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ウィーン宣言及び行動計画
1993年6月25日 国連世界人権会議採択


前文
 世界人権会議は、
 人権の促進と保護が国際社会における優先事項であり、会議が正当で均衡のとれた方法により、人権のより完全な遵守を促進するため、国際人権システム及び人権保障のための機構の包括的な分析を行う特別な機会を提供することを考慮し、
 すべての人権は人間に固有の尊厳と価値に由来し人間が人権及び基本的自由の中心的主体であり、その結果として主たる受益者でなければならず、人権と自由の実現に積極的に参加すべきであることを認め、
 国際連合憲章及び世界人権宣言に規定された目的と規則についての責任を改めて認め、
 全ての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重と遵守を含む国際連合憲章55条に掲げられた目的を実現するため、効果ある国際協力を進めることに適切に重きを置き、同憲章56条に規定された共同及び個別の行動を取ることへの責任をもまた認め、
 国際連合憲章にしたがい、人種、性別、言語、又は宗教による差別なく、すべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように発展させかつ奨励するすべての国の責任を強調し、
 国際連合憲章前文、とりわけ基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認するという決意を想起し、
 国際連合憲章前文に示された戦争の惨害から将来の世代を救い、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持できる条件を確立し、いっそう大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、寛容と善良な隣人としての生活を実行し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために、国際機構を用いることへの決意をさらに想起し、
 すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準である世界人権宣言が着想のみなもとであり、国際連合にとって、現存の国際人権文書、とりわけ市民的及び政治的権利に関する国際規約、並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に含まれている基準設定を発展させる基礎であったことを強調し、
 国際場面における主要な変化と、すべての者の人権及び基本的自由並びに人民の同権及び自決の原則の尊重の促進・奨励、平和、民主主義、正義、平等、法の支配、多元主義、発展、より良い生活水準、並びに連帯を含んだ国際連合憲章の原則を基礎とした国際秩序に対するすべての人民の熱望を考慮し、
 全世界で女性が継続的に被っている様々な形態の差別や暴力を深く憂慮し、
 人権分野において国際連合機構を強化し、国際人権基準の遵守に対する普遍的尊重という目標を促進するために、この分野における国際連合の活動が合理的に行われ拡大されなければならないことを確かめ、
 チャニス、サンホセ、及びバンコックの三つの地域会合で採択された宣言と諸政府による貢献を考慮し、政府間、及び非政府組織によってなされた提案並びに世界人権会議の準備過程において独立専門家が準備した研究に留意をし、
 先住民によるすべての人権及び基本的自由の享受を確保し、並びに先住民の文化や独自性に関する価値や多様性を尊重する国際社会の責任を改めて確認するものとして1993年の国際先住民年を歓迎し、
 同様に、すべての人権の完全な実現にとっての現在の障害を取除き、さらにこれに向けて挑戦し、並びに世界中で間断なく続く人権侵害を防止する方法と手段を国際社会が工夫すべきことを認め、
 世界の人民及び国際連合の全加盟国が、すべての人権及び基本的自由の完全かつ普遍的な享受を保障するために、これらの権利の促進と保護という世界的任務に改めて貢献することを求める我々の時代の精神と今日の現実に訴え、
 増進的かつ持続的な国際協力及び連帯の努力により人権実現への実質的な進歩の達成を目的に、国際社会の信念において新たに前進することを決意し、
 ここに、ウィーン宣言及び行動計画を厳粛に採択する。


T【人権問題に関する原則】
第1節[人権及び基本的自由の尊重]
 世界人権会議は、すべての国が、国際連合憲章、その他人権関連文書及び国際法により、すべての者のあらゆる人権及び基本的自由の普遍的尊重、遵守、及び保護促進の義務を満足 すべき厳粛な責務を有することを再確認する。これら権利及び自由が普遍的性格を持つこと は、疑いの余地はない。
 この枠組みの中で、人権分野における国際協力の強化は、国際連合の目的の完全な達成には不可欠である。
 人権及び基本的自由は、すべての人間が生れながらに有する権利であるその促進と保護は、政府の第一義的義務である。

第2節[自決の権利]
 すべての人々は、自決の権利を有する。この権利に基づき、すべての人々は政治的地位を自由に決定し、また経済的、社会的、文化的発展を自由に追求する。
 植民地等の形態による外国の支配もしくは占領下の人々に特有の状況を考慮し、世界人権会議は奪われることのない自決権の実現のため、国際連合憲章にしたがい、あらゆる合法的行動をとる人々の権利を認める。世界人権会議は、自決権の否定は人権の侵害であると見なし、また、この権利の実効的実現の重要性を強調する。
 国際連合憲章に従った国家間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言にしたがい、自決権は、人々の同権及び自決の原則に沿って行動し、かつ、いかなる形態の区別もなくその領域に属するすべての人々を代表する政府を有する主権独立国家の領土保全又は政治的統一を、全部または一部、分割又は毀損し得るいかなる行動をも承認又は奨励するものと解釈してはならない。

第3節[占領地下の人権保障]
 外国の占領下にある人々については、人権基準の実施を保障及び監視する効果的な国際的措置をとるべきであり、かつ、これらに人々の人権侵害について、人権規範及び国際法、とりわけ1949年8月14日付戦時における文民の保護に関するジュネーブ条約その他人道上の適用規範にしたがい、効果的法的保障を供与するべきである。

第4節[人権の優先性の確認]
 すべての人権及び基本的自由の促進及び保護は、国際連合の目的及び原則、特に国際協力の目的にしたがい、国際連合の優先的な目的とされなければならない。これらの目的及び原則の枠組みの下で、すべての人権の促進及び保護は国際社会の正当な関心事項である。

第5節[人権の普遍性、不可分性と相互依存性]
 すべての人権は、普遍的、不可分、相互に依存し、関連している。国際社会は、同一の立場に基づき、かつ同様に重点を置いて、公平かつ平等な方法で、人権を全世界的に取り扱わねばならない。国、地域の特殊性及び種々の歴史的、文化的及び宗教的背景の重要性は考慮されねばならないが、すべての人権及び基本的自由の促進及び保護は、その政治的、経済的及び文化的制度の如何を問わず、国家の義務である。

第6節[基本原則としての人権]
 国際連合憲章にしたがった、すべての人権及び基本的自由の普遍的尊重及び遵守に向けた国際連合システムの努力は、諸国間の平和で友好的な関係に必要な安定と福祉に貢献し、また平和と安全、並びに社会・経済の発展に貢献する。

第7節[手続きの国際準則]
 人権の促進と保護の手続は、国際連合憲章の目的と原則、並びに国際法にしたがって進められねばならない。

第8節[人権と民主主義]
 民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重は、相互に依存しかつ補強し合うものである。民主主義は、自らの政治的、経済的、社会的及び文化的制度を決定する自由に表明された人々の意思並びに生活のすべての側面への完全な参加に基礎をおくものである。上記の文脈において、国家的及び国際的レベルにおける人権及び基本的自由の促進と保護は、普遍的かつ付帯条件なしに行われるべきである。国際社会は全世界における民主主義の強化と促進、人権及び基本的自由の発展と尊重を支援すべきである。

第9節[民主化と経済改革]
 世界人権会議は、民主化と経済改革の過程を遂行中の後発発展途上国―多くがアフリカにある―が、民主化への移行と経済開発の成功をおさめるために、国際社会に支援されるべきであることを再確認する。

第10節[人権としての発展の権利]
 世界人権会議は、発展の権利が、発展の権利宣言において確立されたとおり、普遍的かつ奪うことのできない権利であり、基本的人権の重要な一部であることを再確認する。
 発展の権利宣言に述べられているとおり、人間こそが発展の中心的存在である。
 発展はすべての人権の享有を容易にするものではあるが、発展が不十分であることが、国際的に認められた人権を奪うことの正当化の事由とされてはならない。
 国家は互いに協力して発展と発展の障害の除去を確保しなければならない。国際社会は発展の権利の実現と発展の障害除去のため、効果的国際協力を促進しなければならない。
 発展の権利の実施み向けた継続的な過程は、国内レベルでの効果的開発政策を必要とし、また国際レベルでの公正な経済関係と好ましい経済環境を必要とする。

第11節[発展の権利と環境]
 発展の権利は、現在と将来の世代の発展と環境の必要性が公平に適合する形で実現されるべきである。世界人権会議は、有毒物質、危険物質、及び廃棄物の不法投棄がすべての人の生命と健康に関する人権の重大な驚異たり得ると認識する。
 よって、世界人権会議は、すべての国に対し、有毒製品、危険製品、及び廃棄物の投棄に関する現行条約の締結とその誠実な履行、及び、不法投棄の防止への協力をよびかける。
 すべての人は、科学の進歩と応用による利益を享受する権利を有する。世界人権会議は、ある種の進歩、特に生体臨床医学、生命化学、情報工学の進歩が個人の人格、尊厳及び人権に悪影響を及ぼし得ることに留意し、世界的関心事項であるこの分野で、人権と尊厳の完全な尊重の確保のために、国際協力を求める。

第12節[途上国への経済的援助]
 世界人権会議は、発展途上国において、その国民の経済的、社会的、文化的権利の完全な実現にむけた各国政府の努力を補完するため、国際社会が、発展途上各国の対外累積債務の除去の援助に、あらゆる努力を行うことを求める。

第13節[権利享受の障害の除去]
 加盟国、国際組織は、非政府組織の協力の下で、国内、地域、及び国際レベルで、人権の完全かつ効果的享受の確保のため、好ましい条件の創設が必要である。加盟国は、すべての人権侵害とその原因、並びにそれら権利享受の障害を除去すべきである。

第14節[貧困の根絶]
 極度の貧困の広範な存在は、完全かつ実効的な人権享受の障害であるので、その即時緩和と最終的根絶は、国際社会における高い優先事項であり続けねばならない。

第15節[差別の撤廃]
 いかなる区別もない人権及び基本的自由の尊重は、国際人権法の基本原則である。あらゆる形態の人種主義及び人種差別、外国人排斥並びに関連する不寛容の、早急かつ包括的撤廃は、 国際社会の優先的使命である。各国政府はそれらの防止と撲滅のため、効果的措置を講じるべきである。集団、機構、政府間及び非政府組織、並びに個人に対し、これらの悪に立ち向かう活動への協力と調整の努力の強化が強く求められている。

第16節[アパルトヘイトの解体]
 世界人権会議は、アパルトヘイトの解体という進歩を歓迎し、国際社会と国際連合システムが、この過程を支援するよう、求める。
 世界人権会議はまた、アパルトヘイトの平和的解体の追求を妨げる目的で継続している暴力行為を、憂慮する。

第17節[テロリズムの克服]
 あらゆる形態及び現象における、並びに幾つかの国の麻薬売買との結合した、テロリズムの行為、方法、実行は、人権、基本的自由及び民主主義を破壊し、領土保全、国家の安全を脅かし、合法的に成立している政府の不安定化を目的とする活動である。国際社会は、テロリズムの防止及び克服のため、協力関係の強化に必要な措置を講じるべきである。

第18節[女性・女児の人権]
 女性及び女児の人権は、普遍的な人権の奪うことのできない、重要かつ不可分な部分である。国、地域及び国際的レベルにおける政治的、市民的、経済的、社会的及び文化的生活への女性の完全かつ平等な参加、並びに、性別に基づくあらゆる形態の差別の根絶は、国際社会の優先的目標である。
 文化的偏見及び国際的売買に起因するものを含め、性別に基づく暴力並びにあらゆる形態のセクシャル・ハラスメント及び性的搾取は、人間の尊厳及び価値と両立せず、撤廃されなければならない。これは、経済的及び社会的発展、教育、安全な妊娠及び健康管理並びに社会的支援などの分野における法的手段により並びに国内行動及び国際協力を通じて達成され得る。
 女性の人権は、女性に関連したすべての人権文書の促進を含む国際連合の人権活動の重要な部分を構成すべきである。
 世界人権会議は、政府、機構及びに政府間及び非政府組織に対し、女性及び女児の人権の保護及び促進のための努力を強化するよう要請する。

第19節[少数者の権利]
 少数者の権利の促進及び保護の重要性、並びにそれら権利の促進及び保護が少数者の存在する国家の政治的、社会的安定への貢献を考慮し、
 世界人権会議は、少数者に属する者が、いかなる差別もなく、また少数者の国家、種族、宗教及び言語の権利に関する宣言により、法の下で完全な平等のもとに、人権及び基本的自由の完全かつ効果的な行使を確保することが、国家の義務であることを再確認する。
 少数者に属する者は、自由かつ妨害や差別を受けることなく、固有の文化の享受、固有の宗教の信仰及び実践、私的及び公的に固有の言語を使用する権利を有する。

第20節[先住民の尊厳]
 世界人権会議は、先住民の生来の尊厳及び社会の発展と多様性に対する独自の貢献を認識するとともに、先住民の経済的、社会的、文化的福祉及びその継続可能な発展の成果の享受への国際社会の関与を強く再認識する。各国家は先住民が、社会のあらゆる側面、とりわけ先住民に関わる諸事項については、全面的かつ自由な参加を確保すべきである。先住民の権利の促進及び保護の重要性と先住民が生活する国において、その先住民の権利の促進と保護が政治的、文化的安定に貢献することに鑑み、国家は国際法に従い、平等と非差別を基盤に、先住民のすべての人権と基本的自由の尊重の確保に協調的積極的な措置を講じ、また先住民独自の特性、文化及び社会組織の価値と多様性を認識すべきである。

第21節[子どもの人権]
 世界人権会議は、多数の国により子どもの権利に関する条約が早期に批准されたことを歓迎し、子どものための世界サミット(世界子どもサミット)で採択された子どもの生存、保護、発達に関する宣言と行動計画の子どもの人権が認知されたことに注目し、世界中の国が1995年までに子どもの権利に関する条約を批准すること、及び、締結国においては、すべての必要な立法的及び行政的その他の手段の採用と利用可能な資源の最大限の配分によって、同条約が効果的に実施されることを要望する。子どもにかかわるすべての行動において、子どもの非差別と最良の利益が優先的に考慮されるべきであり、子どもの視点に十分な重要性を与えられるべきである。国内・国際機構及び計画は、子どもの防衛と保護、とりわけ女児、捨て子、ストリートチルドレン、子どものポルノグラフィー・売春・臓器売買を含む経済的・性的搾取をうけている子ども、後天性免疫不全症候群(エイズ)を含む病気の犠牲となっている子ども、難民・強制移住者である子ども、拘禁状態にある子ども、武力紛争下の子ども、飢餓・干ばつ・その他の緊急事態の犠牲となっている子どもの防衛と保護を強化すべきである。条約の実施の支援のため、国際協力及び連帯は促進されるべきであり、子どもの人権は国際連合システム全体の人権活動において優先事項とされるべきである。
 世界人権会議は、子どもの人格の完全かつ調和ある発達は、より広い保護を与える家庭環境において育成されるべきであることを強調する。

第22節[障害者の権利]
 障害者の非差別並びにあらゆる人権及び基本的自由の平等な享受の確保は、障害者が活発に全面的な社会参加を行うことを含め、特別な注意を払う必要がある。

第23節[難民の権利]
 世界人権会議は、すべての人は、いかなる差別もなく、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有し、また、自国に帰る権利を有することを再確認する。この関連で、世界人権宣言、1951年難民の地位に関する条約、及び1967年選択議場書及び地域的文書の重要性を強調する。世界人権会議は多くの難民を認定し自国に受け入れている国、及び国際連合難民高等弁務官事務所の任務遂行の努力に対し感謝の意を表明する。また、パレスチナ難民救済事業機関に対してもまた、感謝の意を表明する。
 世界人権会議は、人々を強制移住に導く、多様で複雑な諸要因のなかには、武力紛争によるものを含む重大な人権侵害があることを認識する。
 世界人権会議は、全世界的な難民の危機の複雑性に鑑み、また国際連合憲章、関連する国際文書及び国際的な連帯にのっとり、さらには負担分担の精神から、国際連合難民高等弁務官の権限を考慮しつつ、関係国及び関係機関と調整されかつ協力した国際社会による包括的な取組が必要であることを認識する。これには、難民その他の避難民の移動の根本的原因と効果に取り組むための戦略の確立、緊急事態に対する準備及び対応のメカニズムの強化、女性及び子どもの特別な必要性を念頭に置いた効果的な保護及び援助の供与、そして第一義的には、難民に関する国際的会議で採択された解決策などを含む、尊厳あり、かつ安全で自発的な機関という望ましい解決策を通じた永続的な解決策の達成が含まれる。世界人権会議は、国の責任、とりわけ難民の出身国の責任を強調する。
 包括的取組の観点から、世界人権会議は、自発的かつ安全な帰還と復帰を含む国内強制移住者問題に関し、政府間組織及び人道主義組織を通じて、この問題の永続的解決策の発見を含め、特別な関心を払うことの重要性を強調する。
 国際連合憲章と人道法の原則にのっとり、世界人権会議はさらに、あらゆる天災と人災の犠牲者に対する、人道的援助の重要性と必要性を強調する。

第24節[移住者の権利]
 移住労働者を含む弱者集団の人権の促進と保護、それらの人に対するあらゆる差別の根絶及び現行の人権文書の強化とより効果的実施に最重要性が認められるべきである。各国は、国内レベルで適切な措置、とりわけ教育、健康、社会的扶助の分野で、国民の内の弱者の人権を促進し保護するため適切な措置を講じ、維持する義務、及びそれらの人のうち、自らの問題に自ら解決方法を求めようとする人に、参加の機会を保障する義務を負うものである。

第25節[最貧者対策の緊急性]
 世界人権会議は、極度の貧困や社会的排斥が、人間の尊厳を侵すものであること、及び最貧者の人権を促進し、極度の貧困と社会的排斥を根絶し、社会的発展の恩恵享受の促進のため、極度の貧困とその原因に対し、発展の問題との関連を含め、認識を深めるため緊急の対応が必要とされることを確認する。最貧者に、居住する共同体における意思決定の過程、人権の促進、極度の貧困の克服努力への参加を助長することは、各国にとって不可欠である。

第26節[人権条約の加入促進]
 世界人権会議は、動的かつ発展的な過程である人権諸文書の法典化における進展を歓迎し、人権関係諸条約の普遍的な批准を求める。すべての国は、これら国際文書に加入し、また、できる限り留保を行わないよう奨励される。

第27節[司法の確立]
 すべての国は、人権に関する不満や侵害を除去する効果的救済措置の枠組みを提供すべきである。法の執行や検察機関、とりわけ国際人権文書に定められた適切な基準を満たす独立した裁判官や法律家を含む司法の運営は、完全かつ差別なき人権の実現、及び民主主義と持続性ある発展過程に不可欠である。この文脈において、司法運営関係機関は、財政が適切であるべきであり、国際社会により、技術及び財政いずれもより高レベルの援助が供与されるべきである。強力で独立した司法運営の達成のため、諮問サービスの特別計画を優先的に活用することは、国際連合の義務である。

第28節[大規模人権侵害]
 世界人権会議は、大規模な人権侵害、とりわけ難民及び強制移住者の大量流出を惹起す戦時下の虐殺、「民族純化」及び女性に対する集団強姦に失意を表明する。これら忌むべき行為を強く非難するとともに、その犯罪の加害者が処罰され、このような行為がただちに停止されることを繰り返し訴える。

第29節[係争国への懸念]
 世界人権会議は、国際人権文書及び国際人道法に規定された基準を無視して、世界各地で継続中の人権侵害、並びに犠牲者に対する十分かつ効果的な救済策の欠如に重大な懸念を表明する。
 世界人権会議は、武力紛争化の人権侵害が一般市民、とりわけ女性、子ども、高齢者及び障害者をおそっていることを深く憂慮する。会議はそれゆえ、武力紛争に関与する各国及びすべての集団に対し、1949年のジュネーブ条約及びその他国際人道法の関連文書に規定された人道的機関に援助されるべき犠牲者の権利を再確認するとともに、援助が安全かつ即座に行われることを求める。

第30節[人権侵害の現状]
 世界人権会議は、世界各地で絶えず発生する、完全な人権享受の重大な障害をもたらす重大かつ組織的な人権侵害及び人権状況に、失意と非難を表明する。このような人権侵害及び人権享受の障害には、拷問及び残虐はもとより、非人道的、品位を傷付ける取り扱い、又は刑罰、即決及び恣意的処刑、失踪、恣意的拘禁、あらゆる人種主義、人種差別、アパルトヘイト、外国による占領、外国人支配、外国人排斥、貧困、飢餓、その他経済的、社会的、文化的権利の否定、宗教的不寛容、テロリズム、女性差別、並びに法の支配の欠如があげられる。

第31節[生活物資の非戦略化]
 世界人権会議は、各国に対し、国家間貿易関係の障害となり、また世界人権宣言及び国際人権文書に規定された人権、とりわけ、すべての人が食料、医療、住居その他必要な社会サービスを含め、健康及び福祉が保障された生活水準を享受する権利の完全な実現を妨げ、国際法及び国際連合憲章と矛盾する、いかなる一方的手段も行いことがないよう、要求する。世界人権会議は、食料を政治的圧力の道具に用いるべきでないことを確認する。

第32節[人権問題の普遍性]
 世界人権会議は人権問題の検討に当たり、普遍性、客観性及び非選択制を確保することの重要性を再確認する。

第33節[人権教育、情報提供の確保]
 世界人権会議は、世界人権宣言、国際経済社会文化権規約及びその他国際人権文書に明記されたとおり、人権及び基本的自由の尊重の強化のための教育の確保が各国の義務であることを、再確認する。世界人権会議は、人権教育計画の内容の具体化の重要性を強調し、各国にその実施を求める。教育こそは、民族及び、あらゆる人種的又は宗教的集団相互の理解、寛容、平和的かつ友好的関係を促進するものであり、この目的に沿った国際連合の活動の発展を奨励するものである。したがって、人権教育及び十分な情報の広報は、人種、性別、言語宗教などいかなる違いにもかかわらず、すべての個人の人権の促進及び保護のため、理論及び実践両面で、重要な役割を果たすので、そうした人権教育や適切な情報宣伝は、国及び国際両レベルの教育政策において、統合されるべきである。世界人権会議は、財源の不足、不十分な設備が、その目標の即時的実現を妨げ得ることに、特に言及する。

第34節[国家活動の財源の確保]
 各個人が、普遍的人権及び基本的自由が享受できる条件創出のため、それを求める国に対する援助のため、一層の努力をはらうべきである。政府、国際連合システム並びにその他多国間組織は、法の支配と民主主義、選挙支援、訓練及び教育を通じ人権意識、市民参加及び市民社会を支持する国内法、国内機関及び関連基盤整備並びにその強化を目的とした事業計画に分配される財源の増額を、強く求められる。
 人権センターの下での諮問サービス及び技術的援助の事業計画は、強化されるとともに効率性及び透明性がさらに高められ、それにより人権尊重改善のための主要な貢献となるべきである。国際連合通常予算からのより多くの配分の促進及び自発的拠出の双方を通じて、各国はこれら事業計画への貢献を増大させることが求められる。

第35節[国連活動の財源の確保]
 人権の促進及び保護のための国際連合活動の安全かつ効果的な実施は、国際連合加盟国から委任されたとおり、国際連合憲章に示された人権の最重要性及び国際連合の人権活動の要求を反映しなければならない。そのため、国際連合人権活動の財源は、増額されるべきである。

第36節[国家の役割]
 世界人権会議は、人権の促進及び保護のため、国家機関が果たす重要及び建設的役割、とりわけ、関係機関に対する諮問能力、人権侵害の救済の役割、人権情報の広報、及び人権教育に果たす役割について、再確認する。
 世界人権会議は、「国家機関の地位に関する原則」に関連し、かつ、各国がその国レベルでの個別の必要性に最適の枠組みを選択する権利を有することを認識しつつ、国家機関の設立と強化を奨励する。

第37節[地域の役割]
 地域的取決めは人権の促進と保護の基本的役割を果たす。地域的取決めは、国際人権文書に規定された普遍的人権基準及びその保護を強化するものである。世界人権会議は、国際連合の人権活動との協力の重要性を強調すると同時に、これら取決めの強化と効果の増強のための努力を評価する。
 世界人権会議は、人権の促進及び保護のための地域的及び小地域での取決めがまだ存在しない場合、そのような取決めを設立する可能性を検討する必要性につき、重ねて言及する。
 
第38節[非政府機関の役割]
 世界人権会議は、国内、地域及び国際レベルでのすべての人権の促進及び人道的活動における非政府組織の重要な役割を認識する。世界人権会議は、人権問題への一般意識の向上、この分野における教育、訓練、研究の実施、さらにすべての人権及び基本的自由の促進及び保護のための非政府組織の貢献を評価する。人権に関する基準設定の第一義的責任は各国にあることを認識する一方、会議は、この過程における非政府組織の貢献についても感謝する。この点について、世界人権会議は、政府と非政府組織との継続的対話及び強力の重要性を強調する。人権分野に純粋に関わっている非政府組織とそのメンバーは、国際連合人権宣言で認められた権利と自由、及び国内法の下の保護を享受すべきである。これら権利と自由は、国際連合の目的及び原則に反して行使されるべきではない。非政府組織は、国内法及び世界人権宣言の枠組みのなかで、干渉されることなく、その人権活動を自由に行えねばならない。

第39節[メディアの関与]
 人権及び人道問題に関する客観的、かつ責任ある公正な情報の重要性を強調しつつ、世界人権会議は、メディアは、国内法の枠組みのなかで自由と保護が保障されるべきものであるから、その関与の拡大を奨励する。

U【行動計画】
[A 人権に関する国際連合システム内の調整]
第1節から第17節まで略
第18節[人権高等弁務官の設置勧告]
[B 平等、尊厳及び寛容]
〈1.人種主義、人種差別、外国人排斥及びその他の形態の不寛容〉
第19節から第24節(人種主義等への対抗措置)
〈2.国民的、種族的、宗教的、言語的少数者に属するもの〉
第25節から第35節(先住民、移住労働者等の少数者の権利擁護措置)
〈3.女性の平等の地位及び女性の人権〉
第36節から第44節(女性の参画の保障措置及び女性の人権侵害への対抗措置)
〈4.子どもの権利〉
第45節から第53節(子どもの生存、保護、発達及び参加の権利の促進措置)
〈5.拷問からの自由〉
第54節から第61節(拷問の禁止措置)  第62節(強制的失踪と対抗措置)
〈6.障害者の権利〉
第63節から第65節(完全な平等の保障措置)
[C 協力、発展及び人権の強化]
第66節から第77節(国家及び国連における人権強化プラン等計画の策定勧告)
[D 人権教育]
第78節[人権に関する教育、訓練、公共情報の必要性]
 世界人権会議は、人権に関する教育、訓練及び公共情報が、社会間の安定でかつ調和のとれた関係を促進及び達成し、並びに相互理解、寛容及び平和を促進するために不可欠であると考える。

第79節[人権尊重のための教育]
 各国は、非識字者の根絶に努力し、人間性を十分に発展させ、並びに人権及び基本的自由の尊重を強化する方向で教育を推進すべきである。世界人権会議は、公的又は私的なすべての教育機関の教育課程に科目として、人権、人道法、民主主義及び法の支配を含めるようすべての国及び組織に求める。

第80節[人権の普遍的な信念の強化]
第81節[国家人権教育計画作成の勧告]
第82節[「人権教育のための国際連合10年」宣言の検討]
 政府は、政府間組織、国家機関及び非政府組織の支援の下で、人権意識のさらなる向上と相互の寛容を促進するべきである。…(略)…国際連合システムは、人権の分野における教育及び訓練活動、並びに国際人権文書及び人道法に含まれる基準や軍隊、法執行官、警察官及び保護要員など、特別な集団への基準の適用に関する特別教育に関する各国からの要請に直ちに対応可能であるべきである。人権分野における教育活動を促し、奨励し、かつ重視するために、人権教育のための国際連合10年を宣言することが検討されるべきである。
[E 実施及び監視方法]
第83節から第98節(人権に関する国家及び国連機関の機能とシステムの強化)
[F 世界人権会議のフォローアップ]
第99節から第100節(各国進捗状況の報告と国連機関の把握)



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