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長崎県環境基本条例
平成9年10月13日
長崎県条例第47号

長崎県環境基本条例をここに公布する。

長崎県環境基本条例

目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 環境の保全を推進するための基本的施策
第1節 施策の基本方針等(第8条―第10条)
第2節 環境の保全に関する施策等(第11条―第26条)
第3章 長崎県環境審議会(第27条―第35条)
附則

 私たちの長崎県は、広大な海に面し、変化に富んだ長い海岸線、多くの島々、緑の山々、温暖な気候などがもたらす、雲仙天草、西海の2つの国立公園をはじめとする美しい景観や貴重な野生動植物を有するとともに、古くから海外との交流によって培ってきた多くの歴史的文化的遺産を有するなど、豊かな環境に恵まれている。そして、私たちは、この豊かな環境の中で様々な恩恵を受け、生活してきた。
 しかし、近年の資源、エネルギーを大量に消費する社会経済活動は、私たちに物質的に豊かなくらしをもたらす一方で、環境への負荷を増大させ、自然環境の狭小化をもたらし、人類の存続の基盤である地球全体の環境に影響を及ぼすに至っている。
 もとより、私たちは、健康で文化的な生活を営むことができる健全で恵み豊かな環境を享受する権利を有するとともに、その環境を県民共有の財産として保全し、将来の世代に引き継ぐ責務を有している。
 私たちの存立の基盤が環境の恵みの中にあること、環境が有限であることを深く認識し、身近な環境への配慮に加えて、地球規模での環境の保全という観点から、すべての者が環境の保全へ向けた行動に積極的に参加し、あらゆるものの循環を基調とした自然と人とが共生する社会を構築していかなければならない。
 このような認識に立ち、私たちは、健全で恵み豊かな環境を保全し、創造し、快適で美しい長崎県づくりをめざして、この条例を制定する。

第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全に関する基本理念を定め、並びに県、事業者及び県民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本的事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(平11条例55・一部改正)

(定義)
第2条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この条例において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)
第3条 環境の保全は、人類の存続の基盤である限りある環境が人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の県民が環境の恵沢を享受するとともに、健全で恵み豊かな環境が将来にわたって維持されるよう適切に行われなければならない。
2 環境の保全は、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない経済の発展を図りながら持続的発展が可能な社会づくりをめざし、すべての者がそれぞれの立場と責任に応じた公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われなければならない。
3 地球環境保全は、人の日常生活や事業活動が地球全体の環境と密接に係わっていることにかんがみ、すべての者の参加による環境の保全に関する地域的取組みにより、積極的かつ着実に推進されなければならない。

(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 県は、市町村が実施する環境の保全に関する施策を総合調整するとともに、その実施について支援するように努めるものとする。

第5条 削除
(平11条例55)

(事業者の責務)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、悪臭等による公害を防止し、自然環境を適正に保全し、又はその事業活動に伴って生ずる廃棄物を適正に処理するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 前項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(平11条例55・一部改正)

(県民の責務)
第7条 県民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、県民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(平11条例55・一部改正)

第2章 環境の保全を推進するための基本的施策
第1節 施策の基本方針等
(施策の基本方針)
第8条 県は、環境の保全に関する施策を策定し、及び実施するに当たっては、基本理念にのっとり、次に掲げる基本方針に基づき、総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
(3) 身近な水辺及び緑、優れた景観等の保全及び創造により、人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。
(4) 資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用及び廃棄物の減量等を促進し、環境への負荷の低減が図られること。

(環境基本計画)
第9条 知事は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、長崎県環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 知事は、環境基本計画を定めたときは、速やかに、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

(年次報告)
第10条 知事は、毎年、環境の状況及び環境の保全に関する施策について報告書を作成し、これを公表しなければならない。

第2節 環境の保全に関する施策等
(施策の策定等に当たっての環境への配慮)
第11条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境基本計画との整合を図り、環境の保全について配慮しなければならない。

(環境影響評価の推進)
第12条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

(公害の防止及び自然環境の保全のための規制の措置)
第13条 県は、公害を防止するため、公害の原因となる行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
2 県は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
3 前2項に定めるもののほか、県は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。

(助成の措置)
第14条 県は、事業者又は県民が行う環境への負荷の低減に資する施設の整備その他の適切な事業を促進させるため、必要な助成の措置を講ずるように努めるものとする。

(環境の保全に関する事業の推進)
第15条 県は、環境の保全に関する次に掲げる事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(1) 下水道、廃棄物の処理施設、公園、緑地その他の公共的施設の整備
(2) 希少な野生動植物の保護増殖、多様な野生生物を育む森林等の整備その他の環境の保全に関する事業

(資源の循環的な利用の促進等)
第16条 県は、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び県民による資源の循環的な利用及びエネルギーの有効利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、市町村と協力して、環境への負荷の低減を図るため、事業者及び県民による廃棄物の減量、再利用及び適正な処理が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、環境への負荷の低減を図るため、県の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たって、資源の循環的な利用、エネルギーの有効利用並びに廃棄物の減量、再利用及び適正な処理に積極的に努めるものとする。

(水環境の保全等)
第17条 県は、県民の憩いの場であるとともに社会経済活動の場である美しい川、海、海岸等の水環境を保全し、及び創造するため、必要な措置を講ずるものとする。

(快適な生活環境の創造等の推進)
第18条 県は、市町村、事業者及び県民と一体となって、緑化、ごみの散乱防止等を推進し、快適な生活環境の創造及び美しいふるさとづくりが図られるように、必要な措置を講ずるものとする。

(環境の保全に関する教育及び学習の推進)
第19条 県は、事業者及び県民が環境の保全についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全に関する活動意欲が増進されるようにするため、環境の保全に関する教育及び学習の普及、啓発その他の必要な措置を講ずるものとする。

(県民等の自発的活動の促進)
第20条 県は、県民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「県民等」という。)が自発的に行う環境の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(情報の提供)
第21条 県は、前条の県民等が自発的に行う環境の保全に関する活動を促進するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の保全に関する必要な情報を収集し、適切に提供するように努めるものとする。

(事業者の環境管理に関する取組みの促進)
第22条 県は、事業者がその事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るために行う環境管理に関する自主的な取組みが促進されるように、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(調査及び研究の実施等)
第23条 県は、公害の防止、自然環境の保全その他の環境の保全に関する事項について、情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究を実施し、その成果の普及に努めるものとする。

(監視等の体制の整備)
第24条 県は、環境の状況を把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、測定、試験及び検査の体制を整備するものとする。

(地球環境保全の推進)
第25条 県は、県、事業者及び県民のそれぞれの役割に応じた地球環境保全に関する指針を定め、その推進を図るものとする。
2 県は、国際機関、国、他の地方公共団体その他の関係団体等と連携し、地球環境保全に関する調査及び研究、環境の状況の監視、情報の提供等を行うことにより、地球環境保全に関する国際協力に努めるものとする。
(平11条例55・一部改正)

(国及び他の地方公共団体との協力)
第26条 県は、環境の保全に関する施策で広域にわたるものについては、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。

第3章 長崎県環境審議会
(設置)
第27条 環境基本法(平成5年法律第91号)第43条第1項の規定により、長崎県環境審議会(以下「審議会」という。)を置き、その組織及び運営に関し必要な事項は、この条例の定めるところによるものとする。
(平11条例55・全改)

(所掌事務)
第27条の2 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
(1) 環境基本計画に関し、第9条第3項(同条第5項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理すること。
(2) 知事の諮問に応じ、環境の保全に関する基本的事項及び重要事項を調査審議すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、法令(条例を含む。)の規定によりその権限に属させられた事務
(平11条例55・追加)

(組織)
第28条 審議会は、委員25人以内で組織する。
2 委員は、環境の保全に関し、学識経験のある者及び関係行政機関の長又はその指名する職員のうちから、知事が任命する。

(委員の任期)
第29条 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。

(会長及び副会長)
第30条 審議会に会長及び副会長1人を置き、委員の互選によってこれを定める。
2 会長は、会務を総理する。
3 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。

(会議)
第31条 審議会の会議は、会長が必要に応じて招集し、会長が議長となる。
2 審議会の会議は、委員の過半数が出席しなければ開くことができない。
3 審議会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

(専門調査員)
第32条 専門の事項を調査させるために必要があるときは、審議会に専門調査員を置くことができる。
2 専門調査員は、学識経験のある者及び関係行政機関の長又はその指名する職員のうちから、知事が任命する。
3 専門調査員は、その専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。

(部会)
第33条 会長が必要と認めたときは、審議会に部会を置くことができる。
2 部会は、委員及び専門調査員のうちから会長が指名する者で組織する。
3 部会に部会長を置き、部会に属する委員のうちから、会長がこれを指名する。
4 部会長は、部会の事務を掌理する。
5 部会長に事故があるとき又は部会長が欠けたときは、部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する。

(勤務の形態)
第34条 委員及び専門調査員は、非常勤とする。

(委任)
第35条 この条例に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。

附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(長崎県環境審議会の組織及び運営に関する条例の廃止)
2 長崎県環境審議会の組織及び運営に関する条例(昭和46年長崎県条例第33号)は、廃止する。
(審議会の委員等に関する経過措置)
3 この条例の施行の際現に前項の規定による廃止前の長崎県環境審議会の組織及び運営に関する条例第2条第2項又は第6条第2項の規定により任命されている審議会の委員又は専門調査員は、それぞれの任期の末日までの間、第28条第2項又は第32条第2項の規定により任命された委員又は専門調査員とみなす。
(長崎県公害防止条例の一部改正)
4 長崎県公害防止条例(昭和46年長崎県条例第34号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
(長崎県自然環境保全条例の一部改正)
5 長崎県自然環境保全条例(昭和48年長崎県条例第53号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略
(長崎県環境美化の推進に関する条例の一部改正)
6 長崎県環境美化の推進に関する条例(平成5年長崎県条例第34号)の一部を次のように改正する。
〔次のよう〕略

附則(平成11年条例第55号)
この条例は、平成12年4月1日から施行する。



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