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後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)
平成元年1月17日 法律第2号
(目的)
第1条
この法律は、後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)の予防に関し必要な措置を定めることにより、エイズのまん延の防止を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与する事を目的とする。
(国及び地方公共団体の責務)
第2条
国及び地方公共団体は、エイズの予防に必要な施策を講ずるとともに、教育活動を通じてエイズに関する正しい知識の普及を図らなければならない。
2 国は、前項に定めるもののほか、エイズに関する情報の収集及び研究の推進に努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、前2項の施策を講ずるに当たつては、エイズの患者等の人権の保護に留意しなければならない。
4 国及び地方公共団体は、エイズに関する施策が総合的かつ円滑に実施されるよう、相互に連携を図らねばならない。
(国民の責務)
第3条
国民は、エイズに関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うように努めるとともに、エイズの患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。
(医師の責務)
第4条
医師は、エイズの予防に関し国及び地方公共団体が講ずる施策に協力し、その予防に寄与するように努めなければならない。
(医師の指示及び報告)
第5条
医師は、エイズの病原体に感染している者(以下「感染者」という。)であると診断したときは、当該感染者又はその保護者(親権を行う者又は後見人をいう。以下同じ。)に対し、エイズの伝染の防止に関し必要な指示を行い、7日以内に、文章をもつて、当該感染者の年齢及び性別、当該感染者がエイズの病原体に感染したと認められる原因その他厚生省令で定める事項を当該感染者の居住地(居住地がないか、又は、明らかでないときは、現在地。以下同じ。)を管轄する都道府県知事に報告しなければならない。
ただし、当該感染者が、血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、当該感染者について報告する事を要しない。
(感染者の遵守事項)
第6条
感染者は、人にエイズの病原体を感染させるおそれが著しい行為をしてはならない。
2 感染者は、前項に定めるもののほか、前条の医師の指示を遵守するように努めなければならない。
(医師の通報)
第7条
医師は、その診断に係わる感染者が第5条の規定による指示に従わず、かつ、多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがあると認めるときは、その旨並び当該感染者の氏名及び居住地その他厚生省令で定める事項をその居住地を管轄する都道府県知事に通報するものとする。
2 医師は、その診断に係わる感染者にエイズの病原体を感染させたと認められる者が、更に多数の者にエイズの病原体を感染させるおそれがあるとことを知り得たたきは、その旨並びにその者の氏名及び居住地その他厚生省令で定める事項をその居住地を管轄する都道府県知事に通報することができる。
(都道府県知事の健康診断の勧告等)
第8条
都道府県知事は、前条第2項の通報があったときには、当該通報に係る者に対して、期限を定めて、感染者であるかどうかに関する医師の健康診断を受けるべきことを勧告することができる。
2 都道府県知事は、前項の勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対して、期限を定めて、感染者であるかどうかに関する当該都道府県知事の指定する医師の健康診断を受けるべきことを命ずることができる。
(都道府県知事の指示等)
第9条
都道府県知事は、第7条第1項の通報に係る感染者若しくは前条第2項に規定する健康診断により感染者であると確認された者又はその保護者に対して、エイズの伝染の予防に関し必要な指示を行うことができる。
第10条
都道府県知事は、第8条第1項の規定による勧告、同条第2項の規定による命令又は前条の規定による命令又は前条の規定による指示を行おうとするときは、当該職員に、第7条第1項の通報に係る感染者若しくは同条第2項の通報に係る者又はその保護者に対し、必要な質問をさせることができる。
2 前項の規定により質問をする当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときには、これを提示しなければならない。
3 第1項の規定による質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(伝染病予防法の適用)
第11条
この法律に基づき都道府県知事が行う事務については、これを伝染病予防法(明治30年法律36号)の規定による伝染病予防事務とみなして、同法第18条ノ2第2項、第19条ノ3、第22条、第22ノ2及び第25条の規定を適用する。この場合において、同法第19条ノ3中「伝染病予防上」とあるのは、「後天性免疫不全症候群ノ予防ノタメ」とする。
2 前項の場合における伝染病予防法第28条の規定の適用については、同条中「此ノ法律中」とあるのは、「此ノ法律(後天性免疫不全症候群の予防に関する法律第11条第1項ノ規定ニ依リ適用セラルル場合ヲ含ム)中」とする。
(大都市の特例)
第12条
この法律中都道府県知事又は都道府県の職員の権限に属するものとされている事務で政令に定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)においては、政令で定めるところにより、指定都市の長又はその職員が行うものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事又は都道府県の職員に関する規定は、指定都市の長又はその職員に関する規定として、指定都市の長またはその職員に適用があるものとする。
(再審査請求)
第13条
前条の規定により指定都市の長がした処分に係る審査請求についての裁決に不服がある者は、厚生大臣に対して再審査請求をすることができる。
(罰則)
第14条
医師が、感染者であるかどうかに関する健康診断又はエイズの治療に際して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 第7条の規定による通報の受理、第8条第1項の規定による勧告、同条第2項の規定による命令、第9条の規定による指示又は第10条の規定による質問に関する事務に従事した公務員又は公務員であつた者が、その職務の執行に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときも、前項と同様とする。
3 職務上の前項の秘密を知り得た他の公務員又は公務員であつた者が、正当な理由がなく漏らしたときも、前項と同様とする。
第15条
感染者であるとの人の秘密を業務上知り得た者が、正当な理由がなくその秘密を漏らしたときは、6ヶ月以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
第16条
次の各号の一に該当する者は、10万円以下の罰金に処する。
一 第8条第2項の規定による命令に違反した者
二 第10条の規定による質問に対して虚偽の答弁をした者
附則
(施行期日)
第1条
この法律は、公布の日から起算して1月を経過した日から施行する。
(施行前に行われた診断に係る報告)
第2条
この法律の施行前に感染者であると診断した医者は、この法律の施行の日から1月以内に、文書をもつて、当該感染者の年齢、性別その他厚生省令で定める事項を当該感染者の居住地を管轄する都道府県知事に報告しなければならない。
ただし、当該感染者が血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合その他厚生省令で定める場合は、この限りではない。
(出入国管理及び難民認定法の一部改正)
第3条
出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)の一部を次のように改正する。
附則の次に1項を加える。
(上陸の拒否の特例)
後天性免疫不全症候群の病原体に感染している者であつて、多数の者にその病原体を感染させるおそれがあるものは、当分の間、第5条第1項1号に掲げる患者とみなす。
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