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「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画



はじめに

 わが国の憲法は、「すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めています。
 しかし、今日なお、私たちの身のまわりには、人権に関わるさまざまな問題が存在しています。
 国際連合は、人類社会の最も基本的なルールである人権の確立を願い、1994年(平成6年)国連総会において、「人権教育のための国連10年」を決議、行動計画が報告されましたが、これらの人権確立の潮流は、21世紀においてさらに大きくなり、新しい世紀が「人権の世紀」となることは間違いありません。
 本市におきましても、市民一人ひとりの基本的な人権が尊重され、日常生活の中で「住みたい街 佐世保」が実感できるような、心豊かで温もりのある社会の実現を目指して、このたび「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画を策定しました。
 今後は、この行動計画を指針として、「あらゆる場」、「あらゆる機会」を通して、真に人権の尊重される街づくりの実現に努めてまいりますので、市民の皆様の一層のご理解とご協力をいただきますようお願い申し上げます。
 行動計画の策定にあたりましては、佐世保市人権教育推進懇話会の委員の皆様をはじめ、多くの方々のご意見をいただきましたことを厚くお礼申し上げます。

  平成13年(2001年)3月

佐世保市長   光 武   顕


目次

T 基本的な考え方
 1 策定の背景
  (1) 国際社会での人権尊重の取組
  (2) 国内での人権尊重の取組
  (3) 佐世保市での取組
 2 目標と基本方針
  (1) 目標【真の「住みたい街 佐世保」の実現を目指す人権教育の推進】
  (2) 基本方針
U 人権教育の現状と課題
 1 女性に関する問題
 2 子どもに関する問題
 3 高齢者に関する問題
 4 障害者に関する問題
 5 同和問題
 6 外国人に関する問題
 7 感染症対策(HIV感染者に関する問題)
 8 原爆被爆者に関する問題
 9 様々な人権問題
V 人権教育の推進
 1 人権尊重社会の創造
 2 あらゆる場における人権教育の推進
  (1) 学校等における人権教育
  (2) 社会教育における人権教育
  (3) 企業・団体等における人権教育
 3 特定職業従事者に対する人権教育
  (1) 市職員に対する人権教育
  (2) 教職員に対する人権教育
  (3) 医療関係者に対する人権教育
  (4) 福祉・保健関係者に対する人権教育
  (5) マスメディア関係者の人権教育
 4 啓発内容の充実
 5 国、県及び企業、関係団体との連携
W 行動計画の推進



資料
1 世界人権宣言
2 日本国憲法(抄)
3 教育基本法(抄)
4 職業安定法(抄)
5 男女共同参画社会基本法
6 児童の権利に関する条約(児童の権利条約)
7 佐世保市同和対策基本方針
8 佐世保市同和教育基本方針
9 佐世保市における同和問題啓発の推進方策について
10 「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画策定推進本部設置要綱
11 「人権教育のための国連10年」佐世保市人権教育推進懇話会設置要綱
12 佐世保市人権教育推進懇話会委員名簿


T 基本的な考え方
1 策定の背景
(1) 国際社会での人権尊重の取組
 「個人が個人として尊重される」考え方が示されたのは、古くは、※アメリカ独立宣言(1776年7月)やフランス人権宣言(1789年8月)に遡りますが、「人権」すなわち「社会において幸福な生活を営むために必要な、人間として当然に持っている固有の権利」が私たちの身近な考え方として特に意識されるようになったのは、第2次世界大戦後です。
 特に、※国際連合(国連)においては、第2次世界大戦がもたらした悲劇や苦悩、破壊を反省し、世界中の誰もが幸せに生活できる地球をつくりたいという決意の下、1948年(昭和23年)今日の人権についての考え方の根幹となる「世界人権宣言」を採択し、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準が示されました。
 この宣言の精神に則り、※「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」及び※「市民的及び政治的権利に関する国際規約」が、1966年(昭和41年)に国連総会において採択され、以後、様々な国際条約の採択、国際年の設定などを通じて、人種差別撤廃、性による差別撤廃、児童の権利擁護など人権が尊重される社会の実現に取り組んできました。
 こうした幾多の取り組みにもかかわらず、繰り返される人種や宗教対立、ひいては民族紛争や地域紛争が多発するなかにあって、生命、財産、人権を取り巻く情勢は、依然として厳しいものがあります。
 このような中、1993年(平成5年)にウィーンで「世界人権会議」が開催され、「人権が国際社会の指導原理であること」、「現代社会の諸問題の解決には人権意識の徹底・人権教育が不可欠であること」などが確認されました。
 これに基づき、1994年(平成6年)に、国連の人権活動に主要な責任を持ち、人権の促進・保護等を行う※「人権高等弁務官」が設置されるとともに、同年12月には、国連総会で1995年(平成7年)から10年間を「人権教育のための国連10年」とする決議が採択され、世界各国の人権教育を推進する行動計画が示されました。
 この国連行動計画においては、

@  人権と基本的自由の尊重の強化
A  人格と人格の尊厳に対する感覚の十分な発達
B  すべての国家、先住民、人種、国民、民族、宗教及び言語集団における理解、寛容、ジェンダー(社会的・文化的につくられた性別)の平等並びに友情の促進
C  すべての人が自由な社会に効果的に参加できるようにすること
D  平和を維持するための国連の活動の促進

を目指すこととしています。

アメリカ独立宣言とは、
 アメリカ独立に際し、ジェファソンが起草した宣言。1776年7月大陸会議で可決。
 ジョン=ロックの自然法思想に立脚して自由・平等・幸福の追求を天賦の人権として主張した。

フランス人権宣言とは、
 人民の自由・平等の権利に関する宣言。1789年フランス革命当初、ラ=ファイエットらの動議に基づき、憲法制定議会によって可決。
 前文及び17条からなり、主権在民、法の前の平等、所有権の不可侵などを宣言した。

国際連合(国連)とは、
 第2次世界大戦後、平和と安全の維持、各国間の友好関係の促進、経済上・社会上・文化上・人道上の問題について、国際協力を達成するために設立された諸国家の組織。1945年(昭和20年)10月24日正式に成立。
 国際連盟の精神を受け継ぎ、さらに強化した組織。1999年(平成11年)4月現在、加盟185か国、本部はニューヨーク。日本は1981年(昭和56年)加盟。主な機関として、総会及び安全保障理事会・経済社会理事会・信託統治理事会・国際司法裁判所・事務局がある。

経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)とは、
 労働の権利、社会保障についての権利、教育及び文化活動に関する権利などのいわゆる社会権を主として規定したもの。社会権とは、人権の保障を名実ともに充実したものとするためには、国家が個人の生活の保障に一定程度の責任を果たすべきであるという認識に立って、国の施策により個人に認められている権利です。
 ただし、これらの権利の性格上、その実現には日時を要するものと考えられるので、即時に実現されることまでは要求されておらず漸進的に実現するべきものと規定されています。
 わが国は、1979年(昭和54年)6月に条約を批准しています。

市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)とは、
 B規約は、人は生まれながらにして自由であるという基本的考えの下で、個人の生活を公権力の干渉や妨害から保護するという観点に立った権利、つまり自由権的権利を中心に規定しています。
 具体的には、表現の自由、移動の自由、身体の自由、宗教の自由、集会・結社の自由に加え、参政権が規定されています。締約国は、全ての個人に対して、いかなる差別もなしにこれらの権利が尊重され確保されることを義務として負っています。
 わが国は、1979年(昭和54年)6月にA規約とともに、この条約を批准しています。

人権高等弁務官とは、
 1993年(平成5年)オーストリアのウィーンで開催された「世界人権会議」における勧告を受けて設置され、国連事務総長の指揮及び権能の下で、国連の人権活動に主要な責任を持ち、事務次長の地位を有しています。主な任務は全ての人権の促進・保護、助言・サービスの提供、人権の促進・保護のための国際協力の強化、人権教育、広域を含む国連システム内での人権活動の調整、人権機構の合理化・強化、国連の人権活動の全般的監督となっています。
 比較的新しい機関であり、高等弁務官に求められる業務も増加しています。

(2) 国内での人権尊重の取組
 1947年(昭和22年)に施行された日本国憲法の重要な柱の1つとして※基本的人権の尊重を掲げ、生命・自由及び幸福追求などを現在はもとより将来にわたって保障されるべき権利とし、すべての国民にその享有を保障しています。
 しかしながら、憲法施行後においても、我が国には、同和問題をはじめとするさまざまな人権問題が依然として存在することも否めない事実であります。
 このため、基本的な人権の尊重と擁護を図るため、国の機関として※人権擁護機関の設置をはじめ、各分野において様々な施策を推進するとともに、国際社会の一員として人権に関する多くの国際条約に加入し、種々の目的の国際年に際しても取り組みを続けています。
 「男女雇用機会均等法」、「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」の制定や「らい病予防法」の廃止、「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の批准は、そうした取り組みの一例といえます。
 また、総務庁(現在の総務省)が設置した地域改善対策協議会による1996年(平成8年)の意見具申では、人権尊重は世界平和の基礎であるという世界的共通認識のもと、21世紀を「人権の世紀」と位置づけるとともに、国際社会における我が国の積極的な役割を考えるとき、足下である国内における様々な人権問題の解決が国際的な責務であると述べられています。
 このことを受け、1997年(平成9年)に、「人権擁護施策推進法」が施行され、同法に基づき、「人権擁護推進審議会」が設置され、

 人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策
 人権が侵害された場合の被害者救済に関する施策

などの総合的な推進及び充実に関する基本的事項が、現在審議されているところであり、人権思想の普及高揚及び人権問題の解決に対する期待も一層の高まりをみせています。
 さらに、1995年(平成7年)に設置された内閣総理大臣を本部長とする「人権教育のための国連10年」推進本部は、1997年(平成9年)7月に「人権教育のための国連10年」を受けて、「人権教育のための国連10年国内行動計画」を策定しました。
 この中で、我が国にも様々な人権問題が存在することを認め、

@  学校教育のみならず、社会教育、企業その他の一般社会などにおける人権教育の推進
A  人権に関わりの深い特定の職業に従事する者への人権教育の強化
B  女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人等の重要課題への積極的な取り組み
C  地方公共団体、民間団体等のそれぞれの分野における様々な取り組みの展開

等を期待するとしています。
 推進本部は、この行動計画に掲げられた諸施策の着実な実施等を通じて、人権教育の積極的推進を図り、もって国際的視野に立って一人一人の人権が尊重される、真に豊かでゆとりある人権国家の実現を期するものとしています。

基本的人権とは、
 人間が生まれながらに持っている権利。人は生まれながらにして自由かつ平等であるという主張に表現されており、アメリカの独立宣言やフランスの人権宣言により国家の基本原理として確立。
 日本国憲法では平等権、思想・信教の自由、集会・結社の自由、社会権、拷問の禁止、黙秘権などを基本的人権として規定。

人権擁護機関の機構図(平成12年4月1日)
 省略

(3) 佐世保市での取組
 佐世保市では、1998年(平成10年)3月に、「ひと・交流創造都市(人々が交流し、豊かな生活をつくる街)」を将来像とし、「暮らしづくり」、「人づくり」、「仕事づくり」、「街づくり」をまちづくりの基本目標とする「第5次佐世保市総合計画」を策定しましたが、人が人として生きるための基本的人権を尊重する社会を実現するため、「暮らしづくり」の中において「人権意識の高揚」と「同和対策」の2つを位置づけています。
 「人権意識の高揚」についての基本的な取り組みとしては「学校教育における人権教育の推進」と「社会教育における人権啓発・教育の推進」を大きな柱とし、学校教育においては、人権・同和教育の推進、道徳教育の充実や特別活動の活性化を目指し、また、社会教育においては、人権問題講演会を開催し、人権学級・講座の充実に努めています。
 一方、「同和対策」については、啓発の推進、成人同和教育の推進や学校同和教育の充実、生活安定向上を基本方針として、本市の「同和対策基本方針」に基づいて、啓発に重点をおいた施策の推進に努めていますが、今後は「同和対策審議会答申」及び「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」の延長措置(平成9年4月から平成14年3月まで)の趣旨に基づいて、地域改善対策や心理的差別解消に向けての積極的な啓発の推進が求められています。
 折しも、「人権教育のための国連10年」行動計画、同国内行動計画、同長崎県行動計画が策定されたのを受けて、本市は、あらゆる差別の解消を目指す国際社会の一員として、本市の一人一人が人権に対する正しい知識を習得するとともに、自らが考え、自らで判断し、ともに話し合って問題を解決するという技術・技能を培うため、あらゆる場・機会をとらえて人権教育を積極的に実施する道しるべとして「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画を策定することといたしました。

2 目標と基本方針
(1) 目標【真の「住みたい街 佐世保」の実現を目指す人権教育の推進】
 本市は、アジアをはじめ世界に開かれた国際都市としての自覚をもって様々な施策を展開しています。そのためには、人種、宗教、民族はもとより様々な文化の違いを率直に受け入れる寛容さを持つとともに、個々の違いを尊重する社会であることが必要です。
 先の第2次世界大戦の悲惨な結果は、ひとつに人権を軽んじたゆえにもたらされたともいえます。私たちは、その反省に立ち、「人権」すなわち「社会において幸福な生活を営むために必要な、人間として当然に持っている固有の権利」を認め合い、すべての人々の個人としての尊厳を厳に守ることを内外に示し、新しい世紀にふさわしい人権尊重のまちづくりを目指す必要があります。
 人権尊重社会を実現する担い手は、すべての社会を構成するあらゆる人々であるとの認識に立ち、市民一人一人の努力と実践によって築き上げられ、支えられていくものと考えます。
 同時に、国、県、市、各種団体や企業等も、ともに連携協力を怠ることなく、学校、地域、職場などあらゆる機会を通して、あらゆる人が参加しながら、人権問題について考え、解決を図る環境づくりを積極的、効果的に推進する必要があります。
 この行動計画では「住みたい街 佐世保」が、日常生活のなかで真に実感できるよう、市民一人一人の基本的人権が尊重され、個人の能力が十分に発揮できる社会と心豊かで温もりある社会の実現を目指します。

(2) 基本方針
 前項の目標実現に向けて、以下の基本方針を掲げ、本市における人権教育を推進します。

@  真の「住みたい街 佐世保」の実現のために、「一人一人の個性を尊重し、文化の違いを率直に受け入れる寛容さを持つとともに、個々の違いを尊重することが大切である」との認識に立った人権教育を推進します。
A  「人権尊重社会を実現する担い手は、すべての社会を構成するあらゆる人々である」との認識をもって、日常生活において市民一人一人の努力と実践によって築き上げられ、支えられるとの自覚を育てる人権教育を推進します。
B  同時に、国、県、市、各種団体や企業等の連携協力を図り、学校、地域、職場など「あらゆる場とあらゆる機会」を通して人権教育を推進します。

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U 人権教育の現状と課題
 本市は、第5次総合計画において、まちづくりの基本目標中「暮らしづくり」の中に「人権意識の高揚」及び「同和対策」を位置づけ、各種施策に取り組んでまいりました。
 学校教育の場においては、教科・道徳・特別活動の3領域はもとより全ての教育活動の中で、児童生徒の発達段階や実態等に応じ、計画的かつ系統的に行われなければなりません。一方、社会教育の場においては、差別がない明るく住みよいまちづくりを目指して、教育集会所や地区公民館等において人権啓発・教育活動に努めています。
 また、同和問題の解決に力を注ぎ、1978年度(昭和53年度)から生活環境改善事業に取り組み、1982年度(昭和57年度)で一応完了したことから、同和問題に対する認識と理解を深めるため、本市の「同和対策基本方針」に基づき啓発に重点を置いた施策の推進に努めています。
 しかしながら、当然のように、幅広く、かつ、奥深くなってきた人権問題を、そうした学校教育、社会教育あるいは同和対策の分野だけで対処できる状況ではなくなり、対象範囲は、女性差別の問題から、いじめや子どもへの虐待、子どもや高齢者、障害者、犯罪被害者、ひいては外国人がまきこまれる犯罪に至るまで、内容は、複雑多岐にわたります。
 人権尊重の考え方もずいぶんと人々のなかに浸透しつつあるとはいえ、まだ十分とは言いがたく、集団と個々との軋轢や、文化、習慣についても、周りと溶け合わないという理由で容易に受け入れないとする精神的な風土が残っております。また、情報の高度化が進むにつれ、あらたな問題が発生しつつあります。
 例えばインターネットによる悪質な差別表現など人権侵害の事例が見受けられることは極めて残念なことと言わざるを得ません。
 したがって、人権尊重社会を実現する担い手は、すべての社会を構成するあらゆる人々であるとの認識に立ち、同時に、国、県、市、各種団体や企業等もともに連携協力を怠ることなく、家庭はもとより、学校、地域、職場などあらゆる場とあらゆる機会を通して、あらゆる人々が参加しながら、人権問題について考え、解決を図る環境づくりを積極的、効果的に推進することが必要です。

1 女性に関する問題
(1) 経過
 国際連合は、1948年(昭和23年)に「世界人権宣言」を採択し、その後性に基づく差別の禁止を含む人権問題に対する取り組みを続けてきました。
 また、1975年(昭和50年)を「国際婦人年」とすることを決定し、以後10年間にわたる各国の政策指針となる「世界行動計画」が採択され、1979年(昭和54年)には「女性差別撤廃条約」が採択されました。
 1995年(平成7年)北京で開催された「第4回世界女性会議」で今後の女性問題への取り組みのための決意表明となる「北京宣言」が採択され、「女性の教育と訓練」、「女性に対する暴力」、「権力及び意思決定における女性」、「女性の人権」など12の具体的な提案が※「行動綱領」としてまとめられました。
 2000年(平成12年)にはニューヨークで「女性2000年会議」が開催され、各国政府が取り組むべき政策指針の「政治宣言」と具体策からなる「成果文書」が採択されました。
 国内では、「世界行動計画」を受けて総理府に「婦人問題企画推進本部」が設置され、1985年(昭和60年)に※「女子差別撤廃条約」を批准し、「国籍法」の改正、※「男女雇用機会均等法」、※「育児・介護休業法」など法の整備が行われました。
 1996年(平成8年)には国内行動計画「男女共同参画2000年プラン」を策定し、「男女共同参画審議会」が設置されるなど男女共同参画社会づくりに向けての推進体制が拡充されました。
 また、将来に向かって、国・地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に関する取り組みを総合的かつ計画的に推進するため、1999年(平成11年)6月に※「男女共同参画社会基本法」が施行されました。
 佐世保市においても、1985年(昭和60年)に「婦人問題懇話会」を設置し、1992年(平成4年)に「佐世保女性プラン」を策定し、このプランを基に男女共同参画社会に向けた様々な取り組みを進めてきています。
 1996年(平成8年)にふれあいセンター内に暫定的な「女性センター」を開設し、男女共同参画社会に向けて積極的な啓発事業を推進しており、2001年(平成13年)3月にはその拠点となる男女共同参画推進センター「スピカ」がオープンしました。

(2) 現状と課題
 女性が社会の半分を構成しているにもかかわらず、「男性は仕事、女性は家庭」、さらには、「男性は仕事、女性は仕事・家事・育児・介護」とした性別役割分担の意識がいまだに支配し、それを払拭できないでいるのが実情です。
 また、社会制度や慣習・慣行などにおいても、女性が常に男性よりも下位に位置付けられるというように、長い歴史の中で形成されてきた女性蔑視に基づく男女の不平等が多く残っているのが現状です。
 また、女性が何らかの形で社会・地域活動に参加するようになってきても、団体の長やリーダーとなると、圧倒的に男性が多く、女性は少数派にとどまっています。
 女性の※エンパワーメントを促進することによって、女性が「個」としての主体性を身につけ、自信と充実感を持って、あらゆる政策・方針決定の場へと参画できるように、環境の整備に努めると同時に、真の男女共同参画社会の確立をめざした政策を推進することが必要です。
 ※DV(ドメスティックバイオレンス)や※セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、多くの場合、男性による女性への暴力と思われていません。
 これらの行為は女性の人権を踏みにじるものであり、それによって女性の人間としての尊厳が侵害されているということを認識し、人権侵害の発生を防止する対策を講じる必要があります。

(3) 具体的施策の方向
 佐世保市では、女性に関する施策を長期的な視点に立ち、効果的に推進するための「佐世保市女性プラン」に基づく施策の基本目標として、

@  人間尊重と男女平等を基本とした教育・啓発の推進
A  就労環境条件の整備推進
B  出産・育児への支援
C  家庭・地域社会への共同参画
D  国際交流と文化創造の推進
E  健康長寿と福祉の充実
F  政策方針決定への参画
G  女性の総合的活動拠点の整備

の8つの柱を掲げ市の関係各課が一体となって推進しています。
 男女がともに社会の対等な構成員として、自分の意思で、家庭や職場、学校や地域などの、さまざまな分野の活動に参画する機会が確保されることをめざします。そして、性別、年齢、障害の有無を問わず、一人一人が尊重され、誰もが能力を発揮し責任を担い、平等に社会的・文化的利益を得ることができる「男女共同参画社会」の実現を目指し、様々な機会を捉え広く市民への意識啓発活動を推進します。

行動綱領とは、
 女性の地位向上のため、「西暦2000年に向けてのナイロビ将来戦略」の達成を目指し、各国政府や国際機関等が西暦2000年までに推進すべき行動をまとめたもの。
 女性に重くのしかかる貧困問題の解決、女性の政策・方針決定への参加、各国の女性行政推進のための国内本部機構の強化、女性の人権の擁護、女性に係わるメディアの表現等を盛り込む。
「行動綱領」の12の重大問題領域
A 女性と貧困  B 女性の教育と訓練  C 女性と健康  D 女性に対する暴力  E 女性と武力紛争  F 女性と経済  G 権力及び意思決定における女性  H 女性の地位向上のための制度的仕組  I 女性の人権  J 女性とメディア  K 女性と環境  L 少女

女子差別撤廃条約とは、
 (女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)
 1979年(昭和54年)国連総会で採択。あらゆる分野における性差別を撤廃し、男女平等の権利の確立を目指し、各国が法律や制度のみならず、慣習も対象とした役割分担の見直しを強く打ち出している。
 日本は、1984年(昭和59年)の国籍法改正、1985年(昭和60年)の男女雇用機会均等法の整備を経て、1985年(昭和60年)に批准している。

男女雇用機会均等法(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)とは、
 1985年(昭和60年)に公布、1986年4月から施行。
 1997年(平成9年)6月改正男女雇用機会均等法公布、1999年(平成11年)4月から施行。
 募集・採用・配置・昇進について、女性に対して男性と均等な機会を与えること、及び教育訓練、福利厚生、定年・退職・解雇について女性であることを理由として、差別的取り扱いをすることを禁止している。新たに※ポジティブ・アクションやセクシュアルハラスメントに関する規定なども設けられている。

ポジティブ・アクションとは、
 積極的格差解消措置。過去における社会的、構造的な差別によって、現在不利益を被っている集団(女性や少数民族など)に対して、一定の範囲で特別な機会を提供することなどにより、実質的な機会均等を実現することを目的とした措置のこと。

育児・介護休業法とは、
 (育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者に関する法律)
 1歳に満たない子を養育する労働者、家族の介護を必要とする労働者は、男女を問わず一定期間休業できる育児[1992年度(平成4年度)から]・介護[1999年度(平成11年度)から]のための制度

男女共同参画社会基本法とは、
 1999年(平成11年)6月23日公布、施行。
 男女が、お互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、その個性と能力を充分に発揮することができる男女共同参画社会の形成について、基本理念を明らかにしてその方向性を示し、将来に向かって、国・地方公共団体及び国民の男女共同参画社会の形成に関する取り組みを、総合的かつ計画的に推進するために制定された。

エンパワーメントとは、
 本来は「力をつける」という意味。自らの社会的立場と権利を自覚し、自己主張をはじめ、自らを変革するために立ち上がる力をつけていく過程と、そのための働きかけ

DV(ドメスティックバイオレンス)とは、
 夫や恋人など、親密な関係にある男性から女性に対してふるわれる暴力をいう。法律婚や事実婚のみならず、婚約者や同姓相手も含まれ、同居の有無にかかわらず、別居・離婚した夫や別れた恋人、以前つき合っていた男性なども含まれる。※ジェンダーに基づく男性の女性支配のしくみといえる。

ジェンダーとは、
 「男らしさ、女らしさ」など、それぞれの性にふさわしいとされる行動や態度など、社会的、文化的に形成された性別。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、
 相手の意に反した性的な性質の言動で、身体への不必要な接触、性的関係の強要、性的なうわさの流布、衆目にふれる場所へのわいせつな写真の掲示など、様々な態様のものが含まれる。
 特に雇用の場においては、「相手の意に反した、性的な性質の言動を行い、それに対する対応によって、仕事する上で一定の不利益を与えたり、又はそれを繰り返すことによって就業環境を著しく悪化させること」と考えられている。


2 子どもに関する問題
(1) 経過
 1989年(平成元年)に「児童の権利に関する条約」が国連で採択され、日本は、1994年(平成6年)に、この条約を批准しました。
 条約では、第2条において、「締結国は、その管轄下にある児童に対し、(中略)いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。」とし、また、第4条において「締結国は、この条約において認められる権利実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。」とされています。
 国においては、子どもが健やかに育っていける社会の形成が必要であるという観点から、社会全体の子どもと子育てに対する機運の醸成を目的として、「今後の子育て支援のための施策の基本的方向性について(エンゼルプラン)」が、文部・厚生・労働・建設の各大臣の合意のもとに、1994年(平成6年)に策定されました。また、1997年(平成9年)には、子育てしやすい環境の整備を図るとともに、次代を担う児童の健全な育成と自立を支援するために児童福祉法が改正され、現行制度の再構築が図られました。
 教育の在り方については、1996年(平成8年)の中央教育審議会第1次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方」で、「ゆとりの中で子どもたちに生きる力をはぐくんでいくことが基本である」と述べているほか、1998年(平成10年)には「新しい時代を拓く心を育てるために」という答申がなされるとともに、教育課程審議会の答申において、今後の教育の具体的な展望が示されました。
 佐世保市においては、国のエンゼルプランの方向性などを踏まえながら、1998年(平成10年)に、家庭を基本としつつも、地域や関係機関等との連携強化を図りながら、社会全体として、子どもの発達と子育て支援を行う環境づくりをめざして「佐世保市エンゼルプラン」を策定しました。
 また児童福祉週間には、「わんぱく広場」というイベントを、保育所や幼稚園、主任児童委員などが一体となって実施し、社会全体で子どもと子育てを支えるという意識啓発に努めています。

(2) 現状と課題
 近年の少子化は、1999年(平成11年)の全国の※合計特殊出生率が1.34と史上最低を記録するなど、確実に進行しているといえます。また、核家族化の進展やライフスタイルの多様化、あるいは都市化の進行など、生活環境は大きな変化を遂げており、子どもたちの生活・教育環境についても大きく変化していると言えます。
 こういった流れのなかで、新しい文化の受け入れや国際交流、ボランティア活動への参加など、子どもたちの中に幅広い考え方がみられる反面、ゆとりのない生活や様々な事由に起因する子どもの社会性の衰退、保護者の過保護等からくる自立の遅れなどの現象も起こっています。特に、少年の非行問題については、周囲が予見しがたい重大な問題行動を引き起こしたケースもあり、憂慮すべき一面も有していることは否定できません。
 一方、子どもに対する虐待は深刻化しており、その形態についても、身体的虐待あるいは性的虐待だけでなく、心理的虐待や※ネグレクト(保護の怠慢等)など様々です。また、親が虐待と認めない、あるいは虐待とは思っていない、そのような認識がないというケースも多く、問題は顕在化しにくい状況にあります。
 このように子どもの人権にかかわる問題は、深刻さを増してきており、保育所や幼稚園、学校、家庭、地域社会が十分に連携を図りつつ、一体となって子どもを支えていくことが必要です。
 新しい世紀を担う子どもたちには、社会性や自立性、豊かな人間性、人権を尊重する心を培っていくことが必要であり、そういった教育を推進していくことが必要であると考えられます。

(3) 具体的施策の方向
 社会全体で子どもの発達と子育て支援を行う環境づくりを行うため、「佐世保市エンゼルプラン」を総合的・計画的に推進します。

@  子どもを「権利行使の主体」として位置付け、その最善の利益をうたった「児童の権利に関する条約」の理念啓発に努め、子ども自身が人権の主体として育つ環境づくり、あるいは子どもをいじめや暴力、買春等の不当な扱いから社会全体で守る環境づくりを支援します。
A  思いやりの心など、心の教育の充実に努めます。
B  子ども同士の交流や世代間の交流により、子どもの社会性や自主性を育む機会の提供に努めます。
C  様々な遊びやスポーツ、文化等を通じ、感性豊かな子どもを育成するなど、子どもの健全な育成に努めるとともに、児童福祉週間に実施する「わんぱく広場」を通じて社会全体で子どもと子育てを支えるという意識啓発に努めます。
D  児童福祉法及び児童虐待防止法の趣旨に基づき、学校、児童福祉施設、福祉事務所、保健所、児童相談所などが十分に連携し、児童虐待の早期発見等に努めるとともに、その理念の普及啓発を推進します。

合計特殊出生率とは、
 女性が、その一生涯に平均して何人の子どもを出生するかを推計した数値。
 全国の合計特殊出生率は減少傾向にある。この数値が2.08を下回ると将来、人口が減少すると言われている。
 佐世保市においては、ここ数年1.5〜1.6の間で推移している。

ネグレクトとは、
 保護の怠慢や拒否により、子どもの健康状態や安全を損なう行為をさす。
 具体的には、乳幼児を車に放置したり、重大な病気になっても子どもを病院に連れていかないといった、子どもの健康・安全への配慮を怠ることのほか、下着などを長期間ひどく不潔なままにしておくなどの無関心、子どもにとって必要な情緒的欲求に応えないといった愛情遮断もネグレクトと言える。


3 高齢者に関する問題
(1) 経過
 我が国は、世界に例を見ない速さで高齢化が進行しており、国民生活の向上や医療技術の進歩等を背景として、今後も※高齢化率はさらに上昇し、2000年(平成12年)は17%台になると推計され、2015年(平成27年)には65歳以上人口は3,188万人、高齢化率は25%を超え、人口の4人に1人が高齢者になると推計されています。
 このような高齢化の進行に対応するため、国は1990年(平成2年)から1999年度(平成11年度)間における我が国の高齢者保健福祉の基本的方策として、公共サービスの基盤整備を進めることとし、在宅福祉、施設福祉等の事業についての目標を掲げ、推進を図る「高齢者保健福祉推進十か年戦略(※ゴールドプラン)」を1989年(平成元年)に策定しました。
 さらに、1994年(平成6年)には、当初の戦略を全面的に見直し、高齢者介護対策の更なる充実を図っていくための「新ゴールドプラン」が策定されました。
 長崎県は国を上回る速さで高齢化が進んでおり、高齢化率は2000年(平成12年)には20.0%に達し、2023年(平成35年)には30%台に達するものと見込まれています。
 本市においては、2000年(平成12年)8月の時点で65歳以上の高齢者は49,189人で、20年前と比べて高齢者数は約2倍になっています。
 また、高齢化率は、2000年(平成12年)8月の時点で20.2%に達しています。
 世帯の家族構成については、ライフスタイルの変化等により核家族化が進み、一人暮らしの世帯や高齢者のみで構成された世帯が増えています。
 市内でも約6,600人の高齢者の方が一人暮らしをされ、今後もこの人数は増えていくものと考えられます。
 高齢化の進行とともに寝たきりや痴呆の高齢者数も増加しており、2000年(平成12年)8月の時点で市内における在宅の寝たきりの高齢者数は約730人、在宅の痴呆性の高齢者数は約210人となっています。
 本市では、1994年(平成6年)に高齢者が地域において健康で生きがいを持ち、安心して暮らせるように、保健と福祉サービスが連携した総合的なサービスの提供体制の整備を図るため、1999年度(平成11年度)末までの基盤整備等の目標を定めた「佐世保市老人保健福祉計画」を策定しました。
 その後、2000年(平成12年)3月に既存の「佐世保市老人保健福祉計画」の見直しと同年4月から始まる公的介護保険制度の推進と充実とを統合させ、「自分らしく生活できること」を基本理念の1つとした「佐世保市老人保健福祉計画・佐世保市介護保健事業計画」を策定しました。

(2) 現状と課題
 経過に記したように、核家族化や高齢者の独居世帯の増加等によって、今まで高齢者の権利を守り、代弁してきた同居家族が減少することにより、高齢者の権利の擁護を社会的にサポートするサービスの必要性が高まりました。
 福祉サービスをめぐる環境も、2000年(平成12年)4月からの公的介護保険制度の導入により、福祉サービスの提供方法が「措置から契約へ」と大きく転換しました。
 サービスについての自己選択が可能となる反面、痴呆高齢者等が自己決定や意思表現がうまくできないことによる、日常生活上の契約や金銭管理、財産管理に関するトラブルなどが発生しています。
 高齢者が地域社会で、個々人の意思を尊重した利用者本位の福祉サービスを利用して、安心して生活するためには、高齢者の人権を擁護する視点に立った支援システムの確立が必要になってきました。

(3) 具体的施策の方向

@  本市では先に記した両計画に基づき、高齢者が安心して過ごすことができ、それぞれが誇りをもって自分らしく生きることができる社会実現のための支援体制の整備を総合的・計画的に推進します。
A  また、高齢者等の人権擁護のために、国及び本市において、以下の施策が講じられています。
@  「民法」の一部改正や「任意後見契約に関する法律」「後見登記等に関する法律」の制定による「成年後見制度」は※ノーマライゼーション等の理念と従来の本人保護の理念との調和を旨として、個別の状況に応じた利用しやすい制度を提供することを目的としています。
A  「社会福祉法」に基づく「地域福祉権利擁護制度」は、自立して地域生活を送れるよう福祉サービスの利用援助を行うことにより、その方の権利の擁護・遂行を助けることを目的として実施されています。
B  本市では、意思決定を行うことが困難となった痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者の方について、権利侵害の予防や侵害された場合の救済支援を行うことで、安心して地域生活の継続が図れるようにすることを目的として、1999年(平成11年)10月に「高齢者あんしんセンター」を創設しました。
今後、高齢者社会に対応できるように、これら3つのしくみの特性を生かし、また、情報等における連携を深めるなど、高齢者の人権擁護についての周知を図り、啓発の充実に努めていきます。
B  介護を要する高齢者については、介護保健サービスの質の確保・向上が課題となっています。
 本市では、1999年度(平成11年度)と2000年度(平成12年度)に施設での苦情解決システムを探るため、「介護サービスの質的向上調査・研究モデル事業」を行いました。
 今後は、公的なチェック体制とともに、本モデル事業の経験を活かし、第三者機関による利用者の声をサービスの質の向上に反映させるしくみ作りを支援します。

高齢化率とは、
 総人口に対する65歳以上の人口の占める割合。

ゴールドプラントは、
 21世紀の高齢者社会を国民が健康で生きがいをもち安心して生涯を過ごせる社会としていくため、高齢者の保健福祉の分野における公共サービスの基盤整備を図ることとし、在宅福祉・施設福祉等の事業について新たな整備目標や上乗せなどを盛り込んだ1990年度(平成2年度)から1999年度(平成11年度)までに実現を図るべき具体的目標を掲げ、これらの施策を強力に推進していくこととしたもの。1989年(平成元年)12月に厚生・大蔵・自治三大臣合意の下で策定。

ノーマライゼーションとは、
 高齢者も若者も、障害者もそうでない者も、すべて人間として普通(ノーマル)の生活を送るため、ともに暮らしともに生きぬく社会こそノーマルであるという考え方。


4 障害者に関する問題
(1) 経過
 国際的には、1975年(昭和50年)12月9日に「障害者の権利採択宣言」が国連で採択されました。
 また、障害者の人権問題に関し、1981年(昭和56年)に「国際障害者年」のテーマを障害者の「完全参加と平等」とし、全ての人が共に考え、共に社会をつくり、共に生きる社会をめざしています。
 一方、国内では、障害者基本法で12月9日を「障害者の日」として制定し、1993年(平成5年)3月に「障害者対策に関する新長期計画〜全員参加の社会づくりをめざして」が、1995年(平成7年)12月に「障害者プラン〜ノーマライゼーション7ヵ年戦略」が策定されました。
 また、1999年(平成11年)の精神保健及び精神障害者福祉の法律改正により、精神障害者の人権に配慮した医療の確保に関しても、措置が講じられることとなりました。
 長崎県では、1983年(昭和58年)3月に「障害者に関する長期行動計画」が、1988年(昭和63年)3月の中間年には、前記5か年の実施状況をふまえて後期重点施策が策定されました。
 そして、1995年(平成7年)3月に「長崎県障害者福祉に関する新長期計画」の策定につづき、1997年(平成9年)3月には「長崎県障害者プラン・ノーマライゼーション7か年計画」が策定されました。
 佐世保市では、「佐世保市総合計画」に基づき、長崎県の障害者プランとの整合性を図りながら、全ての人がいきいきと生活できる「暮らしづくり」をめざして「街づくり」を進めるため、1998年(平成10年)3月に「佐世保市障害者プラン」を策定しました。

(2) 現状と課題
 佐世保市では、福祉事務所の機能と保健所の機能を一体化したサービスを提供するために、1996年(平成8年)5月に組織の機構改革を行い、障害者への対応について、係で行っていたものを課で行うこととなりました。
 これにより、障害者のニーズに対する総合的なサービスの提供ができ、障害者の社会参加や自立等を促進し、より一層の障害者福祉の増進を図っています。
 今後、障害者が健常者と交流を図りながら、豊かな生活を送るために、在宅生活の継続を支援するための施策の充実と日常生活を援助するためのサービスの利用率の向上という課題があります。

(3) 具体的施策の方向
 佐世保市においては、障害者が一般社会の中で、人間らしく普通の生活を送れるように条件を整え、共に生きる社会を実現するノーマライゼーションの理念と障害者が社会で生活していくうえで、物理的・制度的・心理的なあらゆる障壁(バリア)を取り除こうという※バリアフリーの概念を広く一般に定着させるよう努めていきます。
 そして、障害者が地域で人権を尊重され、あらゆる段階で個々の能力を最大限に発揮し自立できるような支援と、全ての人が共に生活し活動できるような社会環境をめざしていきます。

@  そのため、障害者の現状を考慮し、保健・医療・福祉が一体となって、障害者の日常生活や自立生活の支援の推進と介護等各種サービスと相談体制の充実を図ります。
A  障害に配慮した住環境の整備(福祉ホーム、グループホーム、道路、交通機関等の整備)を推進します。
B  社会参加の支援・就労支援を行います。
C  健康・医療面では、健康づくり・予防、リハビリテーション、医療サービスの充実に努めます。
D  共に生きる地域社会をつくるため(バリアフリーの推進)、障害者への理解を深めるための啓発活動、情報・コミュニケーションの確保、支援者の育成、文化・スポーツ活動支援、生活基盤の保障及び経済的負担への支援を図ります。

 このように、佐世保市においては、国や県における取り組みを踏まえて、障害者に対する総合的な施策を推進していきます。

バリアフリーとは、
 障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去するという意味で、障害者の社会参加を困難にしている物理的、社会的、制度的、心理的な全ての障壁の除去という意味で用います。


5 同和問題
(1) 経過
 同和地区の人は同和地区に生まれたという本人に責任のない理由で、人間として幸せに生きていく願い・権利を不当に侵害され、経済的、社会的、文化的にも不利益を受けてきました。
 近世初頭につくられたこの身分制度は、明治以降もなくならず、今も同和地区の人は何人も保障されている基本的人権を完全に保障されず、不当な差別を受けています。
 これが同和問題です。
 戦後、民主主義の理念に基づき基本的人権の尊重をうたった日本国憲法が制定され53年を経過しましたが、今なお多くの人権に係る差別が存在していることは重大な社会問題といわざるを得ません。
 同和対策審議会は、1965年(昭和40年)「同和問題は日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題であり、その早急な解決こそ国の責務である」との答申を行いました。
 国はこの答申を受け、1969年(昭和44年)に「同和対策特事業別措置法」を制定、その後1982年(昭和57年)に「地域改善対策特別措置法」に改正、さらに1987年(昭和62年)には「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)が施行され、1997年(平成9年)3月まで、各種の施策が実施されました。
 この「地対財特法」は、1997年(平成9年)4月から5年間延長され、残された物的事業の実施や就労対策、教育、啓発等の非物的な事業に重点をおいた施策を積極的に推進する方向が示されました。
 佐世保市でも、1978年(昭和53年)から環境整備や各種の個人施策の実施及び啓発など同和関係者の社会的、経済的地位の向上のための施策を進め、一定の成果をみました。
 今日の同和行政の推進は、1987年(昭和62年)に改定した新たな「佐世保市同和対策基本方針」及び1993年(平成5年)に策定した「啓発指針」に基づき、同和問題の早期解決を図るための啓発活動に重点をおき、「差別のない明るい社会」の実現を目指しています。
 また、全市民が一体となって啓発活動を推進するため、全市民的組織として1996年(平成8年)2月に「佐世保市同和問題啓発推進協議会」を設置し、積極的に各種の啓発活動を行っています。

(2) 現状と課題
 これらの取り組みにより、人権意識の高まりとともに同和問題に対する理解も広がり、また、住民や道路などの生活環境の整備は相当程度解消されましたが、なお、根強く残っている心理的差別の解消が大きな課題となっています。
 1987年(昭和62年)6月に「佐世保市同和対策基本方針」を改正し、1979年(昭和54年)に定めた「佐世保市同和教育基本方針」と合わせて行政・教育の両面にわたり差別のない明るい社会の実現のために努力してきましたが、今後さらに同和問題の一日も早い解決を目指し、効果的な啓発活動をすることが重要であり、長期的計画のもとに啓発活動の推進に努める必要があります。

(3) 具体的施策の方向
 同和問題を解決するためには、すべての人が差別のある現実に正しく目を向け、人権尊重の精神を身につけ差別を許さない心を培うとともに、同和問題の解決を自らの課題として積極的に取り組み、企業、学校や地域社会、職場に、広く市民一人一人の理解と協力のもとに、積極的に推進することに努めます。

@  啓発活動の主体は市民であり、一人一人の市民が自分の意志で学習に参加し、意識を高めていくことが必要です。
A  正しい理解は、継続的、体系的に学習することが必要であり、研修内容を充実し研修機会を拡充します。
B  啓発活動のマンネリ化を防止するため、創意工夫をこらした参加しやすい啓発活動に取り組みます。
 このためにも、長期的視野に立った効果的な啓発活動プランの作成が必要です。
C  印刷物は、目的に応じたものや、要求に応えられるように多様な資料を整備することが必要です。イラスト写真などを取り入れ、親しまれる内容のものを作る必要があります。
D  啓発活動には、視聴覚教材(映画・ビデオ・ホームページ等)を用いるなどして、市民にわかりやすい啓発活動に努めます。
E  「佐世保地域人権啓発活動ネットワーク協議会」が、本年8月に設置されたので、加盟構成員(国、地方公共団体、人権擁護委員会組織体)の連携協力により広域的、総合的、効率的に地域の実情に応じた人権教育、啓発活動に取り組みます。
F  「人権週間」の行事の充実を図ります。


6 外国人に関する問題
(1) 現状と課題
 本市には、米国海軍基地の居住家族、ハウステンボスの外国人従業員のほか、市内大学、高等学校の留学生など約6,000人が在住しております。
 このような外国人が市民の一員となって円滑に生活できるような親切なまちづくりを進めていくためには、市民ボランティア活動の拡大が不可欠であり、支援が必要です。

(2) 具体的施策の方向
 このため本市では、1997年度(平成9年度)から「国際交流推進事業計画」の「内なる国際化事業」として、民族、国籍を問わずすべての外国人居住者や留学生にとって、「住みやすい環境づくり」を基本に、市民ボランティアとともに@日本語指導、A日本文化の交流ふれあい事業、B専門家による悩み相談や海外派遣者の体験発表等を実施しており、人権の分野に関しても国際理解が図られるよう努めます。


7 感染症対策(HIV感染者に関する問題)
(1) 経過、現状と課題
 エイズは差別する必要のない病気ですが、病気や患者に関する正しい知識がないため、誤解や差別があるのが現状です。差別や偏見をなくすためには、市民一人ひとりに正しい知識を持ってもらうことが必要です。
 長崎県においては、1993年度(平成5年度)から「エイズストップ作戦長崎」を展開し、エイズに関する正しい知識の普及啓発をはかるための事業を推進しています。
 本市においても、講演会の実施、学校等における健康教育の実施やエイズに関する記事を市広報紙に掲載するなど、広く市民に普及啓発を図る事業の実施に努めているところです。
 また、患者・感染者の受け入れについては、市内に「エイズ診療拠点病院」が1ヵ所、「エイズ診療地域協力病院」が3ヵ所選定されており、身近で医療が受けられる体制が整えられています。

(2) 具体的な施策の方向
 今後もHIV感染症やエイズ患者及びその家族に対する誤解や偏見をなくすために正しい知識の普及啓発を進めていきます。

@  市内の各種イベント会場においてキャンペーンを実施します。
A  特に、若い世代に対する普及啓発を推進するため、学校におけるエイズ教育の推進に努めます。
B  広く市民にエイズに対する知識を持ってもらうため、広報活動の充実を図り、あらゆる場所、あらゆる機会を通して誤解や偏見をなくすことに努めます。


8 原爆被爆者に関する問題
(1) 経過
 広島、長崎に原子爆弾が投下されてから、55年が経過しました。原爆被爆者は原子爆弾の放射線によって、他の戦争犠牲者にみられない「特別な犠牲」(健康被害)を受けていることから、この点に着目した対策が国、地方自治体において講じられています。
 まず、国においては、原爆被爆者の健康保持・増進、福祉の向上を図ることを目的に、いわゆる原爆二法と呼ばれる「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(1957年(昭和32年)」及び「原子爆弾被爆者に対する差別措置に関する法律(1968年(昭和43年)」が制定され、これに基づき医療の給付、手当等の給付など各種施策が行われています。
 一方、被爆地である本県では、県・長崎市をはじめ、本市においても「原子爆弾被爆者援護措置要綱」を制定し、地域の実情に応じた原爆被爆者の福祉の向上を図るための措置を講じています。
 また、戦後50年を迎えた1995年(平成7年)においては、高齢化の進行している原爆被爆者に対する保健・医療・福祉の総合的な援護対策を講じるために、原爆二法を一本化し、それまでの施策を拡充発展させた「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」(以下「被爆者援護法」という。)が施行されました。
 さらに、2000年(平成12年)4月から介護保険が開始されましたが、原爆被爆者の援護措置については、新たな負担が生じないよう、県において介護保険等利用被爆者助成事業が創設され、サービス利用負担分についての助成が行われています。

(2) 現状と課題
 被爆者援護法に基づき被爆者健康手帳の交付を受けている人は、2000年(平成12年)3月末現在、長崎県内の総数78,820名、うち佐世保市1,635名となっています。
 被爆者健康手帳交付者数は、年々減少の途をたどっていますが、これは原爆被爆者の高齢化の進展が大きく影響しているためと思われます。
 また、1995年(平成7年)に実施された原子爆弾被爆者実態調査の結果によっても、原爆被爆者の高齢化がますます進展していること、寝たきりの状況も他の高齢者よりもその比率が高く、介護を要する原爆被爆者の割合が高いことが明らかになっています。
 このような原爆被爆者の高齢化や社会環境の変化に対応していくために、1995年(平成7年)において被爆者援護法への法改正が行われており、今後ますます地域社会の様々な団体、医療・福祉団体が連携を深めながら、地域の実情に応じた援護対策の充実を図っていく必要があります。
 しかしながら、その一方で、原爆被爆者やその子孫に対する偏見、差別などが依然として存在している状況があります。原爆被爆者に対して、住み慣れた地域での生活を保障していくためにも、保健・医療・福祉の総合的な援護対策の充実はもちろんのこと、偏見をなくしていくための様々な施策の展開が今後求められます。

(3) 具体的施策の方向
 今後、原爆被爆者に関する問題を解決していくために、次のことに努めていくこととします。

@  原爆被爆者に対する援護対策については、国・県の動向を踏まえながら、地域の実情に応じて施策の展開に努めます。
A  原爆被爆者やその子孫に対する偏見を取り除いていくために、今後、市民に対して人権についての様々な学習の場を提供していきます。
B  学校教育においても、原爆被爆者の人権を大切にする教育を推進していきます。


9 様々な人権問題
 以上、本市が重点的に取り組むべき人権問題について述べましたが、この外にも身の回りには様々な人権にかかわる問題が存在しています。
 刑を終えて出所してきた人への偏見や差別の問題、職業等に対する理由のない偏見など人権を侵害される問題も存在します。
 また、古くからの伝統的な慣習や風習の中には、合理的な理由や科学的根拠がないにもかかわらず、日常生活に深く浸透し、先入観により差別意識を植えつけているものもあります。
 さらに、情報化の進展は、国民生活の向上に大きな恩恵をもたらしましたが、反面新たにプライバシーの侵害等の問題を引き起こしました。本人の知らない内に個人情報が利用され、また誤った情報を流される恐れもあります。
 このように、人権問題は多様化する方向にあり、これからの人権教育については、各々の人権問題を個別的に理解、認識していくことが大切であり、すべての人権を尊重する意識を一層高めていく取り組みが必要です。
 特に、個人情報保護を確立するため、行政機関及び事業者における個人情報の適正な取扱に関し、必要な事項を定めてプライバシーの保護に努めます。

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V 人権教育の推進
1 人権尊重社会の創造
 今日、私たちの身近では、地球より重いはずの命が軽々しく取り扱われる事件が起きています。
 私たちは、今一度「人間は自分以外の存在とともに生きてはじめて人間らしい生き方ができるのであり、決して一人では生きていけない。」という原点に立ち返り、「互いに尊重しあい、互いの『人権』を大切にする」社会を創造していかなければなりません。
 そのためには、「人権」について、よく知り、考え、行動することが必要です。
 本行動計画の推進を通して、「人間らしく幸福に生きたい。」という皆の願いを「人権」という「人間一人一人が生まれながらにして平等に与えられる人間としての尊さと自分らしく生きていく権利」にまで高めていくことの必要性を再認識し、「人権」について皆が考え、感じ、学ぶことにより、人類共通の願いともいえる人権尊重社会の実現を目指します。
 その一つの試みとして人権教育を生涯学習の観点から捉えなおし、子どもから大人まで、市民一人一人が、教育の機会や場面を問わず、人権教育に参加するよう啓発してまいります。
 一方で、私たちは、全人類の究極の課題ともいわれる環境問題にも直面しています。
 この課題についてもまた、全ての人間一人一人の人権の尊重を視野に入れた解決方策を見出してはじめて大きな意味を持つものであり、一人一人が人権問題の本質を正しく理解し、具体的かつ自発的に実践する態度を身につけていく必要があります。
 人権教育に終わりはありません。なぜなら、どんな社会や時代になろうと、その社会や時代に応じて「人権」は姿形を変えていくものであり、その時代にあった「人権」を常に考えていく必要があるからです。
 私たちは、「人権」を、社会について考える際の基盤として位置付け、人権尊重社会を実現する出発点とすべく、本行動計画を策定いたしました。
 今後は、同和教育をはじめとする様々な人権教育の成果を基本とし、より一層の充実を図りながら、人権尊重社会の創造に取り組んでまいります。

2 あらゆる場における人権教育の推進
(1) 学校等における人権教育
[経過]
 保育所・幼稚園及び小・中学校においては、幼児・児童・生徒の個性を尊重し、一人一人を大切にする教育が進められなければなりません。そこで、学校等では教育活動全体をとおして、発達段階に応じて、人権を大切にする心や同和問題等の基本的な理解と解決のための主体的な実践力の育成を図ってきました。
 佐世保市では、1976年(昭和51年)に同和行政の窓口を設置し、地域環境改善・個人施策及び同和問題の理解に向けての啓発活動を促進してきました。
 また、1986年(昭和61年)6月に市民を対象に「人権意識に関する調査」を実施し、それを踏まえて、1987年(昭和62年)2月に市同和対策審議会から「佐世保市の同和行政と啓発活動について」の答申が出されました。
 この答申を受け、1987年(昭和62年)6月に「佐世保市同和対策基本方針」を改正し、1979年(昭和54年)に定めた「佐世保市同和教育基本方針」と合わせて行政・教育の両面にわたり差別のない明るい社会の実現へ向けて日々努力してきました。 また、私たち一人一人が基本的人権にかかる同和問題について、より一層理解を深めるには人権意識の高揚につなげる啓発活動が重要です。
 そこで、啓発活動をとおし「差別のない明るい社会」の実現をはかるため、1993年(平成5年)に「佐世保市における同和問題啓発の推進方策について(啓発指針)」を策定しました。
 この啓発指針の冊子は、各学校の校内研修や各年度当初に実施している他郡市からの転入教職員・新規採用教員辞令交付式等の研修会で活用し、啓発に努めています。
 さらに、同和教育講演会や各種研修会において人権・同和教育の推進を図っています。

[現状と課題]
 学校教育の場においては、教科・道徳・特別活動の三領域をもとより、全ての教育活動の中で幼児児童生徒の発達段階や実態等に応じ、計画的かつ系統的に行われています。
 特に、人権週間のおりには、児童会・生徒会活動での集会や映写会などを実施し、作文、ポスター、標語の作成活動などをとおして人権尊重の意識の高揚を図っています。
 しかしながら、子どもたちを取り巻く環境には、人権にかかわる様々な課題がありますので、今後とも、なお一層の人権意識の高揚に向けた努力が必要です。
 そのためには、幼児児童生徒の教育に携わる者は、人権・同和教育の推進に果たす役割の重要性を認識し、自ら研修に努めるとともに、各学校等において研修を計画的に実施する必要があります。

[具体的施策の方向]
 幼児児童生徒の発達・成長過程を踏まえ、それぞれの教育機関等で次のことを重点に意図的、継続的に人権・同和教育を推進する必要があります。

@  生活全般を通して、生命の尊さ、人権、人格を尊重する態度の育成に努めます。
A  すべての差別を「しない」「させない」「許さない」態度を育成し、他人と協調し、他人を思いやるなどの心の教育を充実し、豊かな感性の育成に努めます。
B  基礎・基本の確実な定着を図り、個に応じて教育の充実に努めます。
C  生徒指導の徹底、健康管理の推進、進路指導の充実に努めます。
D  家庭・地域及び関係機関との連携に努めます。

(2) 社会教育における人権教育
[経過]
(啓発活動)

 1976年(昭和51年)7月 佐世保市に同和行政の窓口措置
 1978年(昭和53年)から社会同和教育啓発のための手引きやリーフレットなど資料作成・配布及び啓発のための視聴覚教材の整備に努めています。
 1979年(昭和54年)に定めた「佐世保市同和教育基本方針」に基づいて、社会同和教育の充実のために、講演会の開催など人権・同和問題の啓発活動の推進に努めています。
(2000年(平成12年)3月現在 45回開催 延べ9千人の参加)
なお、1997年(平成9年)からは「同和問題啓発講演会」を「人権を考える市民のつどい」と名称を改め、今日に至っています。

(教育活動)

 1979年(昭和54年)からは、地区公民館が実施する学級・講座等の中に同和教育を取り込んだ社会同和推進のための教育活動に努めています。
 1980年(昭和55年)4月 佐世保市教育集会所の設置
 地域における社会教育活動の充実を図るとともに、「集会所だより」を発行するなど同和問題啓発のための広報活動の推進に努めています。
(1999年(平成11年)佐世保市教育集会所の利用者数 3,264人)

[現状と課題]
(現状)
 今日、人権尊重の高まりは世界的な潮流となってきています。「人権教育のための国連10年」に関する国内行動に示されるように、同和教育をはじめとする人権教育・啓発の必要性が高まっており、社会教育の果たす役割はますます重要になってきています。
 社会教育においては、1979年(昭和54年)に定めた「佐世保市同和教育基本方針」に基づき、差別のない住みよい町づくりを目指し、社会同和教育の充実を図るために啓発・教育活動に努めています。
 啓発活動としては、1978年(昭和53年)から啓発のための資料として、同和教育の手引きやリーフレットなどの資料作成・配布や視聴覚教材の整備に取り組んでいます。
(2000年(平成12年)3月現在:視聴覚ライブラリーが有する人権・同和教育関係の教材:16ミリ映画フィルム23本/ビデオテープ39本)
 さらに、1979年(昭和54年)から市民を対象とした同和問題啓発講演会を開催しており、1997年(平成9年)からは「同和問題啓発講演会」を「人権を考える市民のつどい」と名称を改めています。
 教育活動として、1979年(昭和54年)からは、地区公民館が実施する学級・講座等の中に人権・同和教育を取り込み、その推進を図っています。
 また、1980年(昭和55年)4月に教育集会所を設置し、地域における社会教育活動の充実を図るとともに、「集会所だより」を発行するなど同和問題の啓発のための広報活動にも取り組んでいるところです。
 さらに、1997年(平成9年)から新規事業として、官公庁や社会教育関係団体・事業所等での人権・同和教育を奨励するため、講師の派遣制度を設け、その推進を図っています。
(課題)
 社会教育における人権に関する学習は、同和問題・性差別問題・障害者問題・いじめに関する問題などあらゆる差別の解決にむけて、啓発や研修会・講演会、さらには、公民館等での学級・講座の中で行われています。
 それらの人権に関する問題解決に向けて様々な取り組みを進めています。
 しかし、人権に関するそれぞれの問題が市民一人一人の課題として存在していることが多く、公民館が主催する学級・講座の中で恒常的に取り組まれる学習はまだ少ない現状です。
 この原因については、一つに、人権について学習することが自分には関係がない、他人の問題といった傍観者的意識が存在し、市民の学習ニーズがややもすると欠けていたこと。二つに、学習を提供する側の指導者が育っていないことなどがあげられます。その結果として、人権に関する学習機会が十分に用意されていないなどの課題があります。

@  学校教育・社会教育・家庭教育のそれぞれの主体性を尊重しながら、相互の連携を図るとともに、各種の施策を通じて人権に関する学習を一層推進していく必要があります。
A  親に対して、人権に関する学習機会の情報提供や子育てについての相談体制の整備など家庭教育を支援する取り組みの充実を図る必要があります。
B  公民館等の社会教育施設においては、学級・講座の開設等を通じて人権に関する学習機会の一層の充実を図るとともに、地域における人権教育を推進するための中核的役割を担っていく必要があります。
C  (仮称)市役所出前講座の実施により市民の人権に関する学習機会を充実させる必要があります。
D  地域の実情や学習者のニーズに応じた多様な学習機会を充実していくため、参加体験型の学習プログラムの開発や提供、社会教育指導者に対する研修の充実など指導体制の確立を図っていく必要があります。
E  人権に関する学習機会の充実のために幅広い見識のある人材を活用するなど指導者層の充実を図るとともに、啓発資料の作成・学習情報提供・学習相談体制の整備・充実を図る必要があります。

[具体的施策の方向]
 社会教育行政の役割として、社会教育関係団体・機関との連携・協力の強化、公民館等の社会教育施設における学級・講座の開設、学習情報の提供・学習相談体制の充実、さらには、学習機会の拡充のため、現代的課題に対する市民の学習意欲を高めるような魅力あるプログラムを開発・提供していくことが必要です。

@  家庭教育の支援
子育て支援事業の推進
家庭教育相談体制の充実
子ども会やPTA活動への支援
A  市民の人権教育に関する学習機会の充実
PTAなどの社会教育関係団体活動における人権教育の推進
公民館当社会教育施設における人権に関する学習活動の充実
啓発資料の作成・配布
視聴覚教材(16ミリ映画フィルムやビデオテープ等)の整備・充実
B  指導者の養成と研修機会の充実
社会教育関係職員の資質向上のための研修会の実施
社会教育関係団体指導者を対象とした研修会の実施
人権・同和教育に関する学習機会と情報の提供

(3) 企業・団体等における人権教育
[経過]
 企業・団体等は営業活動など様々な活動を通じて従業員や地域住民と深い関わりがあり、市民生活に大きな影響力を持っています。また、その活動については、基本的人権の尊重を基盤とした豊かな社会づくりに貢献するという社会的責任も強く求められています。
 雇用における男女の雇用機会の均等や高齢者、障害者等の雇用への取り組みなど、すべての人々の就職の機会均等を確保するための公正な採用選考や配置、昇進、賃金など、あらゆる面で基本的人権に配慮した適切な対応を進める必要があります。

[現状と課題]
 雇用の分野において、女性が男性と均等な取扱いを受けていない事例や統一応募書類の趣旨違反などの事象が発生しており、また、障害者雇用率の未達成問題、新規学卒者の採用における不適切な質問など課題はいまだ多く、このような問題解決のため、企業・団体等におけるなお一層の人権教育の取り組みが必要になっています。
 現在、企業・団体等においては、同和問題をはじめとする人権問題への取り組みとして※公正採用選考人権啓発推進員が中心となり、人権啓発や社内研修が進められていますが、企業・団体等によってはその啓発活動の取り組みに差異があり、すべての企業・団体等の積極的な取り組みが求められています。

[具体的施策の方向]

@  企業・団体等における啓発活動は、事業主の人権教育の重要性の理解と認識が必要であり、そのための啓発活動に努めます。
A  関係機関と協議して、公正採用選考人権啓発推進員を選任する企業・団体等の増加を推進するとともに、同推進員の資質の向上を図るため、「指導者研修会」を実施します。
B  人権教育にかかる社内研修について、講師の紹介、教材や学習情報の提供などの支援に努めます。
C  企業・団体等が実施する人権・同和教育講座、講演会について、講師派遣を今後も積極的に行います。


公正採用選考人権啓発推進員とは、
 職業選択の自由、就職の機会均等の確保、雇用の促進を図る見地から同和問題をはじめとする人権問題について、正しく理解、認識し本人の適性と能力に応じた公正な採用選考を行うため、公正な採用選考システムの確立と同和問題等の研修の実施について、企業内で中心的な役割を担う者で企業が推薦します。
 本県では、常時雇用する従業員の数が50人以上の事業所等で選任することになっています。


3 特定職業従事者に対する人権教育
(1) 市職員に対する人権教育
 市民一人ひとりが基本的人権を保障され、いきいきとした生活を送ることができるように、行政を担う職員が豊かな人権感覚を身につけることが必要です。
 特に、消防職員については市民の生命、身体、財産の安全を守るために市民の生活と密接に関わっており、十分な人権擁護の姿勢が求められるため、人権教育の充実を図っていく必要があります。
 そのために、本市においても人権に関する研修を実施しているところです。
 今後も、引き続き研修等を実施し、職員の人権感覚の涵養に努め、市民の立場に立ったサービスの向上ができるよう啓発を図ってまいります。

(2) 教職員に対する人権教育
 幼児・児童・生徒の教育に携わる者は、子どもの人権を保障するとともに、人権・同和教育の推進に果たす役割の重要性を認識し、人権意識を高めるための研修に努める必要があります。
 そのため、同和教育講演会や各種研修会において人権・同和教育の推進を図っていきます。

(3) 医療関係者に対する人権教育
 近年の医療を取り巻く環境は、医療技術の進歩、高齢化の進展、国民の生活水準の向上と意識の変化などによって、大きく変わろうとしています。そのような中で、良質な医療サービスを安定的に提供していくためには、医療サービスを担う人材の確保と資質の向上が求められます。
 医療法では、医療の提供について、「生命の尊厳と個人の尊重の保持を旨とすること」「医師、歯科医師、その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づくこと」など、医療の目指すべき理念が明確に掲げられており、医療従事者と患者との信頼関係の下での※インフォームド・コンセントの理念の浸透が、今後ますます求められています。
 このような中、今後、国において、医療関係者に対する人権教育の充実を図っていくこととされており、本市においても、国の動向を踏まえながら、医療従事者の養成機関や医療機関に対して、生命の尊厳と患者の人権尊重の観点からの人権教育の充実を求めていきます。

インフォームド・コンセントとは、
 「十分な説明を受けた上での同意」
 患者が医療従事者から自己の状態や治療について十分な説明を受け、理解した上で同意し、示された治療を選択するということ。
 丁寧な説明を受け状況を理解したいと望む患者と、十分な説明を行い、患者の同意を得ることが医療提供の重要な要素であるとの認識をもった医療従事者が協力し合う、信頼関係に基づくより良い医療環境が目標とされる。


(4) 福祉・保健関係者に対する人権教育
 2000年(平成12年)4月からの「公的介護保険制度」の導入や2000年(平成12年)5月の社会福祉事業法の改正によって、福祉サービスの提供方法が「措置から契約へ」と大きく転換されました。これは、利用者と福祉サービスを提供する事業者とが対等な関係として位置付けられるものであり、そのため、今後、利用者の権利や人権をどう擁護していくかが課題とされています。
 さらに、高齢者や障害者、児童が入所する施設等において、虐待など人権侵害行為が問題視されていることなどからも、福祉・保健サービスに従事する職員の人権教育等の研修を強化していく必要があります。
 そのため、本市においても、福祉・保健関係者に対する人権教育の充実に努めます。
 また、地域福祉を推進する上で重要な役割を担う民生委員・児童委員についても、住民の立場にたった活動の展開を図り、さらに虐待などの人権侵害を早期に発見・解決していくためにも、今後、人権に関する研修の充実に努めます。

(5) マスメディア関係者の人権教育
 新聞、ラジオなどのマスメディアからの情報は、市民生活に密接な関わりをもっており、人々の意識の形成や価値判断に大きな影響を及ぼします。
 人権を尊重する社会を形成するためには、マスメディア関係者へ自主的な人権教育の取り組みを要請します。

4 啓発内容の充実
 人権啓発の目的は、他人の人権を尊重することが、自分の人権が尊重されることになるという意識や考え方を定着させることにあります。
 すべての人が、人権問題に正しく目を向けて、人権尊重の精神を身につけ、人権問題を自らの課題として積極的に取り組み、行動するような人権教育が必要です。
 本市においては、人権(同和)問題講演会を始めとして、さまざまな人権啓発活動に取り組んでいますが、今後、これらの取り組みにより工夫をこらすとともに、市民が自分や社会全体の問題として受け止め、効果的に実際の行動に結びつくような啓発活動の充実に努めます。
 また、市民への情報伝達の手段として、新聞、ラジオ、テレビなどの果たす役割は極めて大きく、その影響は絶大なものがあります。
 人権教育を効果的に推進するにあたって、これらのマスメディアとの連携を深めるとともに、積極的に情報の提供を行い、様々な情報を1人でも多くの市民に提供する必要があります。
 さらに、インターネットで人権啓発に関する情報を掲載したホームページの開設なども有効な手段と思われます。
 人権教育を広く市民に広げていくためには、学習活動を行う際のリーダーの養成が必要であり、国、県、関係機関等が実施する研修や講座等を活用しながら、市民の日常生活に身近な指導者の養成に努めます。

5 国、県及び企業、関係団体との連携
 人権教育を効果的に推進していくためには、国、県及び企業、団体との密接な連携は不可欠です。
 国、県、他市町村と人権教育に関わる施策及び教材、指導者などの情報について、お互いに連携を図り、協力体制を強化しながら効果的な人権教育を推進します。
 「人権教育のための国連10年」の取り組みは、公的機関だけで推進できるものではなく、企業、団体等の自主的な人権教育を支援するため、講師の派遣や教材等について、適切な助言、情報提供を行うなど、必要に応じた支援に努めます。
 また、現在、法務局佐世保支局、人権擁護委員協議会、本市をはじめとする周辺市町で構成する「佐世保地域人権啓発ネットワーク協議会」が昨年8月に設立されたので、今後はそれぞれの構成員が企画、実施する人権啓発活動について、相互に意見交換、情報交換を行い、人権教育の一層の推進を図ります。

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W 行動計画の推進

@  計画の推進にあたっては、「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画の取り組みの趣旨及びこの行動計画の各方面への浸透を図り、人権が尊重される「住みたい街 佐世保」を目指すものとします。
A  人権教育を実効あるものにするためには、あらゆる人を対象に、あらゆる場で実践することが求められています。その為には国、市町村、企業、その他人権教育に取り組む民間団体と緊密に連携し、その中で本市の果たすべき役割を十分に認識するとともに、市民一人一人があらゆる機会において参加することができる実効ある計画の推進に努めます。
B  「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画の積極的な展開を図るため、「人権教育のための国連10年」佐世保市行動計画策定推進本部のもと、関係機関・団体が密接な連絡調整を図り、人権教育を総合的に推進するものとします。
C  計画の推進にあたっては、この計画を本市の人権施策の基本方針として位置づけることから、本市が行う諸施策について、人権尊重の視点から全庁をあげて本行動計画の実現を目指します。
D  この行動計画は、進捗状況及び社会状況の変化など必要に応じ、見直しを行うものとします。


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