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基発第0212001号
平成14年2月12日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長

過重労働による健康障害防止のための総合対策について

 平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮することとしたところである。業務による脳・心臓疾患の発症の防止のためには、疲労回復のための十分な睡眠時間又は休息時間が確保できないような長時間にわたる過重労働を排除するとともに、疲労が蓄積するおそれのある場合の健康管理対策の強化及び過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止措置の徹底が必要である。
 このため、従来からの労働者の健康確保のための措置に加えて、過重労働による健康障害防止のための総合対策を別紙1のとおり定めたので、各局においては、同総合対策に基づく措置の周知徹底を図り、過重労働による健康障害防止対策の一層の推進に努められたい。
 なお、関係団体に対し、別紙2のとおり要請を行ったので、了知されたい。

別紙1
1 目的
 平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、業務災害の認定に当たって、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮することとしたところである。
この新認定基準においては、長期間の過重惟の有無の判断に当たって疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間と脳・心臓疾患の発症との関連性について示したところである。
 本総合対策は、新認定基準の考え方の基礎となった医学的知見を踏まえ、過重労働による脳・心臓疾患の発症の防止に関して、別添のとおり「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」を定め、その周知徹底を図ることにより、過重労働による健康障害を防止することを目的とする。

2 過重労働による健康障害防止のための周知啓発都道府県労働局及び労働基準監督署は、集団指導等のあらゆる機会を通じて、リーフレット等を活用しつつ別添の内容を広く周知を図ることとする。
 この周知に当たっては、関係事業者団体等並びに産業保健推進センター及び地域産業保健センター等も活用することとし、事業者に対して広く周知する。
 また、平成14年度中に作成し、インターネット上で公開することとしている労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストを広く周知することとする。

3 過重労働による健康障害防止のための窓口指導等
(1) 36協定における時間外労働の限度時間に係る指導の徹底
ア 労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の届出に際しては、労働基準監督署の窓口において、「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)を超える36協定を事業者が届け出た場合については、限度基準を遵守するよう指導する。
 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別の事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めたものについては、過重労働による健康障害を防止する観点から、当該時間をできる限り最小限のものとするよう指導する。
イ 36協定において、月45時間を超える時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)を行わせることが可能である場合であっても、実際の時間外労働については月45時間以下とするよう指導する。
(2) 労働者の健康管理に係る周知指導
(1)の月45時間を超える時間外労働を行わせることが可能である36協定を受け付ける場合及び裁量労働制に係る届出を受け付ける場合については、リーフレット等を活用して別添の内容を周知指導する。

4 過重労働による健康障害防止のための監督指導等
(1) 月45時間を超える時間外労働が行われているおそれがあると考えられる事業場に対しては監督指導、集団指導等を実施する。
(2) 監督指導においては、次のとおり指導する。
ア 月45時間を超える時間外労働が認められた場合については、別添の4の(2)のアの措置を講ずるよう指導する。併せて、過重労働による健康障害防止の観点から、時間外労働の削減等について指導を行う。
イ 月100時間を超える時間外労働が認められた場合又は2か月間ないし6か月間の1か月平均の時間外労働が80時間を超えると認められた場合については、上記アの指導に加え、別添の4の(2)のイの措置を速やかに講ずるよう指導する。
ウ 限度基準に適合していない36協定がある場合であって、労働者代表からも事情を聴取した結果、限度基準等に適合していないことに関する労使当事者間の検討が十分尽くされていないと認められたとき等については、協定締結当事者に対しても必要な指導を行う。
(3) 事業者が上記(2)のイによる別添の4の(2)のイの措置に係る指導に従わない場合については、当該措置の対象となる労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等を提出させ、これらに基づき労働衛生指導医の意見を聴くこととし、その意見に基づき、労働安全衛生法第66条第4項に基づく臨時の健康診断の実施を指示することを含め、厳正な指導を行う。

5 過重労働による業務上の疾病が発生した場合の再発防止対策等
(1) 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場に対する再発防止の徹底の指導
 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、別添の4の(2)のウの措置を行うよう指導する。
(2) 司法処分を含めた厳正な対処
 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものについては、司法処分を含めて厳正に対処する。

別添
過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等

1 趣旨
 近年の医学研究等を踏まえ、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(以下「新認定基準」という。)により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、これまで発症前1週間以内を中心とする発症に近接した時期における負荷を重視してきたところを、長期間にわたる疲労の蓄積についても業務による明らかな過重負荷として考慮することとした。この新認定基準の考え方の基礎となった医学的検討結果によると、長期間にわたる長時間労働やそれによる睡眠不足に由来する疲労の蓄積が血圧の上昇などを生じさせ、その結果、血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させるとの観点から、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられる労働時間の評価の目安が次のとおり示された。
(1) 発症前1か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと判断されるが、おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるものと判断されること
(2) 発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと判断されること
 この考え方に基づき、過重労働による労働者の健康障害を防止することを目的として、以下のとおり事業者が講ずべき措置等を定めたものである。

2 時間外労働の削減
(1) 時間外労働は本来臨時的な場合に行われるものであること、また、時間外労働(1週間当たり40時間を超えて行わせる労働をいう。以下同じ。)が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強まると判断されることを踏まえ、事業者は、労働基準法第36条に基づく協定(以下「36協定」という。)の締結に当たっては、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者とともにその内容が「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)(以下「限度基準」という。)に適合したものとなるようにする。
 また、36協定において、限度基準第3条ただし書に定める「特別な事情」が生じた場合に限度時間を超える一定の時間まで労働時間を延長することができる旨を定めているなど月45時間を超えて時間外労働を行わせることが可能である場合についても、事業者は、実際の時間外労働を月45時間以下とするよう努めるものとする。
(2) 事業者は、上記1の(1)の趣旨を踏まえ、時間外労働を月45時間以下とするよう適切な労働時間管理に努めるものとする。
 その際、時間外労働が月45時間以下の場合においても、健康に悪影響を及ぼすことのないように時間外労働のさらなる短縮について配意するものとする。
 また、事業者は、裁量労働制対象労働者及び管理・監督者についても、健康確保のための責務があることなどにも十分留意し、過重労働とならないよう努めるものとする。
(3) 事業者は、平成13年4月6日付け基発第339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」に基づき、労働時間の適正な把握を行うものとする。

3 年次有給休暇の取得促進
 事業者は、各種助成制度の活用などにより、年次有給休暇の取得しやすい職場環境づくり及び具体的な年次有給休暇の取得促進を図るものとする。

4 労働者の健康管理に係る措置の徹底
(1) 健康診断の実施等の徹底
 事業者は、労働安全衛生法第66条第1項の健康診断、同法第66条の4の健康診断結果についての医師からの意見聴取、同法第66条の5の健康診断実施後の措置、同法第66条の7の保健指導等を確実に実施する。
 特に、深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、労働安全衛生規則第45条に基づき、6月以内ごとに1回、定期に、特定業務従事者の健康診断を実施しなければならないことに留意するものとする。
 また、深夜業に従事する労働者の健康管理に資するための自発的健康診断受診支援助成金制度や一定の健康診断項目について異常の所見がある労働者に対する二次健康診断等給付制度の活用につき、事業者は労働者に周知するとともに、労働者からこれらの健康診断の結果の提出があったときには、事業者は、これらの健康診断についてもその結果に基づく事後措置を講ずる必要があることについて留意するものとする。
 さらに、事業者は、労働安全衛生法第69条による労働者の健康保持増進を図るための措置の継続的かつ計画的な実施に努めるものとする。
(2) 産業医等による助言指導等
ア 月45時間を超える時間外労働をさせた場合については、事業者は、当該労働をした労働者に関する作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等に関する情報を、産業医(産業医を選任する義務のない事業場にあっては、地域産業保健センター事業により登録されている医師等の産業医として選任される要件を備えた医師。)(以下「産業医等」という。)に提供し、事業場における健康管理について産業医等による助言指導を受けるものとする。
イ 月100時間を超える時間外労働を行わせた場合又は2か月間ないし6月間の1か月平均の時間外労働を80時間を超えて行わせた場合については、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断されることから、事業者は、上記アの措置に加えて、作業環境、労働時間、深夜業の回数及び時間数、過去の健康診断の結果等の当該労働をした労働者に関する情報を産業医等に提供し、当該労働を行った労働者に産業医等の面接による保健指導を受けさせるものとする。また、産業医等が必要と認める場合にあっては産業医等が必要と認める項目について健康診断を受診させ、その結果に基づき、当該産業医等の意見を聴き、必要な事後措置を行うものとする。
ウ 過重労働による業務上の疾病を発生させた場合には、事業者は、産業医等の助言を受け、又は必要に応じて労働衛生コンサルタントの活用を図りながら、次のとおり原因の究明及び再発防止の徹底を図るものとする。
(ア) 原因の究明
 労働時間及び勤務の不規則性、拘束時間の状況、出張業務の状況、交替制勤務・深夜勤務の状況、作業環境の状況、精神的緊張を伴う勤務の状況等について、多角的に原因の究明を行うこと。
(イ) 再発防止
 上記(ア)の結果に基づき、再発防止対策を樹立すること。

別紙2

基発第0212001号の2
平成14年2月12日

(別記関係団体、事業者団体の長)殿
厚生労働省労働基準局長

過重労働による健康障害防止のための総合対策について

 労働基準行政の運営につきましては、日頃から格別の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、この度、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」により、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、疲労の蓄積をもたらす長期間の過重業務も、業務による明らかな過重負荷として新たに考慮することとしたところです。業務による脳・心臓疾患の発症の防止のためには、疲労回復のための十分な睡眠時間又は休息時間が確保できないような過重労働を排除するとともに、疲労が蓄積するおそれのある場合の健康管理対策の強化、過重労働による業務上災害が発生した場合の再発防止措置の徹底が必要であります。
 このため、従来からの労働者の健康確保のための措置に加えて、過重労働による健康障害防止のための総合対策を別紙のとおり定めたところです。
 つきましては、貴団体におかれましても、本総合対策の趣旨を御理解いただき、会員その他関係事業場に対し、本総合対策の周知とともに、本総合対策のうち事業者が講ずべき措置の実施の指導につき特段の御配慮を賜りますようお願いいたします。

別記(省略)




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