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平成15年3月27日(木)
厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

障害者雇用対策基本方針の策定について
障害者の雇用の促進及びその職業の安定
に関する施策の基本となるべき方針

1. 厚生労働省では、平成15年度から平成19年度までを運営期間とする「障害者雇用対策基本方針」を策定したところであり、今月28日に告示する予定である。

2. この「障害者雇用対策基本方針」は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、厚生労働大臣が障害者の雇用の促進及びその職業の安定に関する施策の基本となるべき方針として作成し、公表するものである。

3. 現行の「障害者雇用対策基本方針」の運営期間が平成14年度で満了することから、昨年来、新たな「障害者雇用対策基本方針」の策定作業を進めてきたところであり、労働政策審議会(会長 西川 俊作 慶應義塾大学名誉教授)に対しては、今月27日に「障害者雇用対策基本方針(案)」を諮問し、同日、妥当である旨の答申を得たところである。

4. 厚生労働省では、今後、この「障害者雇用対策基本方針」に沿って、より一層の障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図っていくこととしている。

障害者雇用対策基本方針概要
 はじめに
 方針の目的
 この基本方針は、前回方針の運営期間における状況を踏まえ、今後の障害者雇用対策の展開の在り方について、事業主、労働組合、障害者その他国民一般に広く示すとともに、事業主が行うべき雇用管理に関する指針を示すことにより、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図ることを目的とするものである。

 方針のねらい
 企業を取り巻く経営環境などが変化していることや、就職を希望する障害者の増加に対応し、障害者の職場を拡大する必要が生じる中、平成14年に法改正を行い、除外職員制度及び除外率制度を段階的に縮小することとするとともに、特例子会社の認定要件を緩和し、特例子会社を保有する企業が企業グループで雇用率を算定することを可能とした。また、障害者就業・生活支援センター及びジョブコーチを制度化するとともに精神障害者の定義規定を設けるなど、精神障害者を含めた障害者に対する総合的な支援施策を充実させた。
 また、企業の実雇用率を見ると、平成11年度以来横ばいを続けていたが、平成14年度には0.02ポイント低下し、法定雇用率を依然下回った状態にあるなど、障害者を取り 巻く雇用環境は依然として厳しいものとなっている。
 そこで、今後は、平成14年12月に策定された障害者基本計画等に基づき、障害者の雇用の促進のため、雇用率制度による指導を推進していくとともに、除外職員制度及び除外率制度の段階的縮小、特例子会社の活用等により、障害者の職場を拡大するとともに、精神障害者について就業環境を整え、雇用率制度の対象とするための検討を行うこととする。また、人権の擁護の観点を含めた障害の特性等に関する正しい理解を促進するとともに、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を福祉部門等各関係機関と連携し、総合的かつ計画的・段階的に推進していくこととする。

 方針の運営期間
 この方針の運営期間は、平成15年度から平成19年度までの5年間とする。

 第1 障害者の就業の動向に関する事項

1 障害者の人口の動向
 (1)  身体障害者人口の動向
 在宅の者324万5千人(平成13年)と増加している。また、重度化、高齢化が進んでいる。
 (2)  知的障害者人口の動向
 在宅の者22万1千人(平成12年)と増加している。
 (3)  精神障害者人口の動向
 精神病院入院34万人、在宅170万人(平成11年)となっている。また、精神障害者保健福祉手帳は21万9千人に対して交付されている(平成14年3月末現在)。
2 障害者の就業の動向
 (1)  障害者の就業状況
 身体障害者の就業者数は73万8千人、就業率23.3%(平成13年)と減少したが、知的障害者の就業者数は、13万8千人(平成12年)と増加している。
 (2)  障害者の雇用状況
 常用雇用されている身体障害者39万6千人、知的障害者6万9千人、精神障害者5万1千人となっており(平成10年)、前回調査に比べそれぞれ増加している。
 平成14年の民間企業における実雇用率は、前年度に比べ0.02ポイント低下し、1.47ポイントとなっている。
 実雇用率については、従来から規模の小さい企業で高く、規模の大きい企業で低いという傾向があったが、逆転が見られる。
 障害者である有効求職者は15万3千人であり、知的障害者は3万人、重度身体障害者は4万6千人を占める(平成14年12月末現在)。
 平成13年度における公共職業安定所に届けられた障害者解雇者数は4,017人となり、前年度比約60%増加している。

 第2  職業リハビリテーションの措置の総合的かつ効果的な実施を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
 障害の重度化、障害者の高齢化、難病等の慢性疾患や高次脳機能障害など障害の多様化に対応した施策を、以下に重点を置いて展開を図っていく。

 障害の種類及び程度に応じたきめ細やかな措置の開発、推進
 職業リハビリテーションの措置の開発に努めるとともに、関係行政機関、企業等との密接な連携のもとに、職業リハビリテーションの措置を推進する。
 一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者に対する職業リハビリテーションの推進
 知的障害者や精神障害者等一般雇用に就くために特に支援が必要な障害者の円滑な雇用の促進を図るため、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業を実施することにより障害者の就職及び職場定着を図る。また、障害者就業・生活支援センター、雇用支援センター等各機関、施設が連携し、職業リハビリテーションの実施を推進する。
 職業能力開発の推進
 一般の公共職業能力開発校において、障害者の受入れを促進する。重度障害者に対しては、障害者職業能力開発校において、訓練科目の設定等を推進する。在職者訓練、ITを利用した職業能力開発、民間教育機関等の活用についても推進する。
 実施体制の整備
 職業リハビリテーション実施機関において、職業リハビリテーションの措置を充実させる。地域において、福祉、教育、医療等各部門と連携し、障害者就業・生活支援センターを活用するとともに、職場適応援助者(ジョブコーチ)の積極的活用を図る。
 専門知識を有する人材の育成等
 障害の多様化等に対応するため、経験的に蓄積された知識等を活用し、ジョブコーチ等職業リハビリテーションに従事する人材の育成と資質向上を着実に推進する。
 また、産業医の活用を図る。
 進展するITの積極的活用
 近年急速に進展するITの積極的活用を図る。

 第3  事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項
 事業主は、関係行政機関や事業主団体の援助と協力の下に、以下の点に配慮しつつ適正な雇用管理を行うものとする。

1 基本的な留意事項
 (1)  採用及び配置
 障害の種類及び程度を勘案した職域を開発することにより積極的な採用を図るとともに、障害者個々人の適性と能力を考慮した配置を行う。
 (2)  教育訓練の実施
 障害者に対し、能力向上のための教育訓練等の実施を図り、障害者能力開発校等で実施される在職者訓練等の活用も考慮する。
 (3)  処遇
 障害者個々人の能力向上、職務遂行状況を適切に把握し、適性、希望等も勘案した上で、その能力に応じ、キャリア形成にも配慮した適正な処遇に努める。
 (4)  安全・健康の確保
 障害の種類及び程度に応じた安全管理、健康管理の実施を図る。
 (5)  職場定着の推進
 障害者雇用推進者、障害者職業相談員について、業務に適した者を選任するとともに、ジョブコーチの活用等を図る。
 (6)  障害及び障害者についての理解の促進
 職場内の意識啓発を通じ、職場全体の、障害及び障害者についての理解や認識を深める。
 (7)  障害者の人権の擁護
 障害者の人権が侵害されないよう、障害者雇用連絡会議、紛争調整委員会、地方労働委員会によるあっせん等を活用する。
2 障害の種類別の配慮事項
 (1)  身体障害者
 障害の種類及び程度が多岐にわたることを踏まえ、職場環境の改善を中心とした事項に配慮する。
 (2)  知的障害者
 複雑な作業内容を理解することが困難な場合があること等に配慮する。また、障害者本人への指導・援助を中心とした事項に配慮するとともに職業能力の向上にも配慮する。
 (3)  精神障害者
 精神症状の変動により作業効率に波がみられることがある等の特徴が指摘されていることに加え、障害の程度、職業能力等の個人差が大きいことを踏まえ、労働条件の配慮や障害者本人への指導・援助を中心とした事項に配慮する。
 (4)  その他障害者
 個々の障害の状況を十分に把握し、必要に応じて職場の同僚等の理解を促進するための措置を講じるとともに、障害状況に応じた職務設計、勤務条件の配慮を行う。

 第4  障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項
 雇用施策に立ち後れのみえる精神障害者に重点を置きつつ、障害の種類及び程度に応じたきめ細やかな対策を総合的に講ずることとし、厳しい雇用失業情勢のしわ寄せが障害者にいかないよう以下に重点を置いた施策の展開を図っていく。

 障害者雇用率制度の達成指導の強化
 法定雇用率の達成に向けて、民間部門、公的部門に対する指導を強力に実施するとともに、指導にもかかわらず一定の基準を満たさない企業については、企業名の公表を実施する。また、特例子会社制度の活用を促すとともに、除外率制度及び除外職員制度を段階的に縮小し、廃止を目指す。
 事業主に対する援助・指導の充実等
 障害者雇用に関する好事例の周知、雇用管理に関する知識、情報を提供するとともに、試行(トライアル)雇用制度を活用し、障害者雇用の経験のない事業主に対しても障害者雇用に取り組むきっかけづくりを行う。また、障害者雇用納付金制度を適正に運営し、助成金制度を活用しやすくすることにより、障害者の雇用の促進及び継続を図る。
 障害者の雇用の維持、解雇の防止と再就職対策の強化
 公共職業安定所において在職中からの障害者に対する支援を行う。
 重度障害者の雇用・就労の場の確保
 各種助成金を活用しつつ特例子会社等の設置を促進する。授産施設や養護学校等から一般雇用への移行といった一般雇用に就くために特に支援が必要な場合については、職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用、福祉機関等との連携による雇用支援施策の整備等に努めるとともに、職務の見直し、職域の拡大、施設・設備の改善の促進、障害者及び事業主に対する相談等の施策の推進を図る。
 精神障害者の雇用対策の推進
 精神障害者については、福祉、医療部門との連携の下に障害者就業・生活支援センターを活用し、職場適応援助者(ジョブコーチ)による人的支援を行う。職業リハビリテーションの措置の的確な実施に努めるとともに、各種助成措置の活用も図りつつ、雇用の促進及び継続を図る。精神障害者の雇用に関する理解を促進するため、事業主のみならず、医療、福祉関係者等に対しても周知啓発を推進する。障害者雇用率の適用についても対象とするための検討を行う。採用後精神障害者についても支援施策の推進を図る。
 多様な雇用・就労形態の促進
 短時間勤務、在宅就労等障害者の特性に応じた雇用環境づくりに取り組む。ITを活用するとともに、支援機関の育成など支援策の充実等を図る。
 障害者雇用に関する啓発・広報
 事業主団体、労働組合、障害者団体の協力も得ながら、国民一般を対象とした啓発、広報を推進する。
 研究開発等の推進
 障害者雇用の実態把握のための基礎的な調査研究を計画的に推進する。障害者雇用に係る専門的な研究を事業主団体等の協力も得て計画的に推進する。障害者がIT機器を利用するためのソフトの開発や難病者等の雇用に関する研究等、今後の課題に関する研究を積極的に推進する。併せて、これらの研究成果についての活用に努める。
 関係機関との連携
 障害者雇用連絡会議の開催や個別の事案への対応を通じて、障害者を支援する機関相互間の連携の強化を図る。特に知的障害者、精神障害者について、障害者就業・生活支援センター等を活用し、教育、福祉、医療等関係機関と連携しながら、障害者の就職、職場定着を図る。障害者の職業生活に関わる社会環境に根ざした形で、住宅、交通手段等を含め総合的に整備していくことが重要であり、これに対する援助措置の充実に努める。
10  国際交流、国際協力の推進
 びわこミレニアムフレームワークに基づき、我が国の国際的地位にふさわしい国際交流、国際協力を一層推進する。





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