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外国人登録法の一部改正について

はじめに
 1999(平成11)年8月13日,非永住者についても,指紋押なつを廃止すること等を内容とする外国人登録法の一部を改正する法律(以下「改正外登法」という)が.第145回国会において成立し,8月18日に法律第134号として公布された。
 これにより,昭和30年以来採用されてきた外国人登録における同一人性確認手段としての指紋押なつ制度はすべて廃止されることとなった。
 改正外登法は,公布日から起算して1年超えない範囲内において政令で定められる日から施行されることとなる。

1 改正外登法の背景と目的
 平成4年の外国人登録法の一部改正において,永住者及び特別永住者について,指紋押なつ制度を廃止したが,同改正案の審議の際に,衆議院及び参議院法務委員会において,指紋の押なつを含む外国人登録制度の在り方について更に検討するようにとの附帯決議がなされており,その趣旨を踏まえて検討を進めたところ,同改正により永住者及び特別永住者について指紋押なつ制度に代えて導入した署名及び家族事項の登録という同一人性確認手段は,その後6年あまりを経て特段の問題も生じておらず,それなりに定着しているものと認められている。他方,諸外国,特に,先進諸国において指紋押なつ制度を採用している国は少なく,また,外国人登録事務を実施している地方自治体から,事務の合理化などの観点から,指紋押なつ制度の廃止についての要請が出されていた。
 このような状況を踏まえ,改正外登法では,これまで指紋押なつ義務が課されていた非永住者について,これを廃止し,指紋押なつに代えて署名及び家族事項の登録を導入するとともに,登録原票についてその管理に関する規定の整備及び一定範囲の開示制度を新設し,併せて外国人の負担軽減及び事務処理の簡素化を図ることを目的としている。

2 改正外登法の骨子
(1) 非永住者に対する指紋押なつ制度の廃止
現在指紋押なつ義務が課されている非永住者について,これを廃止し,永住者及び特別永住者(以下「永住者等」という。)と同様の署名及び家族事項の登録という同一人性確認手段を採用する(改正外登法第4条,第14条,第9条の3関係)。
(2) 登録原票の管理に関する規定の整備及び一定範囲の開示制度の新設
 登録原票の管理に関する規定を整備するとともに,原則非公開としている登録原票について,一定の範囲でその内容の開示を認める規定を新設する(改正外登法第4条の2,第4条の3,第19条の3関係)。
(3) 永住者等に係る登録事項の一部削減
 永住者等について,登録事項のうち,「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を削減する(改正外登法第4条,第9条,第9条の2,第9条の3関係)。
(4) 永住者等に係る登録証明書の切替期間の伸長
 永住者等について,次の登録証明書の切替交付申請(登録事項の確認申請)までの期間を,現行の「5回目の誕生日」から「7回目の誕生日」に伸長する。(改正外登法第11条関係)
(5) 居住地変更等に係る代理申請範囲の拡大
 居住地,在留の資格,在留期間等に係る変更登録申請について,同居の親族にまで代理申請の範囲を拡大する。(改正外登法第15条関係)

3 国会における修正
 以上を内容とする政府案に対し,国会において次の3点を内容とする修正が行われた。(1) 特別永住者が外国人登録証明書の常時携帯義務に違反した場合の罰則を「20万円以下の罰金」から「10万円以下の過料」とすること(改正外登法第19条関係)。
(3) 特別永住者が旅券等の携帯義務に違反した場合の罰則を,「10万円以下の罰金」から「10万円以下の過料」とすること(改正外登法附則第12条関係)。
(3) 廃止前の日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法に基づく永住の許可(協定永住許可)を受けて在留していた者で,再入国の許可を受けることなく出国し,改正法の施行の日において出入国管理及び難民認定法別表第2の上欄の永住者の在留資格をもって在留するに至ったときは,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者とみなすこと(改正外登法附則第13条関係)。

4 主な経過措置
(1) 今回の改正外登法により,非永住者については,同一人性確認の手段として指紋押なつが廃止されることとなり,また,永住者等については,「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を登録する必要がなくなるほか,次回確認の申請期間が5回目の誕生日から7回目の誕生日に伸長されることとなる。そこで,改正法の公布後施行日の前日までの間(以下「経過期間」という。)に16歳に達した者については,施行日において16歳に達したとみなすとの経過規定を設け,これらの者に係る確認(切替)申請期間を改正法施行後30日以内とすることとした。これにより,これらの者が非永住者である場合には指紋押なつをする必要がないこととなり,また,永住者等である場合には,職業等の登録をする必要がないほか,次回確認(切替)申請期間は7回目の誕生日から30日以内へと延伸されることとなる。(改正外登法附則第5条)
(2) 改正外登法施行後は,指紋押なつの必要がなくなることから,既に指紋が転写された登録証明書を所持する非永住者の中には指紋が転写された登録証明書をなるべく早期に署名が転写された登録証明書へ切替を希望する者があることが考えられ,そのような者の心理的負担を考慮すれば,これに応えることが適切である。そこで,指紋が転写されている登録証明書を所持する者の登録証明書の切替交付申請(確認申請)は,施行日以後本来の確認申請期間満了日まではいつまでも行うことができることとした(改正外登法附則第11条)。

5 施行日
 公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし,上記4の(1)の経過措置については公布の日から施行する。

(注) 外国人登録法は,本年7月8日に成立し,同月16日に公布された「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律の成立」(いわゆる地方分権推進整備法)の中で改正されており,登録原票の写票の送付等に係る都道府県の経由事務の廃止,外国人登録に係る事務のうち市区町村が処理するものを法定受託事務とすること等とされている。新旧対照表の条文には,地方分権推進整備法における改正部分を含めている。




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