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保育所保育指針について

平成11年10月29日
児発第799号
各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長あて厚生省児童家庭局長通知


 保育所における保育内容については、その指導について従来から種々御配慮いただいているところであるが、この度、中央児童福祉審議会の意見具申(平成一一年一〇月二七日「保育所保育指針について」)を受け、保育所保育指針(平成二年三月二七日児発第二一七号本職通知「保育所保育指針について」)を別添のとおり改訂し、改訂後の保育所保育指針を平成一二年四月一日より施行することとしたので、通知する。
 貴職におかれては、この保育所保育指針に沿って、保育所における保育内容が一層充実されるよう貴管下の地方公共団体及び保育所を指導されたくお願いする。
 また、乳児院、児童養護施設、母子生活支援施設、認可を受けていない保育施設等においても、各々の施設の状況に応じつつこの保育所保育指針を参考として児童の処遇が行われるよう、関係者に周知されたく併せてお願いする。

(別添)
保育所保育指針
目次
第一章 総則
1 保育の原理
(1) 保育の目標
(2) 保育の方法
(3) 保育の環境
2 保育の内容構成の基本方針
(1) ねらい及び内容
(2) 保育の計画
第二章 子どもの発達
1 子どもと大人との関係
2 子ども自身の発達
3 子どもの生活と発達の援助
第三章 六か月未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第四章 六か月から一歳三か月未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第五章 一歳三か月から二歳未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第六章 二歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第七章 三歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第八章 四歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第九章 五歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第一〇章 六歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
2 保育士の姿勢と関わりの視点
3 ねらい
4 内容
5 配慮事項
第一一章 保育の計画作成上の留意事項
1 保育計画と指導計画
2 長期的指導計画と短期的指導計画の作成
3 三歳未満児の指導計画
4 三歳以上児の指導計画
5 異年齢の編成による保育
6 職員の協力体制
7 家庭や地域社会との連携
8 小学校との関係
9 障害のある子どもの保育
10 長時間にわたる保育
11 地域活動など特別事業
12 指導計画の評価・改善
第一二章 健康・安全に関する留意事項
1 日常の保育における保健活動
2 健康診断
3 予防接種
4 疾病異常等に関する対応
5 保育の環境保健
6 事故防止・安全指導
7 虐待などへの対応
8 乳児保育についての配慮
9 家庭、地域との連携
第一三章 保育所における子育て支援及び職員の研修など
1 入所児童の多様な保育ニーズへの対応
2 地域における子育て支援
3 職員の研修等


第一章 総則
 保育所は、児童福祉法に基づき保育に欠ける乳幼児を保育することを目的とする児童福祉施設である。
 したがって、保育所における保育は、ここに入所する乳幼児の最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしいものでなければならない。
 保育所は、乳幼児が、生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごすところである。保育所における保育の基本は、家庭や地域社会と連携を図り、保護者の協力の下に家庭養育の補完を行い、子どもが健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境を用意し、自己を十分に発揮しながら活動できるようにすることにより、健全な心身の発達を図るところにある。
 そのために、養護と教育が一体となって、豊かな人間性を持った子どもを育成するところに保育所における保育の特性がある。
 また、子どもを取り巻く環境の変化に対応して、保育所には地域における子育て支援のために、乳幼児などの保育に関する相談に応じ、助言するなどの社会的役割も必要となってきている。
 このような理念や状況に基づき、保育を展開するに当たって必要な基本的事項をあげれば次のとおりである。

1 保育の原理
(1) 保育の目標
 子どもは豊かに伸びていく可能性をそのうちに秘めている。その子どもが、現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うことが保育の目標である。
 このため、保育は次の諸事項を目指して行う。
ア 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を適切に満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。
イ 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
ウ 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。
エ 自然や社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の基礎を培うこと。
オ 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、喜んで話したり、聞いたりする態度や豊かな言葉を養うこと。
カ 様々な体験を通して、豊かな感性を育て、創造性の芽生えを培うこと。

(2) 保育の方法
 保育においては、保育士の言動が子どもに大きな影響を与える。したがって、保育士は常に研修などを通して、自ら、人間性と専門性の向上に努める必要がある。また、倫理観に裏付けられた知性と技術を備え、豊かな感性と愛情を持って、一人一人の子どもに関わらなければならない。
 このため、保育は、次の諸事項に留意し、第三章から第一〇章に示すねらいが達成されるようにする。
ア 一人一人の子どもの置かれている状態及び家庭、地域社会における生活の実態を把握するとともに、子どもを温かく受容し、適切な保護、世話を行い、子どもが安定感と信頼感を持って活動できるようにすること。
イ 子どもの発達について理解し、子ども一人一人の特性に応じ、生きる喜びと困難な状況への対処する力を育てることを基本とし、発達の課題に配慮して保育すること。
ウ 子どもの生活のリズムを大切にし、自己活動を重視しながら、生活の流れを安定し、かつ、調和のとれたものにすること。特に、入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的な対応を行うことによって子どもが安定感を得られるように努め、次第に主体的に集団に適応できるように配慮するとともに、既に入所している子どもに不安や動揺を与えないように配慮すること。
エ 子どもが自発的、意欲的に関われるような環境の構成と、そこにおける子どもの主体的な活動を大切にし、乳幼児期にふさわしい体験が得られるように遊びを通して総合的に保育を行うこと。
オ 一人一人の子どもの活動を大切にしながら、子ども相互の関係づくりや集団活動を効果あるものにするように援助すること。
カ 子どもの人権に十分配慮するとともに、文化の違いを認め、互いに尊重する心を育てるようにすること。
キ 子どもの性差や個人差にも留意しつつ、性別による固定的な役割分業意識を植え付けることのないように配慮すること。
ク 子どもに、身体的苦痛を与え、人格を辱めることなどがないようにすること。
ケ 保育に当たり知り得た子どもなどに関する秘密は、正当な理由なく漏らすことがないようにすること。

(3) 保育の環境
 保育の環境には、保育士や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、さらには、自然や社会の事象などがある。そして、人、物、場が相互に関連し合って、子どもに一つの環境状況をつくり出す。
 こうした環境により、子どもの生活が安定し、活動が豊かなものとなるように、計画的に環境を構成し、工夫して保育することが大切である。
 保育所の施設、屋外遊戯場は、子どもの活動が豊かに展開されるためにふさわしい広さを持ち、遊具・用具その他の素材などを整え、それらが十分に活用されるように配慮する。施設では、採光、換気、保温、清潔など環境保健の向上に努め、特に、危険の防止と災害時における安全の確保について十分に配慮する。また、午睡・休息が必要に応じて行えるようにする。保育室は、子どもにとって家庭的な親しみとくつろぎの場となるとともに、いきいきと活動ができる場となるように配慮する。
 さらに、自然や社会の事象への関心を高めるように、それらを取り入れた環境をつくることに配慮する。

2 保育の内容構成の基本方針
(1) ねらい及び内容
 保育の内容は、「ねらい」及び「内容」から構成される。
 「ねらい」は、保育の目標をより具体化したものである。これは、子どもが保育所において安定した生活と充実した活動ができるようにするために、「保育士が行わなければならない事項」及び子どもの自発的、主体的な活動を保育士が援助することにより、「子どもが身につけることが望まれる心情、意欲、態度などを示した事項」である。
 「内容」は、これらのねらいを達成するために、子どもの状況に応じて保育士が適切に行うべき基礎的な事項及び保育士が援助する事項を子どもの発達の側面から示したものである。
 内容のうち、子どもが保育所で安定した生活を送るために必要な基礎的な事項、すなわち、生命の保持及び情緒の安定に関わる事項は全年齢について示してあるが、特に、三歳以上児の各年齢の内容においては、これらを「基礎的事項」としてまとめて示してある。また、保育士が援助して子どもが身に付けることが望まれる事項について発達の側面から以下の領域が設けられている。心身の健康に関する領域である「健康」、人との関わりに関する領域である「人間関係」、身近な環境との関わりに関する領域である「環境」、言葉の獲得に関する領域である「言葉」及び感性と表現に関する領域である「表現」の五領域を設定して示してあるが、この五領域は、三歳未満児については、その発達の特性からみて各領域を明確に区分することが困難な面が多いので、五領域に配慮しながら、基礎的な事項とともに一括して示してある。なお、保育は、具体的には子どもの活動を通して展開されるものであるので、その活動は一つの領域だけに限られるものではなく、領域の間で相互に関連を持ちながら総合的に展開していくものである。
 保育の内容の発達過程区分については、六か月未満児、六か月から一歳三か月未満児、一歳三か月から二歳未満児、さらに二歳児から六歳児までは一年ごとに設定し、それぞれのねらいと内容を第三章から第一〇章に示してある。
なお、発達過程の区分による保育内容は組やグループ全員の均一的な発達の基準としてみるのではなく、一人一人の乳幼児の発達過程として理解することが大切である。

(2) 保育の計画
 保育の計画は、全体的な計画と具体的な計画について作成する必要があり、その作成に当たっては柔軟で発展的なものとなるように留意することが重要である。
 全体的な計画は、「保育計画」とし、入所している子ども及び家庭の状況や保護者の意向、地域の実態を考慮し、それぞれの保育所に適したものとなるように作成するものとする。
 また、保育計画は、保育の目標とそれを具体化した各年齢ごとのねらいと内容で構成され、さらに、それらが各年齢を通じて一貫性のあるものとする必要がある。
 また、保育計画に基づいて保育を展開するために、具体的な計画として、「指導計画」を作成するものとする。
 さらに、家庭や地域社会の変化に伴って生じる多様な保育需要に対しては、地域や保育所の特性を考慮して柔軟な保育の計画を作成し、適切に対応することが必要である。保育の計画を踏まえて保育が適切に進められているかどうかを把握し、次の保育の資料とするため、保育の経過や結果を記録し、自己の保育を評価し反省することに努めることが必要である。

第二章 子どもの発達
 乳幼児期は子どもの心身の発育・発達が著しく、また、基礎が形成される。しかし、一人一人の子どもの個人差は大きいため、保育に当たっては、発達の過程や生活環境など子どもの発達の全体的な姿を把握しながら行う必要がある。

1 子どもと大人との関係
 子どもは、身体的にも精神的にも未熟な状態で生まれ、大人に保護され、養育される。その際、大人と子どもの相互作用が十分に行われることによって、将来に向けての望ましい発育・発達を続け、人間として必要な事柄を身につけることができる。中でも重要なことは、人への信頼感と自己の主体性を形成することであり、それは、愛情豊かで思慮深い大人の保護・世話などの活動を通じた大人と子どもの相互関係の中で培われる。子どもは、大人によって生命を守られ、愛され、信頼されることによって、自分も大人を愛し、信頼していくようになる。大人との相互作用によって情緒的に安定し、大人の期待に自ら応えようという気持ちが育ち、次第に主体的に活動するようになり、さらに、きょうだいを始め周囲の者に対して関心を持ち、関わりを広め、増やしながら、自我が芽生えてくる。
 このように発達初期に自分の行動を認めてくれる大人と相互関係を持つことにより、その後の一層の発達が促される。子どもは自発的に身近な事物や出来事に興味や関心を示して働きかけたり、積極的に特定の大人との関係をつくろうとするなど、自分の気持ちを明確に表現し、自分の意思で何かをするようになる。
 このようにして、自分が主体となって選択し、決定して行動するという自己の能動性に自信を持つようになり、言葉や思考力、自己統制力を発達させていく。

2 子ども自身の発達
 子どもの発達は、子どもと子どもを取り巻く環境内の人や自然、事物、出来事などとの相互作用の結果として進んでいく。
 その際、そこに主体的に関わっている子ども自身の力を認めることが大切である。すなわち、発達とは、子どもが心身の自然な成長に伴い、それぞれの子どもに応じた自発的、能動的な興味、好奇心や、それまでに身につけてきた知識、能力を基にして、生活環境内の対象へ働きかけ、その対象との相互作用の一結果として、新たな態度や知識、能力を身につけていく過程である。
 特に、中心となることは人との相互作用である。子どもは、乳幼児期を通じて、大人との交流、応答や大人から理解されることを求め、自分が大人に理解されたように自分からも大人を理解しようとする。この大人との関係を土台として、次第に他の子どもとの間でも相互に働きかけ、社会的相互作用を行うようになる。
 このような大人との相互作用とは違って、自分とよく似た視点を持つ他の子どもとの間で行われる社会的相互作用は、子どもの情緒的、社会的、道徳的な発達のみならず、知的発達にとっても不可欠な体験である。
 子どもが思考力をはじめとした多くの能力を発達させるために必要な論理の展開も、子ども同士の社会的相互作用なしには経験し得ない。すなわち、自分の考えを相手に理解してもらいたいという気持ちを持ったり、相手に説明しようという気持ちを持つのも、仲間との社会的相互作用によるからである。また、大人との上下の関係とは違う横の対等の関係の中で、自己主張や自己抑制の必要性や方法を学び取っていく。
 また、子どもは、その生理的・身体的な諸条件や養育環境の違いによって、その発達の進み方や現れ方が異なってくることを認識することが重要である。

3 子どもの生活と発達の援助
 子どもの発達は、子どもとその環境内の対象との相互作用を通してなされるものであり、子どもの発達を促すためには、大人の側からの働きかけばかりでなく、子どもからの自発的、能動的な働きかけが行われるようにすることが必要である。
 したがって、保育所においては、一人一人の子どもが、安心して生活ができ、また、発達に応じた適切な刺激と援助が与えられることにより、能動的、意欲的に活動ができるような環境が構成されなければならない。
 このため家庭や地域と連携を持った安定した子どもの生活と、子どもをありのままに見て、それを深く理解して受容しようとする保育士との信頼関係が必要となる。
 子どもの活動には、大別して、食事、排泄、休息、衣服の調節などの生活に関わる部分と遊びの部分とがあるが、子どもの主体的活動の中心となるのは遊びである。
 子どもの遊びは、子どもの発達と密接に関連して現れるし、また逆にその遊びによって発達が刺激され、助長される。つまり、遊びは乳幼児の発達に必要な体験が相互に関連し合って総合的に営まれていることから、遊びを通しての総合的な保育をすることが必要である。この際、保育士は子どもと生活や遊びを共にする中で、一人一人の子どもの心身の状態をよく把握しながら、その発達の援助を行うことが必要である。
 また、様々な条件により、子どもに発達の遅れや保育所の生活に慣れにくい状態がみられても、その子どもなりの努力が行われているので、その努力を評価して、各年齢別の発達の一般的な特徴を押しつけることなく、一人一人の子どもの発達の特性や発達の課題に十分に留意して保育を行う必要がある。

第三章 六か月未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期、母体内から外界への環境の激変に適応し、その後は著しい発育・発達がみられる。月齢が低いほど体重や身長の増加が大きく、次第に皮下脂肪も増大し、体つきは円みを帯びてくる。
 また、この時期の視覚や聴覚などの感覚の発達はめざましく、これにより、自分を取り巻く世界を認知し始める。感覚器官を含め、すべての身体発育や行動の発達は子どもが生来持っている機能の発達によることが大きいが、こうした生得的、生理的な諸能力の発達も、その子どもが生活している環境、特に周りの大人との温かく豊かな相互応答的な関係の中で順調に促進される。
 身体発育や行動の発達は、まさしく子どもの身近な環境との相互作用の結果であり、この時期はその出発点である。
 この時期の子どもは発達の可能性に満ちているが、大人の援助なしでは欲求を満たすことはできない。
 しかし、子どもは、笑う、泣くという表情の変化や体の動きなどで自分の欲求を表現する力を持つ。このような表現により子どもが示す様々な欲求に応え、身近にいる特定の保育士が適切かつ積極的に働きかけることにより、子どもと保育士との間に情緒的な絆が形成される。これは対人関係の第一歩であり、自分を受け入れ、人を愛し、信頼する力へと発展していく。
 生後三か月頃には、機嫌のよいときは、じっと見つめたり、周りを見まわしている。周りで物音がしたり、大人が話していると声のする方をみる。足を盛んに蹴るようになる。寝ていて自由に首の向きを変えることができ、腹ばいで頭を持ち上げるようになり、動くものを目で追えるようになる。小型のガラガラ等を手にあてるとすこしの間握ったり、振ったりする。微笑みも生理的なものから、あやすと笑うなど社会的な意味を持ちはじめる。子どもの要求の受け止め方や大人の働きかけに対して快と不快の感情が分化してくる。
 「ア・エ・ウ」等の音を出したり、「ブーブー」とか「クク」という声を出す。授乳中に哺乳瓶に触れていたり、いじったりする。満腹になり乳首をくわえたまま気持ちよさそうに眠ることもある。
 保育士はこのような子どもの行動に気づき、感受性豊かに受け止め、優しく体と言葉で応答することにより、子どもは自分がした行動の意味を理解するようになり、特定の保育士との間で情緒的な絆が形成される。
 生後四か月までに、首がすわり、五か月ぐらいからは目の前の物をつかもうとしたり、手を口に持っていったりするなど手足の動きが活発になる。
 また、生理的な快、不快の表出は、感情を訴えるような泣き方をしたり、大人の顔を見つめ、笑いかけ、「アー」「ウー」などと声を出すなど次第に社会的、心理的な表出へと変化する。さらに、身近な人の声を覚えたり、また、音のする方向に首を向けたり、近づいてくるものを見たり、ゆっくり動くものを目で追うようになる。生後四か月を過ぎると、腕、手首、足は自分の意思で動かせるようになり、さらに、寝返り、腹ばいにより全身の動きを楽しむようになる。
 また、眠っている時と、目覚めている時とがはっきりと分かれ、目覚めている時には、音のする方向に向く、見つめる、追視する、喃語を発するなどの行動が活発になる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 子どもの心身の機能の未熟性を理解し、家庭との連携を密にしながら、保健・安全に十分配慮し、個人差に応じて欲求を満たし、次第に睡眠と覚醒のリズムを整え、健康な生活リズムを作っていく。また、特定の保育士の愛情深い関わりが、基本的な信頼関係の形成に重要であることを認識して、担当制を取り入れるなど職員の協力体制を工夫して保育する。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、常に体の状態を細かく観察し、疾病や異常は早く発見し、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの生活のリズムを重視して、食欲、睡眠、排泄などの生理的欲求を満たし、生命の保持と生活の安定を図る。
(3) 一人一人の子どもの状態に応じて、スキンシップを十分にとりながら心身ともに快適な状態をつくり、情緒の安定を図る。
(4) 個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めて、健やかな発育・発達を促す。
(5) 安全で活動しやすい環境の下で、寝返りや腹ばいなど運動的な活動を促す。
(6) 笑ったり、泣いたりする子どもの状態にやさしく応え、発声に応答しながら喃語を育む。
(7) 安心できる人的、物的環境のもとで、聞く、見る、触れるなど感覚の働きが豊かになるようにする。

4 内容
(1) 一人一人の子どもの健康状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
(2) 一人一人の子どもの心身の発育や発達の状態を的確に把握する。
(3) 体、衣服、身の回りにあるものを、常に清潔な状態にしておく。
(4) 一人一人の子どもの生理的欲求を十分に満たし、保育士の愛情豊かな受容的な関わりにより、気持ちのよい生活ができるようにする。
(5) 授乳は、抱いて微笑みかけたり、優しく言葉をかけたりしながら、ゆったりとした気持ちで行う。
(6) ミルク以外の味やスプーンから飲むことに慣れるようにし、嘱託医などと相談して一人一人の子どもの状態に応じて離乳を開始する。
(7) 一人一人の子どもの生活のリズムを大切にしながら、安心してよく眠れるように環境を整える。
(8) おむつが汚れたら、優しく言葉をかけながらこまめに取り替え、きれいになった心地よさを感じることができるようにする。
(9) 一人一人の子どもの状態に応じて、嘱託医などと相談して、積極的に健康増進を図る。
(10) 室内外の温度、湿度に留意し、子どもの健康状態に合わせて衣服の調節をする。
(11) 授乳、食事の前後や汚れたときは、優しく言葉をかけながら顔や手を拭く。
(12) 立位で抱かれたり、屈伸、腹ばいなど体位を変えてもらって遊びを楽しむ。
(13) 子どもに優しく語りかけをしたり、歌いかけたり、泣き声や喃語に答えながら、保育士との関わりを楽しいものにする。
(14) 優しく言葉をかけてもらいながら、聞いたり、見たり、触ったりできる玩具などで遊びを楽しむ。

5 配慮事項
(1) 身体機能の未熟性が強く、病気にかかりやすく、また、生命の危険に陥りやすいため、体の状態の急激な変化に対応できるように一人一人の子どもの状態を十分に観察する。
(2) 一人一人の子どもの発育・発達の状態を適切に把握し、家庭と連携をとりながら、個人差に応じて保育する。
(3) 低月齢の子どもであることから、保育士の愛情をこめた日々の世話や関わりが一人一人の子どもの発育・発達及び健康状態に大きく影響することを認識して保育する。
(4) 生理的諸機能の未熟性が強く、時には疾病異常の発生や生命の危険につながることもあり、十分に注意して保護・世話をしなければならない。特に、おむつのあて方や衣服の着せ方、寝具の調節、保育室の温度や湿度の調整、安全の確保に心がけるなどをきめ細かく行う。
(5) 愛情豊かな特定の大人との継続性のある応答的で豊かな関わりが、子どもの人格形成の基盤となり、情緒や言葉の発達に大きく影響することを認識し、子どもの様々な欲求を適切に満たし、子どもとの信頼関係を十分に築くように配慮する。
(6) 授乳や食事は清潔に行えるように配慮し、子どもの個人差や健康状態に十分に注意を払う。授乳は、必ず抱いて、子どもの楽な姿勢で行う。一人一人の子どもの哺乳量を考慮して授乳し、哺乳後は、必ず排気させ、吐乳を防ぐ。
(7) 睡眠に当たっては、保育室から離れることなく、環境条件や衣類、寝具のかけ方などに注意するとともに、仰向けに寝かせ、呼吸や顔色、嘔吐の有無など睡眠時の状態をきめ細かに観察し、記録する。特に、乳児の死亡原因として、それまで元気であった子どもが何の前ぶれもなく睡眠中に死亡することがある乳幼児突然死症候群があり、保育中にも十分気配りをする。
(8) 健康増進を図るための活動は、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態や気候、身につけるものに注意するとともに、発汗など体の状態を十分に観察してから行い、活動後は必要に応じて水分を与える。
(9) 保育室や子どもの身の回りの環境や衣類、寝具、玩具などの点検を常に行い、不潔な状態や危険のないように配慮する。
(10) 快適に過ごせるように、衣服は、家庭と連携をとり、清潔で肌ざわりのよい、ゆったりとしたものを着せるように配慮する。
(11) 保育室は、気候に応じてその温度、湿度などの環境保健に注意を払うとともに、室内環境の色彩やベッドなどの備品の配置にも配慮し、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態に応じ、さらには情緒の安定のためにその都度適切に整える。
(12) 目覚めているときは、できるだけ個別に抱き上げたり、玩具を見せてあやすなど人に対する関心や周囲に対する興味が育つように配慮する。首がすわっていない子どもは、抱くときには必ず保育士の手で頭を支えるようにする。また、抱き上げてあやすときにも、あまり強く体を揺すらないように配慮する。
(13) 玩具などは、大きさ、形、色、音質など子どもの発達状態に応じて適切なものを選び、遊びを通して感覚の発達に効果あるものとなるように配慮する。

第四章 六か月から一歳三か月未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期、前期に引き続き急速な発育・発達が見られる。六か月を過ぎると、身近な人の顔が分かり、あやしてもらうと非常に喜ぶようになる。視野の中にある新しい刺激、変化に富む刺激、より複雑な刺激を次第に求める積極性や選択性は、初期から認められる。
 しかし、六か月頃より、母体から得た免疫は次第に弱まり、感染症にかかりやすくなる。この時期の座る、はう、立つといった運動や姿勢の発達は、子どもの遊びや生活を変化させ、生活空間を大きく変え、直立歩行へと発展し、さらに、手の運動なども発達して、次第に手を用いるようになる。さらに、言葉が分かるようになり、離乳食から幼児食へと変化することによって、乳児期から幼児期への移行を迎える。
本来、子どもは生理的に未熟であり、体外の豊かで変化に富んだ応答的環境の中で生活することによって、人間として生まれながらに持っている能力を社会的な環境に適応させながらうまく発現していく必要があることから、この時期は、極めて大切である。
 七か月頃から一人で座れるようになり、座った姿勢でも両手が自由に使えるようになる。
 また、この時期には人見知りが激しくなるが、一方では、見慣れた人にはその身振りをまねて「ニギニギ」をしたり「ハイハイ」などをして積極的に関わりを持とうとする。この気持ちを大切に受け入れ応答することが情緒の安定にとって重要である。こうした大人との関係の中で喃語は変化に富み、ますます盛んになる。
 九か月頃までには、はうことや両手に物を持って打ちつけたり、たたき合わせたりすることができるようになる。身近な大人との強い信頼関係に基づく情緒の安定を基盤にして、探索活動が活発になってくる。また、情緒の表現、特に表情もはっきりしてきて、身近な人や欲しいものに興味を示し、自分から近づいていこうとするようになる。
 さらに、簡単な言葉が理解できるようになり、自分の意思や欲求を身振りなどで伝えようとするようになる。
 一歳前後には、つかまり立ち、伝い歩きもできるようになり、外への関心も高まり、手押し車を押したりすることを好むようになる。また、喃語も、会話らしい抑揚がつくようになり、次第にいくつかの身近な単語を話すようになる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 身近な人を区別し、安定して関われる大人を求めるなど、特定の保育士との関わりを基盤に、歩行や言葉の獲得に向けて著しく発達するので、一人一人の欲求に応え、愛情をこめて、応答的に関わるようにする。家庭との連携を密にし、一日二四時間を視野に入れた保育を心がけ、生活が安定するようにする。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、体の状態を細かく観察し、疾病や異常の発見に努め、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの生活のリズムを重視して、食欲、睡眠、排泄などの生理的欲求を満たし、生命の保持と生活の安定を図る。
(3) 一人一人の子どもの甘えなどの依存欲求を満たし、情緒の安定を図る。
(4) 離乳を進め、様々な食品に慣れさせながら幼児食への移行を図る。
(5) 姿勢を変えたり、移動したり様々な身体活動を十分に行えるように、安全で活動しやすい環境を整える。
(6) 優しく語りかけたり、発声や喃語に応答したりして、発語の意欲を育てる。
(7) 聞く、見る、触るなどの経験を通して、感覚や手や指の機能を働かそうとする。
(8) 絵本や玩具、身近な生活用具が用意された中で、身の回りのものに対する興味や好奇心が芽生える。

4 内容
(1) 一人一人の子どもの健康状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
(2) 一人一人の子どもの心身の発育や発達の状態を的確に把握する。
(3) 体、衣服、身の回りにあるものを、常に清潔な状態にしておく。
(4) 一人一人の子どもの生理的欲求を十分に満たし、保育士の愛情豊かな受容により気持ちのよい生活ができるようにする。
(5) 楽しい雰囲気の中で、喜んで食事ができるようにし、嘱託医などと相談して離乳を進めながら、次第に幼児食に移行させる。
(6) 一人一人の子どもの生活のリズムを大切にしながら、眠いときは安心して十分に眠ることができるようにする。
(7) 一人一人の子どもの排尿間隔を把握しながら、おむつが汚れたら、優しく言葉をかけながらこまめに取り替え、きれいになった心地よさを感じることができるようにする。
(8) 一人一人の子どもの状態に応じて、嘱託医などと相談して、積極的に健康増進を図る。
(9) 室内外の温度、湿度に留意し、子どもの健康状態に合わせて衣服の調節をする。
(10) 食事の前後や汚れたときは、顔や手を拭いて、清潔になることの快さを喜ぶようにする。
(11) 寝返り、はいはい、お座り、伝い歩き、立つ、歩くなどそれぞれの状態に合った活動を十分に行う。
(12) つまむ、たたく、ひっぱるなど手や指を使って遊ぶ。
(13) 喃語や片言を優しく受け止めてもらい、発語や保育士とのやりとりを楽しむ。
(14) 生活や遊びの中での保育士のすることに興味を持ったり、模倣したりすることを楽しむ。
(15) 保育士の歌を楽しんで聞いたり、歌やリズムに合わせて手足や体を動かして楽しむ。
(16) 保育士と一緒にきれいな色彩のものや身近なものの絵本を見る。
(17) 保育士に見守られて、玩具や身の回りのもので一人遊びを十分に楽しむ。

5 配慮事項
(1) 感染症にかかりやすいので、発熱など体の状態、機嫌、元気さなど日常の状態の観察を十分に行い、変化が見られたときには適切に対応する。
(2) 一人一人の子どもの発育・発達状態を適切に把握し、家庭と連携をとりながら、個人差に応じて保育する。
(3) 特定の保育士との温かいふれあい、保育士の優しい語りかけが、子どもの情緒を安定させ、順調な発育・発達を支えることを認識して子どもに接するように心掛ける。
(4) 授乳、離乳は一人一人の子どもの健康状態や食欲に応じて行うとともに、発育・発達状態に応じて食品や調理形態に変化を持たせるなどして離乳を進め、適切な時期に離乳を完了し、幼児食に移行する。
(5) 食事においては、咀嚼そしゃくや嚥下えんげの発達を適切に促せるように、食品や調理形態に配慮し、子どもが自分から食べようとする意欲や行動を大切にしながら適切な援助を行う。
(6) 季節や一人一人の子どもの健康状態や活動状況に応じて睡眠できるように配慮し、また、睡眠中の状態の観察を怠ることなく、室温、衣服、寝具に配慮するとともに、起床後の健康状態や転落その他の事故がないように十分に注意する。
(7) 食事、排泄などへの対応は、一人一人の子どもの発育・発達状態に応じて、急がせることなく無理のないように行い、上手にできたときにはほめるなどの配慮をする。
(8) 健康増進を図るための活動は、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態や気候などに配慮して行い、活動後は子どもの状態を十分に観察する。
(9) 楽しい雰囲気の中での保育士との関わり合いを大切にし、ゆっくりと優しく話しかけるなど積極的に相手になって、言葉のやりとりを楽しむことができるように配慮する。
(10) 発達が進み、新しい行動が可能となると行動範囲が広がるので、身の回りのものなどについてはいつも十分な点検を行い、安全を確認した上で探索意欲を満たして自由に遊べるようにする。この時期には伝い歩きが始まるが、はうことも十分に経験できるようにする。
(11) 行動が活発になるので、十分な休息がとれるように配慮する。
(12) 抱かれたり、一人歩きなどで、身近な自然の素材、生き物、乗り物などに接して楽しむ機会を持ち、子どもの外界への関心を広げるように配慮する。
(13) 遊びにおいては、個人差の大きい時期なので、一人一人の子どもの発育・発達状態をよく把握し、子どもが興味を持ち、自分からしてみようとする意欲を大切にし、温かく見守る。
(14) 保育士の優しい歌声や、快い音楽を聴く機会を豊富にし、また、好きな歌や音楽は繰り返すようにして、満足感を味わえるようにする。
 さらに、大人の動作を見て模倣をする喜びを味わえるようにする。

第五章 一歳三か月から二歳未満児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期、歩き始め、手を使い、言葉を話すようになる。この時期には、運動機能の発達がめざましく、体つきは次第にやせぎみになっていく印象を受ける。感染症の罹患が多く、この時期の病気の大半を占めるといってもよい。つかまらずに歩けるようになり、押したり、投げたりなどの運動機能も増す。生活空間が広がり、子どもはこれまでに培われた安心できる関係を基盤として、目の前に開かれた未知の世界の探索行動に心をそそられ、身近な人や身の回りにある物に自発的に働きかけていく。その過程で、生きていく上で必要な数多くの行動を身につけていく。例えば、身近な人の興味ある行動を模倣し、活動の中に取り入れるようになる。つまむ、めくる、通す、はずす、なぐりがきをする、転がす、スプーンを使う、コップを持つなど運動の種類が確実に豊かになっていく。こうした新しい行動の獲得によって、子どもは自分にもできるという気持ちを持ち、自信を獲得し、自発性を高めていく。また、大人の言うことが分かるようになり、呼びかけたり、拒否を表す片言を盛んに使うようになり、言葉で言い表わせないことは、指さし、身振りなどで示そうとする。このように自分の思いを親しい大人に伝えたいという欲求が次第に高まってくる。そして、一歳後半には、「マンマ、ホチイ」などの二語文も話し始めるようになる。
 さらに、この時期には、ボールのやりとりのような物を仲立ちとした触れ合いや、物の取り合いも激しくなり、また、あるものを他のもので見立てるなど、その後の社会性や言葉の発達にとって欠かせない対人関係が深まり、象徴機能が発達してくる。このような外界への働きかけは、身近な人だけでなく物へも広がり、大人にとっては、いたずらが激しくなったと感じられることも多くなる。
 保育士との豊かな交流は、友達と一緒にいることの喜びへとつながり、情緒の面でも、子どもに対する愛情と大人に対する愛情とに違いが出てくるし、嫉妬心も見られるなど分化が行われる。この時期は、保育士に受け入れられることにより、自発性、探索意欲が高まるが、まだまだ大人の世話を必要とする自立への過程の時期である。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 保育士は子どもの生活の安定を図りながら、自分でしようとする気持ちを尊重する。自分の気持ちをうまく言葉で表現できないことや、思い通りにいかないことで、時には大人が困るようなことをすることも発育・発達の過程であると理解して対応する。歩行の確立により、盛んになる探索活動が十分できるように環境を整え、応答的に関わる。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、体の状態を観察し、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの生理的欲求や甘えなどの依存欲求を満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
(3) 様々な食品や調理形態に慣れ、楽しい雰囲気のもとで食べることができるようにする。
(4) 一人一人の子どもの状態に応じて、睡眠など適切な休息をとるようにし、快適に過ごせるようにする。
(5) 安心できる保育士との関係の下で、食事、排泄などの活動を通して、自分でしようとする気持ちが芽生える。
(6) 安全で活動しやすい環境の中で、自由に体を動かすことを楽しむ。
(7) 安心できる保育士の見守りの中で、身の回りの大人や子どもに関心を持ち関わろうとする。
(8) 身の回りの様々なものを自由にいじって遊び、外界に対する好奇心や関心を持つ。
(9) 保育士の話しかけや、発語が促されたりすることにより、言葉を使うことを楽しむ。
(10) 絵本、玩具などに興味を持って、それらを使った遊びを楽しむ。
(11) 身近な音楽に親しみ、それに合わせた体の動きを楽しむ。

4 内容
(1) 一人一人の子どもの健康状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
(2) 一人一人の子どもの心身の発育・発達の状態を的確に把握する。
(3) 体、衣服、身の回りにあるものを、常に清潔な状態にしておく。
(4) 一人一人の子どもの気持ちを理解し、受容することにより、子どもとの信頼関係を深め、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
(5) 楽しい雰囲気の中で、昼食や間食が食べられるようにする。
(6) スプーン、フォークを使って一人で食べようとする気持ちを持つようにする。
(7) 一人一人の子どもの生活のリズムを大切にしながら、安心して午睡などをし、適切な休息ができるようにする。
(8) おむつやパンツが汚れたら、優しく言葉をかけながら取り替え、きれいになった心地よさを感じることができるようにする。
(9) 一人一人の子どもの排尿間隔を知り、おむつが汚れていないときに便器に座らせ、うまく排尿できたときはほめることなどを繰り返し、便器での排泄に慣れるようにする。
(10) 室内外の温度、湿度に留意し、子どもの状態に合わせて衣服の調節をする。
(11) 保育士の優しい言葉かけと援助で、衣服の着脱に興味を持つようにする。
(12) 食事の前後や汚れたときは顔や手を拭いて、きれいになった快さを感じることができるようにする。
(13) 登る、降りる、跳ぶ、くぐる、押す、引っ張るなどの運動を取り入れた遊びや、いじる、たたく、つまむ、転がすなど手や指を使う遊びを楽しむ。
(14) 保育士に見守られ、外遊び、一人遊びを十分に楽しむ。
(15) 好きな玩具や遊具、自然物に自分から関わり、十分に遊ぶ。
(16) 保育士の話しかけを喜んだり、自分から片言でしゃべることを楽しむ。
(17) 興味ある絵本を保育士と一緒に見ながら、簡単な言葉の繰り返しや模倣をしたりして遊ぶ。
(18) 保育士と一緒に歌ったり簡単な手遊びをしたり、また、体を動かしたりして遊ぶ。

5 配慮事項
(1) 感染症にかかることが多いので、発熱など体の状態、機嫌、食欲、元気さなどの日常の状態の観察を十分に行い、変化が見られたときは、適切に対応する。
(2) 身体発育や精神や運動の機能の発達には、個人差が大きいことに配慮し、発育・発達の状態を正しく把握するとともに、その変化に気づいたときは的確な処置をとる。
(3) 食欲や食事の好みに偏りが現れやすい時期なので、日常の心身の状態を把握しておき、無理なく個別に対応する。
(4) できるだけ外での活動を行うようにするが、外に出るときは、日照や気温などに注意して、帽子や服装に配慮し、子どもの体調に合わせて無理をしないようにする。
 また、活動などにより多量に汗をかいた後は水分の補給をする。
(5) 歩行の発達に伴い行動範囲が広がり、探索行動が活発になるので、事故が発生しやすくなる。
 また、予測できない行動も多くなるので、環境や活動の状態、子ども相互の関わりなどに十分な注意を払う。
(6) 食事は、一人一人の子どもの健康状態に応じ、無理に食べさせないようにし、自分でしようとする気持ちを大切にする。
 また、食事のときには、一緒に噛むまねをして見せたりして、噛むことの大切さが身につくように配慮する。
(7) 睡眠に当たっては、一人一人の子どもに適した接し方をして、十分に眠れるようにする。
 また、目覚めたときは、適切に応じるようにする。
(8) 排泄は、ゆったりした気持ちで対応し、子どもが自分から便器に座ってみようと思うような話し方、接し方をする。
(9) 衣類の着脱に当たっては、自分でしようとするのを励ましたり、うまくできたときはほめるなどして、自分でしようとする気持ちを大切にする。
(10) 個人差の大きい時期なので、一人一人の子どもの発育・発達状態をよく知り、楽しい雰囲気をつくるなどして、子どもが興味を持ち、自分から遊びを楽しめるように配慮する。
 自分でしようとしているときや何かに熱中しているときには温かく見守る。また、子どもの発見や驚きを見逃さず受け止め、好奇心や興味を満たすようにする。
(11) 全身を使うような遊びや手や指を使う遊びでは、子どもの自発的な活動を大切にしながら、時には保育士がやってみせるなど保育士と一緒に楽しんで遊べるようにする。
(12) 保育士と一緒に絵本を見ながら、絵本の内容を動作や言葉で表したり、歌を歌ったりなどして、模倣活動を楽しめるようにする。
(13) 子ども相互のけんかが多くなるが、不安感が強まらないように、保育士の優しい語りかけなどによりお互いの存在に気づくように配慮する。

第六章 二歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期、歩行の機能は一段と進み、走る、跳ぶなどの基本的な運動機能が伸び、体を自分の思うように動かすことができるようになり、身体運動のコントロールもうまくなるので、リズミカルな運動や音楽に合わせて体を動かすことを好むようになる。
 同時に指先の動きも急速に進歩する。発声、構音機能も急速に発達して、発声はより明瞭になり、語いの増加もめざましく、日常生活に必要な言葉も分かるようになり、自分のしたいこと、してほしいことを言葉で表出できるようになる。このような発達を背景に行動はより自由になり、行動範囲も広がり、他の子どもとの関わりを少しずつ求めるようになる。感染症に対する抵抗力は次第についてくるが、感染症は疾病の中では最も多い。
 日々の生活の中での新たな体験は、子どもの関心や探索意欲を高め、そこで得られた喜びや感動や発見を、自分に共感してくれる保育士や友達に一心に伝えようとし、一緒に体験したいと望むようになる。このような子どもの欲求を満たすことによって、諸能力も高まっていき、自分自身が好ましく思え、自信を持つことができるようになる。
 したがって、大人の手を借りずに何でも意欲的にやろうとする。しかし、現実にはすべてが自分の思いどおりに受け入れられるわけではなく、また、自分でできるわけでもないので、しばしば大人や友達との間で、自分の欲求が妨げられることを経験する。
 ところが、この頃の子どもはまだこうした状況にうまく対処する力を持っていないので、時にはかんしゃくを起こしたり、反抗したりして自己主張することにもなる。これは、自我が順調に育っている証拠と考えられる。この時期にも、子どもは周りの人の行動に興味を示し、盛んに模倣するが、さらに、物事の間の共通性を見い出したり、概念化することもできるようになる。また、象徴機能や観察力も増し、保育士と一緒に簡単なごっこ遊びができるようになる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 全身運動、手指などの微細な運動の発達により、探索活動が盛んになるので、安全に留意して十分活動できるようにする。生活に必要な行動が徐々にできるようになり、自分でやろうとするが、時には甘えたり、思い通りにいかないとかんしゃくを起こすなど感情が揺れ動く時期であり、それは自我の順調な育ちであることを理解して、一人一人の気持ちを受け止め、さりげなく援助する。また、模倣やごっこ遊びの中で保育士が仲立ちすることにより、友達と一緒に遊ぶ楽しさを次第に体験できるようにする。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの欲求を十分に満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
(3) 楽しんで食事、間食をとることができるようにする。
(4) 午睡など適切に休息の機会をつくり、心身の疲れを癒して、集団生活による緊張を緩和する。
(5) 安心できる保育士との関係の下で、食事、排泄などの簡単な身の回りの活動を自分でしようとする。
(6) 保育士と一緒に全身や手や指を使う遊びを楽しむ。
(7) 身の回りに様々な人がいることを知り、徐々に友達と関わって遊ぶ楽しさを味わう。
(8) 身の回りのものや親しみの持てる小動物や植物を見たり、触れたり、保育士から話を聞いたりして興味や関心を広げる。
(9) 保育士を仲立ちとして、生活や遊びの中で言葉のやりとりを楽しむ。
(10) 保育士と一緒に人や動物などの模倣をしたり、経験したことを思い浮かべたりして、ごっこ遊びを楽しむ。
(11) 興味のあることや経験したことなどを生活や遊びの中で、保育士とともに好きなように表現する。

4 内容
(1) 一人一人の子どもの健康状態や発育・発達状態を把握し、異常のある場合は適切に対応する。
(2) 生活環境を常に清潔な状態に保つとともに、身の回りの清潔や安全の習慣が少しずつ身につくようにする。
(3) 一人一人の子どもの気持ちを理解し、受容することにより、子どもとの信頼関係を深め、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする。
(4) 楽しい雰囲気の中で、自分で食事をしようとする気持ちを持たせ、嫌いなものでも少しずつ食べられるようにする。
 また、食事の後、保育士の手助けによって、うがいなどを行うようにする。
(5) 落ち着いた雰囲気の中で十分に眠る。
(6) 自分から、あるいは言葉をかけてもらうなどして便所に行き、保育士が見守る中で自分で排泄する。
(7) 簡単な衣服は一人で脱ぐことができるようになり、手伝ってもらいながら一人で着るようになる。
(8) 顔を拭く、手を洗う、鼻を拭くなどを保育士の手を借りながら少しずつ自分でする。
(9) 走る、跳ぶ、登る、押す、引っ張るなど全身を使う運動を取り入れた遊びや、つまむ、丸める、めくるなどの手や指を使う遊びを楽しむ。
(10) 自分の物、人の物の区別に気づくようになる。保育士の適切な援助によって自分の物の置き場所が分かる。
(11) 保育士の仲立ちによって、共同の遊具などを使って遊ぶ。
(12) 身の回りの小動物、植物、事物などに触れ、それらに興味、好奇心を持ち、探索や模倣などをして遊ぶ。
(13) 生活に必要な簡単な言葉を聞き分け、また、様々な出来事に関心を示し、言葉で表す。
(14) 保育士と一緒に簡単なごっこ遊びをする中で言葉のやりとりを楽しむ。
(15) 絵本や紙芝居を楽しんで見たり聞いたりし、繰り返しのある言葉の模倣を楽しむ。
(16) 保育士と一緒に、水、砂、土、紙などの素材に触れて楽しむ。
(17) 保育士と一緒に歌ったり簡単な手遊びをしたり、リズムに合わせて、体を動かしたりして遊ぶ。

5 配慮事項
(1) 一人一人の子どもの発育・発達状態及び日常に見られる心身の状態を十分に把握し、その変化に気づいたときには適切な処置ができるように配慮する。
(2) 食事、排泄、睡眠、衣類の着脱など生活に必要な基本的な習慣については、一人一人の子どもの発育・発達状態、健康状態に応じ、十分に落ち着いた雰囲気の中で行うことができるようにし、また、その習慣形成に当たっては、自分でしようとする気持ちを損なわないように配慮する。
(3) 食事の前後、排泄の後などにおいては、自分で清潔にしようとする気持ちが持てるように配慮し、一人でできたときは十分にほめるようにする。
(4) 外遊びや遊具で遊ぶ機会を多くし、遊具に慣れる経験を大切にしながら、子どもの自主性に応じて遊べるように工夫し、健康増進を図るように配慮する。
(5) 衝動的な動作が多くなるので、子どもから目を離さないように注意する。
(6) 活発な活動の後には、一人一人の子どもの状態によって適切な休息や水分を与えたり、汗を拭いたりして、体の状態を観察する。
(7) 子どもが、楽しみながら全身や手を使う活動ができるような遊びを取り入れる。
(8) 子ども同士のけんかが多くなるので、保育士はお互いの気持ちを受容し、分かりやすく仲立ちをして、根気よく他の子どもとの関わり方を知らせていく。
(9) 自然や身近な事物などへの興味や関心を広げていくに当たっては、安全や衛生面に留意しながら、それらと触れ合う機会を十分に持つようにする。
 また、保育士がまず親しみや愛情を持って関わるようにして、子どもが自分からしてみようと思う気持ちを大切にする。
(10) 子どもの話はやさしく受け止め、自分から保育士に話しかけたいという気持ちを大切にし、楽しんで言葉を使うことができるように配慮する。
(11) くり返しのある話や絵本を読んで聞かせたり、子どものしたことをお話にしたりして様々な興味を養うようにする。
(12) 生活や遊びの中で、子どものつぶやきやしぐさなどに保育士が共感しながら、表現の喜びや芽生えを育てるように配慮する。
(13) 歌うことや、音楽に合わせて体を動かすことを好むので、子どもの好む歌、簡単な歌詞、旋律の歌や曲を正しく、美しく表現するように配慮する。

第七章 三歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期までに、基礎的な運動能力は一応育ち、話し言葉の基礎もでき、食事・排泄などもかなりの程度自立できるようになってくる。
 これまでは、何かにつけ保育士に頼り、保育士との関係を中心に行動していた子どもも、一人の独立した存在として行動しようとし、自我がよりはっきりしてくる。
 そして、他の子どもとの関係が子どもの生活、特に遊びにとって重要なものとなってくる。他の子どもとの触れ合いの中で、少しずつ友達と分け合ったり、順番を守って遊んだりできるようになる。この段階では、子ども自身は友達と遊んだつもりになっていても、実際にはまだ平行遊びが多い。しかし、この時期に仲間と一緒にいて、その行動を観察し模倣することの喜びを十分に味わうことは、社会性の発達を促し、ひいてはより豊かな人間理解へとつながっていく大切な基礎固めになる。
 注意力や観察力はますます伸びて、身の回りの大人の行動や日常経験していることなどを取り入れたりしてごっこ遊びの中に再現するので、これまでのごっこ遊びより組織的になって、遊びの内容にも象徴機能や創造力を発揮した発展性が見られるようになり、遊びがかなりの時間持続する。
 この頃、「なぜ」「どうして」などの質問が盛んになり、ものの名称やその機能などを理解しようとする知識欲が強くなり、言葉はますます豊かになってくる。そして、自分の行動や体験を通した現実的で具体的な範囲であれば、「こうするとこうなる」など、あらかじめ、結果について予想をすることができるようになってきて、自分のしようとすることにも段々と意図と期待を持って行動できるようになる。また、簡単な話の筋も分かるようになり、話の先を予想したり、自分と同化して考えたりできるようになる。
 さらに、この時期には、きまりを守って自分から「・・・をしよう」という気持ちも現われてきて「・・・するつもり」という思いを抱くようになる。また、進んで保育士の手伝いを行ったりするようになり、人の役に立つことに誇りや喜びを抱くようになる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 心身ともに、めざましい発育・発達を示すときであり、それだけにていねいな対応が求められる。自我がはっきりしてくるものの、それをうまく表現や行動に表すことができないところもあり、一人一人の発達に注目しながら、優しく受け止める配慮を欠かしてはならない。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの欲求を十分に満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
(3) 楽しんで食事や間食をとることができるようにする。
(4) 午睡など適切な休息をとらせ、心身の疲れを癒し、集団生活による緊張を緩和する。
(5) 食事、排泄、睡眠、衣服の着脱などの生活に必要な基本的な習慣が身につくようにする。
(6) 外遊びを十分にするなど、遊びの中で体を動かす楽しさを味わう。
(7) 身近な人と関わり、友達と遊ぶことを楽しむ。
(8) 身近な動植物や自然事象に親しみ、自然に触れ十分に遊ぶことを楽しむ。
(9) 身近な社会事象に親しみ、模倣したりして遊ぶことを楽しむ。
(10) 身近な環境に興味を持ち、自分から関わり、生活を広げていく。
(11) 生活に必要な言葉がある程度分かり、したいこと、して欲しいことを言葉で表す。
(12) 絵本、童話、視聴覚教材などを見たり聞いたりして、その内容や面白さを楽しむ。
(13) 様々なものを見たり触れたりして、面白さ・美しさなどに気づく。
(14) 感じたことや思ったことを描いたり、歌ったり、体を動かしたりして、自由に表現しようとする。

4 内容
〔基礎的事項〕
(1) 一人一人の子どもの平常の健康状態や発育・発達状態を把握し、異常を感じる場合は速やかに適切に対応する。また、子どもが自分から体の異常を訴えることができるようにする。
(2) 施設内の環境保健に十分に留意し、快適に生活できるようにする。
(3) 一人一人の子どもの気持ちや考えを理解して受容し、保育士との信頼関係の中で、自分の気持ちや考えを安心して表すことができるなど情緒の安定した生活ができるようにする。
(4) 食事、排泄、睡眠、休息など生理的欲求が適切に満たされ、快適な生活や遊びができるようにする。

「健康」
(1) 楽しい雰囲気の中で、様々な食べ物を進んで食べようとする。
(2) 便所には適宜一人で行き、排尿、排便を自分でする。
(3) 保育士に寄り添ってもらいながら、午睡などの休息を十分にとる。
(4) 保育士の手助けを受けながら、衣服を自分で着脱する。
(5) 保育士の手助けにより、自分で手洗いや鼻をかむなどして清潔を保つ。
(6) 体の異常を、少しは自分から訴える。
(7) 危ない場所に近づくことが少なくなり、危険な遊びに気づく。
(8) 外で十分に体を動かしたり、様々な遊具や用具などを使った運動や遊びを楽しむ。

「人間関係」
(1) 保育士に様々な欲求を受け止めてもらい、保育士に親しみを持ち安心感を持って生活する。
(2) 友達とごっこ遊びなどを楽しむ。
(3) 遊具や用具などを貸したり借りたり、順番を待ったり交代したりする。
(4) 簡単なきまりを守る。
(5) 保育士の手伝いをすることを喜ぶ。
(6) 遊んだ後の片づけをするようになる。
(7) 年上の友達と遊んでもらったり、模倣して遊んだりする。
(8) 地域の人と触れ合うことを喜ぶ。

「環境」
(1) 身近な動植物をはじめ自然事象をよく見たり、触れたりなどして驚き、親しみを持つ。
(2) 身近な人々の生活を取り入れたごっこ遊びを楽しむ。
(3) 自分のものと人のものとの区別を知り、共同のものとの区別にも気づく。
(4) 身近な事物に関心を持ち、触れたり、集めたり、並べたりして遊ぶ。
(5) 様々な用具、材料に触れ、それを使って遊びを楽しむ。
(6) 生活や遊びの中で、身の回りの物の色、数、量、形などに興味を持ち、違いに気づく。
(7) 保育所の行事に参加して、喜んだり楽しんだりする。

「言葉」
(1) あいさつや返事など生活や遊びに必要な言葉を使う。
(2) 自分の思ったことや感じたことを言葉に表し、保育士や友達と言葉のやりとりを楽しむ。
(3) 保育士にして欲しいこと、困ったことを言葉で訴える。
(4) 保育士に、いろいろな場面で、なぜ、どうして、などの質問をする。
(5) 興味を持った言葉を、面白がって聞いたり言ったりする。
(6) 絵本や童話などの内容が分かり、イメージを持って楽しんで聞く。
(7) ごっこ遊びの中で、日常生活での言葉を楽しんで使う。

「表現」
(1) 身の回りの様々なものの音、色、形、手ざわり、動きなどに気づく。
(2) 音楽に親しみ、聞いたり、歌ったり、体を動かしたり、簡単なリズム楽器を鳴らしたりして楽しむ。
(3) 様々な素材や用具を使って、好きなように描いたり、扱ったり、形を作ったりして遊ぶ。
(4) 動物や乗り物などの動きを模倣して、体で表現する。
(5) 絵本や童話などに親しみ、興味を持ったことを保育士と一緒に言ったり、歌ったりなど様々に表現して遊ぶ。

5 配慮事項
〔基礎的事項〕
(1) 一人一人の子どもの平常の健康状態をよく観察し、異常を早く発見できるように注意する。異常を少しでも感じたら速やかに適切な対応をする。
(2) その時の気候や子どもの状態をよく把握し、気持ちよく活動できるように環境を整える。特に、施設内の採光、換気、保温、清潔など環境保健に配慮する。
(3) 子どもの気持ちを温かく受容し、やさしく応答し、保育士と一緒にいることで安心できるような関係をつくるように配慮する。

「健康」
(1) 身の回りのことは一応自分でできるようになるが、自分でしようとする気持ちを大切にしながら、適切な援助をするように配慮する。
(2) 食事は、摂取量に個人差が生じたり、偏食が出やすいので、一人一人の心身の状態を把握し、楽しい雰囲気の中でとれるように配慮する。
(3) 用具、遊具などを扱う場合は、特に安全に配慮する。

「人間関係」
(1) 友達との関係については、保育士や遊具その他のものを仲立ちとして、その関係が持てるように配慮する。
(2) 初めて集団生活する子どもには、特に心身の疲労を緩和するように配慮し、個別に対応しながら、次第に集団生活に適応できるように他の子どもとの触れ合いの機会を多くするなど配慮する。

「環境」
(1) 身近の様々なものに興味を持つので、その興味、探索意欲などを十分に満足させるように環境を整え、保健、安全面に留意して意欲的に関われるようにする。
(2) 身の回りの出来事や住んでいる地域の人々の生活が自分の生活と関わりがあることに気づくように配慮する。
「言葉」
(1) 子どもが保育士に話したいことの意味をくみ取るように努め、話したいという気持ちを十分に満たすことができるように配慮する。
(2) 絵本や童話、紙芝居などの面白さが分かるように配慮するとともに、生活の中でできるだけ言葉と行動や出来事が結びつくように配慮する。
(3) 言葉は、聞いて覚えるものであることに着目し、保育士は自らの言葉遣いに配慮する。

「表現」
(1) 身近なものに直接触れたり扱ったりして、新しいものに驚いたり不思議に思うなど感動する経験が広がるように配慮する。
(2) 一人一人の子どもの興味や自発性を大切にし、自分から表現しようとする気持ちが育つように配慮する。

第八章 四歳児の保育の内容
1 発達の主な特徴
 子どもは、この時期、全身のバランスをとる能力が発達し、体の部分がかなり自分の意のままに使えるようになり、体の動きが巧みになる。また、各機能間の分化・統合が進み、話をしながら食べるなど、異なる二種以上の行動を同時にとるようにもなる。このような過程をたどりながら、全体として一つにまとまり、自我がしっかりと打ち立てられ、自分と他人との区別もはっきりしてくる。
 自分以外の人やものをじっくりと見るようになると、逆に見られる自分に気づき、自意識が芽生えてくる。したがって、今までのように無邪気に振る舞うことができない場面も生じる。また、目的を立てて、作ったり、描いたり、行動するようになるので、自分の思ったようにいかないのではないかと不安が生じたり、辛くなったりするなど、葛藤を体験する。このような心の動きを保育士が十分に察して、共感し、ある時は励ますことによって、子どもは、保育士がしたような方法で、他人の心や立場を気遣う感受性を持つことができるようになる。こうして、他人にも目には見えない心のあることを実感し、身近な人の気持ちが分かるようになり、情緒は一段と豊かになる。
 この頃の子どもは、心が人のみではなく、他の生き物、さらには、無生物にまでもあると思っている。これが子どもらしい空想力や想像力の展開にもつながる。また、恐れの対象は、大きな音、暗闇など物理的な現象だけでなく、オバケ、夢、一人残されることなど、想像による恐れが増してくる。
 この時期の子どもは、人だけではなく、周りのものにも鋭い関心を向け、探索を続けるなど活動的であるので、その過程で他の子どもの興味ある遊びを見たり、自分自身の体験によって土や水をはじめとした自然物や遊具などの自分を取り巻く様々なものの特性を知り、それらとの関わり方、遊び方を豊かに体得していく。その中で、仲間といることの喜びや楽しさがお互いに感じられるようになり、仲間とのつながりは強まるが、それだけに競争心も起き、けんかも多くなる。一方、この頃になると、仲間の中では、不快なことに直面しても、少しずつ自分で自分の気持ちを抑えたり、我慢もできるようになってくる。

2 保育士の姿勢と関わりの視点
 友達をはじめ人の存在をしっかり意識できるようになる。友達と一緒に行動することに喜びを見出し、一方で、けんかをはじめ人間関係の葛藤にも悩むときであり、したがって集団生活の展開に特に留意する必要がある。また、心の成長も著しく、自然物への興味・関心を通した感性の育ちに注目しなければならない。

3 ねらい
(1) 保健的で安全な環境をつくり、快適に生活できるようにする。
(2) 一人一人の子どもの欲求を十分に満たし、生命の保持と情緒の安定を図る。
(3) 友達と一緒に食事をしたり、様々な食べ物を食べる楽しさを味わうようにする。
(4) 午睡など適切な休息をとらせ、心身の疲れを癒し、集団生活による緊張を緩和する。
(5) 自分でできることに喜びを持ちながら、健康、安全など生活に必要な基本的な習慣を次第に身につける。
(6) 身近な遊具や用具を使い、十分に体を動かして遊ぶことを楽しむ。
(7) 保育士や友達の言うことを理解しようとする。
(8) 友達とのつながりを広げ、集団で活動することを楽しむ。
(9) 異年齢の子どもに関心を持ち、関わりを広める。
(10) 身近な動植物に親しみ、それらに関心や愛情を持つ。
(11) 身の回りの人々の生活に親しみ、身近な社会の事象に関心を持つ。
(12) 身近な環境に興味を持ち、自分から関わり、身の回りの物事や数、量、形などに関心を持つ。
(13) 人の話を聞いたり、自分の経験したことや思っていることを話したりして、言葉で伝える楽しさを味わう。
(14) 絵本、童話、視聴覚教材などを見たり聞いたりして、イメージを広げ、言葉を豊かにする。
(15) 身近な事物などに関心を持ち、それらの面白さ、不思議さ、美しさなどに気づく。
(16) 感じたことや思ったこと、想像したことなどを様々な方法で自由に表現する。

4 内容
〔基礎的事項〕
(1) 一人一人の子どもの平常の健康状態や発育・発達状態を把握し、異常を感じる場合は速やかに適切な対応をする。また、子どもが自分から体の異常を訴えることができるようにする。
(2) 施設内の環境保健に十分に留意し、快適に生活できるようにする。
(3) 一人一人の子どもの気持ちや考えを理解して受容し、保育士との信頼関係の中で、自分の気持ちや考えを安心して表すことができるなど、情緒の安定した生活ができるようにする。
(4) 食事、排泄、睡眠、休息など生理的欲求が適切に満たされ、快適な生活や遊びができるようにする。

「健康」
(1) 食べ慣れないものや嫌いなものでも少しずつ食べようとする。
(2) 排泄やその後の始末などは、ほとんど自分でする。
(3) 嫌がるときもあるが、保育士が言葉をかけることなどにより午睡や休息をする。
(4) 衣服などの着脱を順序よくしたり、そのときの気候や活動に合わせて適宜調節をする。
(5) 自分で鼻をかんだり、顔や手を洗うなど、体を清潔にする。
(6) 体の異常について、自分から保育士に訴える。
(7) 危険なものや場所について分かり、遊具、用具などの使い方に気をつけて遊ぶ。
(8) 進んで外で体を十分に動かして遊ぶ。
(9) 遊具、用具や自然物を使い、様々な動きを組み合わせて積極的に遊ぶ。

「人間関係」
(1) 保育士や友達などとの安定した関係の中で、いきいきと遊ぶ。
(2) 自分のしたいと思うこと、してほしいことをはっきり言うようになる。
(3) 友達と生活する中で、きまりの大切さに気づき、守ろうとする。
(4) 保育士の言うことや友達の考えていることを理解して行動する。
(5) 身の回りの人に、いたわりや思いやりの気持ちを持つ。
(6) 手伝ったり、人に親切にすることや、親切にされることを喜ぶ。
(7) 他人に迷惑をかけたら謝る。
(8) 共同のものを大切にし、譲り合って使う。
(9) 年下の子どもに親しみを持ったり、年上の子どもとも積極的に遊ぶ。
(10) 地域のお年寄りなど身近な人の話を聞いたり、話しかけたりする。
(11) 外国の人など、自分とは異なる文化を持った人の存在に気づく。

「環境」
(1) 身近な動植物の世話を楽しんで行い、愛情を持つ。
(2) 自然や身近な事物・事象に触れ、興味や関心を深める。
(3) 身近にある公共施設に親しみ、関わることを喜ぶ。
(4) 身近にある乗り物に興味や関心を示し、それらを遊びに取り入れようとする。
(5) 自分のもの、人のものを知り、共同のものの区別に気づき、大切にしようとする。
(6) 身近な大人の仕事や生活に興味を持ったり、それらを取り入れたりして遊ぶ。
(7) 身近にある用具、器具などに関心を持ち、いじったり、試したりする。
(8) 具体的な物を通して、数や量などに関心を持ち、簡単な数の範囲で数えたり比べたりすることを楽しむ。



育所保育指針について
平成一一年一〇月二九日
児保第三〇号
各都道府県・各指定都市・各中核市民生主管部(局)長あて厚生省児童家庭局保育課長通知

 標記については、本日付児発第七九九号厚生省児童家庭局長通知により示されたところであるが、これが施行に当たっては、左記事項を御了知の上、貴管下の地方公共団体及び保育所を指導されたくお願いする。
 また、乳児院、児童養護施設、母子生活支援施設、認可を受けていない保育施設等においても、各々の施設の状況に応じてこの指針を参考として児童の処遇が行われるよう、関係者に周知されたく併せてお願いする。

1 改訂の概要
 今回の改訂の主な内容は、地域の子育て家庭に対する相談・助言等の支援機能を新たに位置づけたこと、乳幼児突然死症候群の予防、アトピー性皮膚炎対策、児童虐待への対応などについて新たに記載したこと、研修を通じた専門性の向上や業務上知り得た事項の秘密保持など保育士の保育姿勢に関する事項を新たに設けたこと、教育的内容について、改訂幼稚園教育要領との整合性を図るため保育内容等に必要な事項を追加したこと、子どもの人権への配慮に係る項目を充実させたことなどであること。

2 留意点
(1) 今回の保育所保育指針は、核家族化や少子化の一層の進行など児童や家庭を取り巻く環境の変化等を踏まえて改訂されたものであるが、養護と教育が一体となって、豊かな人間性を持った子どもを育成するという保育所における保育の考え方については、改訂前の保育所保育指針と同様であること。
(2) 保育所保育指針は、その性格上保育所における保育を中心にその内容が示されているが、家庭や地域社会との協力・連携が一層重要となっていることに伴い、地域の子育て家庭への支援機能が新たに記載されたところであり、保育所情報の提供等により保育所に対する家庭の理解と協力を得ること及び地域の専門機関等との連携について、今後一層配慮されたいこと。
(3) 保育所保育指針の目標に掲げる「人権を大切にする心を育てる」保育に関しては、保育の方法に関係の記載が追加されたが、その基本的な考え方は、平成九年四月一日児保第一〇号本職通知により示されているところであること。


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