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人権教育の指導方法等の在り方について[第一次とりまとめ] 平成16年6月
人権教育の指導方法等に関する調査研究会議
目次
はじめに
第T節 学校教育における人権教育の改善・充実についての基本的考え方
(1)人権教育の目標について
(2)[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるような児童生徒の育成
第U節 学校教育における指導の改善・充実に向けた視点
(1)人権教育全般に関わる視点
@教職員における人権尊重の理念の理解・体得
A学校教育活動全体を通じた人権教育の推進
(2)人権教育を進める上での組織的体制と連携に関わる視点
B学校としての組織的な取組とその点検・評価
C家庭・地域との連携及び校種間の連携
(3)内容・方法に関わる視点
D自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫
E児童生徒の発達段階や実態に即した内容・方法
F教育の中立性の確保
G効果的な学習教材の選定・開発
第V節 人権教育の指導の改善・充実に向けてのポイント
おわりに
参考資料
資料
人権教育の指導方法等の在り方について[第一次とりまとめ](概要)(PDF:21KB)
はじめに
1948年(昭和23年)に国連総会において世界人権宣言が採択された後、これまで数十年の間に人権に関する様々な条約が採択されるなど、人権保障のために国境を越えた連携がより一層必要となってきている。我が国も児童の権利に関する条約をはじめ諸条約を締結し、人権が尊重される社会の実現に努めてきている。
これまで、我が国では、すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の下で、人権に関する各般の施策が講じられてきた。また、教育基本法に基づき、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者の育成を期する教育が、家庭・学校・地域のあらゆる場において推進されてきた。このような人権に関する施策や教育の推進により、人権尊重社会を実現する上で一定の成果が達成されてきたのは確かである。
しかしながら、人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年3月閣議決定。以下、「基本計画」という。)で指摘されているように、生命・身体の安全にかかわる事象や不当な差別など、今日においても様々な人権問題(注1)が生じている。特に、次代を担う児童生徒(幼児を含む。以下同じ。)に関しては、各種の調査結果に示されるように、いじめや暴力など人権に関わる問題が後を絶たない状況にある。さらには、児童生徒が虐待などの人権侵害を受ける事態も深刻化している。
基本計画は、様々な人権問題が生じている背景として、人々の中に見られる「同質性・均一性を重視しがちな性向や非合理的な因習的意識の存在」、社会の急激な変化などとともに、「より根本的には、人権尊重の理念についての正しい理解やこれを実践する態度が未だ国民の中に十分に定着していないこと」を挙げている。また、学校教育における人権教育の現状に関しては、「教育活動全体を通じて、人権教育が推進されているが、知的理解にとどまり、人権感覚が十分身に付いていないなど指導方法の問題、教職員に人権尊重の理念について十分な認識が必ずしもいきわたっていない等の問題」があるとし、人権教育に関する取組の一層の改善・充実を求めている。
さらに、基本計画は、「人権教育・啓発の推進方策」として、「学校における指導方法の改善を図るため、効果的な教育実践や学習教材などについて情報収集や調査研究を行い、その成果を学校等に提供していく」こと、また、「人権教育の充実に向けた指導方法の研究を推進する」ことを明示している。
本調査研究会議は、こうした指摘を踏まえ、人権についての知的理解を深めるとともに人権感覚を十分に身に付けることを目指す人権教育の指導方法等の在り方を中心に検討を行ってきた。
本調査研究会議としては、平成16年度も人権教育に関する具体的な課題について検討を重ねる予定であるが、現時点でとりまとめた内容を広く公表することとした。とりまとめにおいては、特に、人権教育とは何かということを分かりやすく示すとともに、児童生徒はもちろんのこと教職員一人一人が人権尊重の理念を理解し、体得することが重要であることを強調した。
学校における人権教育の推進に当たって、このとりまとめを積極的に活用していただくことを切に願うものである。
(注1)基本計画では「現在及び将来にわたって人権擁護を推進していく上で、特に、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者やハンセン病患者等をめぐる様々な人権問題は重要な課題となっており」、また、「犯罪被害者及びその家族の人権問題に対する社会的関心が大きな高まりを見せており、刑事手続等における犯罪被害者等への配慮といった問題に加え、マスメディアの犯罪被害者等に関する報道によるプライバシー侵害、名誉毀損、過剰な取材による私生活の平穏の侵害等の問題が生じている。マスメディアによる犯罪の報道に関しては少年事件等の被疑者及びその家族についても同様の人権問題が指摘されており、その他新たにインターネット上の電子掲示板やホームページへの差別的情報の掲示等による人権問題も生じている」ことが指摘されている。
第T節 学校教育における人権教育の改善・充実についての基本的考え方
人権とは、「人々が生存と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」(平成11年人権擁護推進審議会答申。以下、「審議会答申」という。)である。基本計画では、さらにこれを、「人間の尊厳に基づいて各人が持っている固有の権利であり、社会を構成するすべての人々が個人としての生存と自由を確保し、社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない権利」と明記している。人権を構成する一つ一つの権利は相互に優劣をつけることのできないものではあるが、とりわけ、全国各地で児童生徒をめぐって起きている様々な事件にかんがみるとき、何よりもまず人間の生命はかけがえのないものであるという自明のことを改めて強調しておきたい。
人権教育とは、「人権尊重の精神の涵養を目的とする教育活動」(人権教育及び人権啓発の推進に関する法律第2条)を意味し、「国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう」(同法第3条)にすることを旨とするものである。
学校教育においては、児童生徒一人一人が「人権の意義やその重要性についての正しい知識」(「審議会答申」)を十分に身に付けるとともに、「日常生活の中で人権上問題のあるような出来事に接した際に、直感的にその出来事はおかしいと思う感性や、日常生活において人権への配慮がその態度や行動に現れるような人権感覚」(「審議会答申」)をも十分に身に付けることが必要である。このため、学校は、人権教育をめぐる国内外の動向を踏まえつつ、その教育活動全体を通じて児童生徒の発達段階に応じ創意工夫を凝らして人権教育に取り組むことが求められる。
本調査研究会議としては、各学校において人権教育の一層の改善・充実が図られるよう、次のような基本的考え方を提示する。なお、以下では、人権の意義・内容や重要性についての正しい知識を身に付けることを「知的理解」とし、上記の人権問題を直感的にとらえる感性及び人権への配慮が態度や行動に現れるような人権感覚をまとめて「人権感覚」として表記している。
(1)人権教育の目標について
学校教育において人権教育を進めるに当たっては、先に述べたように、人権についての知的理解を深めるとともに、児童生徒が人権感覚を十分に身に付けるための指導を一層充実することが必要である。
各学校において人権教育に取り組むに際しては、まず、人権に関わる概念や人権教育が目指すものについて明確にし、教職員がこれを十分に理解し、組織的・計画的に進めることが肝要である。人権教育に限らず、様々な取組を進めるためには目標を明確にすることが重要であり、それによって、組織的な取組が可能となり、改善・充実のための評価の視点も明らかになるからである。
しかし、「人権尊重の理念」というような人権に関わる概念が抽象的で分かりにくい、といった声もしばしば聞かれるところである。
人権尊重の理念は、「自分の人権のみならず他人の人権についても正しく理解し、その権利の行使に伴う責任を自覚して、人権を相互に尊重し合うこと、すなわち、人権の共存の考え方ととらえる」(「審議会答申」)べきものとされている。このことを踏まえて、人権尊重の理念について、特に学校教育において指導の充実が求められる人権感覚の側面に焦点を当てて児童生徒にも分かりやすい言葉で表現するならば、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]であると言うことができるであろう。もちろん、この[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]については、そのことを単に理解するにとどまることなく、それが態度や行動に現れるようになることが求められることは言うまでもない。
すなわち、一人一人の児童生徒がその発達段階に応じ、人権の意義・内容や重要性について理解するとともに、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるようになり、それが様々な場面や状況下での具体的な態度や行動に現れるようにすることが、人権教育の目標である。
このような人権教育の実践が、民主的な社会及び国家の形成発展に努める人間の育成、平和的な国際社会の実現に貢献できる人間の育成につながっていくものと考える。
各学校においては、上記のような考え方を基本としつつ、児童生徒や学校の実態等に応じて人権教育によって達成しようとする目標を具体的に設定し、主体的な取組を進めていただきたい。
(2)[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるような児童生徒の育成
[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるような人権感覚は、そのことを児童生徒に繰り返し言葉で説明するだけで身に付くものではない。このような人権感覚を身に付けるためには、学級をはじめ学校生活全体の中で自らの大切さや他の人の大切さが認められていることを児童生徒自身が感じ取ることができるようにすることが肝要である。一人の人間として自らが大切にされているという実感をもつことができなければ、自己や他者を尊重する感覚をもつことは難しいからである。さらに、自分と他の人の大切さが認められるような環境をつくることにまず学級・学校の中で取り組むとともに、家庭、地域、国、国際社会などのあらゆる場においてもそのような環境をつくることが必要であると気付くことができるように指導することも重要である。
また、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]ができるということが態度や行動にまで現れるようにすることが必要である。すなわち、他の人と共によりよく生きようとする態度や集団生活における規範等を尊重し義務や責任を果たす態度、具体的な人権問題に直面してそれを解決しようとする実践的な行動力などを児童生徒が身に付けることができるようにする。具体的には、各学校において、教育活動全体を通じて例えば次のような力や技能などを総合的にバランスよく培うことが求められる。
@ 他の人の立場に立ってその人に必要なことやその人の考えや気持ちなどが分かるような想像力や共感的に理解する力
A 考えや気持ちを適切かつ豊かに表現し、また、的確に理解することができるような、伝え合い分かり合うためのコミュニケーションの能力やそのための技能
B 自分の要求を一方的に主張するのではなく建設的な手法により他の人との人間関係を調整する能力及び自他の要求を共に満たせる解決方法を見いだしてそれを実現させる能力やそのための技能
第U節 学校教育における指導の改善・充実に向けた視点
学校教育における指導の改善・充実のためには、第T節に示した基本的考え方を踏まえつつ、以下のような視点に留意することが必要かつ有効である。
(1)人権教育全般に関わる視点
@ 教職員における人権尊重の理念の理解・体得
まず、教職員が人権尊重の理念について十分に認識し、児童生徒が自らの大切さが認められていることを実感できるような環境づくりに努める。教職員は、児童生徒に直接接し、指導することでその心身の成長発達を促進し支援するという役割を担っている。したがって、児童生徒一人一人の大切さを強く自覚し、一人の人間として接するという態度をもって指導するという教職員の姿勢そのものが、人権教育の重要な部分であると言える。だからこそ、教職員は、自らの言動が児童生徒の人権を侵害することになないよう常に意識をしておかなければならないのである。
また、教職員同士の間においても互いを尊重する態度を大切にする。例えば、指導上の課題について互いによく話し合うことができるような環境づくりに努める。
このように教職員が人権尊重の理念を十分に認識し人権教育を推進することができるようにするため、学校や教育委員会等において効果的な研修を実施する。
A 学校教育活動全体を通じた人権教育の推進
学校教育においては[生きる力]をはぐくむ教育活動を進めている。[生きる力]については、平成8年の中央教育審議会答申において、「自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」、「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」、「たくましく生きるため の健康や体力」が重要な資質や能力として挙げられている。
人権教育は、この[生きる力]をはぐくむ学校教育において、各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間のそれぞれの特質に応じ、教育活動全体を通じて推進されるものである。(注2)
また、日常の学校生活も含めて人権が尊重される学級・学校とするように努める。例えば、児童生徒の意見をきちんと受け止めて聞く、明るく丁寧な言葉で声かけを行うことなどは当たり前のことであるが、教職員は改めて児童生徒一人一人の大切さを強く自覚し、一人の人間として接しなければならない。一方、いじめや暴力をはじめ他の人を傷つけるような問題が起きたときには、これらの行為を看過することなく学校全体として適切かつ毅然とした指導を行い、いわば正義が貫かれるような学級・学校とするように努める。
なお、このような学級・学校にするために、教職員だけでなく児童生徒自身も自らの大切さや他の人の大切さが認められるような環境づくりに主体的に取り組むことが重要であることはもちろんのことである。
(2)人権教育を進める上での組織的体制と連携に関わる視点
B 学校としての組織的な取組とその点検・評価
校長のリーダーシップの下、教職員が一体となって人権教育に取り組む体制を整え、人権教育の目標の設定、指導計画の作成や教材の選定・開発などの取組を組織的・継続的に行う。
各学校においては、こうした人権教育の取組について、学校自らが点検・評価を行い、その点検・評価の結果を基に学校が主体的にその取組の不断の見直しを行うとともに、保護者や地域の人々に積極的に情報提供するよう努める。その際、学校評議員制度を活用する、保護者等の意見を聞く機会を設けるなどの工夫も考えられる。
C 家庭・地域との連携及び校種間の連携
児童生徒は、家庭・学校・地域の中で日々を過ごしている。したがって、共に児童生徒を育てていくという視点に立ち、例えば、保護者や地域の人々に授業等を参観してもらう機会を積極的に設けるなど、「開かれた学校づくり」を進め、家庭・地域との連携を推進することによって、人権教育の効果を高めるよう努力する。
なお、連携に当たっては、家庭や地域の大人たちが人権尊重の理念について十分に認識していることが大切である。児童生徒とともに大人自身にも、[自分の大切さとともに他の人の大切さを認めること]が求められる。このため、例えば、児童生徒による取組が身近な大人の啓発にも資するような工夫を行う、学校の取組を保護者等に積極的に公表する、あるいは児童生徒と保護者が一緒になって活動に取り組むなどの工夫も効果的である。
また、人権教育を効果的に推進するため、各学校段階ごとの取組だけでなく、保・幼・小・中・高等学校などの間の一層の連携に努める。例えば、児童生徒の発達段階に配慮したカリキュラムを共同で研究する、校種を越えて授業研究を行うなどの取組を通じて、系統的・継続的な人権教育の実践に努める。
(3)内容・方法に関わる視点
D 自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫
児童生徒の自主性を尊重し、指導が一方的なものにならないよう留意することにより、課題意識をもって自ら考え主体的に判断する力や実践的な行動力を育成する。例えば、児童生徒それぞれが異なる意見をもっていることに気付くように工夫する、学級活動・ホームルーム活動や児童会活動・生徒会活動などにおいて自分たちでルールをつくる経験を積み重ねるなど、指導方法を工夫し、多面的・多角的に考える力や合理的なものの見方・考え方を育てる。
また、豊かな人間性・社会性をはぐくむため、多様な体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫を行う。例えば、様々な人々との交流活動や擬似体験活動などにより、人間関係を築く能力やコミュニケーションの技能、他の人の立場に立って考えられるような想像力を培うなど、学校の実態等に応じて、創意工夫を凝らして取り組む。なお、体験的な活動などの取組を系統的に展開する、事前指導・事後指導を工夫することなどにより、その取組が単発的なものに終わることなく、人権教育における意義を明確にし、その成果を効果的に生かしていくことが肝要である。
さらに、児童生徒一人一人が活躍できるように配慮し、達成感を味わわ せ、自立心を養うような工夫に努める。
E 児童生徒の発達段階や実態に即した内容・方法
学校において人権教育に取り組むに際しては、児童生徒が心身ともに成長過程にあることを十分に留意した上で、それぞれの発達段階や児童生徒の実態に即した教育内容・方法とする。
F 教育の中立性の確保
教育活動と政治運動・社会運動とを明確に区別し、学校は公教育を担うものとして主体性をもって人権教育に取り組み、特定の主義主張に偏ることなく教育の中立性を確保する。
G 効果的な学習教材の選定・開発
学習教材を選定・開発するに当たっては、学習教材の活用により児童生徒が自ら考えることができるようにするなどの教育効果を高めるため、身近な事柄を取り上げたり、児童生徒の興味・関心等を生かすなどの創意工夫を行う。なお、このことは、身近ではない課題を取り上げないということではなく、そのような課題を取り上げることによって逆に身近な課題についての認識が深まり、人権問題と自らとのつながりが見えてくることも考えられる。生命の大切さに気付くことができる教材、様々な人権問題に気付くことができる教材、それぞれの人権問題を深く考えるための教材、自分自身を深く見つめることを意図した教材、技能を学ぶ教材など学習の目的に応じて多様に選定・開発する。
また、学習教材の選定・開発に際しては、児童生徒の発達段階を十分考慮するとともに、その内容を公正な観点から吟味する。さらに、例えば身近な事柄を取り上げる場合など教材の内容によっては、プライバシーの保護等にも配慮する。
(注2)各教科等における指導内容の例
※「」内は幼稚園教育要領及び学習指導要領の抜粋
(以下は例示であり、前述のとおり人権教育は学校の教育活動全体を通じて推進されるものである。)
< 幼稚園教育要領>
【人間関係】・・・「友達と積極的にかかわりながら喜びや悲しみを共感し合う。」、「自分の思ったことを相手に伝え、相手の思っていることに気付く。」、「友達のよさに気付き、一緒に活動する楽しさを味わう。」、「友達とのかかわりを深め、思いやりをもつ。」
<学習指導要領>
【小学校・総則】・・・「日ごろから学級経営の充実を図り、教師と児童の信頼関係及び児童相互の好ましい人間関係を育てるとともに児童理解を深め、生徒指導の充実を図ること。」
【中学校・総則】・・・「教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに生徒理解を深め、生徒が自主的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう、生徒指導の充実を図ること。」
【高等学校・総則】・・・「教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに生徒理解を深め、生徒が主体的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう、生徒指導の充実を図ること。」
(社会、地理歴史、公民)
【小学校・社会】・・・「現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基本的な考え方に基づいていることを考えるようにする。」
【中学校・社会(公民的分野)】・・・「人間の尊重についての考え方を、基本的人権を中心に深めさせる」、「日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本的原則としていることについての理解」
【高等学校・公民(現代社会)】・・・「基本的人権の保障(中略)について理解を深めさせ、日本国憲法の基本的原則について国民生活とのかかわりから認識を深めさせる」、「生命の尊重、自由・権利と責任・義務、人間の尊厳と平等、法と規範などについて考えさせ、民主社会において自ら生きる倫理について自覚を深めさせる。」
【高等学校・公民(倫理)】・・・「人間の尊厳と生命への畏敬(中略)などについて、倫理的な見方や考え方を身に付けさせ、他者と共に生きる自己の生き方にかかわる課題として考えを深めさせる。」
(道徳)
【小学校】・・・「生命がかけがえのないものであることを知り、自他の生命を尊重する。」、「公徳心をもって法やきまりを守り、自他の権利を大切にし進んで義務を果たす。」、「だれに対しても差別をすることや偏見をもつことなく公正、公平にし、正義の実現に努める。」【中学校】・・・「生命の尊さを理解し、かけがえのない自他の生命を尊重する。」、「法やきまりの意義を理解し、遵守するとともに、自他の権利を重んじ義務を確実に果たして、社会の秩序と規律を高めるように努める。」、「正義を重んじ、だれに対しても公正、公平にし、差別や偏見のない社会の実現に努める。」
(特別活動)
【小学校】・・・学級活動における「学級や学校における生活上の諸問題の解決」や「希望や目標をもって生きる態度の形成」、「望ましい人間関係の育成」、児童会活動における「学校生活の充実と向上のために諸問題を話し合い、協力してその解決を図る活動を行うこと。」
【中学校】・・・学級活動における「学級や学校における生活上の諸問題の解決」、「自己及び他者の個性の理解と尊重、社会の一員としての自覚と責任」、「望ましい人間関係の確立」
【高等学校】・・・ホームルーム活動における「自己及び他者の個性の理解と尊重、社会生活における役割の自覚と自己責任、男女相互の理解と協力、コミュニケーション能力の育成と人間関係の確立」
第V節 人権教育の指導の改善・充実に向けてのポイント
指導の改善・充実に向けての具体的なポイントについては、第U節に示した視点に基づき、人権教育研究指定校等の実践事例を踏まえつつ、引き続き本調査研究会議において検討することとする。
第U節に示した視点を踏まえ、例えば以下のような事項について今後検討することとしている。
@ 組織として人権教育に取り組む学校の在り方及び点検・評価の在り方
A 各教科、道徳、特別活動、総合的な学習の時間における学習指導や人権が尊重される環境づくり
B 効果的かつ児童生徒の発達段階に即した指導内容・方法及び学習教材
C 児童生徒の自主性の尊重や体験的な活動を取り入れるなどの指導方法の工夫
D 家庭・地域との連携や保・幼・小・中・高などの学校段階間の連携
E 効果的な教職員の研修等の在り方
おわりに
本調査研究会議においては、第節で述べたとおり、今後、各学校の実践事例等を踏まえた具体的な検討を行うこととしており、第節で示した各視点についてもさらに議論を深めることとしている。
各学校においては、本調査研究会議の調査研究の成果を十分参考にして、人権教育の指導方法等の改善・充実に努力していただきたい。
また、学校における人権教育の一層の充実に当たっては、各教育委員会の役割が重要である。具体的には、効果的な研修の実施、地域の実態に応じた優れた実践事例や人権教育の充実により学校全体の改善につながった事例などの情報提供、カリキュラムの作成等に関する実践的な研究の実施及びその成果の普及、家庭・地域との連携や校種間の連携を推進する体制づくりを行うことなど、各教育委員会においては、各学校への指導・助言や支援のさらなる充実及び条件整備に取り組むことを望むものである。
さらに、国においては、人権教育に関する情報の収集・提供など教育委員会や学校に対する支援の一層の充実及び条件整備を図ることが望まれる。
参考資料
目次
1 人権をめぐる国際的な動向について
(1)世界人権宣言
(2)児童の権利に関する条約
2 我が国の人権に関する施策等の最近の動向について
(1)人権擁護施策推進法(平成8年法律第120号)
(2)「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画(平成9年7月4日人権教育のための国連10年推進本部)
(3)「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」(平成11年7月29日人権擁護推進審議会答申)
(4)人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成12年法律第147号)
(5)人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年3月15日閣議決定)
人権が尊重される社会の実現に向けては、これまで、国内外において様々な取組がなされてきたところであり、人権教育の推進に当たっては、そのような人権に関わる動向を十分に踏まえて取り組むことが重要である。人権に関連する関係法令等を参考資料として掲載したので、学校や教育委員会等における取組の参考とされたい。
資料
1 平成16年度人権教育の指導方法等に関する調査研究実施要項
2 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議委員名簿
3 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議における審議の経過
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