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「人権を大切にする心を育てる」保育について

平成9年4月1日
児保第10号
各都道府県、指定都市、中核市民生主管部(局)長あて厚生省児童家庭局保育課長通知


 保育行政の推進については、従来から特段のご尽力を煩わせているところである。
 さて、これまで、同和対策審議会答申の趣旨を踏まえ、同和問題の解決のための諸施策が総合的に推進され、その一環として人権尊重の精神に貫かれた人間の育成を目指す保育が行われてきたところであるが、昨年五月、地域改善対策協議会から「同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について」の意見具申がなされ、同和問題に対する新たな方向が示されたところである。
 この意見具申においては、「同和問題に関する国民の差別意識は解消へ向けて進んでいるものの依然として根深く存在しており、その解消に向けた教育及び啓発は引き続き積極的に推進していかなければならない」、差別意識の解消を図るに当たっては、「同和問題を人権問題の重要な柱として捉え、この問題に固有の経緯等を十分に認識しつつ、国際的な潮流とその取組みを踏まえて積極的に推進すべきである」と指摘されているところである。
 また、この意見具申を踏まえ、人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を整備し、人権の擁護に資することを目的とする「人権擁護施策推進法」が昨年一二月に制定されたところである。
さらに、国連総会の決議の趣旨を踏まえ、昨年一二月「人権教育のための国連一〇年」に関する国内行動計画(中間まとめ)が策定され、公表されたところであり、その中で、あらゆる場を通じて人権教育を推進するとともに、児童分野においては、児童の人権の尊重及び保護に向けた取り組みを推進することとされている。
 ついては、こうした人権尊重の潮流の中で、乳幼児期は、乳幼児が生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて大切な時期にあり、この時期に一人一人の子どもの人格や個性が尊重され、豊かな人間性が育まれることは、その後の成長にとって極めて重要であることにかんがみ、これまでの取り組みに関する経緯も踏まえ、保育所保育指針の目標に掲げる「人権を大切にする心を育てる」保育をさらに推進するため、別紙のとおり留意点をまとめたので、貴職におかれては今後の施策の推進に資するとともに、貴管下市町村等に対し、この通知の趣旨を踏まえた保育が適切に行われるようご指導願いたい。
 なお、昭和五六年四月二八日児福第一七号通知「『同和保育について』の作成について」は廃止する。

(別紙)
「人権を大切にする心を育てる」保育についての留意点
一 保育所は、乳幼児が生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて重要な時期にその生活時間の大半を過ごすところであるので、家庭や地域社会との連携を密にして、子どもが健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境を用意するとともに、子どもが現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うことを目標として保育を行うこと。
二 乳幼児期は、心身の成長・発達が著しく、一人一人の子どもの個人差が大きいので、保育に当たっては、発達の過程や生活環境など子どもの発達の全体的な姿を把握し、一人一人の子どもの特性や発達の課題に十分留意して保育を行うこと。
特に、家庭環境に対する配慮や地域との連携などきめ細かな保育を必要とする子どもについては、その家庭及び地域の実態を十分に把握し、保護者の理解と自覚を高めつつ、家庭との密接な連携のもとに、子どもの健康、基本的生活習慣、社会性や言葉の発達など日常生活の基礎的事項について子どもが十分に身に付けることができるよう配慮した保育を行うこと。
三 子どもは大人によって生命を守られ、愛され、信頼されることによって、自分も人を愛し、信頼していくようになること、すなわち、大人との相互作用の中で、人への信頼感と自己の主体性を形成することができることを踏まえ、人とのかかわりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、協調の態度、社会性の芽生えを培うことを目指して保育を行うこと。
四 一人一人の人格が尊重される集団の中でこそ、子どもの能力や個性が発揮されることを踏まえ、一人一人が人間を尊重する気持ちを持てるような、差別を生まない人間関係づくりに努めるとともに、すべての子どもが将来にわたって思いやりと協調性に富み、いじめや差別を生まない、お互いの人権を尊重し合える人間として、また、異った文化を持った人達と共生できる人間として、自立できるよう保育すること。
五 人権を大切にする心を育てる保育を適切に行うため、保育所の職員は、あらゆる場を通じて、同和問題、障害者、外国人などの人権問題について正しい理解と認識を深めるなど必要な研鑽に努めること。



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