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継続雇用制度等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進等について
平成7年3月31日
職発第223号
各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律(平成6年法律第34号)の施行については、平成6年6月30日付け労働省発職第156号(以下「労働省発職第156号通達」という。)をもって労働事務次官より貴職あて通達したところであるが、今般、このうち60歳定年の義務化及び継続雇用制度の導入又は改善に関する計画に関する規定等が平成7年4月1日から(60歳定年の義務化に関する規定は平成10年4月1日から)施行されることとなり、また、これに関して、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成7年労働省令第23号)が平成7年3月31日に公布され、同様に施行されることとなった。
 また、これと併せて、高年齢者職場改善資金融資制度について、雇用促進事業団法施行令及び労働省組織令の一部を改正する政令(平成7年政令第125号)が平成7年3月29日に公布され、平成7年4月1日から施行されることとなるとともに、昭和37年労働省告示第14号(雇用促進事業団法施行令の規定に基づき労働大臣が指定する多数の求職者が居住している地域並びに労働大臣が定める年齢及び施設を定める件)の一部を改正する告示(平成7年労働省告示第28号)が平成7年3月29日に公布され、平成7年4月1日から適用されることとなった。
 ついては、これらの施行に当たっては、労働省発職第156号通達によるほか、左記事項に留意のうえ、遺漏のないよう特段の御配意をお願いする。


第1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部改正関係
1 定年を定める場合の年齢(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68号。以下「法」という。)第4条)
(1) 趣旨
 従来、事業主の努力義務としてきた60歳定年について、法律上、一定の適用除外を設けつつ、60歳を下回る定年を定めることはできないこととしたものであること。
 これは、高年齢者の65歳までの雇用機会を確保することが必要となっている中で、その基盤として60歳定年の定着を図ることが不可欠となっていること、60歳定年は現在既に8割以上の企業で採用されており、予定も含めると九割を超えるなど着実に定着しつつあること、一部の企業が60歳未満定年のままであることは、労使の努力により定年を60歳以上に引き上げてきた企業を競争上不利にするものであり社会的に公平を欠くことによるものであること。
(2) 定年の意義
 「定年」とは、従来、労働者が所定の年齢に達したことを理由として自動的に又は解雇の意思表示によってその地位を失わせる制度であって就業規則又は労働協約に定められたものをいうものとしてきたところであるが、今後、同様の制度であって労働契約に定められたものも含むものとすること。
 なお、当該制度の内容は労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条第1項第3号にいう「退職に関する事項」として、就業規則の絶対的必要記載事項(就業規則に必ず定めをしなければならない事項をいう。)に該当するため、当該制度が就業規則又は労働協約ではなく労働契約に定められることは、労働基準法上就業規則の作成が義務付けられていない、常時使用する労働者が10人未満の事業所においてしかあり得ないことであるので留意すること。
 おって、単なる慣行として一定年齢における退職が定着している場合等は定年に含まれないものであること及びいわゆる選択定年制のように早期の退職を優遇する制度における当該早期の退職年齢はここでいう定年ではないことについては従前どおりであること。
(3) 法的効果
 法第4条の内容は、事業主が定年の定めをする場合には、当該定年は60歳を下回ることができないこととするものであり、これは新たに定年の定めをする場合に限らず、既に定年の定めをしている場合も含むものであること。
 法第4条に反して定められた60歳を下回る定年は民事上無効であり、事業主は、当該定年を根拠に労働者を退職させることはできないと解されるものであること。また、この場合、当該定年は60歳と定めたものとみなされるのではなく、定年の定めがないものとみなされると解されるものであること。
 なお、定年の定めをしていない事業主は、従前の努力義務におけると同様、法第4条との関係で何ら問題となるものではないこと。
(4) 適用除外
イ 法第4条においては、高年齢者が従事することが困難な業務として労働省令で定める業務に従事する労働者については60歳定年の義務化の適用除外としており、この業務は、具体的には、鉱業における坑内作業の実態にかんがみ、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則(昭和46年労働省令第24号。以下「則」という。)第4条の2において、鉱業法(昭和25年法律第289号)第4条に規定する事業における坑内作業の業務とされていること。
 なお、「鉱業法第4条に規定する事業」とは、鉱物の試掘、採掘及びこれに附属する選鉱、精錬その他の事業をいうものであること。
ロ 事業主は、法第4条の規定にかかわらず、鉱業法第四条に規定する事業における坑内作業の業務に従事する労働者については60歳を下回る定年を定めることができるものであること。
 ただし、「鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務に従事する」とは、当該業務に常時従事することをいうものであり、事業主は、臨時的に当該業務に従事することがあるだけの者について60歳を下回る定年を定めることはできないものであること。
(5) 行政措置
 平成10年4月1日からこの規定の施行に伴い、従前の定年引上げに係る一連の行政措置(定年引上げの要請(法第4条の2)、定年の引上げに関する計画の作成の命令(法第4条の3第1項)、計画の変更の勧告(法第4条の3第3項)及び計画の適正な実施に関する勧告(法第4条の3第4項))に関する規定は、削除するものとすること。

2 定年後の継続雇用(法第4条の5(平成10年4月1日より法第4条の2。以下同じ。))
 従来、法第4条の5においては、定年後の再雇用の努力義務について規定しつつ、同条の再雇用にはいわゆる勤務延長も含まれるものと解してきたところであるが、法文上そのことが必ずしも明らかでなかったため、文言について所要の整備を行ったものであり、その内容は従前どおりであること。

3 継続雇用制度の導入又は改善に関する計画(法第4条の6(平成10年4月1日より法第4条の3。以下同じ。))
(1) 趣旨
 法第4条の5の規定にもかかわらず、現在、定年到達後継続雇用されている高年齢者は3割程度にとどまる等企業における65歳までの継続雇用は十分実施されていない状況にあることから、事業主の自主的な努力をできるだけ尊重しながら企業における65歳までの継続雇用を推進するため、労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして必要があると認めるときは、企業における継続雇用の計画的な実施を促すための一連の行政措置を行うことができることとしたものであること。
 具体的には、継続雇用制度の導入又は改善に関する計画(以下三3及び4において「計画」という。)の作成の指示(以下3及び4において「指示」という。)、計画の変更の勧告(以下3及び4において「変更勧告」という。)及び計画の適正な実施に関する勧告(以下3及び4において「適正実施勧告」という。)という行政措置によって、事業主に計画的に継続雇用制度の導入又は改善に向けた自主的努力を行わせる一方、その計画の合目的性、合理性を行政において点検し、その実現を督励することとしたものであること。
 なお、この労働大臣の権限は、法第58条に基づく則第55条により原則として当該事業主の主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所(以下3及び4において「管轄公共職業安定所」という。)の長に委任されているので、一連の行政措置は管轄公共職業安定所の長から行われるものであること。
(2) 継続雇用制度の意義等
 「継続雇用制度」とは、現に雇用されている事業主にその定年後も引き続いて雇用されることを希望する高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいうものであり、いわゆる再雇用制度及び勤務延長制度のほか、定年引上げを行った場合の当該引上げ後の定年がこれに含まれるものであること。
 なお、ここでいう継続雇用制度は原則として希望者全員を対象とするものでなければならないが、法第4条の5ただし書の趣旨を踏まえ、職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行ってもなおその者の能力に応じた雇用の機会が得られない場合又は雇用を継続することが困難となった場合には、当該高年齢者を対象としない趣旨で、一部の高年齢者を例外的に対象から除くものは差し支えないものとすること。しかしながら、これは、事業主による容易かつ恣意的な運用を認める趣旨でないことはいうまでもないこと。
 「継続雇用制度の導入」とは何ら継続雇用制度を有しない事業主が何らかの継続雇用制度を設けることをいい、「改善」とは、既にある継続雇用制度の最高雇用年齢(高年齢者が当該継続雇用制度の定めるところにより退職することとなる年齢をいう。)を引き上げることをいうものであること。
(3) 指示(法第4条の6第1項及び第2項)
イ 指示を行う場合
 法第4条の6第1項の「高年齢者等職業安定対策基本方針に照らして、現に雇用されている事業主にその定年後も引き続いて雇用されることを希望する高年齢者について、その雇用の継続を図る上で必要があると認めるとき」とは、当該事業主が、高年齢者等職業安定対策基本方針において具体的に示される継続雇用に関する目標を達成していないときをいうものであること。
 なお、この指示を受けた事業主が当該指示に従わない場合には、当該事業主に対し再度指示を行うものであること。
ロ 指示の方法
 指示は、管轄公共職業安定所の長が文書により行うこと(則第6条の2において読み替えて準用する則第5条第2項)。この文書(様式第1号)には計画書(様式第2号)を添付すること。
 また、指示には、計画書の提出について3か月程度の期限を付すものとすること。
ハ 計画の記載事項(則第6条の2において読み替えて準用する則第5条第1項)「計画の始期」とは、計画の最終目的である継続雇用制度の導入又は改善に向けて有形無形の努力を開始する時期であること。
 「計画の終期」とは、それまでに計画の目標を達成すべき時期として事業主が定める時期をいうものであり、計画の始期と終期との間の期間は3年程度以内とすること。
 「計画の期間中に実施する措置」とは、継続雇用制度の導入又は改善のために賃金その他の労働条件の見直しを必要とする場合におけるそのための就業規則、労働協約等の改定、労使の協議、検討委員会の設置等、作業施設の改善を必要とする場合における施設又は設備の設置又は整備やそのための検討等をいうものであること。
 「実施時期」とは、上記の措置について、あらかじめ予定し得る範囲での時期をいうものであり、年又は年度での記述でも足りるものであること。
 「計画の期間中における継続雇用制度の定めるところにより退職することとなる年齢」とは、継続雇用制度を段階的に改善する場合における各段階ごとの最高雇用年齢をいうものであること。
ニ 計画の提出(法第4条の6第2項、則第6条の2において読み替えて準用する則第6条)
 事業主は、計画を作成したときは、これを遅滞なく管轄公共職業安定所の長に提出しなければならないものであり、具体的にはロにより当該指示に記載された期限内に提出することを要するものであること。
ホ 計画の実施状況の報告
 管轄公共職業安定所の長は、計画の作成を指示するときに、併せて計画中に示された終期に達したときにその時点における継続雇用制度の状況を実施状況報告書(様式第3号)により終期の日の翌日から起算して45日以内に報告するよう求めるものとすること。
ヘ 計画を変更した場合の提出
 事業主は、自主的に又は(4)の変更勧告を受けて計画の変更を行ったときは、計画を作成した場合と同様に、変更後の計画を管轄公共職業安定所の長に提出しなければならないものであること。この場合、変更後の計画である旨及び変更点を明示させること。
(4) 変更勧告
イ 変更勧告を行う場合
 法第4条の6第3項の「計画が著しく不適当と認めるとき」とは、次のような場合をいうものであること。
(イ) 計画の期間が正当な理由なく3年程度を超えるものである場合
(ロ) 計画の終期における継続雇用制度が高年齢者等職業安定対策基本方針において示される継続雇用に関する目標を達成していない場合
(ハ) 高年齢者等職業安定対策基本方針において示される継続雇用に関する目標を達成するためには大幅な改善のための努力が必要であるにもかかわらず、計画期間中に実施する措置及びその時期について記載がない場合
ロ 変更勧告の方法
 変更勧告は、管轄公共職業安定所の長が文書により行うこと。この文書(様式第4号)は、変更すべき事項を示した上で、3か月程度の期間を付して変更後の計画の提出を求めるものとすること。
(5) 適正実施勧告
イ 適正実施勧告を行う場合
 法第4条の6第4項の「特に必要があると認めるとき」とは、次のような場合をいうものであること。
(イ) 計画に記載されている措置が計画の終期が近づいても全く行われておらず、かつ、そのままでは計画の終期において高年齢者等職業安定対策基本方針において示される継続雇用に関する目標を達成することが不可能であると判断される場合
(ロ) 計画の終期に至っても高年齢者等職業安定対策基本方針において示される継続雇用に関する目標が達成されていない場合
ロ 適正実施勧告の方法
 適正実施勧告は、管轄公共職業安定所の長が文書により行うこと。
 イの(イ)の場合における文書(様式第5号の1)には、継続雇用制度の導入又は改善のための具体的な措置を速やかに行い、適正実施報告書(様式第6号)により速やかに報告することを三か月程度の期限を付して求める旨を記載するものとすること。
 イの(ロ)の場合における文書(様式第5号の2)には、継続雇用制度の導入又は改善を行うことにより計画の目標を達成し、適正実施報告書により就業規則、労働協約等の写しを添付して報告することを3か月程度の期限を付して求める旨を記載するものとすること。

4 その他
(1) 目的(法第1条)
 今回の改正により、施策の重点を定年引上げから継続雇用制度の導入又は改善に移したことに伴い、目的について所要の改正を行ったものであること。
 「継続雇用制度等」の「等」には、従来からの定年の引上げ及び高年齢者雇用推進者の選任が含まれるものであること。
(2) 高年齢者雇用推進者(法第5条)
 高年齢者雇用推進者の業務について、指示に係る国との連絡に関する業務又は計画の作成及び計画の円滑な実施を図るための業務を追加する等所要の改正を行ったものであること。
 具体的には、「指示に係る国との連絡に関する業務」とは、指示を受けた後に行うべき報告書の作成等をいうものであり、「計画の円滑な実施を図るための業務」には、変更勧告又は適正実施勧告に対する対応も含まれるものであること。
 なお、高年齢者雇用推進者を選任させる趣旨、選任の方法、高年齢者雇用推進者の要件については従前どおりであること。
(3) 雇用状況の報告(法第55条第1項、則第50条第1項)
 今回の改正により、労働大臣は、事業主に対し指示、変更勧告及び適正実施勧告といった行政措置を行うことができることとなったが、これらの行政措置を的確に行うためには、労働大臣は、各事業主の継続雇用制度の状況を従来よりも詳細に把握していることが必要であることから、高年齢者雇用状況報告書の記載事項のうち継続雇用制度に係る部分について充実を図るとともに、事業主の負担に配慮し、他の部分について整理を行ったものであること。
 なお、報告に係る労働大臣の権限及び報告の主体並びに報告の手続については従前どおりであること。

第2 高年齢者職場改善資金融資制度の改正関係
 今回の改正の一環として、雇用促進事業団が行っている高年齢者職場改善資金融資制度についても改正を行ったものであること。
 具体的には、
@ 60歳定年はすべての事業主が当然に達成すべき水準であり、行政としてこれに低利融資のような特別の支援措置を講ずるまでもない段階に至っていること
A 60歳を超える年齢については、定年引上げだけでなく、継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度)の導入及び改善も政策的に推進するものであること
から、60歳へ定年を引き上げる事業主及び60歳定年を定めている事業主を原則として対象から除外するとともに、60歳定年を定めている事業主であって61歳以上の継続雇用制度を導入するための措置を講ずる事業主及び61歳以上の継続雇用制度を定めている事業主を対象に加えることとしたものであること。
 また、併せて、継続雇用制度の導入又は改善は今後中長期的に取り組む課題であり、現時点で直ちにこれを達成できる事業主も多くないこと、また法第52条において高年齢者の企業における多数雇用を奨励していることを踏まえ、新たに60歳以上65歳未満の高年齢者を6%以上雇用している事業主(ただし、60歳定年を達成していることを条件とする。)を対象に追加したものであること(雇用促進事業団法(昭和36年法律第116号)第19条第3項第3号、雇用促進事業団法施行令(昭和36年政令第206号)第7条、昭和37年労働省告示第14号(雇用促進事業団法施行令の規定に基づき労働大臣が指定する多数の求職者が居住している地域、労働大臣が定める年齢、労働大臣が定める施設並びに労働大臣が定める年齢及び割合を定める件)第4号)。
 なお、雇用促進事業団及び高年齢者雇用開発協会とも情報の交換等相互の連携を密にし、本制度の有効活用が図られるよう配慮されたいこと。




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