HOME > 人権に関する資料 > 宣言・条約・法律



長崎県障害者基本計画


はじめに

 21世紀の長崎県において、障害のある人もない人も共に地域で暮らす共生社会を実現していくことは、障害のある方々やそのご家族、また、関係者のみならず、県民すべての願いです。
 これまで長崎県では、障害者施策推進のための指針として平成7年に「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」、平成9年に「長崎県障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」を策定し、障害のある人の自立と社会参加の促進を目指して施策の推進に取り組んできました。
 この間、住み慣れた地域で暮らしたいという障害のある人の意識の高まりや、利用者が福祉サービスを選択しサービス提供者と契約する「支援費制度」が平成15年度から導入されたことなどにより、今後一層福祉サービスの多様化と質の向上が求められてくることとなります。
 このような状況を踏まえ、これからの長崎県における障害者施策の一層の推進を図るため、「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」、「長崎県障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」に続く障害者計画として、今回新たに「長崎県障害者基本計画」を策定いたしました。
 今回の計画におきましては、障害のある人が住み慣れた地域で安心して生活できる環境を実現するために、地域社会において障害のある人の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去するとともに、施設入居から地域社会での生活への移行を目指すこととし、その実現のために居宅生活支援事業を重点的に推進することとしております。
 今後、市町村や関係の方々と連携・協働しながら、共生社会の実現に取り組んでまいりたいと考えておりますので、県民の皆様の一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
 最後に、計画策定にあたり、貴重なご意見・ご提言をいただきました県民の方々を始め、長崎県障害者施策推進協議会の委員の皆様に深く感謝申しあげます。

 平成15年6月

長崎県知事 金子 源二郎


目次

序章
1 計画策定の趣旨
2 計画の性格
3 計画の期間

第1章 現状と課題
1 長崎県における障害者の状況
2 これまでの障害者施策の状況
3 障害者を取り巻く環境の変化と今後の課題
(1)障害の重度化、重複化及び障害のある人の増加、高齢化の傾向
(2)社会全体の意識の変化
(3)措置制度から支援費制度への移行
(4)在宅福祉サービスへの期待の高まり
(5)市町村の役割の重要性

第2章 この計画でめざすこと
1 計画の基本的な考え方
2 計画の推進

第3章 重点的な施策の目標
(1)地域での自立生活を支援するための居宅生活支援サービスの充実と相談支援体制の整備
(2)生活の質の向上と自己実現の支援
(3)精神障害のある人に対する地域生活支援の整備

第4章 分野別施策の基本的方向
1 啓発・広報
(1)啓発・広報活動の推進
(2)福祉教育等の推進
(3)ボランティア活動等の推進
2 生活支援
(1)利用者本位の生活支援体制の整備
(2)居宅生活支援サービス等の充実
(3)経済的自立の支援
(4)施設サービスの方向
(5)社会参加促進と生活の質の向上
(6)福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援
(7)サービスの質の向上
(8)専門職種の養成・確保
3 生活環境
(1)住宅、建築物のバリアフリー化の推進
(2)公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進
(3)安全な交通の確保
(4)防災、防犯対策の推進
4 教育・養成
(1)療育体制等の整備
(2)障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた支援
(3)障害のある子どもの社会的・職業的自立の促進
(4)施設のバリアフリー化の促進
5 雇用・就業
(1)障害のある人の雇用の場の拡大
(2)職業訓練の推進
6 保健・医療
(1)障害の原因となる疾病等の予防・治療
(2)適切な保健・医療サービスの提供
(3)精神保健・医療施策の推進
(4)人材の育成・確保と研修体制の確立
7 情報・コミュニケーション
8 国際交流

(附表1)数値目標一覧
(附表2)障害福祉保健分野、圏域別数値目標一覧
用語解説



序章
1 計画策定の趣旨
 長崎県では、平成7年3月に「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」(目標年次平成16年度)を策定し、「障害者の理解の推進」「福祉」「保健・医療」「教育」「雇用・就業」「生活環境」「スポーツ・レクリエーション・文化活動」の7分野において、障害者施策の総合的な推進に取り組んできました。
 また、国における「障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年戦略」(計画期間:平成8〜14年度)の策定や障害保健福祉圏域の設定に対応するため、「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」の重点施策実施計画として平成9年3月に「長崎県障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」を策定し、今日に至っています。
 この間、社会福祉基礎構造改革が進められ、介護保険制度の開始をはじめ、社会福祉事業、社会福祉法人、措置制度など社会福祉の共通基盤について、今後増大・多様化が見込まれる国民の福祉への要求に対応するための大きな改正が行われました。特に、これまで障害者福祉施策の根幹をなしていた措置制度については、障害者自らがサービスを選択し、契約によって利用する支援費制度に改められ、平成15年4月から実施に移されました。
 長崎県では、このような制度改革やこれまでの取り組みの成果を踏まえ、「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」の理念を継承するとともに、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現をめざして、障害者施策を推進するため計画を策定するものです。

2 計画の性格
 新しい「長崎県障害者基本計画」は、「長崎県障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」の計画期間が平成14年度をもって終了したこと、及び国において平成14年12月に新たな「障害者基本計画」が策定され今後10年間の進むべき方向が示されたことを受けて、これまでの計画である「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」と「長崎県障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」の双方を受け継ぎ、引き続き平成15年度からの障害者施策の着実な進展を図るための計画です。
 この計画は、障害者基本法第7条の2第2項に規定する「都道府県障害者計画」として、また「長崎県長期総合計画」及び「長崎県福祉保健総合計画」を補完する個別計画として、長崎県が今後進める障害者施策の指針となります。

3 計画の期間
 この計画は、平成15年度から20年度までの6か年間を対象にしています。
 なお、現在進みつつある市町村合併など社会情勢の変化に対応するために、障害保健福祉圏域の見直しを含め、計画内容についても必要に応じて見直しを行います。

第1章 現状と課題
1 長崎県における障害者の状況
 身体障害者手帳を所持している人(身体障害のある人)は、平成15年3月31日現在、71,012人となっており、前回の障害者計画の策定年次である平成7年からの8年間で、9,383人(15.2%)増加しています。
 年齢構成をみると、65歳以上の人の占める割合は平成15年の時点で65.8%となっています。平成7年からの8年間では11,909人、34.2%の増加であり、高齢化が進んでいることがうかがえます。
 また、障害の程度では、重度の人の占める割合が平成7年の41.7%に対し、平成15年には43.7%となっており、障害の重度化の傾向が見られます。
 なお、施設に入所している人は839人(1.2%)です。
 療育手帳を所持している人(知的障害のある人)は、平成15年3月31日現在、10,662人となっており、平成7年からの8年間で、2,162人(25.4%)増加しています。
 年齢構成をみると、65歳以上の人の占める割合は平成15年の時点で7.1%となっています。集計可能な平成10年からの5年間では252人、49.7%の増加となっています。
 また、障害の程度では、重度の人の占める割合は平成7年の48.5%に対し、平成15年は47.0%となっており、ほぼ横ばいの状況です。
 なお、施設に入所している人は2,258人(21.2%)です。
 精神障害のある人は、医療機関の利用状況からみると、平成14年6月30日現在、入院している人が7,815人、通院している人が12,076人の合計19,891人となっており、平成7年からの7年間で、7,062人(55.0%)増加しています。
 入院している人は平成7年の8,210人から平成14年の7,815人と減少傾向にあるのに対し、通院している人は4,619人から12,076人と大きく増加しています。
 なお、10年以上入院している人は2,435人(入院の31.2%)となっています。

2 これまでの障害者施策の状況
 長崎県では、平成7年3月に障害者施策の基本的指針として「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」(目標年次平成16年度)を策定し、具体的な事業進捗を図るための重点施策実施計画として「長崎障害者プラン〜ノーマライゼーション7か年計画」を平成9年3月に策定して障害者施策を進めてきました。
 この間、本土地区における施設整備については障害者プランの目標値に近い整備が進んでいますが、離島地区においては全般的に整備が遅れている状況にあります。
 居宅生活支援関係の事業については、デイサービスショートステイグループホーム等については目標値に近い整備が進んでいますが、ホームヘルプサービスや生活支援事業などについては進捗が十分とは言えません。
 特に離島地区における在宅サービスの整備は、在宅サービス提供の拠点となる入所・通所施設の整備が進んでいないことから、遅れています。
 障害種別でみると、これまで保健医療施策を中心としてきた精神保健福祉の分野については全般的に整備が遅れています。

長崎県障害者プランの進捗状況(H7〜H14)
施設項目 目標値 H14末実績 内訳(進捗率:%)
全体 本土 離島
グループホーム 人数 460 503 503(109) 482(121) 21( 34)
知的障害者 334 420 420(126) 404(137) 16( 40)
精神障害者 126 83 83( 66) 78( 75) 5( 23)
福祉ホーム 人数 165 45 45( 27) 45( 38) 0( 0)
身体障害者 55 5 5( 9) 5( 10) 0( 0)
精神障害者 110 40 40( 36) 40( 57) 0( 0)
授産施設 人数 1,380 1,031 1,031( 75) 931( 88) 100( 31)
身体障害者(通所) 310 230 230( 74) 210( 95) 20( 22)
知的障害者(通所) 710 601 601( 85) 541( 97) 60( 40)
精神障害者(入所) 120 40 40( 33) 40( 33) 0( -)
精神障害者(通所) 250 160 160( 67) 140( 88) 20( 25)
心身障害児者通園事業 箇所 17 17 17(100) 14(108) 3( 75)
生活訓練施設(精神障害者) 人数 220 160 160( 73) 140(100) 20( 25)
福祉工場 人数 30 20 20( 67) 20( 67) 0( -)
社会適応訓練事業 人数 148 165 165(111) 137(118) 28( 88)
小規模作業所 箇所 43 33 33( 77) 29( 97) 4( 31)
デイケア施設 箇所 19 16 16( 84) 13( 87) 3( 75)
障害児者地域療育等支援事業 箇所 12 7 7( 58) 7( 88) 0( 0)
市町村障害者生活支援事業 箇所 12 6 6( 50) 5( 63) 1( 25)
精神障害者地域生活支援事業 箇所 13 5 5( 38) 5( 56) 0( 0)
ホームヘルパー 人数 775 466 466( 60) 451( 67) 15( 15)
デイサービスセンター 箇所 18 15 15( 83) 14(100) 1( 25)
身体障害者 13 10 10( 77) 9(100) 1( 25)
知的障害者 5 5 5(100) 5(100) 0( -)
ショートステイ・ベッド 床数 111 148 148(133) 136(146) 12( 67)
身体障害者・知的障害者 97 139 139(143) 127(161) 12( 67)
精神障害者 14 9 9( 64) 9( 64) 0( -)
身体障害者療護施設 人数 430 380 380( 88) 380(100) 0( 0)
知的障害者更正施設(入所・通所) 人数 2,108 2,058 2,058( 98) 1,908( 99) 150( 83)

3 障害者を取り巻く環境の変化と今後の課題
(1)障害の重度化、重複化及び障害のある人の増加、高齢化の傾向
 障害の重度化、重複化や障害のある人の増加、高齢化が進行する中、この状況に対応できる各種援護施策や介護施策など、障害のある人が安心して生活できる施策の充実が求められています。

(2)社会全体の意識の変化
 障害のある人の自立と社会経済活動への主体的な参加意識が強まる一方で、社会全体にあっても障害のある人が地域の中で生活することは自然であたりまえのことというノーマライゼーションの考え方が徐々に浸透しつつあり、さらには障害のある人自身も社会の構成員としての役割を担うことがより一層求められてきています。

(3)措置制度から支援費制度への移行
 平成15年度から障害のある人に対する福祉サービスの提供は、行政が決定する措置制度から、利用者自身がサービスを選択し契約して利用する利用者本位の制度である支援費制度になりました。
 こうした制度の移行に対応し、福祉サービスの利用者と提供者との対等な関係を確保するため、利用者の多様な選択肢の確保、情報提供、さらに権利擁護や苦情解決の体制などの施策の充実が求められています。

(4)在宅福祉サービスへの期待の高まり
 ノーマライゼーションの理念の浸透により、地域において生活をしたいという障害のある人が増え、それに対応できる在宅福祉サービスの充実と、住まいや働く場の確保が求められています。
 また、これにともない、障害のある人が安心して地域生活を送るためには、必要な情報を提供するとともに一人ひとりに適切なサービスを総合的に調整・提供する総合相談窓口の充実が求められています。

(5)市町村の役割の重要性
 障害のある人に対する保健・福祉サービス、とりわけ地域生活を支えるサービスについては、実施主体である市町村の役割が極めて重要になっています。
 また、障害のある人への総合的な保健・福祉サービスの提供のために、すべての市町村が地域の実情にあった独自の「障害者計画」を策定し、計画的な施策充実に取り組むことが求められています。

第2章 この計画でめざすこと
1 計画の基本的な考え方
 長崎県においては、平成12年度に、「長崎県長期総合計画」を策定し、「豊かな地域力を活かし、自立・共生する長崎県づくり」の基本理念に基づき、各種施策を推進することとしています。
 また、この「長崎県長期総合計画」における保健・医療・福祉分野の施策の基本的な考え方や方向性を示し、本県の保健・医療・福祉施策を総合的・体系的に進めるための指針として、平成13年度に「長崎県福祉保健総合計画」を策定し、「共に生き、共に育む社会を実現する長崎県づくり」を目指すこととしています。
 これまで、障害者保健福祉の分野においては、平成7年に策定した「長崎県障害者福祉に関する新長期行動計画」及び平成9年に策定した「長崎県障害者プラン」において、ライフサイクルの全ての段階において全人間的復権を目指す「リハビリテーション」の理念と、障害のある人もない人も、同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念のもとに、「完全参加と平等」を実現することを基本目標として施策の推進を図ってきました。
 この「長崎県障害者基本計画」においては、「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」の理念を継承しつつ、障害の有無にかかわらず、誰もが住み慣れた地域で自立した生活を送り、共に地域を支え合い、豊かなふれあいを通じて、健やかに安心して暮らし、社会を構成する一員として、あらゆる社会活動に参加することができる共生社会の実現を目指すことを基本理念として、住み慣れた地域での自立生活を実現するための施策を重点的に推進することとしています。
 また、そのための具体的方向として、地域社会において障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去すると共に、生活の場を施設から地域社会へ移行することを目指し、その前提としての居宅生活支援事業を推進します。

2 計画の推進
 この計画を総合的に推進するために、障害者施策推進本部を中心として全庁的な取り組みを行うとともに、「長崎県障害者施策推進協議会」において計画の進捗状況を報告し、そこでの意見を踏まえて、計画の効果的な推進に努めます。
 地域での取り組みを進めるために、障害保健福祉圏域単位で市町村、障害者関係団体、事業者・施設等で構成する「圏域調整会議」を開催し、県内各地域での事業展開に努めます。
 県民や国、市町村及び民間団体と十分な連携協働を図るとともに、障害のある人の保健・福祉サービスの主な実施主体である市町村の役割の重要性を踏まえ、市町村が主体的に策定する「障害者計画」及び計画に基づいた施策に対する支援をしていきます。
 現在進みつつある市町村合併など社会情勢の変化に対応するために、障害者保健福祉圏域の見直しを含め、計画内容についても必要に応じて見直しを行います。

第3章 重点的な施策の目標
 障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」の実現を図るために、各分野における主要な事業について数値目標を設けると共に、本計画の計画期間における課題として、次の3つの施策に重点的に取り組んでいきます。

(1)地域での自立生活を支援するための居宅生活支援サービスの充実と相談支援体制の整備

 「支援費制度」の下で、これまで行政が決定していたサービスを、障害のある人自らが選択・利用することになりますが、この制度が障害のある人にとって地域での自立生活を支援する有効な制度として機能するためには、これまで以上にきめ細かな相談支援体制の充実と、提供されるサービスの質的充実や量的拡大が求められます。
 障害者ケアマネジメントの手法を取り入れた身近な相談支援体制の構築を推進します。
 住み慣れた地域での自立生活を支援するために、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ等居宅生活支援サービス基盤の拡大を図ります。
 地域における生活の場、活動の場として、グループホーム、通所型施設の整備を進めます。

(2)生活の質の向上と自己実現の支援

 社会参加を通じた生活の質の向上と自己実現を支援するために、基本となる雇用・就業を促進するとともに、社会参加を阻むソフト・ハード両面のバリアの除去、及び情報・コミュニケーション支援や生活を豊かにするスポーツ・文化活動を支援する社会参加促進施策を推進します。
 障害のある人の常用雇用を促すために、雇用の前に一定期間実務訓練を行う職場適応訓練を実施します。
 「視聴覚障害者情報提供施設」を整備し、視聴覚障害のある人の情報発信拠点として、その機能を充実強化します。
 ITを活用した福祉サービス情報提供の促進と、支援費制度によるサービスの選択が円滑に行われるよう、サービス提供事業者情報のデータベース化とネットワーク化を行います。

(3)精神障害のある人に対する地域生活支援の整備

 精神障害者施設は、これまで保健医療施策を中心に行われてきましたが、精神障害のある人ができる限り地域で生活できるようにするための施策については、他の障害者施策に比べ全体的に遅れている状況にあります。
 このため、社会復帰施設や居宅生活支援事業の充実を図り、地域における受け皿との繋がりがないなどの理由で入院を余儀なくされている精神障害のある人について、社会的入院の解消及び社会的自立の促進を図るための支援に取り組んでいきます。
 精神疾患、精神障害のある人に対する正しい理解の促進を図ります。
 ホームヘルプ等の在宅サービスの充実のほか、地域生活支援センター生活訓練施設及び通所授産施設の整備など地域生活を支える基幹的な事業の一層の推進を図ります。
 社会的入院解消のための退院促進事業に取り組みます。

第4章 分野別施策の基本的方向
1 啓発・広報

 障害のある人もない人も、相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するためには、身近な地域での日常的なふれあいを通して互いの理解を深めることはもとより、障害のある人に対する一人ひとりの理解と認識を深めることが重要です。とりわけ、精神障害については他の障害に比べて社会の理解が遅れていることから、重点的な取り組みが必要です。

(1)啓発・広報活動の推進

 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌等のマスメディアの協力を得て、県民の理解促進のための広報活動を計画的かつ効果的に実施します。
 ホームページを活用した普及啓発の在り方について検討します。
 「障害者の日」(12月9日)及び「障害者週間」(12月3日から12月9日)を通じて障害のある人についての理解を促進するためのポスター、作文集を作成、配布し、イベントを開催するなど、障害者団体と連携して県民に対する広報活動を展開します。
 精神障害のある人の自立と社会参加の促進、精神障害に関する正しい知識の普及と理解を促すため、「長崎県精神保健福祉大会」(こころのふれあいフェスティバル)を開催します。
 「障害者雇用促進月間」(9月)に各種広報媒体を活用した啓発を行います。また併せて、障害のある人の雇用と職業の安定を目的とするイベントを実施し、その中で「障害者雇用優良事業所・優秀勤労障害者表彰」を行い、県民とりわけ事業主に対して理解を求めていきます。

(2)福祉教育等の推進

 障害のある人への理解を深めるために、盲・ろう・養護学校と幼稚園、小中学校、高等学校及び地域社会との交流を推進します。
 福祉思想の醸成を図るために、教材として福祉読本「ちきゅうのなかま」及び「指導手引書」を作成して県内小学校へ配布し、福祉教育を推進します。

(3)ボランティア活動等の推進

 ボランティア活動に関する情報提供、相談助言等を行うため、「県民ボランティア活動支援センター」を運営するとともに、地域における出前講座や地域のボランティア団体と連携した地域シンポジウムを開催します。
 県社会福祉協議会や市町村社会福祉協議会が行うボランティア振興事業に対して補助を行います。
 情報提供やコーディネート等を行う「体験活動・ボランティア活動支援センター」を設置し、地域と学校の連携による青少年の奉仕活動・体験活動の推進を図ります。
 住民相互の助け合いや交流の輪を広げ、共に支え合う地域社会づくりを行うために「ふれあいのまちづくり事業」を推進します。

2 生活支援

 障害のある人が住み慣れた地域で自立した生活を送るためには、障害の特性やニーズに応じた福祉サービスが適切に提供される必要があります。
 このため、必要な情報を提供するとともに適切なサービスを総合的に調整提供する相談支援体制の充実を図ることが重要です。
 障害のある人が、障害の程度にかかわらず地域で生活できるようにするためには、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイなどの居宅生活支援サービスが必要不可欠であり、これらのサービスを質・量ともに一層充実させる必要があります。
 障害のある人の地域での生活を実現するために、施設を在宅支援の拠点として地域の重要な資源と位置付け活用していきます。
 入所施設から地域生活への移行を促進するため、入所施設は真に必要なものに限定するとともに、グループホームや通所授産施設など地域における生活や活動の場となる施設については、さらに整備を進めていく必要があります。

(1)利用者本位の生活支援体制の整備

 障害者ケアマネジメント実施体制の整備と従事者の養成を図り、総合的な相談支援が可能な相談体制を構築します。
 また、障害のある人自身が相談支援をすることで、利用者と支援者が共感し支え合うことのできるピアカウンセリングを充実させます。
 複雑・多様化、専門化する相談内容に適切かつ総合的に対応するため、各障害や児童・女性に関する問題の相談を受ける県の地方機関の組織づくりを検討します。
 市町村が地域の社会資源を活用し、利用者に身近な相談体制を構築できるよう支援・誘導します。また、利用者に最も身近な障害者相談員の一層の活用を図ります。
 ITを活用した福祉サービス情報提供の促進とメールによる相談支援体制の構築を図ります。また、支援費制度によるサービスの選択が円滑に行われるよう、サービス提供事業者情報のデータベース化とネットワーク化を行います。
 判断能力が十分でないため、適切な福祉サービスの利用を受けることができない知的障害や精神障害などのある人のために、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理等の代行を行う制度を充実させ、地域で自立した生活が送れるよう支援します。
 NPOやボランティア団体からアイデアを募集し、公益性が高く県と協働して実施することで事業効果が発揮できると認められるものについて、「ながさきパートナーシップ創造事業」を活用し協働事業を行います。

(2)居宅生活支援サービス等の充実

 障害特性を理解したホームヘルパーを養成するための研修と提供事業者の拡大により、障害者ホームヘルプサービスの充実を図ります。
 障害のある人に対するデイサービス・ショートステイの提供事業者の拡大を図ります。
 補装具日常生活用具等の給付や貸し出しを行い、障害の軽減や日常生活の利便性の向上を図ります。
 精神障害で入院している人で、条件が整えば退院可能とされる人の退院・社会復帰を促進するために必要な福祉ホーム及びグループホーム、生活支援サービスを整備します。
 在宅の重症難病患者やその家族の負担軽減を図るために、保健所から保健師等を派遣して訪問相談を行います。
 重症難病患者への医療を確保するために、難病医療専門員による療養相談や入(転)院、往診医の紹介を行います。

(3)経済的自立の支援

 職場適応訓練や障害者就業・生活支援センターの活用により雇用・就業を促進し、地域で経済的に自立した生活を営むことができるよう総合的に支援します。
 障害年金など個人の資産については、障害のある人が成年後見制度権利擁護事業を活用して適切に管理できるよう支援します。

(4)施設サービスの方向

 施設入所者の生活の質の向上を図る視点から、施設の一層の小規模化、個室化を図ります。
 入所施設については、地域の実情を踏まえて真に必要なものに限定して整備します。ただし整備の遅れている離島地区については、平成9年3月に策定した「長崎県障害者プラン」の整備目標の未達成数の範囲内で、引き続き整備を推進します。
 グループホームや通所授産施設など、地域で自立した生活を送るために必要な施設については、その整備を推進します。また、障害種別を越えた施設の相互利用を進めます。
 障害者施設は、各種在宅サービスを提供する在宅支援の拠点として地域の重要な資源と位置付け、その活用を図ります。
 施設職員の資質向上を図るための研修を、引き続き実施します。

(5)社会参加促進と生活の質の向上

 障害のある人の社会参加促進のために、「障害者社会参加推進センター」の機能を強化するとともに、障害の種別を越えた活動を充実させます。
 「障害者スポーツ協会」の設立を市町村とともに支援し、「県障害者スポーツ大会」をはじめとする各種スポーツ大会やスポーツ教室を開催するとともに、指導者養成の充実を図り、誰でも気軽にスポーツが楽しめるネットワークの構築に向けて協会を育成します。
 情報伝達支援の必要な視聴覚障害のある人の情報受発信拠点として、「視聴覚障害者情報提供施設」を整備し、視聴覚障害のある人の情報ネットワークを構築します。
 「障害者芸術祭」など、障害のある人とない人がともに参加する文化活動を支援します。
 手話通訳要約筆記点訳音声奉仕員の養成・派遣や、身体障害者補助犬の育成・貸与を推進します。
 公立小・中学校及び盲・ろう・養護学校の児童・生徒に優れた舞台芸術を鑑賞する機会を提供するため、県青少年劇場を開催します。
 県が主催する文化芸術公演等の実施にあたっては、障害の有無・程度に関わりなく誰でも参加できるよう努めるとともに、福祉施設等入所者の招待を積極的に行います。また、障害のある人に対する入場料の減免を進めます。
 観光地等における字幕・音声ガイドによる案内サービスや、各種催しにおける利用料・入場料減免など、障害のある人が利用・参加しやすい配慮を行います。

(6)福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援

 県工業技術センターにおける福祉用具の研究・開発を進めます。
 高い事業可能性が見込まれる中小企業の新商品開発等に係る経費の一部を助成します。
 福祉用具に関する情報提供と相談窓口の拡充を図ります。

(7)サービスの質の向上

 利用者の意向が十分反映されたサービスを提供するため、利用者がサービスに関する苦情を自由に申し出ることのできる環境を整え、苦情を適正に解決するための仕組みを整備します。
 質の高いサービスを確保する観点から「障害者・児施設サービス共通評価基準」等を活用した自己評価を更に進めるとともに、第三者評価機関等による評価の実施を検討します。

(8)専門職種の養成・確保

 障害の特性に対応できるホームヘルパーを養成するための研修を行います。
 相談支援を担う専門職として、障害者ケアマネジメント従事者の養成研修を行います。
 難病患者の居宅生活を支援するために、難病患者を介護する際の知識と技能を修得するための研修を行います。
 点訳、音訳、手話通訳、要約筆記奉仕員などの専門的技能を有する者の養成・確保を図ります。

3 生活環境

 障害のある人が自立して生活し、積極的に社会参加していく上で、まち全体を障害のある人にとって利用しやすいものへと変えていくことは非常に重要なことです。
 まち全体として幼児から老人まで安心して暮らせるまちづくりが行われるよう、また障害のある人自身の参画を得てまちづくりがおこなわれるよう、県、市町村、事業者、県民が一体となり、総合的な施策を推進する必要があります。
 障害のある人が地域で安心して生活が送れるよう、障害のある人に配慮した防災・防犯等の安全対策が重要です。

(1)住宅、建築物のバリアフリー化の推進

 すべての人にやさしい福祉のまちづくりを目指す「長崎県福祉のまちづくり条例」の普及啓発に努め、福祉のまちづくりの取り組み意識の高揚を推進します。
 また、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建造物の建築の促進に関する法律」(通称「ハートビル法」)が平成15年4月に改正施行されたことに伴い、「長崎県福祉のまちづくり条例」及び整備基準の見直しを行います。
 障害のある人などの社会参加を支援するため、市町村と連携して、公共の建物や道路などのバリアフリー化を積極的に推進します。また、旅館、ホテル、飲食業など民間の特定生活関連施設をバリアフリー化することにより、やさしい地域社会づくりを推進します。
 在宅の障害のある人の日常生活を容易にするとともに、介護者の負担を軽減するための住宅のバリアフリー化等を支援します。
 障害のある人や高齢者の利用に配慮した長寿社会対応仕様の公共賃貸住宅の供給を推進します。
 障害のある人などを優先入居の対象とする公共賃貸住宅の供給を推進します。
 福祉施設を併設した公共住宅団地の推進と、公営住宅のグループホームへの活用を推進します。

(2)公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進

 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称「交通バリアフリー法」)及び「旅客施設や車両等のバリアフリー化に関するガイドライン」等により、鉄軌道駅及びバスターミナル並びに鉄軌道車両、バス車両及び旅客船のバリアフリー化を推進します。
 障害のある人などすべての人が公共交通機関を円滑に利用できるよう、バリアフリー情報の提供を推進するとともに、交通バリアフリーに関する啓発活動の実施により、県民の理解を深めます。
 障害物のない安全な歩行空間を確保するために、段差解消や点字ブロックの設置など既存歩道の改修や電線類の地中化を進めます。
 乗降場までの屋根の設置や段差や仕切の無いバリアフリーに対応した旅客船ターミナルを整備します。また、市町村が整備するターミナルについても同様の働きかけを行います。
 各空港に「空港バリアフリー協議会」を設置しバリアフリー化を推進します。

(3)安全な交通の確保

 障害のある人たちの安全な交通を確保するために、音響式信号機や待ち時間表示信号機等のバリアフリー対応型信号機等の整備を進めます。
 交通事故の多発している住宅地区や商業地区を中心に、交通信号機の新設や改良、道路標識の大型化や灯火化、通過車両の進入や速度の抑制を行う「あんしん歩行エリア」の形成を進めます。
 自動車と歩行者の通行を時間的に分離する歩車分離式信号や、携帯端末を活用した安全な通行に必要な情報の提供、歩行者青時間の延長を行うPICS(歩行者等支援システム)の整備を推進するとともに、障害特性に配慮した見やすく分かりやすい標識・標示の整備(高輝度化)を図ります。
 歩道上における障害のある人たちの安全な交通を確保するために、違法駐車車両の排除に向けた啓発活動を推進します。

(4)防災、防犯対策の推進

 高齢者・障害者等の災害弱者に対して、防災意識の普及、地震等の情報提供、避難誘導、救護対策等のため、平常時から地域において災害弱者の安全対策を推進します。
 自力避難の困難な障害のある人など災害弱者に関連した施設が立地する土砂災害危険箇所等において、治山、砂防、地すべり対策及び急傾斜地崩壊対策事業を協力に推しんんします。
 地域住民とボランティア組織等との協力による地域安全活動の強化と地域・職域の防犯ネットワークを確立します。
 福祉施設と障害のある人が参加したファックスネットワークの構築を推進します。
 手話のできる警察官等の育成と交番・駐在所等への配置を推進します。
 緊急時の110番通報を充実するために、「ファックス110番」の周知に努めるとともに、「メール110番」の整備を促進します。

4 教育・養成

 ノーマライゼーションの理念のもとに、障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもたちが一人の人間として人権を尊重され、地域や学校の中で共に学び、共に支え合う教育を充実させていくことが重要です。
 また、障害のある子どもたちが、地域社会の中で自立した豊かな生活を送るための基盤となる「生きる力」の育成を目指し、障害のある子どもの視点に立ったよりよい教育環境の整備が必要です。
 障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じたきめ細かな支援を行うためには、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した計画的な教育を行うことが必要です。
 併せて、学習障害注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症など特別な教育的ニーズのある子どもについて適切に対応することが求められています。
 障害のある子どもの社会的・職業的自立を促進するために、個別の支援計画の策定など、子ども一人ひとりのニーズに応じた支援体制の構築が求められています。

(1)療育体制等の整備

 学齢前の障害のある子どもの保育所入所にあたっては必要な配慮を行い、共にふれあう保育を推進します。
 障害のある子どもの在籍する保育所・幼稚園への補助の充実に努めます。
 放課後児童クラブにおける障害のある子どもの受け入れを促進するために、啓発活動に努め、条件整備のための助成を行います。
 地域における療育の場として障害児通園事業を整備するとともに、「県立こども医療福祉センター」による支援を行います。

(2)障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた支援

@教育相談体制の充実
 乳幼児期から学校卒業後にわたって、教育、福祉、保健、医療等関係機関が一体となって、障害のある子ども及び保護者に対する一貫した相談・支援を行う体制を整備します。
 障害のある子どもや保護者のニーズを把握し、より望ましい就学ができるように、就学指導地方研究協議会や巡回就学相談を実施し、各市町村教育委員会や保護者に就学についての総合的な情報を提供するとともに、就学相談のためのリーフレット等を作成・配布します。
A特別支援教育の推進
 学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症などの特別な教育的配慮を必要とする児童生徒を含めて、障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握して必要な支援を行う特別支援教育の体制を構築します。
 小・中学校に在籍する特別な配慮を要する児童生徒や障害のある児童生徒を学校全体で支援する体制を整え、必要に応じて特殊学級等で障害に応じた教育を行います。
 盲・ろう・養護学校とすべての小中学校に、特別支援教育コーディネーターを指名し、福祉、保健、医療等関係機関と連携して、地域全体で障害のある子どもを支える体制の構築を目指します。
 障害の重度化や多様化を踏まえ、盲・ろう・養護学校が障害種別にとらわれない総合的な学校として、様々な障害のある子どもに対してより専門的できめ細かい教育を行うとともに、地域における特別支援教育のセンター的役割を担い、地域の障害のある子どもの教育を支援したり、障害のある人の相談に積極的に応じます。
B教職員の専門性の向上と理解啓発の推進
 障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じたより専門的な指導を行うため、各種教職員研修等を充実して指導力の向上を目指すとともに、特殊教育免許状保有率を高めます。また、盲・ろう・養護学校と小中学校との研修交流人事を拡充します。
 すべての教職員が、学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症等を含めた障害のある児童生徒とその教育についての理解を深め、より適切な対応ができるように、理解啓発のためのリーフレット等を作成・配布します。
 障害のある子どもも障害のない子どもも、お互いを理解・尊重し、地域や学校で共に支え合って生活しようとする豊かな人間性を育むため、幼稚園や各学校等における交流教育を一層充実するとともに、幼稚園、小・中学校、高等学校、盲・ろう・養護学校及び地域社会等の相互の交流活動を積極的に推進します。
C重度・重複障害のある子どもの教育の充実
 障害が重度・重複しており、学校に通学して教育を受けることができない子どものために、訪問教育の実施回数を増やすとともに、小集団学習の工夫や地域の小・中学校との交流を充実するなどして、内容・方法の一層の充実を図ります。
 医療的ケアの必要な児童生徒が、より安全に学校生活を送れるよう、また、保護者が安心して子どもを学校に通わせることができるよう、看護師の配置や訪問看護ステーション制度の活用を検討したり、医療、福祉等関係機関との連携を深めます。

(3)障害のある子どもの社会的・職業的自立の促進

@後期中等教育の充実
 養護学校高等部への進学者の増加に対応するため、地域の特性やニーズ等を考慮しながら、高等部の新設や既存の高等部の拡充を図ります。
 多様な進路や生徒のニーズに応じて、職業教育の充実や普通科設置等について検討を行い、高等部・高等部専攻科の教育を充実します。
A個別の支援計画の策定
 障害のある子どもを生涯にわたって支援する観点から、一人ひとりのニーズを把握して、関係者・機関の連携による適切な支援を効果的に行うために、教育上の指導や支援の具体的な内容・方法をまとめた「個別に支援計画」の策定、実施、評価を行う体制を構築します。
B生涯にわたる学習機会の充実
 生涯にわたって学ぶ機会を充実するために、各種講座や教室等に障害のある人が参加しやすいよう配慮します。

(4)施設のバリアフリー化の促進

 小中学校、高等学校、盲、ろう、養護学校のバリアフリー化を進めます。
 県立大学及び県立長崎シーボルト大学のバリアフリー化を進めます。

5 雇用・就業

 障害のある人が地域で生活する上で、活動の場、働く場を充実させることは、生活の質の向上と自己実現のために大きな役割を果たします。
 障害のある人の地域での生活を安定したものとするために、事業主等の理解を促進するとともに、助成金等さまざまな支援施策の活用により、障害のある人の働く場を確保していく必要があります。
 障害のある人の就労を通じた自立を促進するため、職業訓練、職業相談、職業紹介等の就労支援の一層の推進を図る必要があります。

(1)障害のある人の雇用の場の拡大

 「障害者雇用促進月間」(9月)に各種広報媒体を活用した啓発を行います。また併せて、障害のある人の雇用と職業の安定を目的とするイベントを実施し、その中で「障害者雇用優良事業所・優秀勤労障害者表彰」を行い、県民とりわけ事業主に対して理解を求めていきます。
 障害者就職件数及び雇用障害者数の拡大のため、トライアル雇用、職場適応援助者(ジョブコーチ)、各種助成金等の活用、職業訓練などを行う関係機関との連携を強化します。
 事業主との情報交換の場を提供するとともに企業への積極的雇用を促すため、関係機関と協力して企業説明会、面接会を開催します。
 第3セクター方式による「重度障害者多数雇用事業所」を支援し、重度障害のある人の雇用の確保に努めます。
 「障害者就業・生活支援センター」において、福祉的就労から企業での雇用への移行を進めるため、障害のある人の雇用において発生する問題に対する就業面と生活面での支援を一体的に行います。
 常用雇用を促すために、雇用の前に一定期間実務訓練を行う職場適応訓練を実施します。
 盲・ろう・養護学校卒業予定者の事業所見学会を行います。
 盲・ろう・養護学校における職業教育を充実するとともに、関係機関との連携により進路指導を充実します。
 県職員採用試験において、点字・拡大文字による試験を実施するとともに、身体障害のある人を対象とした県職員採用選考試験を別途実施します。
 教員採用選考試験について、平成15年度から障害のある人を対象とした別途採用枠を設けます。
 障害のある人によるNPO等の設立・運営について、「県民ボランティア活動支援センター」による相談助言を行うとともに、団体の運営に必要な税、会計、法務、労務などの専門的相談については、専門家を無料で派遣するNPO育成専門相談事業を実施します。
 授産施設の製品の質の向上を図るための方策を検討します。また、県社会福祉協議会授産施設協議会が運営し、県内の授産施設や小規模作業所等が作成した製品を販売する「街かどのふれあいバザール」支援の一貫として、授産施設等への県発注制度について検討します。
 障害者雇用等の社会的意義を踏まえ、県の行う契約の原則である競争性、経済性、公平性等の確保に留意しつつ、県発注における障害者多数雇用事業所等及び障害者雇用率達成状況への配慮の方法について検討します。

(2)職業訓練の推進

 知的障害のある人の職業意識・意欲と職業基礎習慣の強化を図るために、「長崎能力開発センター」における委託訓練として麺製造科、畜産科において、能力開発訓練を行います。
 「障害者職業センター」による職業リハビリテーション利用者に対し、交通費助成等を行います。
 身体障害のある人の就労及び雇用促進を図るために、企業が即戦力として求めるIT情報技術専門職の養成を民間教育訓練機関等へ委託して行います。

6 保健・医療

 日頃の生活習慣が、疾病予防、健康増進の大きな要素となっていることから、「健康ながさき21」計画を推進し、日常生活のなかでの総合的な健康づくりを進めていく必要があります。
 また、出産から新生児、幼児に至る過程の中で、各種検査による早期発見、早期治療・療育が障害の予防や軽減につながることから、母子保健施策の充実が求められています。
 障害や疾病を軽減したり障害のある人や患者を心身ともに支えるうえで、医療やリハビリテーション医療の果たす役割は非常に大きなものがあります。
 特に原因が不明で治療方法が確立されていないいわゆる難病の患者や、今まであまり対策がとられてこなかった高次脳機能障害のある人については、医療と福祉の両面からサポートをする必要があり、施策の充実が求められています。
 精神障害のある人の人権に配慮した適正な医療を確保することで、精神疾患の早期発見、早期治療による予防や障害の重度化の防止を図っていく必要があります。
 また、精神障害のある人やその家族の地域生活をサポートするために、地域における相談支援、社会復帰支援の充実が求められています。

(1)障害の原因となる疾病等の予防・治療

 妊産婦への知識の普及啓発に努めるとともに、妊婦・乳児一般検診、1歳6ヶ月検診、3歳児検診を行います。
 身体発育が未熟なまま出生した乳児に対する未熟児養育医療、及び身体に障害がある児童に対する育成医療等の給付を行い、障害発生の未然防止や改善を図ります。
 乳幼児検診等の結果、経過観察や発達支援が必要な児童に対して、乳幼児発達専門相談事業を行います。
 障害のある子ども達を早期に発見し療育を行うため、また、慢性疾患等で長期療育の必要な児童に巡回療育相談地域総合療育指導事業を行います。
 地域療育の拠点施設である「こども医療福祉センター」の機能充実を図るとともに。地域における療育の場である障害児通園(デイサービス)事業への支援を行います。
 周産期医療体制の整備を図るために、「周産期医療体制検討委員会」を設置し、周産期情報ネットワークや周産期搬送体制等の在り方について検討を行います。
 特定疾患・小児慢性特定疾患治療研究事業による難病患者の医療費自己負担分の軽減と調査研究により、その医療の確立・普及を図ります。

(2)適切な保健・医療サービスの提供

 乳幼児期における障害の早期発見のために、先天性代謝異常検査、神経芽細胞腫(小児ガン)検査、新生児聴覚検査を行います。
 保健・医療サービスに関する適切な情報を提供するため、県内の医療機関の所在地・診療科目・診療時間・交通機関等の情報を県ホームページで公開します。
 重症難病患者への医療を確保するために、難病医療専門員による療育相談や入(転)院、往診医の紹介を行います。
 一般歯科医療施設での治療が困難な障害者の歯科診療を確保するために、障害者歯科診療事業を推進します。
 学校において定期健康診断を実施し、適切な事後措置を行います。
 高齢者や障害のある人のさまざまな状態に応じた地域リハビリテーションが適切かつ円滑に提供される体制の整備を推進します。
 地域リハビリテーション関係機関への支援機能をもった中核となる医療機関等を、老人保健福祉圏域毎に「地域リハビリテーション広域支援センター」として指定し、関係職員等に対する研修及び地域住民への啓発活動を行います。

(3)精神保健・医療施策の推進

 精神障害のある人の人権に配慮した適正な医療の確保充実に努めるとともに、様々な精神科救急ニーズに対応できるような精神科救急医療体制を充実します。
 また、精神科救急情報センターの設置を検討します。
 多様化する精神保健福祉相談に対応するとともに、市町村などへの技術支援を積極的に行うほか、保健所、精神保健福祉センターの機能を充実強化します。
 いわゆるひきこもりや家庭内暴力などの思春期児童の心の問題に対する相談、うつ病等の心の健康問題やそれに起因する自殺の問題について、地域・職域の連携を図るとともに、あらゆる機会を捉えて心の健康問題や精神障害に対する正しい理解の普及啓発を行います。

(4)人材の育成・確保と研修体制の確立

 保健・医療・福祉の人材を確保するために、県内の人材養成施設等との連携や人材の登録事業とあっせんを推進します。
 看護職員や社会福祉士等の質の高い人材を育成するため、各施設、関係団体等との連携・役割分担のもと、体系的・計画的に研修を実施します。
 離島医師を積極的に養成・確保します。

7 情報・コミュニケーション

 コミュニケーションの方法に制約を受ける障害のある人が地域で生活するためには、十分なコミュニケーション手段の確保と情報提供への支援が求められています。
 また、IT(情報技術)の急速な進展等による社会の変化に、障害のある人が対応できるよう適切な環境整備も求められています。
 行政情報について、視覚障害のある人のための音声認識ソフト対応ホームページ等のバリアフリー化の推進など、障害特性に配慮した提供に努めます。
 選挙における障害のある人の投票を容易にする電子投票について、市町村に対する情報提供を行います。
 情報伝達支援の必要な視聴覚障害のある人の情報受発信拠点として、「視聴覚障害者情報提供施設」を整備し、情報ネットワークを構築します。
 手話通訳付き番組や文字放送、広報紙の点字版など視聴覚情報を提供します。
 県内の宿泊施設等の観光バリアフリー情報をホームページにより提供します。
 行政情報について、テレビ・ラジオ・新聞等を積極的に活用し、広く周知が図れるよう情報提供します。
 コミュニケーション支援を必要とする視聴覚障害のある人に対する手話通訳者、要約筆記者及び盲ろう通訳者の養成研修を推進するとともに、これらの派遣体制の充実強化を推進します。
 ITを活用した福祉サービス情報提供の促進と、支援費制度によるサービスの選択が円滑に行われるよう、サービス提供事業者情報のデータベース化とネットワーク化を行います。
 パソコン操作に特別の配慮を要する視聴覚障害や上肢障害のある人が、IT情報を円滑に活用できるよう、パソコン用周辺機器やソフト等の助成を行います。

8 国際交流

 中国、韓国などアジア地域との地理的近接性や本県の多彩な国際交流の歴史を踏まえ、長崎県にふさわしい国際交流を進めていきます。
 中国、韓国などアジア諸国の障害のある人との交流を促進します。
 身体障害のある人の身体の一部となっている盲導犬等「身体障害者補助犬」が、全ての国際空港を円滑に利用できるよう、検疫体制の拡大を国や関係機関に働きかけます。


(附表1)数値目標一覧
 事業の進捗を図るために、主な項目について数値目標を設定します。
 本表は、最終達成目標ではなく限定された期間(基本的には平成20年度まで)の達成目標値を表したものであり、必要に応じて見直しを行います。
 また、地理的条件や需要の増などにより更に整備することが適切と認められる場合は、本表の目標値にかかわらず整備を行うこととします。
 なお、離島地区については、本表に数値を掲げていない項目についても、平成9年3月に策定した「長崎県障害者プラン」の整備目標の未達成数の範囲内で、引き続き整備を推進します。

◎在宅サービスの整備(精神保健福祉分を除く)

項目 平成14年度末実績 平成20年度目標
ホームヘルパー (身体障害者) 607人(127千H) 936人(531千H)
※利用者(利用時間) (知的障害者) 40人( 4千H) 254人( 76千H)
ショートステイ (身体障害者) 41人分 112人分
(知的障害者) 98人分 148人分
デイサービス (身体障害者) 10か所 24か所
(知的障害者) 5か所 20か所
障害児通園(デイサービス)事業 12か所 20か所
重症心身障害児(者)通園事業 5か所 8か所
グループホーム 420人分 796人分
市町村障害者社会参加促進事業 6か所 合併後全市町村
障害者ケアマネジメント従事者 292人 682人

◎施設サービスの整備(精神保健福祉分を除く)

項目 平成14年度末実績 平成20年度目標
通所授産施設 (身体障害者) 230人分 370人分
(知的障害者) 601人分 930人分
知的障害者更正施設(通所) 80人分 240人分

◎精神保健福祉サービスの整備

項目 平成14年度末実績 平成20年度目標
精神障害者地域生活支援センター 5か所 17か所
精神障害者ホームヘルパー 1,265人(197千H)
   ※利用者(利用時間)
精神障害者グループホーム 83人分 170人分
精神障害者福祉ホーム 40人分 220人分
精神障害者生活訓練施設(援護寮) 160人分 240人分
精神障害者通所授産施設 160人分 300人分
精神障害者小規模通所授産施設 10か所
精神障害者ショートステイ 9人分 22人分
精神障害者小規模作業所(地域活動所) 33か所 50か所

◎住宅、建築物のバリアフリー化の推進

項目 内容
新設される県営公共賃貸住宅のバリアフリー化 すべてバリアフリー化する。
手すりの設置、広い廊下幅の確保、段差の解消等がなされた住宅ストックの形成 リフォームの推進により、居住者の個別の事情に応じたバリアフリー化された住宅ストックを、平成27年度までに2割に引き上げ

◎公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進

項目 内容
右の公共交通旅客施設において、段差の解消、視覚障害者誘導用ブロックの整備、便所がある場合は身体障害者用便所の設置を推進する。 ○1日当たり平均利用者数が5,000人以上の鉄軌道駅及びバスターミナル
 平成22年度までに100%
○空港(ターミナル部分を除く)
 平成22年度までに100%
バリアフリー化された鉄軌道車両の導入の推進 平成22年度までに約10%
低床化されたバス車両の導入の推進 平成27年度までに100%
ノンステップバスの導入の推進 平成22年度までに約10%
バリアフリー船の導入の推進 平成22年度までに約10%
主要な鉄道駅等周辺における主な道路のバリアフリー化 平成19年度までに54%

◎交通安全の確保

項目 内容
バリアフリー対応型信号機への改良
(交通バリアフリー法の特定経路)
平成19年度までに約8割を改良
「あんしん歩行エリア」を形成しエリア内の死傷事故の抑止 平成19年度までに約2割を抑止
  うち歩行者・自転車事故の抑止 平成19年度までに約3割を抑止

◎生活の安全の確保

項目 内容
土砂災害のおそれのある障害者等の入院・入居施設を保全 平成19年度までに5施設



(附表2)障害福祉保健分野、圏域別数値目標一覧
−省略−




HOME > 人権に関する資料 > 宣言・条約・法律