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出入国管理及び難民認定法の一部改正について

はじめに
 今日の我が国を取り巻く国際環境の変化や我が国の国際社会における地位の向上等に伴い,我が国が国際社会において果たすべき役割はますます増大している。このような状況の下で,出入国管理行政は,「国際協調,国際交流の増進への寄与」「我が国社会の健全な発展の確保」の2つの理念に沿って外国人の円滑な受入れを推進しているところである。
 ところで,現在,我が国には約27万人の不法残留者が存在し,あるいは不法入国者が後を絶たず,これらの不法滞在者が種々問題を起こしている状況にある。他方,政府を挙げて推進されている規制緩和方策の一環として,我が国に正規に在留する外国人についてはその諸手続を可能な限り簡素化する必要がある。
 こうした背景の中で,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の一部を改正する法律案が第145回国会に提出され,本年8月13日に可決・成立し,同月18日に公布(平成11年法律第135号。以下「改正入管法」という。)された。

1 改正入管法の趣旨
 平成9年に集団密航者を不法入国させる行為等の処罰を内容として入管法の一部を改正したところであるが,その後も不法入国事件は減少に転じたとは言えない状況にあり,不法入国又は不法上陸後の不法在留外国人,あるいは27万人余と高止まりの状況を呈している不法残留者による犯罪の惹起等が相次いでいる。
 そこで,これらの不法滞在者に対し,適正かつ厳格に対処するため,不法入国又は不法上陸後本邦に在留する行為に対する罰則を設け,併せて,事務処理の合理化等を図るため,入管法の一部改正を行ったものである。

2 改正入管法の概要
(1) 不法在留罪の新設(第70条第2項関係)
 不法入国又は不法上陸後に本邦に在留する行為に対する罰則を設けることとした。
 不法入国又は不法上陸後,引き続き我が国に不法に在留している外国人の数は,従来比較的少数に止まっていたため,その存在が我が国の適正な出入国管理の実施に及ぼす影響は重大とまでは言えない状況にあったが,近時,船舶を利用して集団密航するなどして我が国に不法入国した上,全国各地に分散して不法就労活動などに従事し,長期間にわたって不法在留する外国人が激増しており,我が国の社会,経済,治安等にも看過しがたい悪影響を与えている。このような事態に対処するため,不法在留行為を処罰の対象とする罰則を新たに設けることとした。
(2) 被退去強制者に対する上陸拒否期間の伸長(第5条第1項第9号関係)
 本邦からの退去を強制された者に係る上陸拒否期間を「1年」から「5年」に伸長することとした。
 現行入管法においては,不法残留等を理由として退去を強制された者は,退去の日から1年を経過すれば,再度入国が許可され得るところ,近時において,不法残留等によりいったん退去強制された者がその後再び我が国に入国して,不法に残留するなどし,再び退去強制される事案が増加している。このような状況に適正に対処するため,不法残留等を理由として退去を強制された者に係る上陸拒否期間を伸長し,退去を強制された者が相当期間本邦に再度入国することができないようにした。
(3) 再入国許可の有効期間の伸長(第26条第3項関係)
 再入国許可の有効期間を「1年を超えない範囲内」から「3年を超えない範囲内」に伸長することとした。
 近年,我が国への投資や企業経営等を目的として在留する外国人や日本人と婚姻して在留する外国人など,我が国に長期間在留する外国人が増加しており,これら外国人の我が国と諸外国の往来に必要な再入国許可に係る手続を簡素化し,申請人の負担の軽減を図るとともに,併せて事務の合理化を図るため,現行法では1年を超えない範囲内とされている再入国許可の有効期間を3年を超えない範囲内に伸長した。

3 施行日
 改正入管法は公布の日から起算して6月を経過した日,すなわち,平成12年2月18日から施行される。

4 その他
 第145回国会における審議の過程で,外国人登録法の一部を改正する法律(注1)案についていわゆる議員修正が行われた結果,入管法にも影響を及ぼす点があるので,この場を借りて解説する。
 同修正において,特別永住者について外国人登録証明書の常時携帯義務違反に対する罰則を刑事罰である罰金から行政罰である過料に改めることとなったことに伴い,入管法第23条第1項で規定されている旅券等の常時携帯義務違反に対する罰則(同法第76条第1項)も,特別永住者については刑事罰である罰金から行政罰である過料に改めることになった(注2)。

(注1) 平成11年法律第134号
(注2) 4については,外国人登録法の一部を改正する法律(平成11年法律第134号)が施行される日(政令で定める日)が施行日となり,3の施行日とは異なる点に留意されたい。




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