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「身体拘束ゼロ作戦」の推進について
平成13年4月6日
老発第155号
各都道府県知事あて厚生労働省老健局長通知
標記については、貴職におかれても積極的な取組みにご尽力いただいているところであるが、今般、厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」において「身体拘束ゼロへの手引き」(以下「手引き」という。)が取りまとめられたことから、介護保険施設等を指導し、「身体拘束ゼロ作戦」を推進する立場にある貴職におかれては、本手引きを活用の上、下記の各事項に留意しつつ、身体拘束廃止に向けて積極的な取組みを進めていただくようお願いする。
なお、手引きの内容等を踏まえ、「介護保険施設等の指導監査について」(平成12年5月12日老発第479号)及び「老人福祉施設に係る指導監査について」(平成12年5月12日老発第481号)を改正する予定であることを念のため申し添える。
記
1 基本的考え方について
身体拘束の廃止を実現していく取組みは、介護保険施設等におけるケア全体の質の向上や生活環境の改善のきっかけとなるものであり、身体拘束廃止を最終目標とするのではなく、身体拘束廃止に取り組む過程で提起された様々な課題を真摯に受け止め、よりよいケアの実現に取り組むべきであること。
2 意識啓発について
(1) 身体拘束は、介護保険施設等の関係者すべてに関わる問題であり、身体拘束廃止を実現するためには、その第一歩として、介護職員、看護職員等のみならず、介護保険施設等の責任者、職員全体や利用者の家族が正確な事実認識を持つことが重要であること。
(2) そのためには、身体拘束禁止規定の周知にとどまらず、身体拘束がもたらす数々の弊害や拘束が拘束を生むという悪循環の実態などについて幅広く意識啓発を図り、また、「身体拘束はやむを得ない」とか「廃止は不可能」といった固定観念や認識を一つ一つ実例をあげながら正していく努力が必要であること。このため、指導監督の機会をとらえた意識啓発だけでなく、各都道府県の「身体拘束ゼロ作戦推進会議」の開催や相談窓口の設置、シンポジウムの開催など創意工夫の上、様々な機会を積極的に設けて意識啓発に努めることが重要であること。
3 介護保険施設等の責任者の決断の重要性について
身体拘束廃止を実現できるかどうかは、施設長等の責任者の姿勢による面が大きいことから、そうした責任者に対し十分な情報提供を行うとともに、シンポジウムへの参加などを働きかけ、意識啓発を行うことが重要であること。また、介護保険施設等全体で取り組む方針を徹底するため、施設等全体で「身体拘束廃止委員会」を設置するなどして介護職員、看護職員等を応援する態勢を整えるよう指導する必要があること。さらに、都道府県として、地域で身体拘束廃止に取り組んでいる介護保険施設、病院等を積極的に取り上げ、評価し、他の施設等へ紹介することも有用であること。
4 介護保険施設等の取組みの支援について
(1) 介護現場の努力を支援していくため、都道府県の担当者も、通常の指導監督機関としての立場にとどまることなく、身体拘束廃止に取り組む姿勢・意識を持つことが求められること。
(2) 介護保険施設等の取組みを支援する方法としては、身体拘束に関する様々な情報の提供やシンポジウムへの参加や相談窓口の利用の呼びかけ、他の介護保険施設、病院等の事例紹介などが考えられること。
5 介護保険施設等全体での改善計画の作成指導について
(1) 介護保険施設等全体が計画的に取り組んでいく観点から、施設等内に設置した「身体拘束廃止委員会」などで改善計画を作成するよう指導することが考えられること。
(2) この計画には、施設等内の推進体制、介護の提供体制の見直し、「緊急やむを得ない場合」を判断する体制・手続き、施設の設備等の改善、施設等の職員その他の関係者の意識啓発のための取組み、利用者の家族への十分な説明といった身体拘束廃止の取組み全般を網羅するとともに、期限を定めて身体拘束廃止に向けての数値目標を設定していくことが考えられること。
(3) また、都道府県における指導等に当たって、例えば、専門家によって作成されたモデル的な計画案を提示するなど、計画作成について必要な支援を行うほか、定期的(例えば、6か月ごと)に計画の達成状況等をフォローすることが望まれること。
6 緊急やむを得ない場合の対応について
(1) 介護保険施設等の指定の基準において、「当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」には身体拘束が例外的に認められているが、この例外規定は極めて限定的に考えるべきであること。したがって、介護保険施設等においては基本的には全てのケースについて身体拘束を廃止していく姿勢を堅持するよう求めるとともに、例外規定の要件や手続きの運用は厳格に行う必要があること。
(2) また、緊急やむを得ない場合に、例外的に身体拘束を行うときには、その態様、時間、入所者(利用者)の心身の状況及び緊急やむを得なかった理由を記録することが義務づけられていることから、手引きに例示されている「身体拘束に関する説明書・経過観察記録」なども参考にして、適切な記録の作成と保存を十分に指導する必要があること。
7 明らかに不正又は著しく不当と認められるケースへの対応について
(1) 下記のような、明らかに不正又は著しく不当と認められるケースがある介護保険施設等については、監査の対象とし、介護保険法(平成9年法律第123号)第76条、第90条、第100条、第112条等に基づく報告徴収、立入検査等を行った上で詳細な情報を得る必要があること。
@ 長期にわたる居室への隔離や常時体幹等をひも等で縛るなど、人権保護の観点から著しく不適切な身体拘束が行われている場合
A 指導の対象となるような身体拘束が確認された後、改善計画の作成やケアの是正等の指導を行っても、改善計画の作成や身体拘束の廃止が行われない場合
B 身体拘束が行われていることが確認されていながら適切な記録が整備されておらず、度重なる指導を行っても改善が図られない場合
(2) 監査を行った結果、身体拘束が日常的に常態化している場合や、長期間にわたって著しく不適切な身体拘束が続いている場合など、介護保険施設等の指定の基準に従って運営ができないと認められる場合や報告徴収、質問、立入検査等に従わない場合などについては、指定取消も含め厳正な対応を検討すべきであること。
なお、介護保険施設等の指導監査に当たっての具体的な主眼事項及び着眼点について、所要の通知改正を行う予定としていることを念のため申し添える。
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