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地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律の施行について

総地第50号 文初小第128号 厚生省発社援第95号
9構改B第268号 平成09.03.26企第7号 労働省発職第79号
建設省住政発第13号 自治振第51号

平成9年3月31日


各 都道府県知事
  都道府県教育委員会
  指定都市市長
  指定都市教育委員会 殿

総務事務次官    池ノ内祐司
文部事務次官    井上 孝美
厚生事務次官    山口 剛彦
農林水産事務次官 高橋 政行
通商産業事務次官 牧野  力
労働事務次官    七瀬 時雄
襄建設事務次官   伴   襄
自治事務次官    遠藤 安彦

地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律の施行について

 地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の一部を改正する法律(以下「法」という)は、第140回国会において成立し、平成9年3月31日法律第15号として公布され、同日から施行された。また、これに伴い、地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令等の一部を改正する等の政令が同年3月31日政令第101号として公布され、同日(商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律施行令の一部改正関係、総務庁組織令の一部改正関係及び地域改善対策協議会令の廃止関係については、同年4月1日)から施行された。
 法の施行に当たって留意すべき事項は下記のとおりとされたので、貴職におかれては、その適正な運用が図られるよう努めるとともに、貴管下市区町村に対し、適切な指導を行い本法が円滑に実施されるよう格段の配慮を願いたい。
 以上、命により通知する。


第1 立法の趣旨
 地域改善対策については、同和対策事業特別措置法(昭和44年法律第60号)の施行以来、過去28年間にわたって3度の特別措置法に基づき、関係諸施策が推進されてきた。平成4年に地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律(昭和62年法律第22号。以下「地対財特法」という)の一部が改正され、以来、同法及び「今後の地域改善対策に関する大綱」(平成3年12月20日)に基づき、政府としては、残された物的事業のより迅速かつ計画的な実施に努め、法期限内の完了を目指すとともに、啓発等の非物的事業に重点をおいて施策の積極的な推進を図るほか、行政の主体性の確立等の適正化に積極的に取り組むことにより、同和問題の早期解決に努めてきたところである。
 これまでの地域改善対策協議会の意見具申にも指摘されているように、特別対策は永続的に講じられるべき性格のものではなく、事業の迅速な実施によって、できる限り早期に目標を達成し、一般対策へ移行することが肝要である。地対財特法は、このような趣旨から、地域改善対策特別措置法(昭和57年法律第16号) 失効後においても引き続き実施することが特に必要と認められる事業を円滑かつ迅速に実施し、一般対策への円滑な移行を図るための最終の特別法として制定されたものであり、平成4年の一部改正後の地対財特法は、本年3月末をもって効力を失うこととされていた。
 昨年5月17日の地域改善対策協議会の意見具申(以下「意見具申」という) にも指摘されているように、これまでの対策により、物的な生活環境を始め様々な面で存在していた較差が大きく改善され、物的な生活環境の劣悪さが差別を再生産するというような状況も改善が進み、差別意識の解消に向けた教育及び啓発も様々な創意工夫の下に推進され、対策の実施は全国的に進展し、地方公共団体にとって財政的負担が特に大きい物的な基盤整備は概ね完了したとみられる。これらを総合的に勘案した場合、全般的にみれば、これまでの特別対策は本年3月末までに概ねその目的を達成できるものと考えられる。
 しかしながら、一部の物的事業について、既に着手済みであるが本年3月末までに完了することが困難な事業がみられ、当該事業を実施している地方公共団体の財政状況等からみて、国の財政上の特別措置を直ちに終了した場合に、それらの事業の完了に支障を来すおそれが大きいと考えられること、また、教育、就労、産業などの較差がなお存在している分野がみられ、その短期間での是正は困難であるものの、特に利用度の高い個人給付的事業及び相談員・指導員等を配置している事業について、激変緩和的な観点からの配慮が必要と考えられることから、政府としては、意見具申を尊重し、特別対策は本年3月末をもって終了することを基本としつつ、15の事業に限定して5年間に限り経過的に法的措置を講ずるよう昨年7月26日に閣議決定(「同和問題の早期解決に向けた今後の方策について」。以下「閣議決定」という)した。
 今般、本閣議決定に基づき、一般対策への円滑な移行のための経過措置を講ずることとして法案を提案し、第140回国会において法が制定されたものである。

第2 法等の要旨
(1) 地域改善対策特定事業の中で平成4年の一部改正により地対財特法附則第1条第3項に規定された特例事業のうち、次のものが法により地対財特法附則第1条第6項に経過措置対象事業として規定され、これらについては、平成14年3月31日までの間に限り、地対財特法がなおその効力を有するものとされ、従前と同様の国の財政上の特別措置を講ずることとされたこと。
@ 昨年7月26日までに着手した事業(同日までに当該事業につき建設大臣による補助金の交付の決定その他これに準ずる措置がなされたものを含む)であって本年3月31日においてその工事を完了していないもので政令で定めるもの
A @の事業のほか、平成8年度以前の実施状況等に照らし平成9年度以降においても実施することが特に必要と認められるものとして政令で定めるもの

(2) 上記(1)の事業の具体的な内容については、改正後の地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律施行令(昭和62年政令第102号。以下「施行令」という)附則第1条の4第2項上記@関係及び附則第1条の5(上記A関係)の規定等により、次のとおりとされたこと。
@ 上記の(1)@関係
ア 住宅地区改良事業(施行令附則第1条の4第2項第1号)
イ 小集落地区等改良事業(施行令附則第1条の4第2項第1号)
ウ 道路事業(施行令附則第1条の4第2項第2号)
エ 街路事業(施行令附則第1条の4第2項第2号)
オ 公共下水道整備事業(施行令附則第1条の4第2項第3号)
A 上記の(1)A関係
ア 住宅新築資金等貸付事業(上記@の住宅地区改良事業及び小集落地区等改良事業に関連して行われるものに限る(施行令附則第1条の5第1号))
イ 農山漁村経営改善資金貸付事業(施行令附則第1条の5第2号)
ウ 営農等相談事業(農林漁業改良普及機関、市町村、農業協同組合等の地域改善対策事業推進関係者を対象として行う営農等特別指導会議及び営農等相談員、府県行政担当職員、専門技術員を構成員として行う営農等相談研究会の開催並びに地域改善対策対象地区の農林漁家を対象として行う営農等相談に関する相談活動に限る(施行令附則第1条の5第3号))
エ 地域改善対策高度化事業(施行令附則第1条の5第4号)
オ 経営改善普及事業(施行令第1条の5第5号)
カ 職業講習事業(施行令附則第1条の5第6号)
キ 受講給付金支給事業(施行令附則第1条の5第6号)
ク 職業指導・職業紹介及び職業相談事業(職業についての相談に関する事業に限る)
 (施行令附則第1条の5第7号)
ケ 高等学校等進学奨励費補助事業(施行令附則第1条の5第8号)
コ 生活相談員設置事業(施行令附則第1条の5第9号)
(3) 地対財特法附則第1条第6項第1号括弧書き及び施行令附則第1条の4第1項の規定等により、上記(1)@の事業については、昨年7月26日までに各事業につき次の措置がなされたものを含むものとされたこと。
事業措置‐措置
住宅地区改良事業‐住宅地区改良法(昭和35年法律第84号)第5条第1項の規定による事業計画の認可
小集落地区等改良事業‐小集落地区等改良事業制度要綱(昭和57年4月5日付け建設省住整発第26号)第7の規定による事業計画の承認
道路事業‐地域改善対策特定事業(特例事業)に係る建設大臣による補助金の交付の決定
街路事業‐地域改善対策特定事業(特例事業)に係る建設大臣による補助金の交付の決定
公共下水道整備事業‐地域改善対策特定事業(特例事業)に係る建設大臣による補助金の交付の決定
(4) 地対財特法附則第1条第7項及び施行令附則第1条の6の規定により、平成14年3月31日において高等学校、高等専門学校、短期大学又は大学に在学し、現に高等学校等進学奨励費補助事業による奨学金の貸与を受けている者に係る高等学校等進学奨励費補助事業については、その者が当該学校の課程を修了し、又は退学するまでの間に限り、地対財特法による国の財政上の特別措置を講ずることとされたこと。
(5) 地対財特法附則第1条第6項の規定により経過措置対象事業とされる経営改善普及事業については、商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律施行令(平成5年政令第218号)第1条第1項第3号に規程する者の設置に要する経費を平成13年度まで国が都道府県に対し補助することができることとされたこと。
(6) 地域改善対策協議会を本年3月31日の存置期限をもって廃止し、これに関連する総務庁組織令(昭和59年政令第181号)の規定について所要の改正を行うとともに、地域改善対策協議会令(昭和62年政令第103号)を廃止したこと。

第3 法の施行に当たっての配慮事項
(1) 物的事業関係省庁においては、地対財特法附則第1条第6項第1号の規定により経過措置対象事業とされる物的事業を迅速、円滑かつ計画的に実施し完了するため、適切な進行管理を行うこととしている。地方公共団体においても、地元調整、用地買収等の環境がより厳しくなることや周辺地域との一体性、公平性が従来にも増して強く求められていることを踏まえ、事業運営の厳格化と執行体制の強化に配慮し、経過措置対象事業とされる物的事業を可能な限り早い時期に完了することを目指し、迅速、円滑かつ計画的な実施に努め、法期限内の確実な完了を図ること。
(2) 個人給付的事業は、今後とも属地かつ属人主義により行うこととし、対象者の資格審査を的確に行うとともに、返還金の償還率の向上を図る等適正かつ公平な運用に努めること。また、閣議決定において、これらの事業については5年間の経過的措置を講じて終了するとされていることを踏まえ、その趣旨を周知徹底するため、事業の実施に当たっては、これらの事業は平成13年度末をもって終了すること、及び高等学校等進学奨励費補助事業を除き貸付等を必要とする者は早期に申出を行うこととするのが望ましいことを事業案内等に記載する等の方策を講じるよう努めること。なお、高等学校等進学奨励費補助事業については、平成1 3 年度末において現に奨学金の貸与を受けている者について経過措置を講ずることとされている旨を併せて周知徹底するとともに、返還の免除に当たっては、その要件の審査を的確に行うよう特に留意すること。
(3) 相談員、指導員等を設置している事業については、閣議決定において平成9年度以降5年間で計画的な削減を完了するとされていることを踏まえ、事業が円滑に終了できるよう努めること。
(4) 同和問題の早期解決を図るためには、幅広い国民的コンセンサスを得ることが重要であり、行政の主体性の確立、同和関係者の自立向上、えせ同和行為の排除及び同和問題についての自由な意見交換のできる環境づくりに引き続き取り組むことが必要である。特に上記(2)のほか、意見具申でも指摘されている具体的な問題点について引き続き厳しく是正するため、行政職員の研修の体系的な実施、著しく均衡を失した低家賃の是正、民間運動団体に対する地方公共団体の補助金等の支出の適正化、公的施設の管理運営の適正化、教育の中立性の確保、地方税の減免措置の一層の適正化、行政の監察・監査等の機能の一層の活用を推進するなど、適正化対策を一層積極的に推進すること。
(5) 地方公共団体が独自に実施している関係施策については、従前から見直しを要請してきているが、平成5年度同和地区実態把握等調査の結果では地方単独事業の見直しについて不十分な状況がみられ、この旨意見具申でも指摘されているところである。もとより、特別対策は永続的に講じられるべき性格のものではなく、事業の迅速な実施によってできる限り早期に目的を達成し一般対策へ移行することが肝要であり、各地方公共団体においては、意見具申で「地方単独事業について更に見直しを行うことが強く望まれる」と指摘されていること及び法が一般対策への円滑な移行のための経過措置を講ずる趣旨であることを十分に踏まえ、より一層厳格な見直しを行うことあわせて、法及び人権擁護施策推進法(平成8年法律第120号)の制定、教育・啓発に関する事業の人権教育・人権啓発の事業への再構成、「人権教育のための国連10年」に係る施策の推進等の国の施策の動向及びその趣旨を踏まえ、同和問題の解決と人権の尊重に向けた今後の行政の取組について、その体制も含めて改めて検討すること。

第4 その他
(1) 改正前と同様であるが、改正後の地対財特法の対象地域は、地域改善対策特別措置法に基づく地域改善対策事業が実施された同法に規定する対象地域に限っており、今後においても、新たに対象地域とされるものはないこと。
(2) 法の施行に伴って地域改善対策特定事業のうちの大半のものが一般対策へ移行することとなり、また、経過措置対象事業とされる15事業についても、平成14年度からは、地対財特法附則第1条第6項本文ただし書及び同条第7項の規定に基づく経過措置を除き、すべて一般対策へ移行することとなるが、意見具申にも指摘されているように、地域の状況や事業の必要性に応じ、今後の施策ニーズには各般の一般対策によって的確に対応していく必要があるということに十分留意すること。 
なお、法の施行に伴って一般対策へ移行することとなる物的事業のうち一部のものについては、一般対策において国の補助率を一部2/3としているが、これは、地域改善対策特定事業から一般対策へ移行する際に激変緩和措置を講じる趣旨からの特段の配慮として行うものであり、従来から一般対策において国の補助率が2/3であったものを除けば、2/3 の補助率が適用されるのは、従来地域改善対策特定事業として実施していた事業からの移行分で、かつ、平成9年度以降の5年間に限られるものであること。



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