情の処理をゆだねる等」の「等」には、事業場の人事担当者による相談等女性労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。
(四) 苦情処理機関においては、女性労働者に対する差別に関する苦情のみを取り扱うのではなく、その他の事案についても、必要に応じ、関係部署との連携を保ちつつ、適切に対処することが望ましいものであること。
(五) 法では、女性労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第一二条第一項において都道府県女性少年室長による紛争解決の援助を定め、また、法第一三条第一項においては機会均等調停委員会による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県女性少年室長の紛争解決の援助や機会均等調停委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことにかんがみ、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。
九 紛争の解決の援助(法第一二条)
(一) 紛争の解決の援助(法第一二条第一項)
イ 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置についての女性労働者と事業主(以下「関係当事者」という。)との間の個別具体的な私法上の紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県女性少年室長は、関係当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。
ロ 「紛争」とは、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇に関する事業主の一定の措置に関して女性労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。
ハ 「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある女性労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合の第三者は関係当事者にはなりえないものであること。
ニ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該関係当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、関係当事者にこれに従うことを強制するものではないこと。
ホ 則第二条は、法第一二条第一項に基づく女性少年室長の援助は、募集・採用、配置・昇進・教育訓練、一定の福利厚生、定年・退職・解雇に関する事業主の措置に係る紛争について行うものであることを明らかにしたものであること。
(二) 紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第一二条第二項)
イ 法第一二条第一項の紛争の解決の援助という制度により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある女性労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、女性労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
ロ 「理由として」とは、女性労働者が紛争の解決の援助を求めたことが、事業主が当該女性労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
ハ 「不利益な取扱い」とは、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。
なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。
一〇 調停の委任(法第一三条)
(一) 調停の委任(法第一三条第一項)
イ 関係当事者間の個別具体的な私法上の紛争について、当事者間の自主的な解決、都道府県女性少年室長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、法第一二条第一項の紛争のうち募集及び採用に関する紛争を除いたものについて、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県女性少年室長は、機会均等調停委員会に調停を行わせるものとすることとしたものであること。
ロ 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであること。
ハ次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。
(一) 申請が、当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から一年を経過した紛争に係るものであるとき
(二) 申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているとき
(三) 申請に係る紛争が集団的な労使紛争にからんだものであるとき又は申請が当該申請に係る紛争以外の事項についての集団的な労使紛争を有利に導くこと等を目的としたものであると認められるとき
ニ 女性少年室長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、ハに該当しない場合は、法第一一条による自主的解決の努力の状況も考慮の上、原則として調停を行う必要があると判断されるものであること。
(二) 調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第一三条第二項)
法第一三条第一項の調停という制度により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性にかんがみれば、事業主に比べ弱い立場にある女性労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、女性労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。
「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ九(二)ロ及びハと同じであること。
一一 機会均等調停委員会(法第一四条から法第一九条まで)
(一) 都道府県女性少年室に上記一〇の調停を行う機関として機会均等調停委員会(以下「委員会」という。)を置くものとし、委員は労働大臣が任命する学識経験者三名をもって組織することとしたほか、調停に関する手続等について定めたものであること。
(二) 法第一六条の「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」とは、主要な労働者団体が指名する関係労働者を代表する者又は主要な事業主団体が指名する関係事業主を代表する者の意であること。
(三) 法第一七条の「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務づけるものではないこと。
(四) 法第一八条の「関係行政庁」とは、具体的には例えば労働基準監督署、公共職業安定所、都道府県等が考えられるものであること。
「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいうものであること。
(五) 則第一〇条の事実の調査のための出頭は、必ず関係当事者(法人である場合には、委員会が指定する者)により行われることが必要であること。この場合、「補佐人」は、関係当事者が事情の陳述を行うことを補佐することができるものであること。補佐人の陳述は、関係当事者が直ちに異議を述べ又は訂正しない限り、関係当事者本人の陳述とみなされるものであること。なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。
代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。
第二項の「出頭」とは、強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。
(六) 則第一二条の「事実の調査」とは、関係当事者からの事情聴取、事業場等に出向いての調査、関係行政庁から得られた資料の調査等をいうものであること。
「その他の者」とは、都道府県女性少年室長及び室員が考えられるものであること。
(七) 則第一三条の関係労使を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内のすべての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。
(八) 則第一四条第三項の「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではないこと。
(九) 則第一五条の「調停を継続することが適当でないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合や調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合の外、当事者が当該紛争について訴訟等を提起した場合、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。
一二 事業主の講ずる措置に対する国の援助(法第二〇条)
(一) 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確保するためには、企業の制度や方針において、女性労働者に対する差別の禁止に関する規定を遵守することに加えて、固定的な男女の役割分担意識に根ざす制度や慣行に基づき企業において、男女労働者の間に事実上生じている格差に着目し、このような格差の解消を目指して事業主が積極的かつ自主的に雇用管理の改善に取り組むことが望ましい。このため、法第二〇条は、このような取組を行う事業主に対し、国が相談その他の援助を行うことができる旨を規定し、女性労働者の能力発揮を促進するための総合的な雇用管理の改善の取組を促すこととしたものであること。
(二) 本条柱書き及び第二号の「支障となっている事情」の意義は、六(二)と同じであること。
(三) 「その他の援助」としては、助言、情報提供等が考えられるものであること。
(四) 第一号の「雇用に関する状況の分析」とは、企業において女性労働者が男性労働者と比べてどのような現状にあるかを客観的に把握し、その状況にアンバランスがある場合にはその原因を分析し、問題点を発見することをいうものであること。
(五) 第二号の「必要となる措置に関する計画の作成」とは、第一号の分析結果を踏まえて、男女労働者の間に事実上生じている格差を改善するための措置についての計画を作成することをいうものであること。計画の作成に当たっては、現実に即した具体的な目標及び目標を達成するための具体的取組を実施する目安となる期間を設定し、目標に沿って、発見された問題の解決に効果的な具体的措置を検討・策定することが望ましいものであること。
(六) 第三号の「計画で定める措置の実施」とは、第二号の計画で定めた具体的措置を実際に実施することをいうものであること。
なお、本号に基づき事業主が実際に実施する措置には、女性のみを対象とした措置又は男性と比較して女性を有利に取り扱う措置と、男女双方を対象とした措置の両方が含まれるものであるが、前者については、法第九条により法に違反しないこととされた措置に限られるものであること。
(七) 第四号の「必要な体制の整備」とは、第一号から第三号までの一連の取組等を行うために必要な体制を整備していくことをいうものであること。
第三 女性労働者の就業に関して配慮すべき措置(法第三章)
本章は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保のための前提条件を整備する観点から、女性労働者の就業に関して配慮すべき措置を規定したものであって、第二章の規定と相まって女性労働者の職業生活の充実を図ることを目的としているものであること。
一 職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮(法第二一条)
(一) 職場におけるセクシュアルハラスメントは、女性労働者の個人としての尊厳を不当に傷つけ、能力の有効な発揮を妨げるとともに、企業にとっても職場秩序や業務の遂行を阻害し、社会的評価に影響を与える問題であり、社会的に許されない行為であることは言うまでもない。特に、職場におけるセクシュアルハラスメントは、いったん発生すると、被害者に加え行為者も退職に至る場合がある等双方にとって取り返しのつかない損失を被ることが多い。また、被害者にとって、事後に裁判に訴えることは、躊躇せざるをえない面がある。
こうしたことを考えると、職場におけるセクシュアルハラスメントに対しては、未然の防止対策こそが重要である。
このため、法第二一条第一項は、職場におけるセクシュアルハラスメントを「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する女性労働者の対応により当該女性労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」と規定するとともに、その防止について雇用管理上必要な配慮を事業主に義務づけることとしたものであること。
また、第二項は、これらの配慮の内容を具体化するために、労働大臣が指針を定め、公表することとしたものであること。
(二) 指針について
現状では、職場におけるセクシュアルハラスメントの内容について、事業主や労働者の理解が必ずしも十分ではなく、防止対策をとっている事業主も少ない状況にある。
また、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る状況等は多様である。
こうした状況の中で、事業主が防止のため適切な雇用管理上の措置を講ずることができるようにするため、防止の対象とするべき職場におけるセクシュアルハラスメントの内容及び事業主が雇用管理上配慮すべき事項を定めたものであること。
イ 職場におけるセクシュアルハラスメントの内容
指針二「職場におけるセクシュアルハラスメントの内容」においては、事業主が、雇用管理上防止すべき対象としての職場におけるセクシュアルハラスメントの内容を明らかにするために、その概念の内容を示すとともに、典型例を挙げたものであること。
また、実際上、職場におけるセクシュアルハラスメントの状況は多様であり、その判断に当たっては、個別の状況を斟酌する必要があることに留意すること。
なお、法及び指針は、あくまで職場におけるセクシュアルハラスメントが発生しないよう防止することを目的とするものであり、個々のケースが厳密に職場におけるセクシュアルハラスメントに該当するか否かを問題とするものではないので、この点に注意すること。
(イ) 職場
指針二(二)は「職場」の内容と例示を示したものであること。
「職場」には、業務を遂行する場所であれば、通常就業している場所以外の場所であっても、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店(接待の席も含む)、顧客の自宅(保険外交員等)の他、取材先(記者)、出張先及び業務で使用する車中等も含まれるものであること。
なお、勤務時間外の「宴会」等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当するが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して個別に行うものであること。
また、ロ(ロ)で述べるように判断が微妙な場合であっても、幅広く相談・苦情処理の対象とする等の配慮が必要であること。
(ロ) 性的な言動
指針二(三)は「性的な言動」の内容と例示を示したものであること。
「性的な言動」に該当するためには、その言動が性的性質を有することが必要であること。
したがって、例えば女性労働者のみに「お茶くみ」等を行わせること自体は性的な言動には該当しないが、固定的な性別役割分担意識に係る問題、あるいは配置に係る女性差別の問題としてとらえることが適当であること。
「性的な言動」には、(一)「性的な発言」として、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を意図的に流布することのほか、性的冗談、からかい、食事・デート等への執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すこと等が、(二)「性的な行動」として、性的な関係の強要、必要なく身体に触ること、わいせつな図画(ヌードポスター等)を配布、掲示することのほか、強制わいせつ行為、強姦等が含まれるものであること。
なお、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者及び学校における生徒等もセクシュアルハラスメントの行為者になりうるものであり、また、女性労働者も場合によっては行為者となりうること。
(ハ) 対価型セクシュアルハラスメント
指針二(四)は対価型セクシュアルハラスメントの内容とその典型例を示したものであること。
「対応により」とは、例えば女性労働者の拒否や抵抗等の対応が、解雇、降格、減給等の不利益を受けることと因果関係があることを意味するものであること。
「解雇、降格、減給等」とは労働条件上不利益を受けることの例示であり、「等」には、雇用契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換等が含まれるものであること。
なお、指針に掲げる対価型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。
(ニ) 環境型セクシュアルハラスメント
指針二(五)は環境型セクシュアルハラスメントの内容と典型例を示したものであること。
「女性労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該女性労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」とは、就業環境が害されることの内容であり、単に性的言動のみでは就業環境が害されたことにはならず、一定の客観的要件が必要であること。
具体的には個別の判断となるが、一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得、性的冗談やヌードポスターの掲示による場合などは継続性又は繰返しが要件となり得るものであること。
また、継続性又は繰り返しが要件となるものであっても、明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態の場合又は心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合には、就業環境が害されていると解しうるものであること。
なお、指針に掲げる環境型セクシュアルハラスメントの典型的な例は限定列挙ではないこと。
(ホ) 「性的な言動」及び「就業環境が害される」の判断基準
「女性労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、女性労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための配慮義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。
ただし、女性労働者が明確に意に反することを示しているにも関わらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルハラスメントと解されうるものであること。
ロ 雇用管理上配慮すべき事項
指針三の「雇用管理上配慮すべき事項」は、事業主が雇用管理上配慮すべき事項(以下「配慮事項」という。)として三項目挙げており、この三項目の配慮事項については、企業の規模や職場の状況の如何を問わず必ず配慮しなければならないものであること。
また、配慮の方法については、企業の規模や職場の状況に応じ、適切と考える措置を事業主が選択できるよう具体例を示してあるものであること。
(イ) 「事業主の方針の明確化及びその周知・啓発」
指針三(一)は、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するためには、まず事業主の方針として職場におけるセクシュアルハラスメントを許さないことを明確にするとともに、これを従業員に周知・啓発しなければならないことを明らかにしたものであること。
「配慮をしていると認められる例」とは、具体的な例を挙げたものであり、限定列挙ではないこと。なお指針三(二)及び(三)における例示も同様であること。
例((二))の「服務上の規律を定めた文書」として、従業員心得や必携、行動マニュアル等が考えられること。
例((三))の「就業規則に職場におけるセクシュアルハラスメントに関する事項を規定する」方法として、懲戒規定や服務規定の中に規定する方法等が考えられること。
例((四))の「研修、講習等」を実施する場合には、調査を行う等職場の実態を踏まえて実施する、管理職層を中心に職階別に分けて実施する等の方法が効果的と考えられること。
「その発生の原因や背景」とは、企業の雇用管理の問題として女性労働者の活用や能力発揮を考えていない雇用管理の在り方や男性労働者の意識の問題として女性労働者を職場における対等なパートナーとして見ず、性的な関心の対象として見る意識の在り方が挙げられるものであること。さらに、両者は相互に関連して職場におけるセクシュアルハラスメントを起こす職場環境を形成すると考えられること。
(ロ) 「相談・苦情への対応」
指針三(二)は、職場におけるセクシュアルハラスメントの未然防止及び再発防止の観点から相談・苦情への対応のための窓口を明確にするとともに、相談・苦情の対応に当たっては、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応しなければならないことを明らかにしたものであること。
「窓口を明確にする」とは、窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであること。この際、労働者が利用しやすい体制を整備しておくこと、従業員に対して周知されていることが望ましいものであること。また、必ずしも事業場内部に設置する必要はなく、利用可能なものであれば、例えば事業主団体に傘下の事業主共通の窓口を設けることも差し支えないものであること。
「その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応する」とは、具体的には、被害者や行為者に対して、一律に何らかの対応をするのではなく、女性労働者が受けている性的言動等の性格・態様によって、状況を注意深く見守る程度のものから、上司、同僚等を通じ、行為者に対し間接的に注意を促すもの、直接注意を促すもの等事案に即した対応を行うことを意味するものであること。
なお、対応に当たっては、公正な立場に立って、真摯に対応することは言うまでもないこと。
指針三(二)のなお書きは、職場におけるセクシュアルハラスメントを未然に防止する観点から、相談・苦情の対象として、職場におけるセクシュアルハラスメントそのものでなくともその発生のおそれがある場合やセクシュアルハラスメントに該当するか否か微妙な場合も幅広く含めることが必要としたものであること。例えば、勤務時間後の宴会等におけるセクシュアルハラスメントも幅広く相談・苦情の対象とすることが必要であること。
(ハ) 「職場におけるセクシュアルハラスメントが生じた場合における事後の迅速かつ適切な対応」
指針三(三)は、職場におけるセクシュアルハラスメントが発生した場合は、再発防止の観点から、その事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するとともに、当該事案に適正に対処しなければならないことを明らかにしたものであること。
「事案に適正に対処することについて配慮をしていると認められる例」の((一))の「配置転換等の雇用管理上の措置」としては、当事者を引き離すための配置転換のほか、当事者間の関係の改善に向けての援助、被害者の労働条件上の不利益の回復等が考えられるものであること。
「就業規則に基づく措置」としては、懲戒規定により、加害者に一定の制裁(口頭注意、停職、降格、解雇等)を課すこと等が考えられるものであること。
ハ その他
指針四「その他」は、事業主が配慮事項に係る措置を講ずるに当たって、留意しなければならないことを明らかにしたものであること。
指針四(一)は、職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事案は被害者及び関係者の個人のプライバシーに関わる部分があるので、その保護には特に留意し、その旨を周知しておく必要があることを明らかにしたものであること。
指針四(二)は、実質的な相談・苦情ができるようにするためには、相談・苦情を申し出た女性労働者が不利益な取扱いを受けないことが必要であり、事業主がそのことに留意し、周知しておく必要があることを明らかにしたものであること。
また、上記については、事業主の方針の周知・啓発の際や相談・苦情の窓口の設置にあわせて、周知することが望ましいものであること。
なお、法及び指針は、女性労働者に対するセクシュアルハラスメントの防止を対象とするにとどまっているが、女性労働者が男性労働者に対して行うセクシュアルハラスメントについても、必要に応じ、企業において防止対策を講じることが望ましいことは言うまでもないこと。
また、その場合の対策としては、基本的に上記三項目の対策が援用しうるものであること。
二 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(法第二二条及び第二三条)
法第二二条及び第二三条、則第一六条、並びに妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため事業主が講ずべき措置に関する指針(平成九年労働省告示第一〇五号)の趣旨及びその解釈については、引き続き「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律の一部施行(第二次施行分)について(平成九年一一月四日付け基発第六九五号、女発第三六号)」によるものとすること。
なお、同通達中「第二六条」を「第二二条」に、「第二七条」を[第二三条」に、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律施行規則」を「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則」に、「第一八条」を「第一六条」に改め、第一の三を削るものとすること。三深夜業に従事する女性労働者に対する措置(則第一七条)
(一) 平成一一年四月一日以降女性労働者に対する深夜業の規制が解消されるが、女性が充実した職業生活を送るためには、深夜業に従事する女性労働者の通勤及び業務の遂行の際における防犯面からの安全の確保が必要である。しかしながら、従来女性の深夜業は原則として法律上禁止されていたため、事業主において深夜業に従事する女性労働者の安全の確保に関する取組が十分になされない懸念も存在する。このため、則第一七条は、法第二条第二項に規定された事業主の責務の一部を具体化するものとして、事業主は、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるべきことを明らかにしたものであること。
(二) 「当分の間」とは、深夜業に従事する女性労働者に関して通勤及び業務の際における安全の確保に必要な措置が十分に講じられるようになるまでの間をいうものであり、具体的な年限を限ったものではないこと。
(三) 「通勤」とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいうものであること。
(四) 「業務の遂行」とは、労働者が実際にその業務に就いている状態をいうものであること。
(五) 「安全の確保に必要な措置」の内容は、具体的には、「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針(平成一〇年労働省告示第二一号)」二(一)に明らかにされているものであること。この指針の解釈については、平成一〇年六月一一日付け女発第一七〇号によられたいこと。
第四 雑則(法第四章)
一 調査等(法第二四条)
労働大臣は、今後とも女性労働者の職業生活に関し必要な調査研究を実施し、その成果を通じて雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等を図るための施策の一層の推進を図ることとしたものであること。
また、労働大臣は、この法律の施行に関し、関係行政機関の長に対し、資料の提供その他必要な協力を求め、さらに、都道府県知事から必要な調査報告を求めることができる旨明らかにしたものであること。
二 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告(法第二五条)
(一) 法の目的を達成するための行政機関固有の権限として、労働大臣又は都道府県女性少年室長は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができることとしたものであること。
(二) 本条の労働大臣の権限は、労働者からの申立て、第三者からの情報、職権等その端緒を問わず、必要に応じて行使し得るものであること。
(三) 「この法律の施行に関し必要があると認めるとき」とは、法によって具体的に事業主の責務とされた事項について、当該責務が十分に遂行されていないと考えられる場合において、当該責務の遂行を促すことが法の目的に照らし必要であると認められるとき等をいうものであること。
(四) 則第一八条の「労働大臣が全国的に重要であると認めた事案」とは、
((一)) 広範囲な都道府県にまたがり、その事案の処理に当たって各方面との調整が必要であると考えられる事案
((二)) 当該事案の性質上社会的に広汎な影響力を持つと考えられる事案
((三)) 都道府県女性少年室長が勧告を行ったにもかかわらず是正されない事案
等をいうものであり、労働大臣が自ら又は都道府県女性少年室長の上申を受けてその都度判断するものであること。
「事業場」とは、当該事案に係る事業場であって、本社たる事業場に限られるものではないものであること。
三 公表(法第二六条)
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇を確固たるものとするためには、女性労働者に対する差別を禁止するとともに、法違反の速やかな是正を求める行政指導の効果を高め、法の実効性を確保することが必要である。このような観点から、労働大臣は、法第五条から第八条までの規定に違反している事業主に対し自ら勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたものであること。
四 船員に関する特例(法第二七条)
船員及び船員になろうとする女性に係る労働関係については、運輸省が所管する別の体系となっているため、法中「労働大臣」とあるのを「運輸大臣」と読み替える等所要の整備を行ったものであること。
五 適用除外(法第二八条)
(一) 法第二章、第二五条及び第二六条の規定は、国家公務員及び地方公務員に関しては適用しないこととしたものであること。
「国家公務員及び地方公務員」とは、一般職又は特別職、常勤又は非常勤、現業又は非現業の別にかかわりなく、これに該当するものであること。
(二) 法第三章の規定は、一般職の国家公務員(国営企業に勤務する者を除く。)、裁判所職員、国家職員及び防衛庁職員に関しては適用しないこととしたものであること。
なお、地方公務員については、適用することとなること。
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