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人権擁護施策推進法
1996年12月17日成立


(目的)
第1条
 この法律は、人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を整備し、もって人権の擁護に資することを目的とする。

(国の責務)
第2条
 国は、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法にのっとり、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策を推進する責務を有する。

(人権擁護推進審議会の設置)
第3条
法務省に、人権擁護推進審議会(以下「審議会」という)を置く。
2 審議会は、法務大臣、文部大臣、総務庁長官又は関係各大臣の諮問に応じ、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項を、法務大臣の諮問に応じ、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項を調査審議する。
3 審議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣、法務大臣、文部大臣、総務庁長官又は関係各大臣に意見を述べることができる。

(人権擁護推進審議会の組織等)
第4条
 審議会は、委員20人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者のうちから、法務大臣が任命する。
3 委員は、非常勤とする。
4 審議会に、会長をおき、委員の互選によりこれを定める。
5 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
6 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
7 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
8 前各項に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。

附 則
(施行期日)
1 この法律は、交付の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(この法律の失効)
2 この法律は、前項の政令で定める日から起算して五年を経過した日にその効力を失う。


理 由
 人権の尊重の緊要性に関する認識の高まり、社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等の人権侵害の現状その他人権の擁護に関する内外の情勢にかんがみ、人権の擁護に資するため、人権の擁護に関する施策の推進について、国の責務を明らかにするとともに、必要な体制を整備する必要がある。これが、この法律を提出する理由である。


人権擁護施策推進法案提案理由説明
 我が国においては、日本国憲法の下、すべての国民は基本的人権の享有を妨げられず、個人として尊重され、法の下の平等とされている。政府は、これまで人権に関する諸制度の整備及び施策の推進を図るとともに、国際社会の一員として人権に関する諸条約に加入するなど、各般の施策を講じてきた。
 しかし、今日においても、同和問題等社会的身分や門地による不当な差別、人種、信条、性別による不当な差別その他の人権侵害がなお存在しており、また、我が国社会の国際化、高齢化、情報化の進展等に伴い、人権に関する様々な課題も見られるようになってきている。特に、同和問題については、本年5月に、地域改善対策協議会から同和問題の解決に向けた今後の方策の基本的な在り方について意見具申がなされ、この中で、差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進、人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化等が求められている。
 政府としては、これらの状況を踏まえ、人権の擁護に関する施策の基本とも言うべき人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策を今後とも推進していくとともに、これらの施策について、改めて十分な検討を行うことが必要であり、これが同和問題の早期解決のためにも不可欠と考え、この法案を提出する。
 法案の概要は、国の責務として、日本国憲法の理念にのっとり、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者救済に関する施策を推進する責務を有することとし、審議会については、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項について、調査審議するとともに、これらについて意見を述べることを任務としている。また、この法律は、政令で定める日から起算して5年を経過した日にその効力を失うこととしている。
 政府としては、審議会の答申又は意見具申がなされた際には、これを最大限尊重し、人権の擁護に関する各種の施策を講じてまいりたい。
 なお、審議会に対しては、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策については、人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策との関連を考慮しつつも、2年程度を目処として早期に方向性を出していただくようお願いしてまいりたい。


人権擁護施策推進法案に対する附帯決議
 同和問題を始めとする人権問題の解決のため、あらゆる差別の撤廃と人権の確立に向けての人権擁護施策を一層推進、強化することとし、政府は、次の諸点につき格段の努力をすべきである。

1 人権問題における教育及び啓発の重要性にかんがみ、学校教育、社会教育等の分野において、「人権教育のための国連十年」の国内行動計画等を踏まえ、人権教育、人権啓発の取組みに努めること。
2 人権尊重の理念に関する教育及び啓発の基本的事項については二年を目処に、人権侵害の場合の被害の救済施策については五年を目処になされる人権擁護推進審議会の答申等については、最大限に尊重し、答申等にのっとり、法的措置を含め必要な措置を講ずること。
3 人権擁護推進審議会委員の人選に当たっては、人権問題に精通した学識経験者を選任するよう配慮すること。
4 審議会の設置及び運営に関しては、平成7年9月29日付け閣議決定に基づき、透明性の確保に努めること。
5 人権擁護施策の一層の推進のため、人権擁護体制の充実、強化を図ること。
6 人権関係条約の批准について、積極的に検討すること。
右決議する。


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